ソニーのフルHD対応SXRDフロントプロジェクタは「QUALIA04(Q004-R1)」が、第1号機として華々しく発表され、話題をさらったのは2003年のこと。このあと約2年間、ソニー製民生プロジェクタのハイエンド機の座を守っていたが、2005年にはQUALIAシリーズ全体の新モデル開発中止が発表された。 Q004-R1が最初で最後のSXRDフロントプロジェクタになってしまうのか、と心配されたが、2005年末にVPL型番のハイエンド機「VPL-VW100」が、Q004-R1のスペックを受け継ぐ形で登場した。 驚くべきはその価格。136万5,000円は高価に見えるが、Q004-R1から100万円も低価格になって登場となったのだ。今回は、SXRDフルHDプロジェクタVPL-VW100の実力を、同価格帯の同じフルHD対応反射型液晶プロジェクタ「ビクター DLA-HD11K/12K」(以下DLA-HD1xK)を競合機とした視点で検証した。
■設置性チェック ~民生機トップの静粛性22dBを達成。自由度の高い設置性
VPL-VW100は事実上QUALIA Q004-R1の後継機とも言えるが、内部映像エンジン、光学系、ボディデザインの全てが、ほぼゼロからの新設計という。
外形寸法は496×574×175mm(幅×奥行き×高さ)となっており、普及機と比べると格段にでかいが、Q004-R1と比べると幅にして約10cm、奥行きにして約17cmも小さくなっている。DLA-HD1xKとほぼ同サイズだが、VPL-VW100は接続インターフェイスと映像プロセッサ部を本体に内蔵しているアドバンテージがある。 奥行きが50cmを大きく超えていることから、一般的な大きさの棚に乗せての設置は難しい。台置きを行なうならば比較的大きめのテーブルや台が必要になることだろう。基本はやはり天吊り設置による常設ということになる。
天吊り金具は、角度調整付のヒンジ機構が搭載された「PSS-H10」(80,850円)と、天井からの吊るし位置を調整可能なパイプ式の「PSS-610」(52,500円)の2タイプが用意されている。一般家庭であればスクリーンの高さとプロジェクタの設置位置がそれほど変わらないと思うので、安価なPSS-610で問題ないはずだ。 本体重量は約19kg。天吊り金具と組み合わせると総重量は25kg近くなり、ボディサイズも大きいので、相当な負荷が天井との接合部にかかることになる。天吊り設置の際には天井補強が必要になるだろう。 冷却のエアーフローは、本体前面下部スリットからの吸気、背面後部スリットからの排気という流れになっている。冷却ファンは背面側に2基設置されているが、本体稼働中、ファンノイズがほとんど聞こえない。本体に近づくとやっと聞こえるというほどで、公称値にして騒音レベル22dB。民生向けプロジェクタとしては最小レベルだ。 この秘密は、ソニーグループ内製の新開発のファンにあるという。ファンの軸受けがベアリング部にほとんど接触しないノンコンタクトメカニズムと、ファンの羽形状を、回転速度に合わせて最適化し、風切り音を徹底低減させたのが特徴だ。競合のDLA-HD1xKは公称27dB。DLA-HD1xKも決してうるさくはなかったが、VPL-VW100の静粛性は圧倒的。 さて、前から後ろへ空気が流れることから本体背面部には約20cm以上のクリアランスを設けなければならず、奥行きが60cm近いことも考えると、投射レンズは部屋の最後部から80cmも手前になる。これは設置を検討する時に忘れてはならない要件だ。部屋の最後部に設置した本棚の天板に載せて設置する疑似天吊り設置は、この奥行きと要求クリアランスのことまでを考えるとほぼ無理だろう。
投射レンズは1.8倍電動ズーム、電動フォーカス、電動レンズシフト機構付きの新開発のものを採用。Q004-R1では設置環境に応じて3種類のレンズを発注時にオーダーできたが、VPL-VW100でそうしたサービスはない。しかし、このレンズはかなり優秀で小さめな部屋から大きめな部屋をオールマイティにカバーする性能を持っている。 100インチ(16:9)の投射距離はズーム最大で最短約3.1mで、短焦点性能をウリにした20万円台の普及クラス並みの最短投射距離を達成している。逆にズーム最小では約5.3mの投射距離にしても100インチ(16:9)に抑えることができる。具体的な部屋サイズに置き換えると6~8畳クラスの部屋から16~18畳クラスの部屋においても100インチ(16:9)投影が可能ということだ。また、16:9映像と4:3映像を供に最大サイズで楽しむこともできる。 ズーム、フォーカス、レンズシフトはいずれもリモコンから調整可能。画面に張り付いてフォーカス合わせが行なえるのは、非常にありがたい。
レンズシフトは縦方向のみに対応しており、シフト幅は画面高さの±50%。光軸が画面の下辺と相対する位置から、上辺と相対する位置までのシフトが可能ということになる。一応、左右シフトは「左右位置の微調整機能」という形で用意されているが、シフト量は非常に小さく、プラスドライバを廻して投射レンズを動かす方式のため、手軽さはない。また調整幅も微々たるものなので、スクリーン中央からずれたところに設置することは無理。あくまで常設設置時の微調整用という意味合いの機能に過ぎない。 このズーム性能とシフト量があれば、本体の設置位置とスクリーンの設置位置のあらゆる組み合わせにおいて対応できるはずだ。Q004-R1のようなレンズ選択はできないが、VPL-VW100の設置性は全く見劣りしない。 光源ランプはQ004-R1と同等の400Wのキセノンランプを採用する。DLA-HD1xKはランニングコストを重視して超高圧水銀系ランプを採用したが、VPL-VW100はそれよりもネイティブな色純度を重視してキセノンランプを採用したというわけだ。
■接続性チェック ~HDMI/DVI-D/D-Subなど入力端子は充実
接続端子部をビデオプロセッサの形で本体から分離した競合のDLA-HD1xKと異なり、VPL-VW100では一体型デザインを採用しており、接続端子パネルは本体正面に向かって左側面下部に位置している。 アナログビデオ系入力としてはコンポジットビデオ入力、Sビデオ入力、コンポーネントビデオ入力をそれぞれ1系統ずつ備えている。海外モデルとの設計共用のためか、D端子はない。 デジタルビデオ系としては、HDMI 1.1とHDCP準拠のDVI-D端子を各1系統装備する。PC入力としてD-Sub15ピン端子を1系統が用意される。なお、DVI端子をデジタルRGB接続用のPC入力用に利用することも可能。また、D-Sub15ピン入力は別売りの変換ケーブルを利用することで、追加のコンポーネント入力端子としても利用できる。 この他、外部機器連動用として、本体稼働中にDC12Vを出力し続けるトリガー端子、PC経由でVPL-VW100を制御するためのインターフェイスとしてRS-232C端子、Ethernet端子を装備している。 なお、今回試用したVPL-VW100は貸し出し用試作機だったためなのか、テストしたPCとの相性が悪いのか、PC接続機能が利用できなかった。製品版ではこれらの端子を経由して、ガンマカーブ等の画調調整プロファイルをPCで作成できる付属ソフトウェア「Image Director2」を用い、VPL-VW100と連携が図れる。
■操作性チェック ~リモコンでフォカース、レンズシフト、ズーム調整可能
電源投入から実際にDVI-D入力の映像が表示されるまでの所要時間は約24秒(実測)。最近の最速起動を誇る機種達と比較すると、あまり早いとは言えないが、標準的な起動時間といったところだろう。 リモコンは4年以上前のVPL-HSシリーズから使われ続けているものがそのまま流用されている。Q004-R1のリモコンは手に取るだけで全てのボタンが自照式に発光するよく考えられたものだったので、流用するならばQ004-R1のリモコンの方にして欲しかった。 リモコンの最上部左端には[LIGHT]ボタンがあり、これを押すことでリモコン上のボタンがオレンジ色に点灯する。その隣には入力切り替え用の[INPUT]ボタンがあるが、これは蓄光式で自発光しない。慣れないうちはリモコンライトアップボタンと入力切り替えボタンを押し間違えてしまうことがある。 入力切り替えは順送り式で、コンポーネントビデオ→HDMIの切り替え所要時間は約2秒(実測)、HDMI→DVIで約2秒(実測)であった。Q004-R1では順送りでなく直接切り換えられたので、この部分は下位モデルと感じさせられる。 その下にはPICTURE MODE(画調モード)を切り換えるボタンが並ぶ。[DYNAMIC]、[STANDARD]、[CINEMA]の3つのプリセット画調モード、3つのユーザーメモリへの切り替えに対応した6つのボタンがあり、こちらは押した画調モードへ一発で切り換えられる。画調モード切替の所要時間は約1秒(実測)とまずまずの早さ。 リモコン中央には十字キーがレイアウトされており、これは、その右下の[MENU]ボタンを押すことで表示されるメニューのカーソル操作を行なうもの。暗闇でも四方向を指先で判断できるようにという配慮のデザインなのだろうが、左右カーソルと[ENTER]が繋がっていて正直、押しにくい。
[LENS]ボタンは、投射レンズのフォーカス、ズーム、シフトの調整モードに移行するためのボタン。[LENS]ボタンを押すたびに、調整対象が順送り式にフォーカス→ズーム→シフトと切り替わり、実際の調整は十字キーで行なう。 [WIDE MODE]ボタンはアスペクト比切り替え操作のためのもの。用意されているアスペクトモードは、パネル全域に表示する「フル」、アスペクト比4:3を維持する「ノーマル」、4:3映像の外周を伸張する「ワイドズーム」、4:3映像の中にレターボックス記録された16:9映像をパネル全域に表示するのに適した「ズーム」、その字幕領域にも配慮した「字幕入り」の6つ。各アスペクトモードの切り替え所要時間は約1.0(実測)とまずまずの速さ。
ユーザーが調整可能な画調パラメータは「コントラスト」、「明るさ」、「色の濃さ」、「色合い」、「シャープネス」といった基本的なものから、「NR(ノイズリダクション)」、「黒補正」、「ガンマ補正」、「色温度」、「アドバンスドアイリス」といったVPL-VW100の特徴的な機能として提供されるパラメータまで多岐にわたる。 これらのパラメータは[DYNAMIC]、[STANDARD]、[CINEMA]の3つのプリセット画調モードに対しても行なうことができ、調整結果はその後も維持される。マニュアルによるとリモコンの[RESET]ボタンを押すことで工場出荷状態に戻せると説明があるが、戻るのはコントラスト~シャープネスまでで、NR以下は戻らない。プリセット基準で活用したい人はこの点には留意しておきたい。 3つのユーザーモードは、あらかじめ[STANDARD]状態に初期化設定されている[USER1~3]をエディットし、自分好みにしていける。なお、このユーザーモードもプリセット画調モードも、各入力系統ごとに値が管理される。 画調モードの調整はメニューからも行なえるが、[ADJ PIC]ボタンを押すことで順送り式に画調パラメータを直接呼び出しての調整も可能。リモコン最下段には調整頻度が高い「明るさ」と「コントラスト」を調整するための[BRIGHT +/-]、[CONTRAST +/-]ボタンも用意されている。 VPL-HS50から実装された他の色に一切の影響を与えず、特定の色を選択式に調整できる画調調整機能「RCP:Real Color Processing」がVPL-VW100にも搭載されている。調整したいシーンに遭遇したら[RCP]ボタンを押すことでこの機能は呼び出され、赤、マゼンタ、青、緑、シアン、黄色の6色の代表色を手がかりにして特定色を実際に表示中の映像の中から割り出して、その色調を変更できる。調整結果はユーザー1~ユーザー3のRCP専用のユーザーメモリに保存することができ、これは全ての入力系統から共有利用することができるようになっている。
■画質チェック ~キセノンランプのポテンシャルを活かしきる「ワイド」モード
VPL-VW100の映像デバイスとして、ソニー独自のフルHD(1,920×1,080ドット)解像度を持つ反射型液晶パネル「SXRD」を採用する。「フルHDでSXRD」はQ004-R1と同等だが、VPL-VW100に採用されているSXRDはQ004-R1より一世代新しいものになっている。 Q004-R1のSXRDは対角0.78型だが、VPL-VW100ではシュリンクした新世代の0.61型を採用しているのだ。
これにはメリットとデメリットがある。 メリットとして、LCOSは液晶一体型“半導体デバイス”なのでチップサイズが小さいほど製造コストが下げられ、取れる量が増えるので歩留まりが良くなって生産性も良くなる。VPL-VW100がQ004-R1と同スペックでここまで安価にできたのは、このパネルの小型化の影響が小さくない。 また、新0.61型SXRDは製造プロセスルールこそ先代0.78型SXRDと同じ0.35μmのままだが、製造技術は向上しており、配向膜の均一化やシリコン基板の平坦性向上、液晶セル厚の均一化を達成している。このことから、画素内の迷光が低減され、パネル単体のネイティブコントラスト性能は先代の3,000:1に対して5,000:1に向上している。液晶素子の応答速度の鍵を握る画素セル厚は2.0μmのままでで先代と変わらないはずなのだが、新0.61型SXRDでは応答速度も先代の5msから2.5msへと高速化したと発表されている。 デメリットもある。プロセスルールは0.35μmに据え置きなので画素間の隙間(画素を区切る格子線)も0.35μmのままだ。しかし、パネルは小型化されたので当然画素サイズは小さくなる。つまり画素間の隙間(ギャップ)は同じで画素が小さくなったということは1画素当たりの開口率が低下することになる。実際、先代0.78型SXRDでは開口率92%だったのが、新0.61型SXRDでは90%になってしまった。開口率が低いということは1画素当たりの絶対的な反射光量が減ることになる。Q004-R1は公称輝度が約1,000ルーメンだが、同出力程度の400Wのキセノンランプを組み合わせながらVPL-VW100が800ルーメンとなっているのはこのあたりが理由と推察される。 そして開口率の低下は、相対的に見ると画素間の隙間が太く映ることになる。実際、対角0.82型のビクターの反射型液晶D-ILA(Direct drive Image Light Amplifier)パネルを採用したDLA-HD1xKと比較すると、画素の格子線はVPL-VW100の方が太い。ちなみに同じ0.35μmでパネルサイズが大きい0.82型D-ILAの開口率は94%でQ004-R1のSXRDよりも開口率が高い。VPL-VW100の半分の200W足らずのランプでDLA-HD1xKがVPL-VW100に迫る600ルーメンを達成できているのにはこうした理由から来るものなのだ。
とはいうものの、VPL-VW100の800ルーメンの輝度は実際は非常に明るく、蛍光灯照明下でも映像の概要は十分に確認できるほどだ。 また、透過型液晶と比較すれば画素を区切る格子線は圧倒的に細く、100インチの大画面でも1~2mも離れてみるとほとんど格子線が見えない。 実際の投射映像を見て驚かされるのはやはりそのコントラスト性能だ。DLP方式に肉迫した黒の沈み込みには唸らされるばかり。ネイティブコントラスト(動的絞り機構をオフ)状態で鑑賞した場合でも、DLA-HD1xKよりもVPL-VW100の方が体感上のコントラストは上だと感じる。 階調性能も優秀だ。暗めの映像を見たときのその描写力の高さが、透過型液晶のそれとは決定的に違う。暗部の色ディテールの再現力が凄く、暗い映像でも立体感すら感じられるのである。これは階調表現のダイナミックレンジの広さと、高分解能な階調性能が両立できなければ実現が不可能なはず。SXRD自体の進化もあるだろうが、これはそれよりも、VPL-VW100のために新開発されたという12ビット処理のSXRDパネルドライブの恩恵によるものだと推察される。
色深度も文句なし。グラデーションも実に美しくリニアに決まっている。 色再現性については、「ノーマル」と「ワイド」の2種類のカラースペース(色空間)モードの設定によってがらりと変わる。「ノーマル」はNTSC色域を再現するもので、「ワイド」はNTSC色域を超えた、より広域な色空間にて色を表現するようになる。「ワイド」モードは、ハイダイナミックレンジかつフラットな特性を持つRGB3原色光が取り出せるキセノンランプの特長を生かしたもので、民生ホームシアター機ではVPL-VW100だけが持つ特権的な機能といってもいいかもしれない。 「ワイド」モードでは赤のダイナミックレンジが高くなり、青の最明色に鋭さが増すようになる。緑はダイナミックレンジこそそのままだが色純度が増す。ノーマルを見慣れているとワイドに違和感を覚えるかも知れないが、ワイドの方が記憶色に近い発色になり、慣れてくるとこちらの方が強い臨場感を覚える。 空や海の色合いに奥行き感が出てきて、植物はよりみずみずしく見えるし、人肌にも血の巡りがよくなって見えるようになる。中明色から中暗部当たりの微妙な暗さの色が薄汚れてではなく、自然な暗さの色に見えるのである。原色だけの純度が高く見えるのとは違うので、キセノンランプの特性を生かし切るという意味で価値のある機能だと思う。 投射光学系についても言及しておこう。VPL-VW100にはARC-F(オールレンジ・クリスプ・フォーカス)と命名された投射レンズが採用されているが、さすが高価な製品だけあってなかなか優秀だ。 フォーカスむらは「皆無」というとウソになるが、あるにはあるが最低限に抑えられている。画面中央でフォーカスを合わせれば、全域で満足のいく画素描画になるという感じだ。色収差による色ズレについては、画面全域に渡って最低限であり、これはDLA-HD1xKと同等かそれ以上だと思う。1画素の色が隣接する画素に影響を与えずに描画されるので、解像感が非常に高いのである。 VPL-VW100の特殊高画質化機能でもう一つチェックしなければならないのが、表示映像の平均輝度にリアルタイムに呼応してSXRDに当てる光量を変化させる動的な絞り機構「アドバンスドアイリス」だ。暗いシーンでは光量を絞り、明るいシーンでは最大光量を導くことで時間積分的なハイダイナミックレンジ表現を行なうと供に、暗いシーンでの黒浮きを抑える効果がある。最近の普及機のほとんどに採用されている機能だが弊害も多い。例えば日立「PJ-TX200J」、サンヨー「LP-Z4」では、明暗変化が頻発すると絞り変化が映像の動きについてこれず不自然になってしまっていた。 VPL-VW100でも、動的絞り機構にはシビアなDVD「アビエイター」のチャプター7の夜間飛行シーンで視聴してみたが、絞り動作の遅延は確認されなかった。アドバンスドアイリスのオート設定時には、体感上の最暗部の黒レベルが一定に保たれる感じで、むしろ見やすさが向上する。全体的なダイナミックレンジと黒浮きのトレードオフを追求したい人には常用してもいいモードだと思う。ただ個人的な好みでは、全ての階調表現を一元的に把握しながら見たいのでオフで鑑賞してみたが、それでも十分にハイコントラストだった。
■まとめ ~VPL-VW100か、DLA-HD1xKか
VPL-VW100を気にしている人はDLA-HD1xKも気になることだろう。両者、販売価格が100万円超、フルHD解像度のLCOSプロジェクタという共通点がある。 本体価格でいうと実勢価格で見ても低価格なDLA-HD11Kでも150万円前後、VPL-VW100が100万円前後……と、VPL-VW100の方が約50万円も安価だ。VPL-VW100が安価なのはSXRDパネルを小型化して生産性を向上させたこと、プロジェクタとデジタルプロセッサを一体型とした点が有利に利いていると思われる(DLA-HD1xKは分離型システムを採用)。 一方、ランニングコストはDLA-HD1xKの方に軍配が上がる。DLA-HD1xKの交換ランプ「BHL5008-S」は超高圧水銀系のため安価で26,250円。対するVPL-VW100の交換ランプ「LMP-H400」は高価なキセノン系であることがたたって103,950円と約4倍高価だ。公称寿命はともに2,000~2,500時間なので、ランプ自体の価格差がほぼそのまま維持費に影響してくる。 また消費電力も、VPL-VW100が最大610Wに対してDLA-HD1xKは約半分の320W。VPL-VW100は400Wのキセノン系、DLA-HD1xKは200Wの超高圧水銀系。両者の消費電力格差はやはりその光源ランプの違いによるところが大きい。ちなみに最大消費電力610Wは大体6~8畳クラスのエアコン並だ。 設置性については、フォーカス、ズームを供に電動リモコン式を採用する点は同等だが、レンズシフトはDLA-HD1xKの手動式に対しVPL-VW100は一貫した電動リモコン式だ。ズーム倍率もVPL-VW100の方が高い。ただし投射距離については設置環境に応じたレンズが価格据え置きで選べるアドバンテージがある。総じて設置性は互角といえそうだが、台置きでユーザーの近くに設置するというケースでは騒音レベルわずか22dBというVPL-VW100の方が適していると言えるかも知れない。しかし、DLA-HD1xKの27dBも十分静かであり、天吊り設置であれば問題はないレベルではある。 接続性は、分離型システムを採用し、AVハブプロセッサを組み合わせ4系統ものHDMI入力に対応するDLA-HD11Kが優れる。操作性は、VPL-VW100のリモコンも誉められたものではないが、それ以上に分離型システムの弊害でリモコンが2つになってしまったDLA-HD1xKが分が悪いため、相対的に見ればVPL-VW100の方が上だ。 画質に関しては甲乙つけがたい。輝度性能はVPL-VW100の方が高いが、画素開口率はDLA-HD1xKの方が優る。フォーカス性能や色収差による色ズレについては両者共に高次元でまとめ上げているが、あえて優劣をつけるとすれば、フォーカス性能はDLA-HD1xKの方がやや優秀、色収差による色ズレの少なさについてはVPL-VW100の方がやや優秀かといった印象。 動的アイリス機構はVPL-VW100にのみ搭載されるが、DLA-HD1xKではあえてこれを採用せず。DLA-HD1xKではネイティブ・コントラスト性能維持にこだわり、他に類を見ないズーム倍率に連動した矩形絞り機構で徹底した迷光低減を実現し、不動の黒レベルを達成している。動的なハイダイナミックレンジ感を取るならばVPL-VW100、安定した黒表現に拘るならばDLA-HD1xKといったところか。 色再現性、階調性については甲乙つけがたく、ユーザーの好みによって評価は変わってきそうだ。カラースペース「ワイド」モードはキセノンランプのアドバンテージが活かせて面白く、映像表現能力としてはVPL-VW100の方が上かも知れない。しかし、過不足なしに表示を行なう映像モニタとしてのポテンシャルは、独自の光源色補正光学系システムを組み込んだDLA-HD1xKの方が上かも知れない。 表現力を取るか、忠実再現を取るのか。購入を検討する際には、その点を評価軸に据えれば、選択しやすいだろう。
□ソニーのホームページ (2006年3月16日) [Reported by トライゼット西川善司]
AV Watch編集部 |
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