■ DVI/無線LAN、キャプチャ連携の全部入りプレーヤー PC上のDivXやMPEGなどのメディアファイルをテレビ出力できる「ネットワークメディアプレーヤー」は、2003年のバーテックス リンク「MediaWiz」を皮切りに、多数のPC周辺機器メーカーが参入。この1年ほどで市場を拡大してきている。 さらに2004年7月以降、MediaWizの新モデルMediaWiz HDを皮切りに、アイ・オーのネットワークDVDプレーヤー「AVeL LinkPlayer」、バッファローの「LinkTheater」などがWMV対応の新製品を発表してきた。 デコーダチップの供給元であるSigma DesignsがWMV HD対応のデコーダチップ「EM8620L」の供給を開始したということで各社一斉にモデルチェンジを図っている、というのが主な要因ではあるが、各社製品とも待望のWMVサポートとなった。メインのチップが同じなので、WMV HD対応、USB 2.0対応などアップデートポイントは似通っている。しかし、キャプチャカードやNAS製品など自社製品の連携機能の付加などにより、各社付加価値を高める戦略をとっている。 バッファローの新LinkTheaterについては既に小寺氏がレビューを行なっているが、対するアイ・オー・データの新AVeL LinkPlayerは、DVI端子の搭載や無線LANを標準で内蔵(LinkTheaterはオプション)、NASとの連携機能(後日アップデート対応)など機能が豊富。さらに、アイ・オー製のキャプチャ製品との連携機能も新搭載し、製品ラインナップ群による差別化を図っている。
■ ボディデザインも一新。ハーフミラーを採用 ボディデザインは一新され、ハーフミラータイプのフロントパネルを採用。従来モデルより高級感のあるデザインに変更された。外形寸法は430×291×55mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約3.5kg。 従来モデルで装備していた、PCカードスロットは省かれているが、前面にUSB 2.0端子を装備し、USB HDDなどのストレージクラス対応のデバイスからのデータ読み込みが可能となっている。 さらに、IEEE 802.11b/g対応の無線LANを内蔵し、背面に可動式のアンテナを備えている。また、100BASE-TX Ethernetを装備するほか、映像出力はDVI-I(HDCP非対応)、D4、S2映像、コンポジットを各1系統搭載。音声出力は光デジタル、同軸デジタル、アナログ音声を各1系統装備する。
■ 画質はまずます。DVIの存在意義は微妙?
LinkPlayerはDVD再生モードと、PC上のファイルを再生するネットワークモードが用意されているが、まずは普通のDVDプレーヤーとして利用してみた。29型CRTテレビにD端子出力経由で接続し、DVDビデオを再生。デコーダチップが一新されたためか、ノイズのしっかり抑えられており、発色も従来モデルより良くなったように感じた。 720p対応の液晶プロジェクタ「TH-AE500」に出力したところ、480pでは発色は良いのだが、ケーブルやプロジェクタとの相性か、横縞が出てしまう。480iでは特に問題なく出力できた。なお、アイ・オー・データによれば、試作機のファームでは480p出力の不具合が出ていたが、製品版では改善しているという。 また、スケーラー機能も搭載しており480i/480pのほか、720p/1080iでの出力も可能となっている。プロジェクタのリアル解像度である720pに設定して出力してみたが、解像感の向上はさほどなく、むしろややフォーカスが甘めになる。問題が発生しなければ480pがベストだろう。
マランツのユニバーサルプレーヤー「DV-8400」の480p出力と比較してみたところ、精細感、コントラスト表現などはさすがにDV-8400の方が優秀。特に「ファインディング・ニモ」の海中の照り返しなどの、光源変化の描写では顕著な差が感じられた。とはいえ、25型のCRTへの480i出力では、さほど大きな差という感じでもなかった。国産のDVD専用プレーヤーには劣るが、よほど大画面で利用しない限り、大きな不満なく利用できるだろう。 なお、バッファローのLinkTheaterとの大きな相違点として無線LANの標準搭載と、DVI端子の有無が挙げられる。しかしLinkPlayerのDVI出力はHDCPをサポートしておらず、そのためDVDビデオの出力は行なえない。実際に市販DVDの再生を試みたが「CAN NOT PLAY IN DVI」との表示があらわれて、再生できなかった。なお、CSSによる著作権保護が施されていないDVDビデオでも再生できない。 だからといって、DVI端子の意味がないかというとそうでもない。というのも、新たにサポートしたWMV HDをリアル解像度で非常に高精細に出力できるというメリットもあるからだ。WMV HDについては別の制限もあったりするが、そのあたりは追って説明する。 -VR形式のディスクはサポートしていない。このあたりは国産AV機器メーカー製品でないと対応機種は少ない(AVメーカーでもデノンなどはサポートしていない)ので仕方ないのかもしれない。しかし、DVDレコーダとの連携を考えると、やはりサポートして欲しいところだ。 映像出力端子の複数同時出力が行なえないのもやや残念なところ。また、リモコンの出力切り替え用のボタンが、サーバー選択画面へ移行する[ホーム]ボタンの上にあるため、間違えて押すと元の出力まで戻すために何度もボタンを押す羽目になる、というのも気になるところ。 DVDプレーヤーとしての操作性はごく普通。DVDモードからネットワークモードに切り替えた際も、再生ポイントを記憶するブックマーク機能を備えているため、DVDモードに戻った後もその場所から視聴できる。
■ WMV HD対応もコンテンツが無いが、WMV再生は魅力
それではメインともいえる、ネットワークプレーヤー機能を検証してみる。付属のソフト「AVeL LinkServer」をパソコンにインストールし、メディアファイルのディレクトリを指定するだけで、LinkPlayerから各ディレクトリにアクセスでき、メディアファイルをテレビなどに出力可能。デフォルト設定は、マイドキュメント以下の[マイビデオ]、[マイミュージック]、「マイピクチャ」に割り当てられている。 早速、DVDプレーヤーからネットワーク経由でパソコンにアクセス。まずは本体の設定だが、ともに、DHCP対応なので、ルータなどDHCPサーバーがあればネットワーク系の設定は全く必要なく、サーバーソフトを立ち上げているだけで、サーバーを見つけてくれる。 また、無線LANの場合も、ネットワーク上のESS-IDを自動検索し、WEPキー(128bit/64bit)を入力するだけで設定可能だ。
基本操作はリモコンで行なう。上下/左右カーソルと決定ボタン、戻るボタンなどで再生メディアの選択再生を行なうだけで、サーバーの中のメディアファイルの再生が可能だ。リモコンは従来モデルとほぼ同じ10キーを上部に配したボタンレイアウト。 再生/停止などの基本操作時にはなかなか使いやすいが、早送り/戻しボタンなどが詰まっておりやや使いにくい。また、先述のように[サーバー]ボタンと出力切り替えボタンを押し間違えやすいのが気になった。リモコンの指向性も強めなので、きちんとLinkPlayerに向けて操作する必要がある。 対応映像フォーマットは、WMV9に加え、MPEG-2/MPEG-1/DivX/XviD。WMV9の解像度は720p(D4)までサポートするとしている。発表時には、DivX対応について「DivX Networksの認証を待っている」としていたが、認証を取得して正式対応となった。 対応ビットレートはMPEG-2が最高12Mbps、DivX/XviDが最高1.5Mbps、WMV9が最高8Mbps。動画ファイルの制限として、DivX/XviDなどのAVI系が2GBまで、MPEGやWMVもPC側がFAT32フォーマットの場合は4GBの制限がかかるが、NTFSならば問題はない。 1.5Mbpsから8MbpsまでのMPEG-2や、WMV9、DivXなどのファイルを再生してみたが、特に問題なく再生できた。DivXの場合、早送り/戻しでボタンを押してからややもたつくが、MPEGやWMVでは直ぐにスタートするなど、若干の違いはあるが、LinkServer上で認識してしまえば、ファイルフォーマットの違いを意識することはほとんど無い。なお、AVeL LinkServer上ではWMV7/8の再生は行なえない。 無線LANについては、NEC「PA-WR7600H」を利用して、IEEE 802.11g環境でテストしたが、有線LANとの違いを特に意識することなく利用できた。 LinkPlayerのセールスポイントの一つといえるWMV HD対応については、Microsoftの公開しているサンプルなどを再生。サンプル映像は非常に精細で、29型のCRTテレビで視聴してみても、解像度の高さは直ぐに実感できる。また、TH-AE500から80インチスクリーンにDVI 720pで出力してみると、DVDビデオとは次元の違う精細さが確認できた。HD映像の魅力を気軽に感じるには非常に手軽だと感じた。 しかし、小寺氏もLinkTheaterのレビューで指摘しているように、基本的にこれらのサンプルのオーディオコーデックはWindows Media Audio9 Professionalとなっている。そのため、LinkPlayerではデコードできず、通常のテレビやAVアンプなどにデジタル出力しても、音声を聞くことができないという状態。現状では他のWMV HDコンテンツもほとんど用意されていないので、今のところ“WMV HDがいかにに綺麗か確認できる”という以上の意味はあまり無いとも言えそうだ。 とはいえ、従来ネイティブでデコードできなかったWMVのファイルが再生できるようになったというのは大いに魅力的。特に録画番組をWMV形式で保存していたような人にとっては、待望の対応製品といえるだろう。
■ 秀逸なmAgicTV連携機能
また、同社製テレビキャプチャカード「GV-MVP/RZ」、「GV-MVP/RX」用録画ソフト「mAgicTV 4.2」と連動して、LinkPlayerからmAgicTV 4.2のEPGを利用して録画予約できる「AVeL Link Advanced Server 1.5」も用意されている。 Advanced Serverは従来のLinkPlayerでXVDやWMVなどのサポート外ファイルをPC上でMPEGにリアルタイムエンコードして利用するために用意されていた。そのAdvanced Serverが1.5にバージョンアップしたことで、テレビキャプチャカード「GV-MVP/RZ」、「GV-MVP/RX」用の録画ソフト「mAgicTV 4.2」との連携が可能になり、EPG録画予約がLinkPlayer上から行なえるようになった。 早速「GV-MVP/RZ」をPCに接続し、Advanced Server 1.5(以下AS1.5)をインストールした。LinkPlayerがAS1.5を認識すると、LinkPlayerのロクイン先に「Advanced Server on [PC名]」、「I-O DATA mAgicTV Playlist on [PC名]」、「I-O DATA mAgicTV Reservation on [PC名]」が現れる。LinkServerと同じように使うときには、Advanced Serverを選択するだけでよい。
録画予約は「I-O DATA mAgicTV Reservation」から行なう。ログインして[番組表]を選択すると、PCの録画ソフト「mAgicTV 4.2」で取得した番組表を確認できる。番組表は1チャンネル/約4時間の表示で、番組表上の日付や時刻、チャンネルにカーソルをあわせて前後することで、予約番組の選択が行なえる。 PC上のmAgicTV 4.2や民生用DVDレコーダのEPGと比較すると一覧性は低い。しかし、リモコンの10キーがきちんとmAgicTV 4.2のチャンネル設定に割り当てられていて、リモコンの[1]、[2]と連続して入力すると12チャンネルの番組表に移動できるなど、細かい部分まで工夫されているので使いやすい。 番組を選択して決定を押すと録画予約が行なえる。録画予約画面で、[詳細設定]を選ぶと録画画質の変更や、日時/曜日指定の帯番組録画設定が行なえるなどかなり柔軟な予約設定が行なえる。
録画した番組は「I-O DATA mAgicTV Playlist」にロクインすると視聴できる。「mAgicTV 4.2」のEPGがADAMS-EPGということもあり、番組情報もきちんと保存されているのもうれしいところだ。 なお、mAgicTV連携機能で録画したファイルは独自に管理されているので、Playlist以外から見るのは難しい。例えば、LinkServerでは一応[video@mAgicTV]フォルダからmAgicTVの録画ファイルにアクセスできるが、ファイル名が[0000]なっており、番組名をLinkServer上から確認できないなど、あまり使い勝手は良くない。素直にAS1.5のPlayListを利用するべきだろう。
悩ましいのはLinkServerとAS1.5の使い分け。AS1.5のMPEGへのコンバート機能は、1~8Mbpsまで設定できるが、これをONにしてしまうとWMVファイル再生時にMPEGに変換されてしまうなど、AS1.5をメインで利用しようとするといろいろ問題もある。LinkServerで認識できるm2pファイルがAS1.5では認識できないのも気になるところだ。 また、AS1.5ではビデオ/ミュージック/フォトの各ジャンル用のフォルダを1つしか設定できないが、LinkServerでは複数のフォルダ設定が可能など、LinkServerのほうが上回っている部分もある。
LinkServerとAS1.5の共存が可能なため、WMVはLinkServerで、mAgicTV連携や、XVDやWMV7/8などLinkPlayerで直接再生できないファイル用にAS1.5を使い分ければいいのだが、できれば1つのソフトに統合してほしいところ。 なお、新LinkPlayerではUSB 2.0端子も装備しており、USB HDDなどからのコンテンツ読み込みも可能。バンドルされるファイルコンバート/管理ソフト「MediaSink」では、WMVやXVDを簡単にVCD/MPEG形式に変換できるほか、MPEGからWMVへの変換にも対応する。
■ ポイントは無線LANとキャプチャカード連携機能 WMV HDについては、コンテンツ/ハードウェアともにその魅力をフルに生かすには時期尚早といえそうだが、WMV対応ということで、ライブラリをWMVで構築してきたユーザーにとっては待望の製品といえるだろう。 既に発売されているLinkTheaterとの差別化という意味では、2,000~3,000円程度のプラスで無線LANを標準サポートしているという点と、キャプチャ製品との連携がポイントとなるだろう。 mAgicTV連携機能は良く考えられており、「GV-MVP/RZ」、「GV-MVP/RX」のユーザーであればLinkPlayerを選択するべきだろう。“ネットワークプレーヤーはどれ買っても大体同じ”という時代から、他製品との連携など、トータルのソリューションで差別化を図る時代になったといえそうだ。 □アイ・オー・データ機器のホームページ (2004年9月24日) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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