【バックナンバーインデックス】



第129回:M-AUDIO 「FireWire AudioPhile」を検証
~ 実売4万円のFireWireオーディオインターフェイスの実力は? ~


FireWire Audiophile

 1月15日(現地時間)から米アナハイムで世界最大の楽器関連の展示会NAMM Show 2004が開催されている。その関係もあり、各社からオーディオインターフェイスやレコーディング関連機材などが各社からさまざまな製品が発表されている。

 そんな中の1つがM-AUDIOのFireWire対応オーディオインターフェイス、FireWire Audiophileだ。NAMM Show開催の1週間ほど前に発表されたこともあって、すでに実機が国内にも入っており、それを入手することができた。今回はこのFireWire Audiophileに関してテストした。


■ FireWire対応インターフェイス花盛りの「NAMM Show 2004」

 今回のNAMM Show 2004では、さまざまなオーディオインターフェイスが発表されているよう。具体的には、16日のAV Watchの記事にもなっているEDIROLのFireWire対応で10in10outの「FA-101」や、SteinbergのUSB対応で4in4outの「MI4」、PresonusのFireWireで8in8outの「FIREPOD」、EGO-SYSTEMのFireWire対応の6in10outの「QuataFire610」、そしてM-AudioのFireWire対応製品が2つ。

 1つはFireWire 410の上位に位置付けられる18in14outを装備した「Firewire18|14」、もう1つが今回紹介するFireWire 410の下位バージョンにあたる4in6outの「FireWire Audiophile」だ。

 ここにきてFireWire対応製品がズラリと並んだ。USB一筋かと思っていたEDIROLがFireWire製品を出したり、mLAN対応としてFIRESTATIONを出していたPresonusがmLAN非対応のFireWire製品をリリースするなど、業界の動きは激しい。このFIREPODにSteinbergのCubase SEがバンドルされているという情報も個人的には非常に興味を引くところである。


■ FireWireインターフェイスのエントリーモデル

FireWire Audiophile

 M-AUDIOは、Audiophileという名称はPCI製品にもUSB製品にもエントリー向けのものとして存在していたが、まさにFireWireオーディオインターフェイスのエントリー製品として位置付けられるのが「FireWire Audiophile」だ。見た目はシンプルでコンパクトなもので、185×140×44mm(幅×奥行き×高さ)で770gとハーフラックのモジュールよりも一回り小さい。

 入力はアナログが2chとデジタルが2ch、出力はアナログ4chとデジタル2chの計4in6out。アナログはいずれもRCAのピンプラグで、デジタルもRCAのピンプラグのコアキシャルのみとなっている。そのほか、フロントに2系統のステレオを切り替えてモニターすることができるヘッドフォン端子と、リアにMIDIの入出力が1系統用意されている。こうした端子類を見ても、FireWire410と比較しても明らかにエントリー向けになっていることがわかるだろう。価格はオープン価格で1月31日発売であるが、実売で39,000円前後になる模様だ。

上面にM-AUDIOのロゴ 入出力端子は背面に装備する

 内部のDACについては、FireWire 410と同様、AKM製のものが搭載されているのだが、モノはちょっと違うようだ。FireWire 410ではDACに24bit/192kHz対応のAK4381および4355、ADCに同じくAKMの24bit/96kHzエンハンスト・デュアルビットのAK5380というものを搭載していた。一方、FireWire Audiophileでは、24bit/96kHzでAD/DA両機能搭載したAK4628が搭載されている。こうした違いが音質でどう変わってくるのか気になるところだ。

 実際にPCへ繋いでみたところ、ドライバの設定方法など使い勝手に関してはFireWire 410とソックリだ。まずは、FireWireのバスパワーで動作するため、ACアダプタが不要というのは嬉しいところ。もちろんPC側が4ピンの場合は別途電源が必要になるので、ACアダプタが同梱されている。

 このドライバのコントロールパネルが非常によくできており、FireWire410を紹介したときも解説したとおり、ミキサー的な仕様になっている。デフォルトの状態のままで使っていれば普通のオーディオインターフェイスと変わらないが、アプリケーション側で、アナログの1/2chに出した音をS/PDIFに出力したり、AUXに出力し、それを外部のエフェクトへ繋いだりヘッドフォンでモニターしたり……とさまざまな活用が可能なのだ。

 もっともチャンネル数が少ないため、あまり変わったルーティングはできないが、この手のオーディオインターフェイスとしては非常に自由度が高いということは間違いない。初めて使うユーザーには、そのルーティングの流れがちょっとわかりにくいかもしれないが、慣れてくるとかなり便利に利用できる。

ドライバのコントロールパネル。ミキサー設定や、出力設定などでさまざまなルーティングに対応する

無音時のノイズレベル測定結果

 いつものように、FireWire Audiophileのアナログ性能についてテストした。方法は、アナログ出力の2chをアナログ入力へ直結し、いくつかの信号を送って、それを録音した結果を分析するというもの。具体的には、-6dBの1kHzサイン波を送り、その入力が-6dBとなるようにレベル調整を行なった上で、音の出力を止め、入力するノイズレベルを調べるというのが1つめ。2つ目はその-6dBのサイン波をそのまま録音し、どの程度歪んでいるのかを調べる。3つ目がスウィープ信号を送り、その減衰を確認するという実験である。

 順に見ていくと、まずノイズレベルについては最大で-90dB程度となかなか優秀。これはFireWire 410とだいたい同程度。

 次に、1kHzのサイン波をスペクトラムで見た結果は、明らかにFireWire 410の場合と比較して異なる傾向にあるが、結果的にはかなりキレイな波形となっている。高域のノイズが出ているが、FireWire 410に見られた低音のノイズがまったくなくなっている。さらに、スウィープ信号の結果もFireWire 410の結果と大きく変わらないものであり、この3つからはFireWire Audiophileもアナログ性能面ではFireWire 410相当であるという結論が得られた。

 なお、S/PDIFの入力を利用する際、外部に同期させることができるので、サンプリングレートコンバートなどを一切はさまない、完全な形でのデジタルレコーディングが可能だ。

6dBの1kHzのサイン波を出力した結果 スウィープ信号の結果 S/PDIFの入力を外部に同期させることができる



■ MMEドライバの注意点

 ここでちょっと話題が変わるが、一連のテストの中で気づいた問題点がある。

 この検証では、信号の録音にSoundForgeという波形編集ソフトを用いている。これはWindowsのMMEドライバを用いるタイプのものなのだが、24bit対応のオーディオインターフェイスを使っている場合、不具合が生じることがよくある。具体的には、24bitでレコーディングしているつもりが、フォーマットこそ24bitであるものの、精度的に16bitでしかないことがある。

SoundForgeで24bitレコーディングを行なうと、奇妙な波形が検出される

 実は、このFireWire Audiophileも普通に使うとそうした問題が生じる。それを簡単に認識できるのが、ノイズレベルを調査する実験であり、ちょっと変わった波形が記録される。

 これまでもこれに近い結果のものがいくつかあり、ある意味正確な測定結果とはいえなかった。それが24bitではなく16bitでレコーディングされているのが原因であると気づいたのは、約半年前だ。アナログのノイズの測定において、16bitでも24bitでも大きな違いはないので、結果的には大きな問題ではないのだが……。

 なぜ24bitの性能を持ったオーディオインターフェイスが16bitの性能しか出せないのか、以前メーカーに尋ねたところ、MMEドライバとアプリケーションのやりとりで、「そうなることがある」という説明を受けただけで、解決方法については示してもらえなかった。その後、いろいろと調べていくとSoundForgeでは一旦32bitで録音すれば、そうした問題から回避できることがわかった。もちろん、本来32bitの性能は持っていないので、後から24bitへ変換して戻すわけだ。もともと24bitとしてのデータだからディザなどをかける必要もなく機械的にやれば良い。

 では、SoundForge以外の場合どうなのか、いくつかのアプリケーションで試してみた。まず、Cubase SXを使った場合、ASIOドライバを利用するので、そもそもそうした問題は起こらず、本来の結果を出すことができた。またDigiOnSound3でMMEドライバを用いた際には、設定を24bitにしても32bitにしても、その他をどのように設定しても16bitになってしまい、この問題を回避することができなかった。ただし、DigiOnSound3の場合、ASIOドライバに対応しているので、こちらを選択すればまったく問題なく録音することができた。また、GoldWave5を使った際は、あるレベル以下の音をノイズとしてカットするノイズゲートを搭載しているようで、そもそもこの実験自体がうまくできないという結果に終わった。

 これらのことから、いわゆるオーディオインターフェイスを利用する際には基本的にASIOドライバやカーネルストリーミング対応のWDMドライバを用いるというのが正しいようだ。もし、いいオーディオインターフェイスを購入したのだが、今1つ音が気に入らないといった場合でMMEドライバを用いている場合は、この辺を少しチェックしたほうがいいだろう。

□M-AUDIOのホームページ
http://www.m-audio.co.jp/
□製品情報
http://www.m-audio.co.jp/products/FireWireAudiophile/FireWireAP.html
□関連記事
【2004年1月8日】M-AUDIO、IEEE 1394対応のオーディオインターフェイス
-DACはAKM製「AK4628」。ARM946ベースの「DM1000」を搭載
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040108/maudio.htm
【1月16日】ローランド、FireWireオーディオインターフェイス
-24bit/192kHz対応。24bit/96kHzの10ch同時録再可能
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040116/roland.htm
【2003年9月29日】【DAL】M-AUDIO 「FireWire410」を検証する
~ 期待の低価格IEEE 1394オーディオインターフェイス ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030929/dal117.htm
【2003年3月24日】【DAL】mLAN対応オーディオインターフェイス「FireStation」を試す
~ その1:特徴とmLANの設定~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030324/dal93.htm

(2004年1月19日)


= 藤本健 = ライター兼エディター。某大手出版社に勤務しつつ、MIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL」(リットーミュージック)、「MASTER OF REASON」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


00
00  AV Watchホームページ  00
00

AV Watch編集部 av-watch@impress.co.jp

Copyright (c) 2004 Impress Corporation All rights reserved.