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第213回:ウォークマンA用ソフト「CONNECT Player」をテスト
~ Losslessには対応せず。改良版に期待? ~



 iPod nanoと同日に発表されながら、発表と同日に発売されたiPod nanoに対し、実際の発売が2カ月遅かったウォークマンA。市場調査会社によれば、11月第2週のメーカー別シェアで、アップルが59.8%と約6割に達している一方で、ソニーは9.7%と1割を切ってしまっている。ソニーはこの差をウォークマンAで縮めることができるのだろうか?

 11月19日発売となったウォークマンAを早速入手し、「CONNECT Player」として一新された音楽管理・連携ソフトの視点から検証した。



■ インストール後、すぐに自動アップデート

 ウォークマンA発売の2日前に、AV Watch編集部からの連絡で驚いたのが、発売日前だというのに、すでにCONNECT PlayerのVer.1.0.01という修正パッチがアップされているという情報。2日前というのは予想外だったが、アップデータが公開されること自体は、やはりという思いもあった。というのも、CONNECT Playerの開発が難航しているという情報や噂がいろいろ飛び交っていたからだ。

 最近、雑誌の特集でポータブルプレーヤーを担当する機会が何度かあり、当然そこでウォークマンAを取り上げることになった。しかし、ソニーに貸出機の依頼をかけても、なかなか借りることができなかったのだ。

 なんとか借りたモノも、あくまでも試作機であり、本当の意味での評価ができなかった。CONNECT Playerの開発が終わっていないのがその理由で、試作機にはCONNECT Playerが添付されておらず、PCと接続できなかった。評価はあくまでもプレーヤー内にある曲を操作し、聞くことで行なって欲しいということだったのだ。

 発売日の1週間前になっても状況が変わらないため、もしかして発売が遅れるのではと心配し、最悪の場合ハードウェアだけの発売で、ソフトはWebからダウンロードするなんてことになるのでは……とも思っていたところに、修正パッチの情報が入ったというわけだ。

 ちなみに、この修正パッチは誤って早く公開されてしまったというわけでもないようだ。実は、この修正パッチの登場と、ほぼ同じタイミングで製品の出荷が開始されていて、早い店では17日の夕方ごろから発売されていた。

 結局、18日の午前中に量販店で購入することができた。購入したのは6GBのHDDを搭載した「NW-A1000」と、512MBのメモリを搭載した「NW-A605」。本体のデザインの好き嫌いはありそうだが、ともに高級な万年筆を思わせるような、カッコイイ箱に入っていた。

NW-A1000 NW-A605 高級感のあるケース

CONNECT PlayerのCD-ROM

 パッケージを開けると、CONNECT PlayerのCD-ROMはしっかり入っている。CD-ROMは、NW-A1000もNW-A605も同じもので、CONNECT Playerのほかにハードウェアの操作マニュアルもPDF形式で入っている。紙のマニュアルはクイックスタートガイドだけで、詳細のマニュアルはPDFでの提供となっている。

 早速CONNECT Playerをインストールすると、最初に1.5Mbps以上のネット回線に接続するようにメッセージが表示される。これは、自動で最新のアップデータをとってくるようになっている仕様のためだ。


詳細な操作マニュアルはPDFに 自動で最新のアップデータに更新。1.5Mbps以上の回線に接続することが推奨されている

 アップデータも自動的にダウンロードして、インストールは無事終了。OSを再起動すると自動更新の設定表示がされるので、デフォルトのままを指定して終わりだ。これにより、最新版のCONNECT Playerへ自動アップデートされるわけだ。ただし個人的には、CONNECT Playerを使わないときでも、アップデートのための監視ソフトが常駐するというのは好みではないが……。

インストール後、再起動すると自動更新の設定が表示される CONNECT Playerを使わないときでも、アップデートのための監視ソフトが常駐



■ ATRAC Advanced Losslessには非対応

起動させると、Moraに接続される

 さっそく起動させると、Moraに接続した画面になる。MP3などのファイルを再生させると、とくに問題なく動くのだが、かなり動作が重い。原因のひとつは、操作するたびに、なぜか勝手にフロッピードライブにアクセスして、そこで止まる。またそうでなくても、ハングアップしたのか!?と思うように止まることが多い。さすがに曲再生が止まるようなことはないのだが、すべてのキーやマウス操作を受け付けなくなる。

 またソフトを終了させるのにも異常に時間がかかる。とりあえず、画面は消えるものの、タスクバー上にCONNECT Playerという表示が残ったまま、完全に終了するのに20秒近くかかる。

 Pentium 4の3.2GHzのマシンで1GBのメモリを積んでいるので、スペック的には問題ないはずで、基本的にWindows XPを入れただけの非常にクリーンな状態。アンチウィルス系のソフトを含め常駐ソフトもないので、ほかとバッティングしている可能性は低いのだが……。試しにPentium 4の2.4GHzのマシンにもインストールしてみたが、結果は同じだった。

tinyhttp.exeだけが急に負荷が大きくなる模様

 そこでタスクマネージャを利用してCPUの負荷を見てみると、普通に動いているときはCPUの使用率は2、3%と問題ないのだが、ときどき負荷が100%近くなる。さらによく見てみると、tinyhttp.exeというタスクだけが急に負荷が大きくなることがあるようなのだ。

 名前から想像するにインターネットとの接続のためのプログラムだろうが、ここになんらかのバグがあるのかもしれない。CONNECT Playerがネットに接続にいくMora接続用と、Gracenoteのデータベースへの接続用の2通りのようだが、後者が怪しそうな印象だ。


利用可能なエンコーダはATRAC3plus/ATRAC3/MP3とWAVE

 動作が重いということについては、今後のアップデートで改善することを期待しつつ、機能を試した。まず、音楽CDからのリッピングとエンコード。設定画面を見ると、利用できるエンコーダはATRAC3plus、ATRAC3、MP3、WAVEの4通り。なんと、先日発表されたATRAC Advanced Losslessに対応していない。

 11月1日に公開されたSonicStage Ver.3.3には搭載されているのに、その後継ソフトであるはずのCONNECT Playerに搭載されていない。これもそのうち搭載されるのだろうが、期待していただけにちょっとガッカリではあった。

 CDDBでのTOC認識と合わせてリッピング自体は、問題なく行なえる。また、フォルダ名やファイル名の命名法がこの設定画面で決められるというのはなかなか便利である。試しにMP3の128kbpsでエンコードしてみると、遅く感じる。

 CDドライブには最大52倍速読み出しのPlextorのPlexWriter Premiumを使っているのだが、Windows Media Player 10、SonicStage Ver.3.3のそれぞれで同じCDをMP3にリッピングしてその時間を比較すると以下のようになった。やはりちょっと遅いというのは確かだ。ちなみにCONNECT Playerでは特にMP3での設定はないがSonicStage Ver.3.3は音質優先と速度優先が選べるのでそれぞれで試している。



■ わかりにくい「アーティストリンク」

 次にいよいよウォークマンAと接続して。NW-A1000と接続すると、マイコンピュータ上にドライブとして見えるようになるとともに、CONNECT Player上にも登場する。また、最初に接続する際には、「すべての曲を自動的に転送する」か、「曲を選択して転送する」かを指定するようになっているが、ここでは後者を選択してみた。転送は簡単で、転送モードに切り替えて目的のファイルやフォルダをドラッグ&ドロップで持っていくだけだ。

 もちろん「すべての曲を自動転送する」に設定しておけば、CONNECT Playerのライブラリに登録されている曲がすべて自動的に同期するようになる。USBで接続中はウォークマンA側の操作はできないので、接続を解除すると、本体側に「データベース作成中」というメッセージが表示され、しばらくすると操作ができるようになる。

CONNECT Player上にNW-A1000が表示 接続を解除すると、本体側に「データベース作成中」と表示

 ハードウェアについては、操作性や音質などのレビューを編集部で予定しているので、そちらに譲るが、使い勝手は悪くなく、聴感上の音質も良好。イニチャルサーチという曲名やアルバム名、アーティスト名の頭文字で検索できる機能などは結構便利に使える。

 いろいろ使っていて気づいたのは、ウォークマンAのNW-A1000側の特殊機能は、かなりCONNECT Playerと深い関係を持っている。「アーティストリンク」、「再生履歴」、「よく聞く100曲」など。これらはCONNECT Playerと接続してはじめて使える機能なのだ。

 それに気づいたのはSonicStage 3.3を利用した時だ。実はウォークマンAは、CONNECT PlayerではなくSonicStageともリンクできるようになっており、データの転送が可能。ただし、SonicStageとリンクさせた際には、上記の機能が使えなくなってしまうのである。

 前述のように現行バージョンではCONNECT Playerは安定していないので、SonicStage Ver.3.3での代用が可能ではあるものの、その場合はウォークマンAの機能をフルには発揮できない。

 CONNECT Playerの連携の仕方が、またちょっと不思議な感じ。たとえば、再生履歴や「よく聞く100曲」といったものは、ウォークマンA本体単独でできそうな機能だが、CONNECT Playerにいったん接続しないことには反映されない。実際、接続するたびにCONNECT PlayerはウォークマンA側から情報を転送しているようで、それを元に情報を構築しなおして再度転送しているようだ。たとえばSonicStageに接続した後に、これらの機能を選んでも利用できない旨のメッセージが表示されてしまう。

再生履歴や「よく聞く100曲」などは、CONNECT Playerに接続しないと利用できない

 では、その吸い上げた情報をCONNECT Playerで見れるのかというと、そういうわけでもない。そもそも再生履歴などを見るメニューが存在していない。せっかくリンクさせるのであれば、CONNECT Player側でも利用できるようにしてもらいたいところなのだが……。

 一方、最初よくわからなかったのが、そのアーティストリンク。これがウォークマンAの最大の特徴だと思うのだが、どの曲の再生中にアーティストリンクボタンを押しても「該当するアーティストが見つかりませんでした」という表示がされるばかり。CONNECT Playerでリッピングした曲だけが対象なのかと思ったが、そうでもないらしい。

 MP3のファイルを中心に登録する曲を増やすと多少使えるようになってきた。とはいえ、あまり納得のいくものともいえない状況。たとえば、Yellow Magic Orchestra、高橋幸宏、細野晴臣、坂本龍一の曲をそれぞれ1曲ずついれてみると、YMOからアーティストリンクできるのが坂本龍一のみ。一方、細野晴臣からは高橋幸宏のみといった中途半端な状態。

アーティストリンクボタンを押しても「該当するアーティストが見つかりませんでした」と表示 「細野晴臣」からは、「高橋幸宏」だけが検出

タグ情報などを調べても、どうやってリンクしているのか判明しなかった

 そもそもどうやってリンクしているのだろうかとタグ情報などを調べてみても、そこには直接情報を持っていないようだ。CONNECT Playerでは数多くのタグが管理でき、それが見えるようになっているのだが、どこにもそうした情報がない。

 一方、CONNECT Playerのライブラリに曲を登録すると、頻繁にGracenoteのデータベースへアクセスしにいく。どうやら、Gracenote側からなんらかのアーティストリンク情報を入手しているようだ。試しに、CONNECT Playerのインストール後のGracenoteの利用登録をキャンセルすると案の定、アーティストリンクは機能しなかった。


管理できるタグは多いが、アーティストリンクについては不明 CONNECT Playerのライブラリに曲を登録すると、頻繁にGracenoteのデータベースへアクセスする Gracenoteの利用登録をキャンセルすると、アーティストリンクも利用できなくなった

 結局、Gracenoteのアーティストリンクのデータベースが充実していないがために、あまり使えないものとなってしまっているのかもしれない。ちなみに、アーティスト情報があった場合は、検索範囲を拡大することで、いろいろなアーティストにリンクできるようになるものの、これはいい加減すぎて、あまり使えるものではなかった。



■ 改良版に期待したい

 ところで、ソニーサイトでCONNECT PlayerのFAQを見てみると、さらに納得のいかない事実も見えてきた。先ほどATRAC Advanced Losslessに非対応ということは述べたが、それ以外にもSonicStage 3.3にできて、CONNECT Playerにできないことがいろいろある。主だったところを列挙すると、「CD-TEXT 情報の読み込み」、「著作権保護されている WMAファイルの取り込みや再生」、「Aシリーズ以外のウォークマンへの転送」、「アルバムに対するジャケット画像を登録」など。

 そして極めつけは、CONNECT Playerにデータのバックアップ機能がないこと。Moraで買った楽曲などはSonicStageのバックアップ機能を利用せよと書かれているのだ。Windows Media Playerでは、現状ではまともなバックアップ機能すら無いので、バックアップできるだけマシともいえるが、CONNECT Playerを利用するのにSonicStageも入れておけというのはいかがなものだろうか?

 ちなみに、このFAQでは、CONNECT PlayerにできてSonicStageにできない機能としては、インテリジェントシャッフル再生、The抜きソート、再生リスト表示、読み仮名ソートなどが挙げられていた。

 以上、ウォークマンAの初期ロットについて、CONNECT Playerの視点から見てみた。iPod独走というのはいかがなものかと思っているだけに、ぜひソニーにはがんばって欲しいのだが、現状のCONNECT Playerのデキを見る限り、かなり厳しいようだ。ATRAC3やATRAC3plusの音はAACよりいいという印象を持っているし、ウォークマンAの音はいいと思っているものの、このままではマズイ。ウォークマン復活のために、ぜひ早急にCONNECT Playerの改良版をリリースして欲しい。


□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□ウォークマンのホームページ
http://www.walkman.sony.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.sony.jp/CorporateCruise/Press/200509/05-0908/
□関連記事
【11月18日】ソニー、新ウォークマン用「CONNECT Player」をアップデート
-終了後に操作できなくなる不具合などを修正
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20051118/sony1.htm
【9月8日】「ウォークマン復権」へコネクト戦略を推進
-「自社技術に固執せず」。WMA/AACもサポートへ
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050908/sony1.htm
【9月8日】ソニー、有機EL/流線型ボディの20/6GB HDD「ウォークマンA」
-好みの楽曲をプレビュー再生する「アーティストリンク」搭載
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050908/sony2.htm
【9月8日】ソニー、スティック型ウォークマンの新モデル
-CONNECT Playerでインテリジェントシャッフル対応
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050908/sony3.htm

(2005年11月21日)


= 藤本健 = リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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