■ 身近になり始めた? 学習リモコン 欧米では多数のメーカーが各種新製品を発売している一方で、日本国内では市場としてなかなか広がりを見せない「学習リモコン」。 しかし、決して「日本に学習リモコンが必要ない」というわけではない。日本の家庭内には、テレビやビデオデッキにはじまり、オーディオ機器、DVDプレーヤー/レコーダ、さらにはエアコンや照明まで、リモコンで操作する機器は増加の一途をたどっており、リモコンが1つしかないという家庭はまずないだろう。 さらに、世界の中でいち早く日本で普及し始めた、DVD(ハイブリッド)レコーダなどでは編集機能など機能が多岐にわたるため、ボタンが増え、操作も複雑化。本体に同梱されているリモコンの使い勝手に納得のいかない人も多いことだろう。 そいうった意味で、日本市場でも「学習リモコン」が、普通の人にも必要とされる時代がやってきたと、勝手に思っている。とはいえ、学習リモコンがなくても、操作ができないわけでもなく、使ったことがない人にとっては、便利さが伝わりにくい製品でもある。価格も少し前は2万円以上する製品がほとんどで、「高級・マニア向け製品」というイメージが強かった。「RC2000MKII」を購入した時に、周りから「何万円も出してリモコンを買うなんて信じられない」とよく言われたが、おそらく、それが普通の感覚だろう。 しかし、最近になって、発売するメーカーは増えないものの、昔から国内で学習リモコンを販売しているメーカーであるビクターやソニー、マランツが、学習リモコンとしてはお手ごろな1万円台の価格帯に、意欲的な製品を投入してきた。 そんな、(学習リモコンとしては)最も活気のある市場に11月下旬に登場したのが、マランツの「RC1400」だ。15,000円で液晶搭載であることから、ソニー「「RM-VL1000U」と、ビクター「RM-A1500」が、直接の競合製品となるだろう。
しかし、マランツは、ソニーやビクターとは違い、圧倒的に日本市場より欧米市場をメインにしているので、「RC1400」も日本ローカルな仕様は省かれ、いろいろな部分で「世界仕様」となっている。実際日本市場向けの出荷台数も、マランツのAVアンプ「PS7400」に付属する分を除けば、数百台と非常に少ない。
■ 単4電池3本仕様で、使用時175gの軽量さ 「RC1400」の外形寸法は、59×224×32mm(幅×奥行き×高さ)と、リモコンとしてはオーソドックスな細身のストレートタイプ。電源は単4電池×3本を使用し、重量は175g(電池含む)。単4電池を使用しているおかげで、電池を入れた状態でも学習リモコンとしては軽く、実際に使用していてもあまり疲れない。全体のバランスもよく、操作時の保持も楽だ。 アルカリ電池使用時で約4カ月の使用が可能(カタログ値)だが、3本使用という少々イレギュラーな仕様が気になった。一般的に、電池は2本単位や4本単位で売られていることが多い。電池が切れて買いに行って、4本パックを購入すると、1本余ってしまうことになる。 それに、単3電池は使用する機器が多いので買い置きしている家庭も多いと思うが、単4電池を常備している家庭は少ないだろう。1本余った電池を、次の4カ月後の交換時まで、無くさないように保管しておかなくてはならない。やはり、2本使用にしてほしかった。
学習用のメモリは512KBで、最大674のリモコン信号を学習可能。EEPROMを使用しており、当然のことながら電池が切れても、学習内容や設定内容は保持される。 最大20ステップ、20個のマクロ機能も搭載。各マクロにも任意に6文字の名前(英大文字/数字/記号)が付けられる。各操作のインターバルも1~10秒の範囲で設定可能。また、時計機能も内蔵している。 さらに、時計機能を使ったマクロタイマー機能も搭載。しかし、ソニーのRM-VL1000Uとは異なり、時計機能で曜日設定ができないため、マクロタイマーは毎日実行する「DAILY」、1回だけ実行する「ONCE」の2種類で、設定できるのは1個のみと制限が多い。 実際の使用シーンとしては、目覚ましタイマーや、予約数の少ないCATVのSTBなどを使っている場合に、追加でもう1つビデオデッキと連動させて予約録画する、などだろうか。
なお、時計のバックアップ機能はなく、電池交換時には設定し直す必要がある。
■ 「12」と「巻戻し/早送り」がないのが残念なキー配置 リモコンの再上部には、「POWER ONボタン」と「OFFボタン」、「SOURCE ON/OFFボタン」がある。なぜ、電源ボタンが3つもあるのか不思議に思う人もいるかもしれないが、これはホームシアター用途を想定しているためで、マランツの学習リモコンは伝統的にこのスタイルが採用されている。 「POWER ONボタン」と「OFFボタン」は、システムのセンターとなるAVアンプなどの電源をON/OFF。間にある「SOURCE ON/OFFボタン」で、現在選択している入力ソースの機器の電源をON/OFFする。 つまり、このリモコンはAVアンプなどがセンターにあり、そこにすべての機器がつながっているというシステムが想定されている。
電源ボタンの下には、ELバックライト付きの液晶を備え、最上段にソース名(最大5文字)を表示するほか、液晶の脇に表示名(最大6文字)を、英大文字/数字/記号で設定できる5個のダイレクトキーを配置。ダイレクトキーは、ページ切り替えにより4ページ分計20個を、各機器ごとに登録できる。 その下には、「CH +/-」と「VOL +/-」に挟まれる形で、カーソルキーと「OK」ボタンが配置される。ちなみに、「OKボタン」はスティック形状なので、思わずジョイスティックのように動かしてしまったが、もちろん、「OK」ボタンとしての機能しかない。 さらに下には10キーがレイアウトされているが、「12」ボタンがなく、日本で使用するには少々不便かもしれない。また、再生操作系では「前(前曲)」、「次(次曲)」ボタンはあっても、「巻戻し」、「早送り」ボタンがないのは、個人的には非常に残念だ。
もちろん、他のキーにそれらの機能を学習させれば用は果たせるが、それほどボタン数に余裕があるわけでもないので、できれば専用のボタンがほしかった。 リモコンの最下部にはソース切り替えボタンとして、「TV」、「DVD」、「VCR」、「DSS」、「TUNER」、「CD」、「CD-R」、「MD」、「TAPE」、「AUX1」、「AUX2」、「AMP」の12個が並んでいる。
音響機器メーカーの製品ということもあって、「CD-R」があるのが特徴的。また、ソースボタンを2回押しで、アンプの入力切り替え(他のリモコンコードを学習させることも可能)という、独特な操作体系となっている。
■ かなり面倒なメーカー設定 「RC1400」には当然のことながら、学習機能以外に各メーカーのリモコンコードもプリセットされている。付属のコード表を見ながらメーカー番号入力して設定するのだが、さすがに、世界市場向け製品ということもあって、コード表には聞いたこともないメーカーも多数掲載されている。 メーカーコードは、「M」キーを3秒以上押して、メニューモードに入り、ダイレクトボタン「D1」で、プリセット設定に移行。設定したいソースボタンを押してから、コード表を見て4桁のコードを入力。「OK」ボタンを押して設定完了となる。 これだけだと、それほど難しくないように思うかもしれない。各メーカーの、TVやVCRといった1つのソースに1つのコードだけなら、それほど面倒ではないだろう。しかし、コード表には、ほとんどの機器に2つ以上、多いメーカーになると12個以上書かれている。つまり、設定したコードで、所有機器が操作できるか試しながら、設定することになる。 ここで問題なのが、コード設定をしている状態ではリモコンコードが送信できないこと。そのため、設定したコードで操作できるか試すには、「M」キーを押して、「USE」モードに戻って、動作チェックをしなくてはならない。さらに、面倒なのは、「M」キーを押して「USE」モードに戻ると、必ずソースが「TV」になってしまうのだ。「TV」以外のソースのメーカー設定をしている場合は、該当するソースボタンを押してから、動作チェックをしないといけないことになる。 それで操作できなければ、元に戻って「Mキーを3秒以上押して、メニューモードに入り……」という作業を繰り返す。これを、該当機器の操作ができるようになるまで、何度も行なう。操作したい各機器のメーカーコードを設定するだけで、途中で投げ出しそうになった。 最初に設定してしまえば、頻繁に変更することはない項目だろうが、少なくとも、メーカーコードを設定した時点で、電源のON/OFFボタンでコードがあっているかどうかチェックできれば、随分と手間が省けると思うのだが……。 そこまで努力してプリセットを設定しても、デフォルトで割り当てられている機能は本当に必要最小限。結局、少しでも基本操作以上のことがしたければ、学習させるしかない。ならば、最初から面倒なプリセットをせずに、1個1個学習させていった方が楽かもしれない。 なお、ソースボタンに設定できるメーカーコードは、ソースごとに決まっており、たとえば「TAPE」に、DVDのメーカーコードを設定することはできない。「テープ」なんて使わないから、ほかの機器を割り当てようと思った場合は、ボタン1つずつ学習させる必要がある。
また、手動でコードを入力する以外にも「シーケンス機能」もあり、「CH+/-」ボタンを押すごとに各メーカーコードの電源OFF信号を順番に送信。コード表に書かれていない機器でも、操作できるようになる(一部の機器では設定できない)。 その他にも、学習済みのRC1400の内容を、もう1台のRC1400に丸ごと、あるいは各機器ごとにコピーする「クローン機能」も備えている。 それ以外に搭載されていればうれしかった機能が、アサイン機能。「RC1400」でも、現在のこのクラスの学習リモコンと同様に搭載されていなかった。例えば、DVDプレーヤーの再生を、ソースを「TV」にしている時でも操作するためには、ソース「TV」の任意のキーに、DVDプレーヤーのリモコンを使って、学習させなくてはならない。アサイン機能があれば、ソース「DVD」の再生ボタンを、ソース「TV」に任意のボタンに設定できて、非常に便利に使えるのだが。
■ 淡いブルーに輝く、バックライト機能 RC1400は、最下部にある蓄光式「LIGHT」ボタン押すことで、液晶はもちろん、各ボタンもELでライトアップされる。なお、ELバックライトは「LIGHT」を押したときのみ点灯し、それ以外の操作ボタンを押したときに自動的に光る機能はない。 ソニーの「RM-VL1000U」も、液晶にバックライトを搭載していたが、すべてのボタンが照明される「RC1400」の方がより、ホームシアター用途に向いている。さらに、ホワイトのボディに、淡いブルーが映えて、非常に美しい。 価格帯的には、ソニー「「RM-VL1000U」、ビクター「RM-A1500」の競合製品といえるだろが、実際に使用してみると、各製品ごとにかなりコンセプトに違いを感じる。 RC1400では、ELバックライトで全ボタンが照明されるということだけをとっても、この価格帯では暗い部屋が多いホームシアターなどで使用するのに最も適している。RC1400の難点を挙げるとするなら、単4電池3本仕様ということと、ソース切り替えボタンが下のほうに小さなボタンで12個並んでいるので押し辛いこと、メーカープリセットの設定が面倒なことぐらい。 ちなみに、日本市場向けに特化した製品ではないので、ソースボタンに「DVDレコーダ」や、「HDDレコーダ」がないが、手元にあるソニーの「Clip-on」や、「コクーン」を、VCRのソニーのコードを試していったところ、操作できるコードがあった。
□マランツのホームページ (2003年12月4日) [AV Watch編集部/furukawa@impress.co.jp]
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