■ いよいよ巻き返し体勢? デジタル放送エリア拡張にしても、次世代DVDにしても、この冬商戦はいろんなことが過渡期まっただ中で、DVDレコーダの機能をどこに位置付けていくかは、なかなか難しいところ。ただしハイエンドモデルの条件みたいなものはあって、やはりデジタル放送とアナログ放送の同時録画は欲しいところだし、搭載メディアはDVDでCPRM対応、DLメディアにも対応、端子はHDMI搭載、ぐらいのところがトレンドだろう。ソニーの「スゴ録」がデジタル放送に対応したのは意外に遅く、今年の6月発売のフラッグシップ「RDZ-D5」からである。この時はデジ・アナダブル録画には対応しておらず、競合他社のフラッグシップ対決では一歩出遅れた感があった。 そしてこの冬商戦用フラッグシップ「RDZ-D90」では、デジ・アナ同時録画を実現し、さらに懐かし(?)の自動学習録画機能が復活した。この機能は以前CoCoonシリーズで搭載していたものの、「スゴ録」では搭載を見送られてきた機能だ。かつては周回遅れと言われたソニー製レコーダだが、価格攻勢で盛り返し、かつての機能を呼び戻すまでの余裕が出てきたということなのかもしれない。 この冬発売のハイビジョンチューナ搭載モデルは、今回の「RDZ-D90」を先頭に、HDD容量を少なくした「RDZ-D70」、HDDはD70と同サイズながら入出力端子を大幅に削減した「RDZ-D50」の3タイプとなっている。全モデルで自動学習録画は搭載しているが、デジ・アナ同時録画に対応しているのは上位2モデルだけだ。 ではさっそく年末の注目モデル、「RDZ-D90」(以下D90)を試してみよう。
■ シンプルで引き締まった外観
まずデザインだが、前モデルのRDZ-D5がベースになっていることは一目でわかる。ただし前作がパールホワイトをベースにしたのっぺりしたデザインであったのに対し、D90は下部に濃いグレーのスリガラス状のパネルでアクセントを付けて、旧来のスゴ録に見られた2トーンカラーのイメージに若干戻っている。また高さも約1cmほど低くなっており、全体的に引き締まった印象を受ける。 正面にあったHDDとDVDの切り替えボタンを廃したのは、昨今のDVDレコーダにしては思い切ったデザインだ。確かに前モデルから搭載しているGUI、クロスメディアバー(XMB)を使う限り、HDDとDVDを切り替える必要はない。以前からレコーダで煩わしかった部分がすっきりした感じだ。
中央部のDVDドライブは、DVD±R/RW対応で、DLメディアはDVD+Rのみ対応。デジタル放送はCPRM対応のDVD-R/RWにムーブできる。内蔵HDDは400GBと、昨今のフラッグシップモデルとしては若干もの足りないか。 下部のパネルを開けると、相変わらず充実したボタン類が現われる。本体でも不自由なく操作できる作りは、スゴ録ならではの特徴だ。右側にはB-CASカードスロット、HDVにも対応したi.LINK端子、USB端子、メモリースティックスロットがある。
前モデルのD5もそうであったが、HDVカメラのキャプチャと編集に対応している点は、スゴ録の特徴と言っていいだろう。ただ編集後の作品を、HDVテープに書き戻すことはできない。DVDには保存できるが、SD解像度になってしまうため、本格的な対応はBlu-rayが本格的に立ち上がってきてからになるだろう。なおこのi.LINK端子は、デジタルチューナやD-VHSなどMPEG-2 TSの伝送には対応しない。 天板から側面にかけては樹脂製のパネルで覆われている。前モデルでは横に吸気口があったのだが、今回のモデルではなくなっている。そのかわり、前方の底部に吸気口が設けられている。 背面に回ってみよう。最近のソニー製品で目立つデュアルファンが目を引く。各ファンはさほど全力で回るわけではないが、動作音は低く唸るような音が若干気になる。もしかしたら内部に高速で回るファンがあるのかもしれない。
RF入力はアナログ放送、地上デジタル、BS/110度CSデジタルの3系統。外部入力は前面に1、背面に2。出力はアナログAV2系統に、コンポーネント1、D4端子1、HDMI端子1。デジタル音声出力は光と同軸を1系統ずつ備える。前モデルでは、D端子やコンポーネント出力用に別途アナログ音声出力があったのだが、今回は省略されている。またデジタル放送対応ということで、モデムとLAN端子がある。 リモコンも見ておこう。ボタン類やジョイスティック回りはほぼ前作と同様の作りだが、今回は上部にDVD、VTR、AMP、TVといった切り替えボタンがあり、マルチリモコン的要素を取り入れている。そのためか、音量やチャンネルのアップダウンボタンが新しく付けられており、その分だけ全体が若干縦に長くなっている。
フタを開けると、DVD操作系のボタンのほか、録画ボタンなどもここにある。またXMBでは操作できないためうっかり忘れそうだが、チャプタの書き込みと消去も、ここにしまわれたボタンで操作できる。
■ 進化した「おまかせ」
デジタルチューナ搭載のスゴ録の特徴はなんといっても、独自のXMBによる操作性だ。リモコンの「ホーム」ボタンを押すと、PSXおよび前作のD5でお馴染みとなった画面が現われる。右から外部入力、CS、BS、地デジ、地アナと並ぶ。 まずは番組表から見ていこう。地上アナログ放送の番組表はGガイドで、時間別や放送局別、ジャンル別に表示切り替えができる。デジタル放送は4局ぶんが同時に表示される表組みとなるが、BSデジタルでは3局ぶんで1番組表示となるため、全体の見通しは良くない。またデジタル放送では、放送局別やジャンル別の表示もできないなど、このあたりの使い勝手は前回から変わっていない。
録画予約に関しては、放送番組の時間変更に対応する「番組追跡録画」と「スポーツ延長」機能が使える。ただ昨今は日本シリーズも終わり、時間延長の可能性があるスポーツ中継がなかったため、動作テストはできなかった。また放送局側も、今年から野球中継を延長しないなど、あまり生中継に対して積極的ではなくなっている。 録画モードは従来のスゴ録と同様、デジタル放送にはDRモードが使えるほか、「XP+」と「XP」は切り替え式、以下「XSP」から「SLP」まで、全部で9段階の録画モードがある。
期待の「おまかせ・まる録」は、PSXでも採用されている「x-おまかせ・まる録」となった。何が「x」なのかというと、まず設定が非常に簡単になっている。以前はジャンルを設定したあと、キーワードも登録できたが、今回は「おまかせ条件」というものがあって、そこにジャンルもしくはサブジャンルを指定するだけでいい。このおまかせの条件設定は、全部で10個まで登録できる。 キーワードで録画したい場合は、おまかせ条件で「ユーザー設定」を選択する。登録できるキーワードは最大4つで、そのほか除外キーワードが3つ登録できる。
またたくさんの番組を録画した中から、ユーザーが気に入るであろう類似番組を自動録画するのが、「デジタルおすすめ」および「アナログおすすめ」だ。以前のCoCoonでは、気に入った番組にはボタンを押してサジェスチョンする必要があったのだが、今回は録画の画質を設定できる程度で、大した設定はない。録画番組を視聴したり、DVDに焼いたりした作業を通じて、好みを学習するようだ。学習によってどのような番組を録画するかは、「候補一覧」から確認することができる。
今回はやけに「キッズ」が目立っているが、これは筆者が前週に放送された「スパイキッズ3」を見たからだと思われる。別に子供番組を集めたいわけではないのだが、まあしばらく使っていくうちに、傾向が是正されてくるということだろう。 前回もそうだったが、おまかせ機能はデジタル放送全般とアナログ放送といった具合に二分されている。1つのジャンル設定でデジタルもアナログもというわけにいかない不便さというかオトナの事情は、相変わらず残っている。
■ レスポンスが向上したHD番組操作 次に再生機能を見ていこう。今回のモデルでは、おまかせでかなりの量の番組が録画されるため、見せ方にも工夫が見られる。以前のスゴ録では、録画番組すべてが縦にデレーっと並んでいたので、見たい番組を探すだけで結構手間がかかるのが問題であった。だが今回は、「おまかせ・まる録」の設定別、ジャンル別、放送波別といったフォルダ表示が可能になった。見せ方はリモコンのオプションボタンで変更できるほか、リモコンの黄色ボタンでローテーションする。番組が探しやすいだけでなく、おまかせでどの番組が録画されたのか、動作が把握できるのは安心できる。
録画後の番組再生や追っかけ再生は、ダブル録画中でも可能だ。HD番組の音声付き1.5倍再生も非常に滑らかで、違和感がない。ただしデジタル放送をDRモード以外で録画しているときは、DRで録画済みの番組は再生できないという制限がある。回路的にMPEGエンコーダ/デコーダが足りないようだ。 特徴的なシーンを探して自動的にチャプタを付ける「おまかせチャプタ」も、前モデルにはない機能だ。従来のように音声モードの変わり目だけでなく、映像がブラックアウトしたところなど、特徴的なポイントにチャプタを付けてくれる。 だがこの機能は、XMBを搭載する以前のスゴ録「RDR-HX90」で搭載されていた、「特徴点検出機能」と同じようなものだ。この時はチャプタ一覧をサムネイルで表示し、一気に削除できるといった機能があったが、XMB上でも同じような機能を搭載した。サムネイルを選択すると、その背景でいくつかの代表シーンが表示され、だいたいの内容がわかる。チェックを付けたチャプタ部分は、一括で削除できる。 続いて編集機能も見ておこう。プレイリストやA-B間消去など、できることは前モデルと違いはない。ただ以前はHD放送をDR記録した番組のレスポンスが悪く、編集作業は非常にいらいらさせられたが、今回は見違えるほどレスポンスが良くなっている。ほぼSD番組の編集時と遜色ない出来と言えるだろう。
再生や停止、コマ送りといった編集動作はすべてジョイスティックで行なうことができるなど、操作性の良さはしっかり継承されている。しかし相変わらずこの手の編集作業は、1点作業するたびにまたタイトルの選び直しからやり直しさせられる。1つのタイトルに対して、複数箇所の編集を行なう場合の連続性のなさは、相変わらず改善されていない。 ダビング機能を見てみよう。デジタル放送対応以前のスゴ録では、MPEG-2での録画時に1passのデータを取っておき、DVD書き込み時に2pass目のエンコードを行なって高画質圧縮する「ダイナミックVBRダビング」という機能を搭載していたが、今回はそれを進化させ、HD番組をDR録画しているときに1passのデータを取るという「ダイナミックVBRダビング PRO」になった。
これまでスゴ録では、DVDの再生を1080iにアップコンして出力するなど、DVDの高画質化に努力してきたが、この機能で、HD放送からの綺麗なDVD作成という点でも一歩リードした。
ただ番組の録画中は、編集もDVDのダビング機能も使えない。今回は「x-おまかせ・まる録」による自動録画も追加され、さらにダブル録画可能ということで、しょっちゅういろんなものを録画していることになるわけだが、その状況下でこの制限はキビシイ。 またDVD作成中はタイトルダビング画面が出っぱなしになって、予約録画も行なえないほか、普通にテレビを見ることすらできなくなる。さほど編集したりDVDに保存する機会は多くない、という判断だろうか。このあたりはメーカーによって方針が分かれる部分かもしれない。
■ 家族で楽しめるx-Pict Story HD 今回のXMBには、新たに「フォト」というカテゴリができている。デジカメ写真で高度なスライドショーを作る、x-Pict Story HDという機能が搭載されたのである。これはすでにPSXでは、Xアプリとして搭載されていたが、スゴ録ではHD映像出力対応バージョンとしてお目見えした。まずはスゴ録にデジカメからの映像をコピーして、「アルバム」を作成する。メモリースティック系であれば本体に直接させるほか、USBカードリーダーを使えば各種メディアも使える。
x-Pict Story HD作成を選択してアルバムを選ぶと、次は音楽選択画面になる。30曲があらかじめプリセットされているので、好きな曲を選ぶと、自動的に作成が始まる。作成時間は写真の枚数によって変わるのだろうが、23枚の写真でテストしたところ、10秒足らずで作成できた。 その後、自動的にプレビュー再生が始まる。ズームイン、ズームアウトやモノクロ、ホワイトアウトなどを使いながら、自分で作るのはかなりめんどくさいレベルのスライドショーが、自動作成されている。
プレビュー終了後は、この作品をビデオタイトルとして残すかどうかが選択できる。ビデオとして保存すれば、DVDにもビデオ作品としてコピーできる。ただし解像度はSDサイズに落ちるのは残念なところだ。
以前から筆者は、最も手軽なHD解像度の映像はデジカメ写真であるという論を唱えているのだが、高解像度のデジカメの映像がこのような形で作品として残せるのであれば、機能的な価値は高い。特にこれがニッチな売れ方のPSXではなく、一般層によく売れるスゴ録に搭載された点は、大きなインパクトとなるだろう。
■ 総論 デジタル放送対応第2弾となる今回の製品群だが、スゴ録とPSXの融合が一層進んだように思われる。さすがにxアプリのコンセプト丸ごとを、一般向けのスゴ録に搭載するのはぶっ飛び過ぎているという判断なのか、割とおとなしい機能を搭載してきたが、これがうまく製品のテイストにマッチして、魅力的に見せている。前作はXMBの搭載で、スゴ録自体がPSXっぽくなってしまった部分はあるのだが、かつてのスゴ録で搭載していたおまかせチャプタなどの機能を再搭載するなど、スゴ録らしさもだいぶ戻ってきている。またCoCoonでの成果であるおまかせ録画も復活するなど、迷走したレコーダ戦略時にあちこちで開発した機能を集めて一本化しようとする動きも感じられる。 HD番組の再生や編集レスポンスも良く、HDサイズの巨大MPEG-2ファイルの扱いはこなれてきた。XMBの操作性も含め、この軽快さこそスゴ録の真骨頂である。HDVの取り込みにしても静止画の扱いにしても、すべての映像ベースをHDにシフトしていくという、ソニーの戦略を体現した恰好になっている。ただ唯一記録メディアだけがSDのままなところで、ストーリーが完結していない感は否めない。 ここまでできたのなら、あとはBlu-ray搭載だけ、と期待してしまうのは筆者だけではないだろう。ただ現状は、Blu-rayもROM規格の策定へ向けて調整中であるし、デジタル放送のコピーワンスも見直し審議中ということもあって、いろんなものが決定前という状況にある。 これから冬商戦にかけて、各社から沢山のレコーダが発売されることだろう。機能による差別化や価格差など、メーカーも買う側も、なかなか落としどころが難しいところだ。
□ソニーのホームページ (2005年11月2日)
[Reported by 小寺信良]
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