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第244回:アニメの次世代ディスク化、本格スタート
BD/HD DVD版「パトレイバー」「オネアミスの翼」

 「買っとけ! DVD」として連載を続けてきた本コーナーですが、HD DVDやBlu-rayタイトルのリリースが開始されたこともあり、今後は、紹介するタイトルをDVDだけではなく、HD DVDやBlu-rayタイトルにも広げます。コーナータイトルは、取り上げるフォーマットにより、「買っとけ! DVD」、「買っとけ! HD DVD」、「買っとけ! Blu-ray」と変化します。
 コーナーのコンセプトは従来から変更なく、編集スタッフ各自が実際に購入したソフトを、思い入れたっぷりに紹介します。「Blu-ray/HD DVD発売日一覧」と「DVD発売日一覧」とともに、皆様のAVライフの一助となれば幸いです。


■ 押井アニメが多い

機動警察パトレイバー
劇場版 BD/HD DVD版

王立宇宙軍
オネアミスの翼 BD/HD DVD版

※画像はどちらもBDビデオ版
(C)BANDAI VISUAL/GAINAX
(C)1989 HEADGEAR/BANDAI VISUAL/TFC
発売日:2007年7月27日
【機動警察パトレイバー 劇場版】
価格:「BD+DVD」10,290円
    「HD DVD+DVD」10,290円
品番:「BD+DVD」BCXA-0003
    「HD DVD+DVD」BCHA-0002
【王立宇宙軍 オネアミスの翼】
価格:「BD+DVD」10,290円
    「HD DVD+DVD」10,290円
品番:「BD+DVD」BCXA-0002
    「HD DVD+DVD」BCHA-0001
【BD仕様: 2作品共通】
画面サイズ:ビスタサイズ(MPEG-4 AVC)
音声:(1)日本語(ドルビーTrueHD 5.1ch)
    (2)日本語・劇場公開版音声
      (リニアPCM ドルサラ)
    (3)英語(DD ドルサラ)
【HD DVD仕様: 2作品共通】
画面サイズ:ビスタサイズ(VC-1)
音声:(1)日本語(ドルビーTrueHD 5.1ch)
    (2)日本語・劇場公開版音声
      (リニアPCM ドルサラ)
    (3)英語(DD+ ドルサラ)
    ※パトレイバーは5.1ch
発売元:バンダイビジュアル

 日本でBlu-ray DiscビデオとHD DVDビデオソフトの発売が開始されてから、「アニメソフトの充実はいつ頃になる?」、「アニメの○○をBD/HD DVD化して欲しい」という声が多く上がっていた。アニメファンが多い日本ならではの現象であり、2006年12月という早い段階で「『AIR』Blu-ray Disc BOX」が発売されたのも日本らしい新フォーマットのスタートだったと言えるだろう。

 そんな中、バンダイビジュアルが7月27日から国内向けにBD/HD DVDビデオの投入をスタートする。同社は北米向けHD DVD「FREEDOM 第1巻」を、通販サイト「.ANIME」で日本向けにも6月26日から販売しているので、正確には第1弾タイトルとは言えないが、「FREEDOM」はメニューなどが英語の北米盤なので、7月発売タイトルを「本格投入第1弾」と表現しても問題無いだろう。

 7月27日に発売されるのは「王立宇宙軍 オネアミスの翼」(オネアミス)と「機動警察パトレイバー 劇場版」(パト1)の2作品で、BD/HD DVDの2フォーマットでリリース。続く8月24日には「機動警察パトレイバー2 the Movie」がBD/HD DVDで、「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」、「スチームボーイ」がBDビデオでリリース。9月25日には「アヴァロン」と「人狼 JIN-ROH」のBDビデオ化が予定されている。なお、「AKIRA」のBDビデオ版も7月27日に発売される予定だったが、既報の通り仕様変更などで延期になっている。

 ラインナップで気付くのは、9月までに押井守監督の代表作が、ほとんど次世代ディスク化されるということだ。押井監督は以前の取材で「私の作品は、新メディアが登場するとなぜか真っ先にパッケージ化され、さらに買いなおしてくれるお客さんが多い」と語っていたが、コアなアニメファンだけでなく、映画ファンにも高く評価されている作品が多いため、現在次世代ディスクのプレーヤーを所有しているユーザー層とマッチすると判断されるためだろう。いずれにしても、スタートから非常に気合の入ったラインナップと言える。

 もう1つの特徴は、いずれのタイトルにも次世代ディスクに加え、新たに制作されたリマスター版のDVDが付属しているということ。つまり「BD + リマスターDVD」、もしくは「HD DVD + リマスターDVD」という組み合わせだ。そのためか、価格は各10,290円とかなり高価だ。

 いつもの「買っとけ」では、購入した1タイトルを紹介しているが、今回は特別編として「オネアミス」と「パト1」の両方を、BD/HD DVDビデオの2フォーマットを購入した。発売日前日の7月26日に新宿のヨドバシカメラに向かったところ、特設コーナーが設けられていた。「箱を持たずにレジでタイトル名を言ってください」と書かれていたので、レジで「オネアミスとパト1の次世代ディスク版をください」と注文。「ブルーレイとHD DVDどちらですか?」と聞かれたので、「両方で」という、はたから見ると豪気な買い物となった。

 なお、両作品/フォーマットともに、白を基調としたBOXケースに収納されており、パッと見で見分けがつきにくい。購入時はBD/HD DVDのフォーマットマークを良く確認してからレジへ持って行こう。


■ DVDとは次元の違う画質

 いつもならばストーリー解説などを行なうところだが、どちらも20年近く前の作品であり、アニメファンにとっては「定番」ともいえる作品なので、今さら解説することもないだろう。今回はその画質/音質のクオリティを、スクリーンショットも交えて見ていきたい。

 まず映像から。BDビデオ、HD DVDビデオ、リマスター版DVDの3種類が存在するわけだが、そこに既発売のDVD(従来版DVD)を比較用に用意。全部で4種類のディスクを比べてみた。

 具体的には両作品から3つのシーンを選び、さらにシーンの一部分を抜き出して比較する。サムネイルとして掲載しているのは、切り取ったシーンから等倍でさらに抜き出したものだ。再生機器はBDビデオが「PLAYSTATION 3」(PS3)、HD DVDが「RD-A600」、DVD再生にはアップスケール機能を利用するため、PS3を選択している。

 表は上下段に分かれており、上段左からBDビデオ、HD DVDビデオ。下段はDVDで、BD/HD DVDと比較しやすいように、PS3でのアップスケーリング再生を行なったものだ。スケーリングモードはアスペクト比を維持しながらパネル解像度(ここでは1,920×1,080ドット)まで引き上げる「ノーマル」と、単純に元ソース解像度の2倍にする「2倍」モードで検証する。

 下段の並び順は、左からリマスターDVDの「ノーマル」モード、従来DVDの「ノーマル」、そしてリマスター版の「2倍」、従来版の「2倍」となっている。アップスケーリングの品質は「2倍」が最も高画質になると言われているが、スケーリング後の解像度が低くなってしまうため、BD/HD DVDとの画質比較では「ノーマル」を参考にすると良いだろう。

● 機動警察パトレイバー 劇場版

 「パト1」からは、冒頭、自衛隊の空挺レイバー部隊がパラシュート降下してくるシーン。中盤、シゲさんの下宿部屋のシーン。終盤、野明が乗り込むイングラムのコクピットだ。いずれも黄色い枠の部分を抜き出している。降下シーンではレイバーの足の裏の描き込み、シゲさんの部屋では置かれている機材の輪郭、コクピットシーンでは解像感と同時に色味にも注意して見比べていただきたい。

降下 シゲ下宿 野明
(C)1989 HEADGEAR/BANDAI VISUAL/TFC

シーン BD HD DVD
降下
シゲ下宿
野明
(C)1989 HEADGEAR/BANDAI VISUAL/TFC
シーン リマスター版DVD
【アップスケール/ノーマル】
従来DVD
【アップスケール/ノーマル】
リマスター版DVD
【アップスケール/2倍】
従来DVD
【アップスケール/2倍】
降下
シゲ下宿
野明

(C)1989 HEADGEAR/BANDAI VISUAL/TFC

 降下シーンではBD/HD DVDビデオの暗部情報の豊かさに驚かされる。リマスターDVDの情報量はDVDとしては高く、足の裏の描き込みも判別できるが、BD/HD DVDと比べるとぼやけた画像になっている。BD/HD DVDでは線の輪郭もシャープで、形状が容易に判別できる。「高画質になった」というよりも、「まったく別の映像」と言えるほどの違いだ。

 新旧のDVD比較では、従来DVDは完全に黒つぶれしている点に注目。特に画面左側のレイバーは、そこにレイバーがいるのかどうかもよく分からない、黒いカタマリになってしまっている。リマスター版ではかろうじてレイバーだとわかるまで解像されており、リマスターDVDで大幅に画質が向上していることがわかる。

 シゲさんの部屋では、機器やコード類の輪郭、左上に置かれたうちわの骨組みなどで、解像度の違いが実感できる。注目すべきはリマスター版DVDと従来DVDの違いで、リマスターDVDは情報量は多いものの、全体的にソフトフィルターがかかったような、ボワッとした映像になっている。境界線が不明瞭で、擬似輪郭もリマスター版のほうが多い。従来DVDはストレートな画質だが、全体的に色がつぶれ気味で、輪郭線が機材のボディの色の埋もれてしまっている。

 コクピットシーンでは背後の機器で解像度の違いがよくわかる。また、色味の違いに注目。リマスター版DVDはBD/HD DVD版とほぼ同じ色調だが、従来のDVDは青みが強く、紺色に近い色調になっている。「リマスターDVDは、BD/HD DVD版のために作られたHDマスターを元にしている」という説明を頷かせる色合いの一致だ。

 気になるのはBD/HD DVDの画質差だが、画面を静止した状態ではほとんど違いがわからない。動画再生中にはBD版の方が若干ノイズが多いような気もするが、再生機器による違いもあるのでソースの差かどうか判断できない。PS3ではビットレートの確認がリアルタイムで行なえるが、「RD-A600」ではできなかったため、数値的な比較も難しい。映像を見る限りは「ほぼ同じクオリティ」と言って間違いないだろう。

● 王立宇宙軍 オネアミスの翼

 オネアミスでは、金物屋の前での会話シーンで解像度の違いが良くわかる。続く2つのシーンは、いずれもこの作品の“命”とも言うべき、ロケット発射シーンを取り上げる。最高の見せ場である発射シーンは、冷却用の氷が無数の破片となって降り注ぐ中、異様なまでに精密に描かれた煙や炎が画面を覆い尽くすという、MPEG-2にとってはイジメのようなシーンだ。

 BD/HD DVDではどこまでブロック/モスキートノイズを抑えられているか、そして新旧DVDでは、MPEG-2の弱点をカバーし、どこまで絵を破綻させずに収録できているかがチェックポイントだ。

金物屋 発射1 発射2
(C)BANDAI VISUAL/GAINAX

シーン BD HD DVD
金物屋
発射1
発射2
(C)BANDAI VISUAL/GAINAX
シーン リマスター版DVD
【アップスケール/ノーマル】
従来DVD
【アップスケール/ノーマル】
リマスター版DVD
【アップスケール/2倍】
従来DVD
【アップスケール/2倍】
金物屋
発射1
発射2

(C)BANDAI VISUAL/GAINAX

 従来のDVD版では、特に「発射1」のシーンでブロックノイズが大量発生してしまい、絵よりもノイズに目が行ってしまうという状況だ。一方、リマスター版DVDは非常に良くブロックノイズを抑え込んでおり、驚かされる。ただし、ノイズを回避するため、パトレイバーと同様に全体的にフォーカスが甘くなっている。シャープで精密な絵が動くことが醍醐味とも言える作品なので、この点は残念だ。ただ、「鑑賞中に違和感を感じさせない」という点では、リマスター版の絵作りの方が理想的と言えるだろう。

 BD/HD DVDビデオは、DVDとは別次元の映像だ。一時停止して画面を覗き込むようにすれば、かすかにノイズが見える部分もあるが、鑑賞中はまったく知覚できない。1枚1枚の絵がクリアそのもので、手描きならではの味わいと迫力を感じさせる。DVDでは諦めていたこのシーンが、この画質で観賞できる。まさに「感動」の一言。作品の全てが集約していると言っても過言ではないシーンなので、「BD/HD DVDで観賞すべき作品」と言えそうだ 。

 どちらも古い作品のため、「AIR」や「ブレイブストーリー」、「パプリカ」など、最新アニメのBD/HD DVD版の画質をイメージすると、印象は異なる。デジタル制作のアニメはチリ1つないクリアな映像が魅力だが、「パト1」や「オネアミス」は、手描きのセルアニメならではの味わいや、アニメでありながら空気とレンズを通して撮影された、独特の空気感が魅力だ。解像度が高すぎるために、セルに付いたキズや、背景の色ムラなどに目が行くシーンもあるが、それが作品としての魅力を損なうものではない。

 なお、参考までにリマスター版DVDと従来版DVDの、DVD Bit Rate Viewerで見た平均ビットレートも掲載する。ビットレートはパトレイバーが8.68Mbps(リマスターDVD)、8.37Mbps(従来DVD)。オネアミスが7.85Mbps(リマスターDVD)、7.37Mbps(従来DVD)とそれぞれ上昇している。グラフの振り幅がリマスター版では小さくなっているのも特徴だ。

【パトレイバー リマスターDVD版】

【パトレイバー 従来DVD版】

【オネアミス リマスターDVD版】

【オネアミス 従来DVD版】


■ 音質も大幅向上

 音声/映像のビットレートをリアルタイムで表示する機能はPS3のみだったため、BD版のビットレートをチェックした。映像のビットレートは、「パトレイバー」の場合、下は13Mbps程度から、基本は25Mbpsほど。高い時で33Mbps、終盤の戦闘シーンでは40Mbpsを超える場面もある。「オネアミス」も基本は20~30Mbpsで推移。終盤にかけては44.1Mbpsを超えるシーンもある。

 音声は2作品とも、BD/HD DVD版それぞれに、ドルビーTrueHD 5.1ch音声と、リニアPCMでドルビーサラウンド音声を収録しているのが特徴。どちらもドルビーサラウンドは劇場公開時のオリジナル音声。ドルビーTrueHD 5.1chは後に作られた5.1chサラウンド音声を収録。さらに、英語音声をパトレイバーはドルビーデジタル5.1ch、オネアミスはドルビーデジタルサラウンドで収録している(HD DVD版はどちらもドルビーデジタルプラス)。

 音声ビットレートは、「パトレイバー」の場合、ドルビーTrueHD 5.1chが48kHz収録で、推移は3~4.5Mbps程度、瞬間的には5Mbpsに到達するシーンもある。リニアPCMのドルビーサラウンドは2ch収録で、48kHz/1.5Mbps。英語のドルビーデジタル5.1ch音声は48kHz/640kbps。「オネアミス」でも、ドルビーTrueHD 5.1chは48kHz収録で、ビットレートは3.8~4.9Mbps程度で推移。戦闘シーンでは5.2Mbpsまで出る。リニアPCMと英語音声のビットレートは「パトレイバー」と共通だ。

 どちらの作品もドルビーTrueHDとドルビーサラウンドの音質には大きな差があり、人の声で顕著に違いが出る。ドルビーTrueHDでは低音域の情報量が格段に増え、音の重心がズンと下がり、安定感が出る。静かな場所で男性キャラクターが喋る声で違いが明瞭、また、女性の高い声も高域が荒れず、ボリュームを上げても耳障りに感じない。「パト1」の冒頭では爆発音やBGMの低音の解像感が高く、DVDのリマスター版と比較しても、映画にグッと迫力が出る。

 オネアミスでも傾向は同じ。ドルビーTrueHDでは最後の発射台のシーンで、剥がれ落ちる氷がチリチリ、パチパチと砕ける音が非常に細かく記録されており、今まで聞こえなかった音に気付かされる場面が多い。

 一方、BDとHD DVDの音質差は切り替え視聴を行なうと存在する。BD版の方が若干低音の音圧が強く、音と音の間隔が広く、音場そのものも広く感じられる。HD DVD版の音はつながりが良く、BD版よりも中域が張り出しているように感じた。もっとも、これはプレーヤー側のキャラクターの違いかもしれない。


■ 特典映像はシンプル。嬉しいグッズ付き

 BD/HD DVD版を比較していて気になったのは、メニューデザインの違いだ。どちらの作品もメニューデザインや、「セットアップ」/「チャプター」などのボタンに使われているフォントがBD/HD DVD版で異なり、総じてBD版は力強いデザイン、HD DVD版はシンプルで線の細いフォントやデザインが採用されている。個人的にはHD DVD版の方がシンプルで好みだ。

 特典内容はBD/HD DVD共通で、特報や予告編、オネアミスはパイロット映像も収録している。これらの映像はHD解像度で収録されており、クオリティは高い。ただ、いずれもDVD版と同じような内容で、メイキングやインタビュー、オーディオコメンタリーなど新しい特典は入っておらず、価格を考えると残念だ。

 ただ、封入特典は豪華だ。中でも、アニメ研究家である氷川竜介氏による作品解説やインタビューは密度が濃く、読みごたえがある。オネアミスのエフェクトアート解説など、マニアでも「なるほど」と頷く情報が多いだろう。

 また、初回生産限定で付属する「FM高精細印刷によるトレーディングカード」と、「ドルビーTrueHDロゴステッカー」、「ドルビーTrueHD インナースリーブ」(解説書)の3点セットも嬉しいオマケ。トレーディングカードは通常のカラー印刷よりも高密度な印刷を施しており、各作品の代表的なイラストがデザインされている。

 ロゴステッカーは、ドルビー技術採用映画館で掲示されるロゴプレートを模したデザインで、部屋に飾れば来客時などに「俺のホームシアターはドルビーTrueHD対応なんだ」と自慢することも可能だ。もっとも、同フォーマットをリニアPCMに変換出力できるプレーヤーか、デコード可能なAVアンプを用意しないと嘘になってしまうのだが……。

ドルビーのロゴプレート(右)を模した「ドルビーTrueHDロゴステッカー」(左)が付属 ドルビーTrueHD インナースリーブ FM高精細印刷によるトレーディングカード


■ 問題は価格

 映像特典がさびしいものの、クオリティには大満足。唯一気になるのは10,290円という価格だ。もっとも、テレビアニメのDVDが3話収録で7,000円以上したりと、日本のアニメDVDの価格は洋画などと比べるとかなり割高であり、そこに「劇場用作品」や「BD/HD DVD」というプレミアが加わると1万円以上という価格もわからなくはない。

 さらに、'99年8月発売の従来DVD版「オネアミス」(BCBA-0245)の定価は10,290円で、今回のBD/HD DVD版と同額だったりする。そう考えると、10,290円は「バンダイビジュアルの次世代ディスクスタート価格」であり、今回のBD/HD DVD版は「リマスターDVDも付いているのに据え置き価格でお得」と言えなくもない(パトレイバーの従来DVD版は2004年発売で6,090円)。

 だが、やはり「映画1本1万円」というのは気軽に出せない値段だ。付属のリマスターDVDのクオリティは高いが、そもそも高音質/高画質で観賞したくてBD/HD DVD版を購入したユーザーに、セットとしてそれよりもクオリティが落ちるDVD版も提供する意味がよくわからない。「おまけ」という扱いならば、特典映像などを入れたDVDを付属して欲しかったところだ。

 また、ユーザー層的に、1万円を払ってこれらの作品を購入しようというユーザーが、従来版のDVDを所有していない可能性は低いだろう。すると、次世代ディスク/新DVD/旧DVDと、同じ作品を3枚も所有することになる。「ディスクの活用」という点では、いっそUMDビデオ版でも付けてくれたほうがありがたかったかもしれない。

 個人的には「高いなぁ」とは思うものの、BD/HD DVDの画質を体験してしまうと「1万円を払ってでも、これを手元に置いておきたい」というファン心理が膨らみ、購入後も非常に満足している。「リマスターDVDを省いて低価格にしてくれ」という声も多いだろうが、個人的にはこの時期に、省いた形態で販売されていたとしても、価格が下がっていたかどうかは疑問だ。

 おそらく、いつかはリマスターDVDを省いた「BD/HD DVD単品バージョン」がリリースされるだろう。だが、それが1年先か、2年先かはわからず、また発売されたとしても2,980円のような洋画レベルの価格にならないことは確か。恐らく5,000円以上はするだろう。幸い通販サイトなどを見ると7月31日現在在庫は残っているようだ。購入するか否かの判断は、単品版発売までの時間と、作品に対する思い入れを天秤にかけるしかないだろう。

●このディスクについて
 購入済み
 買いたくなった
 買う気はない

前回の「秒速5センチメートル」のアンケート結果
総投票数1,230票
購入済み
574票
46%
買いたくなった
422票
34%
買う気はない
234票
19%

□バンダイビジュアルのホームページ
http://www.bandaivisual.co.jp/
【Blu-ray/HD DVD発売日一覧】
http://av.watch.impress.co.jp/docs/bdhdship/
【7月17日】バンダイビジュアル、次世代ディスクアニメの試写会を実施
-BD版「パトレイバー」のドルビーTrueHD音質をチェック
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070717/bandai.htm
【5月15日】バンダイビジュアル、「攻殻」などアニメBD/HD DVDの詳細発表
-3作品でドルビーTrueHD採用。トレカやステッカー付属
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070515/bandai.htm
【3月22日】バンダイビジュアル、BD/HD DVD 11作品を7月より発売
-DVD付きでオネアミスなど。AKIRA、攻殻はBDのみ
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070322/bandai.htm
【3月19日】バンダイビジュアル、HD DVD「FREEDOM」を日米で6月に同時発売
-日本ではBlu-rayも。HD DVD/BD合計で'08年2月までに30アイテム
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070320/bandai.htm
【2月15日】【RT】「狙うは最初から究極」。FREEDOM/パトレイバーから見る
 「アニメ向けHD DVDオーサリング」の秘密
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070215/rt027.htm

(2007年7月31日)

[AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]


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