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ソニー、新経営方針を発表。05年度営業利益は200億円の赤字
-エレクトロニクス15事業撤退。HDやCellを積極推進


戦略商品「ウォークマンA」を持つストリンガーCEOと中鉢社長。「50年代の曲ばかり聴いている(ストリンガーCEO)」

9月22日発表


 ソニーは22日、経営方針説明会を開催し、6月に発足したハワード・ストリンガー会長、中鉢良治社長ら、新経営陣による事業方針を発表した。

 2007年度の連結通期営業利益率5%(エレクトロニクス4%)を目指し、エレクトロニクス事業の組織変更と、体制強化を実施。成長戦略についてはHD関連商品、モバイル製品の差別化を推進するため、Blu-ray関連やCMOS/CCDなどの半導体、デバイスへの集中投資。さらにCellプロセッサについてはCEO直轄組織を立ち上げる。

 この中期経営方針に関連して追加された構造改革費用などにともない、2005年度の連結業績見通しを修正。営業利益が7月時点の見通しである300億円から、500億円減額修正され、200億円の赤字となった。売上については7月時点の7兆2,500億円から変更はない。


■ 「Sony UNITED」で世界一のCEカンパニーを目指す

ハワード・ストリンガー会長兼CEO

 ハワード・ストリンガー会長兼CEOは、「ソニーに入社して8年になるが、デジタル技術の発達により、状況は大きく変わった。デジタル化、ネットワーク化は、いままで見られなかった新しい製品を生み出したが、一方で多くの製品のコモディティ化が進んだ。そうした中で、革新的な技術を活かしてヒット商品を創造し、差別化をすすめることが、われわれの基本戦略」と、ソニーの基本的なスタンスを紹介した。

 しかし、市場の競争は激化しており、「広範な製品群で様々な競争相手に直面している。ソニーが世界一の家電カンパニーとなるためには、選択と集中が必要だ」とし、ヒット商品に経営資源を集中することを表明。具体的な製品としてはPSPやウォークマン、サイバーショット、PLAYSTATION 3、BRAVIA、ハイビジョンビデオカメラなどを挙げ、「とにかく最重要課題はエレクトロニクスの復活」と語り、ソニー復活に向けた戦略を明らかにした。


ヒット商品に経営資源を集中

 新経営陣就任後、100日間で部門/地域枠を超えたレビューチームを結成し、製品/事業構造を精査。また、販売店やサプライヤー、投資家の意見や、2,000以上の従業員の提案を検討し、再生プランを策定したという。

 再生プランでは、2005~2006年度に2,100億円規模の構造改革費用を計上し、人員や事業の整理を行うほか、エレクトロニクス事業を中心に成長戦略を実行。また、組織も従来のネットワークカンパニー制を廃止する。

 構造改革により、日本4,000人/海外6,000人の1万人規模の人員削減を実施。構造改革費用として、2005年のブラウン管製造設備などの減損や早期退職費用などを約1,400億円(7月より520億円増加)、2006年度は製造拠点の統廃合や早期退職費用などで700億円を見込んでいる。

 また、構造改革による不採算事業の撤退や製造拠点の統廃合で1,300億円、本社/間接部門の効率化で700億円のコスト削減を見込んでおり、2年間で2,000億円のコスト減を予定している。また、不要な不動産など、資産売却を1,200億円見込んでいる。

 ストリンガーCEOは、「カンパニー/部門間の連携を阻害する個別最適志向の”サイロ”体質を解消し、製品の重複などを解消する」と表明。事業部門を超えた「Sony UNITED」の姿勢を強調した。

 さらに、事業の選択/集中を進めるとともに、業界標準技術の採用方針を明らかにし、「ソニーだけが唯一の選択肢でないことを認識する必要がある」と語った。具体的な新生ソニーの製品としてはHD関連の充実とともに、2006年発売予定のPLAYSTATION 3を挙げ、Cellや映画コンテンツの提供、ブルーレイドライブなど、ソニーグループ全体で協力体制を築いていくという。

2007年の営業利益率5%を目指す PS3の立ち上げに向けグループ各社が協力


■ エレキ15事業から撤退。テレビ復活に全力投入

・テレビを中心にエレクトロニクス再生

中鉢良治社長兼エレクトロニクスCEO

 中鉢良治社長兼エレクトロニクスCEOは、「この5年でエレクトロニクスの営業利益はどんどん低下し、2004年度はとうとう赤字転落した。エレキ復活には企業体質の強化が急務」とし、「エレクトロニクス再生計画」を発表した。

 中鉢社長は、ソニー製品や経営体制に対する各方面からの声を紹介しながら、業績不振の要因を、「商品(顧客視点の欠如によるヒット商品不在、類似製品乱立)」、「技術力の低下(デバイス/半導体に付加価値が移行。開発リソース分散)」、「組織(部分最適に傾倒し、短期業績志向)」の3点と分析。

 中鉢社長は最重要課題を「テレビ事業を再生」とし、企業体質の強化に向けて、「カスターマー・ビューポイント」、「テクノロジーNO.1」、「現場」の3つのコーポーレートイニシアチブを策定。カスタマービューポイントについては、「全社横断の製品戦略決定や、重複排除、接続性の維持などで顧客の期待に応える」という。


業績不振の理由 3つの新コーポレート・イニシアチブ

 テクノロジーNO.1は、「差別化技術によりセットとデバイスの連携を徹底し、テレビ/ビデオ/デジタルイメージング/ウォークマンなどの重点商品でナンバー1ポジションを確立する」と述べ、ウォークマンについては「2007年の売上げを倍増する」という。

 また、現場のイニシアチブを重視し、設計/生産/販売の3つの現場のそれぞれのオペレーション力を強化、「小さな本社と強い現場」を実現する。

構造改革費用の内訳

 同時に発表された構造改革方針では、事業の絞り込みによりエレクトロニクスの既存事業のうち15事業については撤退、もしくは他社との提携による事業の縮小方針が明らかにされたが、どの事業が対象となるかについては「ビジネス戦略上、今はまだ公表できない」とした。

 また、既存事業の製品についても、2007年度には2005年度比で約20%のモデル数削減を実施するほか、製造拠点も11拠点を削減する予定。


・液晶/リアプロでプラズマに対抗

テレビ事業は「BRAVIA」で2006年下期の黒字化を目指す

 また、最大の課題に挙げられたテレビ事業の再現については、「今、打てる手を全てつぎ込む」とし、従来方針通りに「2006年下期の黒字化を目指す」。CRTについては、拠点の集約を加速。液晶テレビとリアプロテレビについては新ブランドの「BRAVIA」で展開し、液晶テレビはS-LCDからのパネル供給。リアプロは中国での部品調達を拡大し、普及価格帯は高温ポリシリコンを、高画質向けにSXRDの2デバイスで展開する。

 液晶テレビについては、「S-LCDの世界最高のパネルが利用できる。プラズマとの競合はかつて32型で液晶とプラズマが競っていたが、今はほとんど液晶に変わった。これが、今後は37型、42型も液晶に変わっていく」と予測。また、大型ではSXRDもラインアップして「プラズマと対決して行きたい」と意気込みを語った。

 また、テレビの基本設計体制についても、従来は日/米/欧/アジアの4極分散設計としていたが、日本で共通シャーシを開発する一極集中型に切替、2006年には30%の部品点数削減を図るという。

 中鉢社長は、先行投入した北米市場でのBRAVIAの成果について、「(9月第2週:NPD調査)液晶はシェアNo.1、リアプロはシェア50%を獲得した。薄型テレビの普及率は日本が14%だが、北米は一桁で、2007年には日本がシェア50%、北米は35%になる、いわばまだ始まったばかりの市場。BRAVIAでテレビ復活の手応えを実感している」と期待のほどを語った。

・ハイビジョンをキーとした成長戦略。07年には75%がHD対応に

HD Worldをキーワードに2007年のHD化率75%を目指す

 また、エレクトロニクス再生のキーワードを「HD World」と紹介。7月に発売したHDR-HC1が当初予測の2倍の売れ行きを見せて、HD放送がまだ始まっていない地域でも売れていることから、「パーソナルのビデオカメラでもHDのニーズが顕在化された」と分析。

 ビデオカメラや映画コンテンツ、ブルーレイディスク、PLAYSTATION 3、テレビ、プロジェクタなどでHD化対応を推進し、「2006年には、“撮る”、“見る”、“貯める”、“編集”する、の全てがHDで可能になる」とし、現在約35%のHD化率を、2007年には75%まで引き上げるという。

 また、今までは、「美しい画、美しい音といった“感動”や、軽く小さいといった世界をリードしていたが、デジタル化、ネットワーク化により、新しい楽しみ方が提案されている」とし、ケータイ画像によるコミュニケーションやBLOGなどとの連携を念頭に置いた「共感」の創造が商品の鍵になると予測。「ワンタッチでテレビからデジカメ内の画像を視聴や、撮影した写真をSNS(ソーシャルネットワークサービス)にダイレクトに転送」などの新しい製品のあり方を提案した。

共感が新世代の製品キーワードに 新製品のイメージ

 成長戦略を実現するために、家電やモバイル分野でのプラットフォーム化を進めるとともに、各分野でネットワークプロセッサ「Cell」の応用を検討。半導体についてはCellやモバイルのほか、ディスプレイやCCD/CMOSなどのイメージャー、ブルーレイディスク関連などに集中投資を行なう。

 また、次世代のディスプレイデバイスを研究する「ディスプレイデバイス開発本部」を新設し、本社直属組織として運営。当初は有機EL開発に集中し、中鉢社長がリーダーを務める。

エレクトロニクスの新事業体制

 ソフトウェア開発体制も強化し、技術開発本部を本社直属組織として立ち上げるほか、アメリカや中国でのソフト開発拠点を設置。また、サービスプロバイダや通信事業者の領域ではアライアンスの積極展開を図るという。

 また、従来のネットワークカンパニーを廃止して、家電分野の「3NC8事業部組織」から、「4事業部+1部門」体制とするほか、パーソナル/ホーム/車載の3部門が分かれていたオーディオ事業を一本化。NCの廃止により部以上の階層を4階層から3階層に減らし、迅速な意志決定を可能とするという。構造改革や新体制の確立により、「世界のソニーを復活させたい(中鉢社長)」。


■ 「目標に対する説明責任を果たす」。QUALIAは半撤退状態

 エレクトロニクス以外の事業については、映画分野でMGM買収による統合手続きを進めるとともに、携帯/PCへのデジタル配信や、UMD/ブルーレイなどの新パッケージメディアによる既存コンテンツの販売促進を図る。また、ゲーム部門との協業も拡大していくという。

 音楽部門についても、デジタル配信の推進に加え、DualDiscやブルーレイ、UMDなどの新メディアを積極的に推進。北米で2月より販売開始したDualDiscは既に400万枚を販売したという。

 携帯電話についてもAV機能を融合したソニーエリクソンならではの商品提案などを目指すほか、ソニーのコンテンツと連携した機能拡充なども検討するという。

 ストリンガーCEOは、ソニーのコミットメントとして、簡素で効率的な組織構築や、2,000億円のコスト削減、1,200億円の資産売却などを明確な目標として提示。「国内外の投資家から、“(前の経営陣も)約束はしたが、内実が伴わない”と言われた。目標を掲げ、計画の進捗状況を適時報告し、説明責任を果たす」と述べ、前経営陣との違いを強調。2006年度の連結黒字化、2007年度の連結営業利益率5%を掲げた。

 また、中鉢社長は、2007年営業利益率5%(エレクトロニクス4%)という目標について、「厳しいターゲットだとは思う。しかし、私の“手触り感”としては達成できる」とコメントした。

 質疑応答では、撤退/縮小を決定したエレクトロニクス15事業についての質問も行なわれたが、具体的な事業名は明かされなかった。ただし、撤退報道が流れた高級ブランド「QUALIA」については、「新規の開発は一時停止しているが、ビジネスとしては続行しており、ユーザーへのサービスなどは継続していく。ただし、集中的に開発していくという体制ではなく、プライオリティは下げている(中鉢社長)」と説明された。

 また、ロボット事業については、「縮小するが、R&DについてはAIなどに有効活用していく(中鉢社長)」とした。同様に株式売却報道の出た「スカパー!」については、「売却の予定はない。従来通りやっていく(大根田CFO)」という。

 本社直属組織として新規に立ち上げる「ディスプレイデバイス開発本部」については、「当面、有機ELが中心になる。既に商品化もしており、絵作りや低温ポリシリコンなどの技術もソニー内に持っている。テレビなどさらに大きなサイズやモバイルなど、どのようなアプリケーションが考えられるか、どのように事業化できるのか、検討していく(中鉢社長)」とした。

□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□中期経営方針
http://www.sony.co.jp/SonyInfo/News/Press/200509/05-050/index.html
□人事・機構改革
http://www.sony.co.jp/SonyInfo/News/Press/200509/05-051/index.html
□2005年度連結業績見通し修正のお知らせ
http://www.sony.co.jp/SonyInfo/News/Press/200509/05-052/index.html
□関連記事
【6月23日】ソニー、新経営陣就任会見を開催。新経営戦略は9月発表
-テレビやウォークマンに注力し、復活を期す
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050623/sony1.htm
【2003年6月10日】ソニー、「感動創造」に向けた新ブランド「QUALIA」
-HD対応プロジェクタや、高級SACDシステム、36型カラーモニタなど
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030610/sony1.htm

(2005年9月22日)

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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