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第161回:3部作の究極版DVDもこれが最後! |
怒涛のように発売されつづけるDVDタイトル。本当に購入価値のあるDVDはどれなのか? 「週刊 買っとけDVD!!」では、編集スタッフ各自が実際に購入したDVDタイトルを、思い入れたっぷりに紹介します。ご購入の参考にされるも良し、無駄遣いの反面教師とするも良し。「DVD発売日一覧」とともに、皆様のAVライフの一助となれば幸いです。 |
ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還 スペシャル・エクステンデッド・エディション |
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価格:10,290円 発売日:2004年2月2日 品番:PCBH-50095 仕様:片面2層4枚 収録時間:本編約250分 特典約7時間 画面サイズ:シネマスコープサイズ(スクイーズ) 音声:1.英語(ドルビーデジタルEX) 2.英語(DTS) 3.日本語(ドルビーデジタルEX) 字幕:日本語/英語/吹替用 発売元:日本ヘラルド映画 販売元:ポニーキャニオン |
そして、劇場版でカットされた50分の未公開シーンを追加したDVD「王の帰還 スペシャル・エクステンデッド・エディション」(以下究極版)が2月2日に発売された。劇場版を含め、シリーズを締めくくる、まさにラストのラストと言うべき商品だ。
特典として、数分の未公開シーンや、劇場公開版とは異なるエンディングなどを収録したDVDはいくらでも発売されている。しかし、未公開シーン50分を加えた計250分というボリュームは、作品として、もはや劇場公開版とは別物と言って良いだろう。
現に「シーンが削られた映画館に行くなら、究極版のDVDを待つ」という人も多かったと聞く。DVDというメディアは、劇場のクオリティや興奮をできるだけ損なわずに、映画を家庭に持ち込むことを目指して作られたが、「劇場よりもDVDの発売を楽しみにする」という逆転現象を起こした、最初の作品と言えるかもしれない。
ちなみに、究極版はエンド・クレジットを除く全76個のシーンで構成されているが、劇場公開版のシーン数は61個。新たに15個のシーンが追加されたことになる。また、劇場公開版のシーンもそのまま収録しているのではなく、23個のシーンに関しては、新たなカットや要素が追加され、再編集されている。DVD化でここまで手が加えられる作品はほかにはないだろう。
販売店で聞いたところ、10,290円と高価ながら究極版の売れ行きは前作の究極版と同程度で、好調なセールスだという。なお、究極版3巻を1つにまとめた「スペシャル・エクステンデッド・エディション トリロジーBOX セット」も、2月16日に発売される。価格は究極版3巻分とキッチリ同額の30,870円なので、これまで究極版を買い続けた人は一安心だ。
究極版はそのボリュームもさることながら、本編を2枚にわけたことでビットレートに余裕があり、画質・音質のクオリティが高いことも話題となった。3巻も期待を裏切らない出来になっていると信じて、書籍を連想させるデザインの、ズッシリと重みのあるBOXを開封した。
■ 真の主役は太っちょサム
登場人物が多く、物語のスケールも大河ドラマ並みに大きいので、リリースの合間が空いてしまうと「どんな話だっけ?」と、忘れてしまうのが困りモノ。鑑賞前に前2作を引っ張り出して、早送りしながらザッとおさらいしておくのも良いだろう。
ホビット族の少年・フロドが持つ指輪には、世界を支配できるほどの邪悪で強大な力が宿っていた。そして、その指輪を作った冥王サウロンに再びその指輪が戻れば、世界は闇の支配下に置かれてしまうという。指輪は「滅びの山」の溶岩の中に投げ込まなければ破壊できない。フロドは魔法使いのガンダルフに導かれ、ホビット族の友人サム、メリー、ピピンらと旅に出た。
途中、剣の使い手で素浪人のアラゴルン、ドワーフ族のギムリ、エルフ族のレゴラスらが仲間となり、幾多の困難を乗り越える。邪悪な魔法使いサルマンを打ち倒し、ローハンという国では、たった300人の軍隊で1万を超える怪物・オークの軍勢にも勝利する。だが、仲間は冒険の中で離ればなれになり、フロドはサムと共に滅びの山を目指し、他の仲間達は人間の国を悪の軍隊から守るために奔走していた。
第2部では様々な場所でストーリーが同時進行し、混乱することも多かった。しかし、第3部では人間にとっての最後の砦となる国・ゴンドールのミナス・ティリスを守りきれるか? 指輪を捨てるために敵の本拠地を進むフロドとサムはそれに間に合うのか? という点に物語が収束していくため、非常にわかりやすい。広げられた風呂敷が一気にたたまれる展開に、一種の快感を覚えるだろう。
3部作をまとめて1本の映画と考えるならば、本作はクライマックスにあたる。それゆえ、全編を通して大規模な戦闘シーンが多い。いわゆる「攻城戦」がメインとなり、巨大な投石器で破壊される城、吹き飛ぶ兵士、砕かれる城門など、迫力は申し分ない。もはや見慣れた感すらあるCGを駆使した大合戦シーンも、アリのような群集から個人へ、個人から群集へと、自在に移り変わるカメラワークが秀逸だ。今回は高速で移動する騎馬兵が多く登場するため、カメラの移動が上から下の縦軸だけでなく、横軸にも移動する。オークを薙ぎ倒しながら戦場を疾走する馬達の力強さは必見だ。
そして戦闘シーンで最もインパクトが強いのは「オリファント」という巨大な象。象と言っても普通の象ではなく、マンモスのような立派なキバを持ち、大きさは普通の像の10倍はあろうかという化け物。人間をキバでなぎ倒し、足で踏み潰し、戦場を行進する様は迫力満点。ファンタジー界における戦車といった趣で、戦闘描写に新たな風を吹き込んでいる。
また、人間ドラマも忘れてはならない。絶望的な状況へと追い込まれていくにつれ、作品の中ではお笑い担当だったホビット族のメリーとピピンまでも、仲間を救うために剣を取り、壮絶な戦場へと身を投じていく。人間やオークより小柄で非力な彼らがそれでも戦う姿は悲痛だが、とても感動的なシーンだ。彼らが戦うことを決意するまでの描写も、究極版ではより丁寧に描かれていく。
そして、指輪の魔力と戦うフロドも忘れてはならない。指輪にまつわるシークエンスでは、フロドの従者として彼を常にサポートするサムが印象的。彼はもともと「食事担当の気の良い太っちょ」という位置付けのキャラクターなのだが、第3部では主人公顔負けの活躍を見せる。指輪の魔力に魅入られ、正気を失っていくフロドを懸命にサポートし、彼のために勇気を振り絞って敵と戦う姿に胸を打たれるだろう。フロドを演じたイライジャ・ウッドも「サムこそ、真のヒーローだ」と語っている。
全般的にボリューム満点。3部作のラストにふさわしい出来に満足するだろう。スケールが壮大ながら、細かい描写をおろそかにせず、細部を詰めることでディティール全体の底上げをしていく姿勢は、話題だけでアカデミー賞を総なめにしたのではないことを感じさせてくれた。
■ 豊富すぎる特典。映像・音声は安心のクオリティ
DVD Bit Rate Viewerで見たビットレートは、1枚目が6.79Mbps、2枚目が6.63Mbpsとほぼ同じ。映像は第1部の究極版からも進化しており、階調が豊かで色乗りが良く、奥行きのある絵が楽しめる。フロドが洞窟に迷い込むシーンでも暗部の情報量は多い。
合戦を引きで撮影したシーンが多く、動きもかなり激しいのでMPEG-2にとっては辛い映像ばかりだが、ブロックノイズやモスキートノイズは見当たらず、安心して映画に没入できる。発色は鮮やかだが、色調はしっとりとして、独特の水々しさがある。さすがに上空を高速で移動するカメラから、激しく動く兵士の群れを見下ろしたシーンではディティールが甘くなるが、アラを探すように見ない限り気にはならないだろう。
音声のビットレートは、英語のドルビーデジタルEXが448kbps、DTSが768kbps、日本語のドルビーデジタルEXが448kbpsで収録している。音響面はシリーズ共通の特徴だが、非常に上品だと感じた。迫力がないというわけではなく、不自然な誇張が少ない。
主にDTSで鑑賞したが、ドルビーデジタルEXでも解像度が高く、投石機で投げられた巨大な岩が地面に落ちる鈍い音と、それによって巻き上げられた砂のズシャ、パラパラという細かい音がしっかり共存している。サブウーファをボンボン言わせるだけの下品な低域はないが、超低域はたっぷり含まれているのでサブウーファの再生能力とレスポンスが試される。鳴らし甲斐のあるソフトだ。
音場で特に印象に残ったのはペレンノール野の合戦シーンと、フロドが洞窟に迷い込むシーン。前者は広大すぎる大地を、後者は反響の多い洞窟内の広さを、音で描いてみせる。スピーカーセッティング時のテストディスクとして使っても面白そうだ。
【本編ディスク 1枚目】 |
【本編ディスク 2枚目】 |
DVD Bit Rate Viewerでみたの平均ビットレート |
また、登場するキャラクターや国、種族に関する歴史や、背後関係の説明も収録されている。小説をすべて読んでいる人にとっては不要かもしれないが、映画から同作品に触れた人には新鮮な情報が多いだろう。意味深に使われた映画の中の台詞と原作を関連付けて解説してくれるので、膝を打つこともしばし。「映画の後は小説を読んでみよう」という気にさせてくれるコンテンツだ。
また、原作小説を読んでいる人にとっては「小説から脚本へ」というコンテンツが興味深いだろう。映画化の際に最も大切なのは、原作のどの要素を取り入れ、どれを削るかということ。今回の3部作では、原作の事件を、それが発生した時間軸に沿って並べなおす作業が行なわれた。つまり、原作の小説の順番とは異なるが、実際に起こっていた事件の時間的流れは映画の方が正しいという状態になっている。「どうして映画の3作目に、小説の第2部の話が入っているんだろう?」というような疑問が晴れるはずだ。
2枚目のディスクで必見なのはBGMやサウンドデザインなど、音響に関するコンテンツ。まず、特典ディスクにもかかわらず、これらのコンテンツはドルビーデジタル5.1chで収録している。細かい点だが、特典にも手を抜かない姿勢に好感が持てる。
「中つ国を奏でる」は、音楽を担当したハワード・ショアの仕事ぶりを紹介している。上映時間が長いため、音楽の量も膨大になのだが、イメージとして一貫性を貫く必要がある。そこで、あるシーンで一部使ったメロディを、次の作品で全部聞かせるという手法がとられたという。実際、第3部は、第1部で小出しにされた曲のフルバージが多く使われているとのこと。どうりで「聴きなれたフレーズだけど聴いたことのない曲」が多かったわけだ。
また、驚くべきは「ピピンの歌」に関する説明だ。劇中、間の諸行無常をピピンが歌にして独唱するシーンがある。あまりの歌のうまさにビックリして「俳優さんの演技にあとから似た声の歌手が歌を重ねているのだろう」と思っていた。しかし、ピピン役のビリー・ボイドが自分で歌っており、さらに驚くことに、作曲班が忙しいという理由で曲もビリー自身が2日で書き上げたとのこと。本人は「すべてをさらけだしたみたいで、歌っている時は恥ずかしかったよ」と笑うが、その多才さに舌をまいてしまった。
■ 小説から映画、そして神話へ
特典映像の中で「小説というよりも、私は神話を作りたかった」というトールキンの言葉が紹介されている。DVDの中で語られる神話の定義は、「読んだことがなくても、誰もが知っている物語」、そして「その後の絵画や音楽などの芸術に影響を与えるもの」だという。
特典ディスクにはワールドプレミアでの熱狂ぶりや、アカデミー賞を総なめにした様子なども収録されている。トールキンの手によって生み出された物語が、ピーター・ジャクソン監督の映像化により、さらに多くの人に知られたことは間違いない。自分とスタッフ達が獲得した計10数個のオスカー像を並べ、感慨深げに見つめる監督の姿が印象的だった。
監督はインタビューの中で「省略した部分については怒られるかもしれない」と笑いながら、「もしトールキンが生きていたら、彼に喜んでもらえる作品を作りたかった」と語っている。「なぜなら、彼が作り出した物語が、神話として立派に独り立ちしていると見せたかったからだ」と。
指輪物語の映像化は、トールキンの創った神話に影響された芸術活動と言えなくもない。指輪物語が小説からロール・プレイング・ゲーム、映画などに姿を変えて語り継がれることで、彼の夢はかなったのかもしれない。決して低価格とは言えない究極版だが、DVDラックではなく、本棚にしまいたいような……特別なコレクションになることだろう。
●このDVDについて |
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□ポニーキャニオンのホームページ
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□製品情報
http://www.ponycanyon.co.jp/wtne/dvd/050202road.html
□映画「ロード・オブ・ザ・リング」の公式サイト
http://www.lotr.jp/
□関連記事
【2004年10月20日】「ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還」究極版DVDの発売決定
-3部作の究極版すべてを収めた3万円12枚組みのBOXも
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20041020/pony.htm
【2004年4月20日】DVD「ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還」を8月4日発売
-シリーズ3作の劇場公開版をセットにしたトリロジーBOXも
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040420/pony.htm
【2003年12月9日】【DVD】「ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔」
スペシャル・エクステンデッド・エディション
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20031209/buyd111.htm
【2003年6月20日】DVD「ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔」を10月1日発売
-約40分の未公開シーンを追加した4枚組みの特別版は12月発売
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030620/pony.htm
【2002年12月10日】【DVD】通常版とは中身も外見も大違い!!
「ロード・オブ・ザ・リング スペシャル・エクステンデッド・エディション」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20021210/buydvd63.htm
【2002年6月20日】ポニーキャニオン、DVD「ロード・オブ・ザ・リング」を10月2日に発売
―約30分の未公開映像を追加した特別版も
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020620/pony.htm
(2005年2月8日)
[AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]
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