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西田宗千佳の
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目指したのは「Blu-ray」に特化したレコーダ
-ソニー商品企画担当者が語る「BDZ-V9/V7」


BDZ-V9

 11月以降、Blu-ray Disc(BD)レコーダが順次発売される。そこで今回から数回にわたり、ソニーと松下のBDレコーダ、そしてBD戦略についてのインタビューの掲載を予定している。

 今回はまず、ソニーのBDレコーダ「BDZ-V9」、「BDZ-V7」について、ビデオレコーダの商品企画を統括するテレビ・ビデオ事業本部 ビデオ事業部門 商品企画部 商品企画1課 松岡賢次統括課長と、直接の商品企画者である高岡綾(りょう)係長に話を聞いた。


【BDZ-V9/V7の特徴と機能差】
型番BDZ-V9BDZ-V7
HDD容量500GB250GB
BDドライブBD-ROM再生対応
BD-R/RE 1層録画/再生(2層非対応)
チューナ地上/BS/110度CSデジタル×2
地上アナログ×1
i.LINKHDV/DV対応
HDMI出力
(1080p対応)
ホームサーバー機能-
おでかけ・
おかえり転送
-
専用高音質回路-
実売価格30万円前後25万円前後


■ 「劣化させたくない思い出」、パーソナルコンテンツのHD記録を重視

-ようやく「本格的BDレコーダ」を投入できますね。

テレビ・ビデオ事業本部 ビデオ事業部門 商品企画部 商品企画1課 松岡賢次統括課長(右)、高岡綾係長(左)

松岡:今が、いちばんいいタイミングだと思います。事実、このタイミングに向けてやってきました。8月末に映像ソフトの発表もありましたし、録画機としても、12月1日から地デジが全国に広がります。

 確かに、初代BDレコーダである「BDZ-S77」を発売してから3年半も経っていますので、よくご存じの方からすると「やっと」という感じかも知れません。環境としては、今がちょうどいいのかな、と思います。

高岡:今回の製品は、BDレコーダの実質1号機、といってもいいものですが、オーディオのクオリティや「おまかせまる録」といったアプリケーションの部分まできちんと、従来同様のクオリティで、使い勝手を重視して開発した製品です。

 放送エリア拡大のタイミングも重要ですが、パーソナルなコンテンツのハイビジョン化が進みつつある、というのも見逃せないポイントです。そのため、上位機種、下位機種両方にHDVカメラとの連動機能を付け、USBからのデジタルカメラ画像の取り込みも組み込んでいます。

 パーソナルなコンテンツを、「ハイビジョンのまま」ディスクに残していただく、というのが、DVDの時とは大きな違いだと思っています。

-他社は、カムコーダやデジカメで録った映像や写真などの「パーソナルコンテンツ」を、さほど重視してないように見えます。例外は、松下電器がデジカメの写真については積極的である、ということくらいでしょうか。松下のビデオレコーダの中のパーソナルコンテンツの位置づけは、どうなっているのですか?

松岡:アナログの時代は、写真や映像を撮った後、どうしようもなかったですよね。紙焼きもカムコーダも、そのままで残すしかなかった。しかし、デジタルになった瞬間に、映像も写真も統合可能になりました。

 その辺はPCが先行してきたわけですが、PCはパーソナルなものであり、リビングでみんなが囲んで……というわけにはいかない。

 ビデオレコーダなら、テレビを中心にみんなが集まって楽しむ、ということが可能になります。紙焼きが少なくなったせいか、最近はそういう皆で楽しむ姿を見かけることも減っていますよね。テレビに映れば、そういう場が広がるし、みんなで楽しむ、という世界を広げたいと考えているんです。

 ビデオが登場して30年くらいですが、やはり当初は「タイムシフト」をアピールしてきました。それはそれで非常に高い価値なのですが、さらにデジタルになったことによる価値観が創造できると思っているんです。

 ソニーとしては、それが「パーソナルコンテンツ」だと。もう、それを訴求できる時代になってきていると思うんです。

-それがどのくらいBDレコーダの拡販につながると考えていますか?

松岡:具体的な数字はありません。

 ハイビジョン放送を録画したい、というニーズは、もちろん非常に多いと思います。でもその一方、「テレビ録画なら、ハイビジョンじゃなくてもいいじゃん」という人がいるわけですよ。うちの奥さんなどもそうなんですけど。

 ユーザーさんの価値によって「観れればいいや」という人から、「そのまま劣化無く残したい」人まで様々なわけです。ですから、HDDやBDの容量を節約するために、いろんな録画モードが用意されています。

 しかし、パーソナルコンテンツって、結局は「思い出」です。これは、できることならばクオリティを落としたくない。マーケットリサーチからも、それをすごく感じています。

 だから、「高画質なデジカメが欲しい」とか「HDVで撮りたい」というニーズが出てくるわけです。やっぱり、子供の運動会の写真だとか、旅行に行ったときの思い出だとかがハイビジョンで残っているのに、DVDに書き込む時にはSD(標準画質)になるというのは、その人にとっては大きなマイナスだと思っています。テレビのハイビジョン放送をSDに落として保存する、というのとは違う受け止められ方をするんです。そういう声が非常に大きいんですよ。

 ですからBDレコーダでは「ハイビジョンコンテンツをハイビジョンのまま残す」ことについては、単純にアーリーアダプター向け、というだけじゃなくて、より広い層で望まれる、大きなメリットだと考えています。

-そこで気になるのが、AVCHDの扱いです。BDZ-V9/V7では、USBからAVCHDの映像を取り込むことはできない。ディスクについても、再生だけで編集やHDDへの取り込みはできません。それに対し、HDVは編集も可能。なぜ差があるのですか?

松岡:AVCHDのダビングについては、現時点では、BD-R/REでのフォーマットが完全に定まっていないため、入れていません。決して、技術的に間に合わなかったからではありません。

 HDVは規格が固まっていますし、従来のスゴ録が対応していましたから、まずはそこから対応、ということにさせていただいてます。今後、BDでのAVCHDフォーマットが定まった時は、マーケットの状況を見て、機能を搭載するか判断したいと考えています。



■ 2層は見送ったが「使い勝手」を重視

-BDの機能についてうかがいます。とても残念なのが……

松岡:2層(BD-R/REへの2層記録/再生非対応)ですよね……。

-はい。なぜできなかったのですか? せめて、RやREの読み込みくらいはできて良かったのではないですか?

松岡:正直なところ、2層読み書きの実現を目指していました。50GBのメリットは理解していますし、大きな目標ではありました。ニーズがあることも理解しています。期待していただいた方には申し訳ないと思います。

 今回は、2層の記録メディアも含め、正直技術検証の面で不安がありました。そのため、「中途半端になるより、まず1層でちゃんとやろう」と決断を下し、製品化をしました。ただ、実際の使われ方やメディアの値段を考えると、1層でも多くの場合大丈夫ではないか、とも考えています。

 価格対容量比で考えると、今は1層の方がかなりお得です。1層で、BSデジタルでも130分録れますし、実際には、いっぱいいっぱいの帯域で来るわけではないので、2時間半録れちゃうことも珍しくありません。地上デジタルなら、3時間くらい撮れます。

 DVDの使われ方を観ても、2時間以上が記録できて価格的にこなれた1層を使う、という場合がほとんどなのではないでしょうか。

 「それより長いのはどうするんだ? 例えば紅白とか……」という話は内部でもしたんですが、そういう時はHDDがありますから、例えば必要な長さに切ってもらうか、分割して保存する、といった対応が可能です。

 もちろん技術開発は続いていますから、状況を見て2層対応製品を発売していくことになると思います。例えば、今なら映画3本を1枚に入れる、という話もあります。そういうニーズや要望が多いようであれば、その時は製品に搭載していきます。

-書き込みはおっしゃる通りかも知れませんが、2層が読めないのはすごく残念です。正直妥協して欲しくなかった部分です。なぜダメだったのですか?

松岡:ROMとR/REは違うので、ROMが読めれば、とはならないんですが……。多少まだ、安定していないところがあるので、記録型ディスクの読み込みまでの対応はしなかった、ということです。もちろん、ROMの再生は安定しています。

-しかし、それが市場に与えるインパクト、はっきりいえば、「松下には出来ているのにソニーには出来ていない」ということが、ソニーのブランドイメージに与える影響が大きいと思うのですが。

松岡:2層対応については、指摘をされると思っていましたし、CEATECでもずいぶんとおしかりを受けました。

 だからといって単純にマイナスか、というとそうではないかな、と思っています。やっぱり、ソニーでないと製品化できない部分はありますから。松下とソニー、ということで比較されるとは思いますが、逆にウチにできて松下さんにはないものもあります。例えば、HDV対応もそうですし、BDへのダビング時のチャプター作成といった部分もそうです。

 重要なのは、ユーザーの方に不便をかけないこと、実用上問題がないことです。2層に対応できなかったのは残念ではありますが、現状の使い方を考えると、1層でも多くのニーズは満たせます。といいますか、それぞれの企業により、「レコーダで狙うところ」と「まず満たさねばならないところ」が違うと考えているんです。

-単純に「できるできない」の○×で語れるものではない、と?

松岡:そういうことです。メーカーにより向いている方向が違う、ということ。今回はこういう商品の方向性で、ユーザー様には出来る限りご迷惑はかけないようにしよう、という考え方で開発しています。

-それはどういう部分ですか?

松岡:これから各社が製品を出してくると、けっこう違いが出てくる部分だと思います。

 ソニーは、もうずいぶんとデジタルのレコーダをやっています。スゴ録はもちろん、PSX、さらに前ならClip-Onにコクーンと、様々な経験を経てきています。それを統合し、いまの「ハイビジョンスゴ録」に熟成させてきた、というのが現状です。

 ここまででやってきたものは、BDになったからといって機能削減はしたくない、というのが正直な気持ちです。じゃあ、ソニーが全部できていたかというと、そんなことはないのはよくわかっています。

 HDDに録らないとダビングできない機種も、CPRM非対応の機種も出してきました。そしてその都度ユーザーさんから、「これができないのではダメだ」というおしかりの声を受け、できる限り真摯に受け止めてやってきたのが、これまでの流れなんです。

 これが、BDになったからといって「機能は数年前のモデル並に戻りました」というわけにはいかない。なので、BDレコーダにはこれまでのスゴ録で実現できた機能は全部入れよう、ということで製品化しています。

 上位/下位機種の両方にデジタルチューナを2つ搭載した理由もそこにあります。下位機種では削る、とすれば安くはなるんですけれど、そこは妥協しない、ということです。

-ということは、ダビングや録画に関する機能については、DVDで出来ていることは全部BDでもできている、と考えていいわけですか?

松岡:はい。


■ SD映像も「TS記録」でBDダビングに特化

-そこで気になることが一つ。BDではフォーマット上、MPEG-2をTS(トランスポート・ストリーム)で記録します。しかし、DVDはPS(プログラム・ストリーム)です。

 DVD向けのSD画質で録画した映像をBDにダビングし、長時間を1枚に記録しようとすると、PS-TS変換が生じて、ダビング時間が非常に長いものになる可能性があります。このあたりの扱いはどうなっていますか?

【BDZ-V9/V7の記録モード】
録画メディアBDHDDDVD
記録モードDR-
XRXP
SRSP
LRLP
EREP

高岡:実は、今回のレコーダでは、HDD上では、SD映像であっても、すべてTSで記録しています。ですから、BDにダビングする場合には変換が不要であり、高速ダビングが可能です。

-ということは、DVDレコーダとは仕様が違うわけですね。

高岡:そうです。録画モードも新しくなっており、記録方式が違います。

-逆にいうと、DVDへのダビングやムーブの場合には変換が必要ということですか?

高岡:ディスクへの直接記録は従来通りPSです。しかし、ダビングの場合には、TSからPSへの変換が必要になりますから、時間がかかります。等速になります。

-これは、製品自身がBDへの記録に最適化されていて、DVDについてはトレードオフとなった、ということでしょうか。

高岡:そうです。

-他社だと、SDで記録したものはDVD用にPSとしているようですが……

松岡:それは製品の考え方の違いですね。この辺はおそらく各社相当悩まれると思います。BDはハイビジョンのTS向け、SDはDVD向けにPS、ということを選択するメーカーさんもあるでしょう。

 ソニーとしては「BDレコーダなのだからBDが最優先だよね」という発想です。1倍だと36Mbps、2倍だと72Mbpsで転送できますから、相当高速にダビングできます。

高岡:SD画質でも、DVDだといままで10Mbpsが最大レートでしたが、今回XRでは15Mbpsで録っているので、SDだけれどDVDでは残せなかった高画質で残せる、というメリットもあります。

松岡:この辺は、すごく長い時間をかけて議論をしました。我々の中でも、DVD向けにSDはPSで、という話もあったんです。

 でも、例えば、ドラマを何本かダビングするとします。DVDにダビングするなら、2、3本でしょうから最大で待っても2、3時間。しかし、BDだと1クール全部、十数時間ということになります。さすがにそれを等速ダビングで、というわけにはいかないでしょう。ですから、ここはDVDの時は我慢してもらっても、BDの大容量を生かし、その場合には高速ダビングで、という形にしました。

-録画時にTSかPSかを選ばせる、もしくは設定で切り替えられるようにする、ということも可能だとは思うんですが。

高岡:録画時のモード表示がものすごくわかりにくくなるんです。それに、ユーザー側でもダビング時になって、「これはDVD向け、これはBD向け、これはどれだっけ?」と判断が難しくなります。ですから、もうすっきりとわかるよう、割り切ることにしました。



■ S77の「殻付き」ディスクにも対応

ドライブのトレー部。BDZ-S77で録画したディスクを再生可能

-次に、再生部分について。BDZ-S77で録ったディスクにも、そのまま対応できますよね。

松岡:はい。コストはかかりますが必須と考えていました。特に、みなさんコピーワンスのコンテンツを録画されていますから、過去の資産を大切にするのはマストです。正直大変ですが、フォーマットとして推してきたメーカーですから。

-コピーフリーのものであれば、S77で録った映像を、HDDにダビングすることはできますよね?

高岡:はい。コピーワンスはダメですが。

-コピーワンスのコンテンツをムーブするニーズもありそうですが……

松岡:そこはARIBの仕様に従っています。いまはやってはいけない、ということになっているので。HDD対HDDであればなんとかなりますが、ディスクメディアは、認められていません。いまはそれに従っています。

 メモリー媒体に「おでかけ」して「おかえり」というのはやっていますが、光ディスクについては厳しいですね。

-IEEE 1394端子を使って、TSのムーブやダビングを受ける、という機能を、これまでのスゴ録シリーズでもやっていません。ユーザーのニーズとしては多いと思いますが、対応の予定はありませんか?

高岡:議論はしました。一番要望が多いのは、D-VHSへの対応ですね。しかし、コピーワンスになってしまったので、ムーブできないコンテンツも増えてしまいました。他社のHDDレコーダではムーブ対応のものもありますが、今のところは対応していません。

 また、ソニーのレコーダ同士についても、今後検討しなければ、とは思っています。

松岡:CEATECでも、この件はずいぶんお声をいただきました。D-VHSやRec-POTへの対応については、ニーズがあるのも理解しています。ただ、動作検証も難しく、すべてを「出来る」といっていいか……悩ましいところです。今回、特にRec-POTに関するお話をずいぶんいただいたので、考えなければ、と思ったのも事実です。

 ただ、今回の機種では出来ること、出来ないことが非常に多く、そこで不完全に対応してしまっても混乱を招きそう、という判断もあり、「今回はやらない」ということにしました。

 うちはこれまでTS出/入力をやってこなかったのですが、ニーズを考えると、検討しなければな、と思っています。



■ 30万円のレコーダにふさわしい画質を実現

-ROM再生クオリティについては、どのくらいを目指したのですか? 例えば、米国向けの単体プレーヤーやPS3に比べ、このレコーダの再生品質がどのくらいのところに位置づけられるのか? ということなんですが。

松岡:表現が難しいですね。もちろん、BDプレーヤー、BDレコーダ、PS3がそれぞれ全く同じクオリティが出るわけではありません。今回の機種については、家電機器として、録画もあり、ROMの再生もあり、という中で、ソニーが出しうる最高の画質を目指して作っています。30万円のレコーダを買っていただくわけですから、その価格に見合った、満足していただけるクオリティを目指しました。

 ただ、高級機のV9とV7では、音声出力などに関し、グレードに差をつけました。

-V9とV7の差はどうでしょうか? 特にV9は1080/60pに対応するための回路も組み込んでいます。この差がどのくらいになるのかが気になるところですが。

高岡:フルHD対応ではないテレビであれば、やはり大きくは違わないと思います。むしろ、V9は音声出力回路が良くなっているので、その分の差が大きいですね。

 フルHDの映像再生と、相応の音響再生環境が準備できる方であれば、やはりV9とV7の差ははっきりと体感していただけると思います。

BDZ-V9の背面端子 専用コンデンサなどを備えるBDZ-V9用高音質パーツ部

-音声再生について。HDMIからのドルビーデジタルプラスやDolby TrueHD、DTS HDの出力はどうなっていますか?

高岡:リニアPCMのマルチチャンネルで出力します。DTS HDについてはコアストリームを出力します。

-BD-Javaには対応していますが、BDのネットワーク機能には対応していません。この辺の「選択の基準」はなんですか?

松岡:もちろん、フォーマットとして必須なものは必要です。その上で、オプションとなっているものをどうするか、という判断になるのですが、重要なのは、「サービスとしてどのくらい準備がすすんでいるか」という点です。市場的なものですね。

 今回は、ネットワークは入れませんでした。フォーマット的にはオプションですし、マーケット上もどうなるのかはっきりしていませんから。

-地デジ用にEthernetは搭載しているわけですが、後々ファームウエアをアップデートして、BDのネットワーク機能に対応する、という可能性はありますか?

松岡:おそらく難しいとは思います。

高岡:わからない、というのが正直なところですね。

-上位機種はネットワークサーバー的な機能が多くて、下位機種はそうではない。この辺の棲み分けはなんですか? もしかすると、「そもそも高いんだからネットワークなんていらないから、安くしてよ」という声もありそうですが。

高岡:元々、スゴ録は「好みの番組をどんどん自動で録っていく」ということを志向してきたんですが、とり続けていくと、今度は消化できなくなっていきます。

 そこで、消化するための提案として、PSPで持ち歩いたり、ネットワーク経由で別の部屋で観たり、という機能を搭載しています。

-その発想は、DVD搭載機の上位機種と同じですよね? レコーダとしての方向性は同じ、ということですか。

高岡:そうですね。

-今の市場で、ビデオレコーダで自動録画とか編集機能を改善し続けているメーカーは減ってきていると思うんです。極論すると、毎回カタログにマニアックなまでに改善点を示し、ユーザーに大きくアピールするメーカーは、ソニーと東芝くらいになっている、という印象すら受けます。

 価格競争が激しくなっているから、という部分が大きいのだとは思うのですが、そういったソフトウエア技術的にコストがかかる技術の実装について、どのようなポリシーを持っていますか?

松岡:たぶん、うちの設計が、レコーダが好きだからですよ。ホントに毎日自分で使っていると、イヤなところが出てくるんです。そこで自発的に、「次はここを変えよう」という風に提案が出てくるんですよ。

 正直そういう改良って、もうカタログや店頭で「ダーン」と打ち出せるようなものではなくなっているのかも知れません。「瞬間番組検索」で、番組を瞬時に探せますよ、といっても、なかなか伝わるものではない。

 でも、買って使ってみると、そういうことができないというのはイヤなんですよ。だから直している、というのが正直なところです。もちろん、無尽蔵にお金がかけられるわけではないので、許せる限り、という範囲でですが。

 「簡単」、「つかいやすい」というキャッチフレーズでも、本当に使ってみるとそんなに使いやすくない製品、って多いですよね。「本当の簡単ってなんだろうね」という話は良くするんです。「自然に使うには、気持ち良く使わせるには」みたいなことで、チマチマと直している部分はあります。

 でも、これって商品としてはベースの部分で、ソニー全体でのレコーダ戦略とはまた違うところかな、と考えています。



■ 「スゴ録」ではなく、あえて「Blu-ray」を前面に

-DVDレコーダとBDレコーダの棲み分けについて。ブランド名も「スゴ録」ではないですし、デザインもずいぶん違います。今後、両者はどう棲み分けていきますか?

松岡:やはり、BDは「ハイビジョンでそのままディスクに残せる」のは大きいです。ですから、DVDレコーダと同じ機能になるか、というと違ってくるでしょう。

 ただし、レコーダとして考えると、ソニーとして目指しているものはあるので、似たところは出てくるでしょう。最終的にはBDになっていくでしょうが、いきなり全部、とはいきません。いまでも、アナログチューナだけの製品も売れていますからね。価格なども含め、これからも選択されていくでしょう。

-ブランド名が「スゴ録」ではない理由は?

高岡:スゴ録を名乗るのも考えたんですが、今回は「Blu-ray Disc」という言葉自体の導入時期なので、まずは名前を覚えていただけることと、「ハイビジョンを残す」ということで「Blu-ray Disc」を押し出していこうと。

松岡:ブランドを変える、変えないの問題ではないんです。DVDとBDの違いが理解できますか? というところまで考えると、まずは「Blu-ray Discって何」ということを理解してもらうのが一番だと思うんです。DVDが出た時に、「DVDでなにができるか」ということを知ってもらうところから始めたのと同じですね。

 ソニーがBlu-ray Discの「スゴ録」ではなく「ブルーレイディスク・レコーダー」を出した、というところで、ブルーレイディスクという名前を覚えてもらうのが最初だと思ったんです。

 マーケティング的には「ブルーレイ スゴ録」でいきたい、という話もありましたし、もちろん、これまでに培ってきた機能を搭載しているので中身的にはそう呼んで差し支えない出来にはなっていると思います。

□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.sony.jp/CorporateCruise/Press/200610/06-1003/
□製品情報
http://www.sony.jp/products/Consumer/BD/product/
□関連記事
【10月3日】ソニー、Wチューナ/500GB HDD搭載のBlu-rayレコーダ
-BDビデオ再生対応。上位モデル30万円。250GBは25万円
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20061003/sony1.htm

(2006年10月26日)


= 西田宗千佳 =  1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、「ウルトラONE」(宝島社)、家電情報サイト「教えて!家電」(ALBELT社)などに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。

[Reported by 西田宗千佳]



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