松下電器には、「ミスターBD」と呼ばれる人がいる。同社蓄積デバイス事業戦略室の小塚雅之室長である。小塚氏は10年前のDVD立ち上げから、Blu-ray Discの規格策定まで関わり続けているキーマンの一人だ。 松下がBDに込めた思い、そしてその戦略を聞いた。 ■ 2004年までは「笛吹けど踊らず」 -BDの立ち上げ、予想以上に時間がかかりましたね。
小塚:BDは、技術としては2001年には完成していたんです。その頃私は、ハリウッド研究所(PHL)に在籍し、エンジニアとしてアプリケーション側のフォーマット検討を行なっていました。
しかしその頃は、ハリウッドのスタジオが全然積極的ではなくて。それも当然なことで、アメリカではDVDが出たのは'97年のことですから、まだ4、5年しか経っていませんでした。「DVDが好調なのに、なんでそんな話持ってくるのか?」というのが、スタジオ側の言わざる本音、というところだったと思います。 一生懸命やったんですけれど、全然決まらないんですよ。上層部からもずいぶんせっつかれました。 -もめる、とかいうことではなく、積極的でなかった、というわけですね。 小塚:そう。全然積極的じゃない(笑)。やりたくない人に言っても、そりゃあ進まないですよね。当時、次世代DVDのラウンチ時期を、ワーナーブラザーズやソニー・ピクチャーズが2005年、ユニバーサルとかディズニーあたりは2007年と予想していました。 実際には2006年にスタートできました。彼らの予想の真ん中くらいなので「言ったとおりにスタートできたかな」と。そんな感じですね。 -むしろ、2年前にレコーダーを出したのが、かなりフライング気味だったということですか? 小塚:映画コンテンツという意味ではフライングです。ただ、もう日本ではBSデジタルも地上デジタルも始まっていましたし、録画用を作りたい、という考えはありました。国内のマーケティングサイドからの、「アテネオリンピックに間に合わせたい」という強い要望もありました。 当時我々が考えていたのは、「VHSのビジネスモデルもあるな」ということです。VHSは元々、映画のために作ったものではないです。タイムシフト用で、たまたまFOXさんがパッケージのレンタルを始めたら、これがきわめて大きなビジネスになった。スタジオさんがすぐには乗り気でないのはわかっているから、VHS型のビジネスモデルで、ある程度普及したら入ってきてください、みたいなことも、FOXさんなどには言いました。
実際にBDA(Blu-ray Disc Assosication)が活動を始めたのは2002年くらいのことです。まだDVDが活況なので、ものすごくオーサリングの現場が忙しいんですよ。そこにフォーマット原案をもっていって「ブルーレイ用を作って」といっても、「忙しいから明後日来い」って言われまして(笑)。 我々も、「DVCC」というオーサリングスタジオをもっていて、Aランクタイトルを中心に3,000本くらい作っていました。そこでの経験から、フォーマット自体は、できるだけDVDを扱ったことがある人が、すぐにBDを扱えるようにと考えました。ただ、メディアが変わるわけですから、見栄えを変えたい、という気持ちはありました。そこで、ポップアップメニューを組み込みました。そこまでを1年くらいで作ってしまい、オーサリングシステムも作って「いつでもできるぞ」という感じにしました。それでもなかなか動いてくれない。 ところが今度はスタジオ側が「もっともっと機能が欲しい」と言い出したんですね。そこでJavaを入れました。Javaはプログラム言語ですから、互換性の維持が大変になる。時間がかかるんですよ。マイクロソフトさんみたいにOSを作ってプレーヤーも作って(HD DVDのHDi)、という形だと互換性を保つのが簡単なんですけど。ソニーさんもシャープさんもウチも、LSIは違いますし。OSはどこもLinuxだと思いますが、アプリケーションは違いますから、互換性の検証のために色々なことをやらなければならなくて、時間がかかりました。 -ハリウッドが次世代DVDに舵を切ったのが海賊版の問題だと言われますが。 小塚:それだけじゃないと思います。やっぱり「儲かるかどうか」が一番大きいですよ。数年間ハリウッドと付き合ってわかったのは、彼らに言うことを聞いてもらうのは「儲け」と「脅威」の両方がそろわないと。片方だけじゃだめです。海賊版への脅威だけでなく、より儲かる、というということが重要です。FOXなどが言っていたのが「ハイビジョンテレビの世帯普及率が10%を超えたら商売になる」ということ。実際に2004年から5年くらいに超えた結果、風向きが変わりました。 もう一つは、DVDの販売量が落ちてきたこと。2004年から5年の間に、DVDのタイトル数が減ったんです。売り上げも伸びない。オーサリングをやっているとわかるんですが、タイトルが枯渇したんです。いわゆるA級タイトルが減って、B級、C級、それにテレビ番組が増えた。こうなると、数は増えるんだけど単価は減ります。 結果、「やっぱりDVDはそろそろやばい」という雰囲気がでてきて、次世代DVDに関する議論が本格化しました。 ■ 「著作権保護」にはバックアッププランも 小塚:でも、一番手間取ったのは、やはり著作権保護規格の策定ですね。 -「AACS」ですか? 小塚:時間かかるのはわかるんですよ。DVDは海賊版が多かったですからね。DVDの時代は、ココム規制の問題で、54bit以上の長さの暗号鍵を、民生品で使ってはいけなかったんです。まあ、それ以外にも技術的な問題はありましたけど。そのあと輸出規制も変わりまして、AESの128bit暗号が使えるようになりましたから、かなり強固にはなりましたね。AACSもこれです。 だだ、CSSは技術が悪かったというよりも「どうやって守らせるか」という部分が悪かったんですよ。 -それはどういうことですか? 小塚:CSSは、「契約」ベースで守らせようとしたんです。日本人のようにちゃんと契約を守るところだけだったら、別に契約ベースでいいんです。何の問題もなかった。でも今回の場合は、著作権保護が嫌いな人々、特に北欧の方々なんかが(笑)、契約を考えずに破っちゃった。 そのためBDでは、ちゃんと契約を守る人だけを対象にしてもダメだ、ということになったんです。僕たちは主に20世紀FOXとビジネスを行なっているんですが、特にスターウォーズなどのA級タイトルでは、やっぱり彼らはいい画質のものを出してくれるんです。でも、それが盗まれたら終わりですよね。特にHD映像では。 FOXの責任者が言うわけですよ、「おまえの会社は信頼する。しかし、他の会社のものが破られたらどうする? 契約していない第三国の会社が穴だらけの製品を作ったらどうする? そして、そういうのを安くウォルマートあたりで大量販売されたら? 松下やソニーはそういうことはないだろう。しかし5年も経てば、そういう会社が出てくるのは避けられないだろう。だからバックアッププランを出せ」と。 彼らが言ってることは理解できます。そこで用意したバックアッププランが「BD+」です。BD+は誤解も多いんですが、基本は単純で、「ハックされたプレーヤーでの再生を止める」仕組みです。ハッカーが自分のマシンだけでプロテクトを解いて遊んでいるだけなら、それほど問題ではないんですよ。一番恐れているのが、ハックの仕方やPCなどのためのソフトウエア・プレーヤーを配布してしまうことです。 そういうものがネットに流れたら、BDAのBD+を作っている部門がチェックします。すると、その改造の仕方がわかりますよね。そうなったら、新しいディスクに関しては、再生前に既知の穴を持つプレーヤーかどうかをチェックし、穴があったら再生を止め、穴がなければ再生を行なう。穴があったら、「このプレーヤーはハックされています。FOXとしては再生を許可できません。問題がある場合には返品してください」と表示して、再生を止める。まあ、そういう仕組みです。 -この辺、色々と誤解が広がっていますね。要は止めるための技術、ということですか。なにか、もっと複雑で実装が大変なものという理解だったのですが。 小塚:それは、初期にはもっと複雑だったからですね。CRI(Criptgraphy Research Inc、国内の同名の会社とは無関係)という会社の技術で、DVDフォーラムにも提案が行なわれました。その時彼らは、非常に複雑で広範な技術を提案したんです。暗号システムの書き換えも含め、なんでもできる、という触れ込みで。 しかし、家電ハードウエアでは、リソースが限られていますから、そんなに複雑な仕組みは実装できません。そこで「やりたいことは何なのか? 必要な物は何なのか? 」ということを真摯に議論して、ボトムラインを決めたんです。FOXの主張は、「最悪、ハックされたプレーヤーでの再生を止めたい」ということでした。ですから、結局「止める技術」ということに限定して実装しました。だから、初期に言われていた内容に比べると、かなりサブセットになってますよ。 最初の頃、DVDフォーラムの中で議論されていた内容はとにかく複雑で盛りだくさんなものだったので、マイクロソフトさんやインテルさんはかなり怒っていましたね。いま彼らがBD+に関して主張している批判は、当時の状況に基づくものです。 -筋が悪いとか、二重のコストだとか、非常に強い調子で非難していますね。 小塚:正直、そういう誤解に基づく非難です。インテルもマイクロソフトもBDAに入っていないから、正確な情報が伝わらないんですよ。だから、間違った情報を元に非難されてしまう。マイクロソフトさんは情報にアクセスできませんし、片方に肩入れしすぎていますから。 -著作権保護を決めるのに時間がかかった理由はなんですか? アナログ出力問題などもありました。一番もめていたのはどういうところですか? 小塚:全部ですね。特に、アナログ規制はすごくかかった。我々としては、日本でこれだけD端子搭載テレビがある以上、社会的責任もあるしBDになったからつながりませんよ、では通りませんよね。ちゃんとソニーさんとも、東芝さんとも話しました。それはフォーマットが違うとかの問題ではなく、テレビメーカーとしての責務だろう、と。 ARIBの規定に似たものがありましたから、それをうまく活用することにして、「HDMIでなければダメだ」ということが書いてある部分には、除外規定を設けてなんとかしました。ここについては、かなり松下はがんばったと思っています。
-とすると、「DMR-BW200/BW100」は、結果的には、日本でも世界的にみても、ちょうどいいタイミングでラウンチできる、ということですか。 小塚:そうですね。本当をいうと、商品は10月中くらいに出ていたほうが、年末商戦を考えると理想的だったんでしょうけど。 -2層対応で、ソニーとの間で技術的な差が出たわけですが、なぜだと思いますか? 小塚:我々は2年前の「DMR-E700BD」でも2層対応をしていました。その時と、技術的には大きく変わっていないんですよ。ただ、当時はとにかく早く出したいので、ツインドライブ構成(BDとDVDスーパーマルチの2つのドライブを内蔵)にしましたが、そうしてでも2層対応したかった。今回は、1年以上ありましたからヘッドから再設計して、1ドライブで対応しました。レーザー以外はすべて自社で作れるのも強みです。 もう一つ、大きな要因だろうと考えられるのは、我々がメディアの開発・製造もやっている、というところです。当初、2層メディアを作れるのは我々だけでしたから。ドライブの開発にはメディアが必要なわけで、その両方をもっていることは、大きなアドバンテージになったのは間違いないでしょう。 ■ 技術でなく「画質」から規格を決める 小塚:規格の中で、個人的に一番こだわっている点を解説しましょう。
光ディスクではよく「何倍速」という言い方をするじゃないですか。元々、BDは36Mbps。ROM規格を決める時には、映像や音に割り当てられるビットレートから、何倍速での転送を基本とするのかを定めます。ドライブ技術から判断すれば、普通なら基本だから1倍速、ということで36Mbpsに決まりますよね。 でも、BDビデオの転送レートは1.5倍速の54Mbps。1.5倍なんて半端でしょう? 別に、光ディスク技術の事情で決めたわけじゃないんですよ。規格策定時、我々はスタジオにも参加してもらい、エンコード実験をしました。普通の絵ならいいんですけれど、難しいものだとどうしても40Mbpsを超えてしまうんです。だから映像で最大40Mbpsは守ろう、となった。そうすると、音声など諸々を加えると50Mbpsくらいは必要になります。となると、ちょうどいいのが1.5倍。ここから決まったんです。 ところが、HD DVDはそうではない。2001年くらいにワーナーと東芝は、現行DVDを3倍速くらいで回して、そこに記録しよう、という方式を検討していました。3倍速というのは、動作音などの問題から、家電機器では限界、とされる速度です。すると、ビットレートは30Mbpsになります。HD DVDのROMでの最高ビットレートである30Mbpsというのは、実はそこからきているんです。それで、画質が良くなるでしょうか? 結局重要なのは、どこまで画質にこだわりがあるか、ということです。僕がBDをやらせてもらう時、最初に考えたことがあるんです。次の「スーパーハイデフ」のディスクフォーマットがあるかわからないので、もう徹底的にやろうと。BDでは、そのまま映画館でかけても遜色ない映像を再現したい、と考えました。 -そこまで画質にこだわった理由はなんですか? 小塚:DVDをやったときに、色々な後悔を感じたんです。当時はテレビがまだCRTだったので「十分きれいだな」と思っていたんですが、HDTVが出てくると、「あれ、なんかダメだ」と感じるようになりました。なんかぼけていて、満足できないんですよ。 テレビはどんどん質が良くなっています。もちろん、テレビのエンジニアががんばっているからなんですが、現在は、1年経つだけでぐっと良くなっていきます。でも、ディスク規格は簡単に改良できない。買った映像ソフトを久しぶりに見ると「あれ、こんなもんだったのか? 」とがっかりすることもある。レーザーディスクなんかがそうでしたね。DVDもそうだった。そういう体験をしてきたので、「こんどこそは後悔したくない」という思いがあるんです。 そんなに画質にこだわらない映画会社なら別ですよ。でも、心ある映画会社と組むのであれば、後悔しないようなものを作りたい。極端にいえば、志が違います。 -作りやすいとかそういうことではなく、「お客様に最高のものを届けたい」という心が大切だと? 小塚:そう言いたいですね。それが最初の発想。もちろん、自分が最高のものを楽しみたい、ということでもあるわけですが。私も一人の映画ファンですから。先日、自腹で58型の「VIERA」を買いました。 ■ 「音を良くする」ためにもH.264にこだわる -ソニーとの違いとして、松下はオーサリング時のコーデックとして、H.264(MPEG-4 AVC)に力を入れていることが挙げられます。これはなぜですか? 小塚:MPEG-2だけにこだわってなかったんですよ。そりゃあ中には、「なんで高圧縮のコーデックを入れて、HD DVDに塩を送るようなマネをするんだ」なんてことも言う人もいましたけれどね。でも、我が社でMPEG系技術をずっと手がけてきた高橋俊也(現本社R&D部門AVコア技術開発センター知覚AVグループ・グループマネージャー)から、「技術が新しければ絶対良くなる。アプリケーションもBDだけでない。いいものは入れておかないと絶対後悔する」と言われまして。なので、フォーマット確定時に、無理矢理最後に入れました。 私はその時、BDAの中で、画質を決める分科会のチェアマンをやっており、色々とテストを繰り返していました。正直、最初H.264という技術は、あんまり評価されていなかったんです。モバイル系の小さな解像度に特化していて、大きな画面ではあまり画質が良くなかった。 しかし、DVCCや、エンコーダばっかりやっているスタッフがいる。そうしたノウハウを生かしたかった。彼らはエンジニアだけれど、パソコンの画面じゃなくて、スクリーンを見て、本当に画質にこだわっている。最終的に、Main Profileを拡張した「High Profile」ということで、導入できました。やはり、H.264にこだわると最終的には全然違ってきますよ。 -じゃあ、後悔はもうない? 小塚:画質に関してはないですね。あとは、マスターの問題です。ヘンなマスターにへんなオーサリングでは、画質も良くなりようがないですから。そういう意味では、できるだけ慎重にやっていただきたいところですね。 -映像ソフトに「このソフトはPHLでの高画質マスタリング」といったブランドを付けることもできるんじゃないですか? 小塚:FOXさんにはテロップの最後に入れてもらうことにしました。ただ、ディズニーさんはブランドポリシーから入れてもらえないんですよ。ダブルブランドになるから、ということで。 コーデックについても、MPEG-2なのかH.264なのかを、パッケージに入れてもらえるようにお願いしているんです。映画会社は、H.264ばかり売れるようになっては困るので、いやがりましたけどね。とはいうものの、画質についてはコーデックの種類より、マスター品質の方が効くとは思います。 -画質面でのオススメタイトルは? 小塚:まずは「南極物語」。特にオープニングがきれいで、びっくりしました。「X-MEN3」もきれいですね。「リーグ・オブ・レジェンド」は、BD-Javaによる凝ったオーサリングも魅力です。その分、発売が少々伸びたようですが。「スピード」もいいですね。ここで挙げた他の作品と違い、少々古く、マスター品質が悪かったので、一生懸命努力してグレインを残しています。ビットレートも、他より高めです。 -映画ファンとしては、リージョンが北米と同じになったことが、この上もなくうれしいのですが…… 小塚:FOXとさんざんやりあった部分です。でも、こだわって「絶対折れない」と主張して実現しました。「これができないんだったらもうやめちゃう」というくらい。 DVDの時には、明らかに国際版とアメリカ版とでは画質が違う、というものがありました。しかしブルーレイでは、基本的にみんなアメリカで作っていますから、画質が違う、ということはなくなりますね。日本の消費者にとってはうれしいことです。実ははじめ、東アジアでは日本だけリージョンが違ったんですよ。韓国はリージョン1なのに。だからさんざんケンカしました(笑)。 それに、映像がきれいになったのだから、音もこだわりたい、という発想もあります。実は、最初私が作ったBDのスペックというのは、映像にはとことんこだわったけれど音声はDVDと同じ仕様、というものだったんです。要は、ロスレスが入っていなかった。しかし、今回映像をH.264で圧縮することにしたおかげで、ロスレスまで入れることができるようになりました。やっぱりロスレスを入れると、それだけで6Mbpsくらいとってしまいます。結局、MPEG-2だけでやるとなると、最終的に音声のための帯域が足りなくなる、ということになるでしょうね。H.264になったことで音質が良くなったわけで、結果的にはみなさんハッピーだと思います。 HD DVDを観ても、結局はほとんどが2層で、映像はVC-1、音声はロスレスという形です。もう、今後の映像ソフトは、ほとんどが音声はロスレスになり、特にオペラやミュージカルが好きな人には、全然違うということになるでしょう。 あとはボーナスコンテンツ。古いタイトルは、メイキングをSDで録っていますけれど、新しいものはメイキングまでHD撮影なんですよ。例えば、ディズニーの「南極物語」は、音声がロスレス、メイキング映像までHD、1080pになっています。結局、容量はたくさんあれば使ってしまうものなんです。本編2時間半にボーナス30分でもう3時間。これで、30GBでは入らなくなりますね。 DVDの時もそうだったでしょう? 最初2層は高くて、実際2年くらいは、ウチくらいしか作れなかった。でも今は、大きなタイトルで2層以外はほとんど無い。その上で、さらに特典映像で1枚。結局、容量は大きい方がいいんです。
-これからBDフォーマットの策定に関し、やっていかなくてはいけないことは? 小塚:インタラクティビティですね。特に、アメリカではブロードバンドがまだ普及していない。そこで、パソコンでなく家電で楽しめるようなものを提案したい、という意識はあります。 BDには、バーチャルパッケージという考え方があるんです。いつも買った時と同じコンテンツしか観れない、というのはつまらないじゃないですか。3カ月後に再度再生したら、新しいトレイラーがダウンロードされて観られる、というような変化があれば楽しくなる。 字幕にしてもそうですね。米国では、日本語や中国語の字幕を必要とする人はそういないでしょう。だから、ディスク内には英語とフランス語、スペイン語くらいしか入っていないかもしれません。しかし日本人が観る時には、ネットから日本語字幕をダウンロードし、それで観られるようになれば便利ですよね。フォーマット上ではこういったことが可能になっているのですが、現在はまだできていません。ですから、ぜひ今後実現させたいと考えています。 あと、日本だとテレビポータルを各社共同でやっていますから、それらとの連携もやってみたいですね。 ■ コストは変わるが「物理法則」は変わらない -CEATECのパネルディスカッションでは、「フォーマット戦争は終わっている」とのコメントもされていましたが?
小塚:そう思っていますよ。少なくとも日本では。日本はレコーダーがビジネスの中心じゃないですか。そこでのメリットを考えると、全然違いますよね。BSデジタルのいい映画を撮ろうと思うと、キャパシティは必要です。ロード・オブ・ザ・リングなんて、完全版は4時間半。BDじゃないと入らない。 ただですね、別にフォーマット戦争やっているつもりはないんです。正直、質を保てるならフォーマットなんてどっちでもいい。いいものが出したい。必然性があってやっていることなんです。 光ディスクの技術というのは単純なもので、高密度化するには、レーザーの波長とレンズでの収束の2要素しかないんです。より収束させ、大容量を記録するなら、レンズからの距離は短くないといけない。だから、ディスクのカバー層は薄くなるのが当然なんです。事実、CDから世代を経るたびに薄くなってます。 ディスクの価格は、技術開発と量産効果で変わります。最初は確かに高かったですけれど、いまはスピンコート法により、かなり安くなっています。シート法の時代には50セントかかっていたものが、スピンコートなら2、3セントになっている。ROMだけでなく、RやREもスピンコートを使いますから、コストは劇的に下がります。 それに、ディスク製造メーカーも、BD陣営の方が多い。メーカーが多い方が、切磋琢磨して価格は下がります。物理法則は変えられない。けれど、コストは変わるんです。最初からコストのために妥協するなんて、ナンセンスですよ。 最終的にはお客様の判断ではありますが、品質には自信があります。繰り返しになりますが、別にフォーマット戦争やっているつもりはないんです。いい画質の映画が観たい。それだけです。 □松下電器産業のホームページ (2006年11月2日)
[Reported by 西田宗千佳]
AV Watch編集部av-watch@impress.co.jp
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