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第89回:完成度の高い三洋製フルHD初代機
~ コントラスト/黒表現の向上に驚き。三洋「LP-Z2000」~


 720pプロジェクタを価格破壊した、2003年発売の「LP-Z2」から、昨年の「LP-Z5」まで、競争力の高い720p液晶プロジェクタを市場投入してきた三洋電機。

 競合が普及価格帯にフルHD対応機を出してきた2006年も、720pの「LP-Z5」を発売するにとどまっていたため、2007年はどうなるかと不安視していたが、ついに三洋からも「LP-Z」型式を持つ待望のフルHD機「LP-Z2000」が登場した。

 本連載では、このあとも2007年秋モデルの透過型液晶タイプのフルHDプロジェクタを何機種か紹介していくが、第1回目として「LP-Z2000」から見ていくことにする。


■ 設置性チェック
  ~電動開閉シャッター機構付き

ボディカラーは白のみ

 ボディカラーは白色のみ。デザイン面での冒険はなく、従来のLP-Zシリーズも含め、最近の凝った造りのボディザインの競合の中にあって、ある意味「無個性なデザインこそが特徴」となっている。

 ボディサイズはLP-Z5から一回り大きくなっており、400×346×146mm(幅×奥行き×高さ)。ボディも約2kg増の7.3kg。先代からは太めになってしまったが、1人で設置、収納、移動は問題なくできる。

 外形寸法がこれだけ変わりながら、嬉しいことに設置金具類はLP-Z1/Z2のものが今回も流用可能となっている。

 具体的には天吊り金具用ベース金具「POA-CHB-Z2」(15,750円)、そして、一般家屋向きの低天井用の天吊り金具「POA-CHS-US01」(31,500円)がLP-Z2000に適合する。初代LP-Z1と同じものが最新LP-Z2000でも利用できるのは素晴らしい。これは旧LP-Zモデルのユーザーに対する訴求力としては大きいだろう。

 電源を投入するとスライド式のレンズ保護ドアが開くというギミックは、LP-Z2000にも継承された。

 投射レンズはマニュアル調整式2.0倍ズームレンズを採用する。フォーカスも手動マニュアル式だ。競合機の松下「TH-AE2000」、その先代「TH-AE1000」も電動ズーム/電動フォーカス/電動レンズシフト対応機だったので、LP-Z2000でもできれば電動に対応して欲しかったところ。

レンズ保護ドアが自動開閉。レンズキャップいらずでレンズを保護

本体正面右側面。レンズシフト調整つまみ。調整後はレバーロックすることで固定ができる

 レンズフォーカスとズームはレンズ外周のリングを回して調整する。レンズシフトについては正面右側面に取り付けられている2つのダイアルを使って調整することになる。レンズシフトの調整範囲は上下±1画面分、左右±半画面分という圧倒的なシフト量。他のフルHD透過型液晶モデルもかなりのシフト量を備えているが、その中でもトップクラスといえそうだ。

 100インチ(16:9)の最短投射距離は約3.0mを実現。大体6~8畳程度の部屋でも100インチ大画面が楽しめることになる。また、ズーム最小倍率時は100インチ(16:9)画面を約6.1mの投射距離で投影可能。つまり、12畳以上の大きな部屋の最後尾に設置しても映像を不用意に大きくせずにすむということだ。

 光源ランプは165Wの超高圧水銀系UHPランプを採用する。先代LP-Z5が145WのUHPランプだったので、LP-Z2000では、より高出力のものに変更されたことになる。なお、交換ランプの形式番は「POA-LMP114」となるが、現時点では価格が未定となっている。ちなみに先代LP-Z5の「POA-LMP94」は31,500円で、この価格はLP-Z3の時代から据え置かれていた。


本体正面左側面のスリットは排気口。若干の光漏れがある

 ランプ出力はLP-Z5から高くなったものの、静粛性能は高レベルに維持。ランプ輝度「低」モードで、公称約19dBを達成している(LP-Z5は約22dB)。使用頻度の高いランプ輝度「高」モードのスペック値は非公開となっていため、実際に試してみたが、十分静か。本体にかなり近づいて耳を澄まさないと聞こえないほどであった。

 エアーフローは背面から吸気して、正面左側面から排気するデザイン。光漏れはこの側面の排気スリットから多少あるが投射映像に影響を及ぼすほどではない。側面の排気スリットを塞いでしまうと本体へのダメージが大きいので、本棚などの天板設置などでは気をつけたい。



■ 接続性チェック
  ~HDMIはVer.1.3a対応で2系統装備


接続端子パネルは背面にある

 HDMI端子を2系統装備。HDMIバージョンは1.3aに対応する。

 アナログビデオ入力は、コンポジット、S映像、コンポーネント(RCA)、D5を各1系統ずつ備える。コンポーネントビデオ系がRCAとD端子の2系統あるのは、接続する機器が多いユーザーにとっては嬉しい。

 PC入力はD-Sub 15ピン端子(アナログRGB)で対応する。DVI端子はないが、市販のHDMI-DVI変換アダプタなどを用いることでデジタル接続は可能だ。実際に、この方法でNVIDIA GeForce8800GTXを用いWindows Vista環境で試してみたところ、1,920×1,080ドットのドットバイドット表示が行なえた。ただし、正しく表示するためには、「画面調整」メニューの「オーバースキャン」を0設定とし、さらに「設定」メニューの「HDMI」のカラーモードを「拡張」(RGB:0-255モード)に設定する必要がある。

PCとのHDMI接続時はオーバースキャンを0設定(キャンセル)して、アンダースキャンにしないとドットバイドット表示にならない HDMIでPCを接続した時は「設定」メニューで「HDMI=拡張」とする



■ 操作性チェック
 ~新リモコン採用で使いやすさ向上

 リモコンは新規にデザインされた専用タイプが同梱。ややずんぐりした形をしているが底面にはくぼみがあり握りやすい形状。

 左上の[LIGHT]ボタンを押すことで、リモコン上のすべてのボタンが自照式で光るギミック付き。ちなみに[LIGHT]ボタン自身は暗がりでも判別しやすいように蓄光式に発光するようになっている。

[LIGHT]ボタンを押すことで、リモコン上のすべてのボタンが自照式で光る 本体天板上の簡易操作パネル

 電源ボタンを押してからLP-Z2000のロゴが出てくるまでの所要時間は約12秒で、HDMI1の映像が出てくるまでの所要時間は約35秒であった。

 ボタンもLP-Z4のリモコンと比べるとだいぶ大きくなり文字表記も読みやすく、また、押しやすい。ボタンの間隔も広がり、十字キーの形状も指のタッチだけでわかりやすくなり、ミスタッチもしづらくなった。メニュー操作のレスポンスも上々で、カーソル移動のもたつきもほとんどない。

 入力切換は、[VIDEO]、[S-VIDEO]、[C1]、[C2]、[H1]、[H2]、[PC]と、接続端子に一対一に対応した完全独立ボタンレイアウト方式を採用。さらに、暗闇でも当たりをつけて押しやすいように左サイドに縦に配置されているなど、かなり考えられた設計になっている。入力切り換え所用時間はHDMI1→Sビデオで約3秒、HDMI2→HDMI1で約8秒と、あまり速いとはいえないが、希望の入力に1タッチで切り換えられるため、ストレスはそれほど無い。

 アスペクト比の切換は[SCREEN]ボタンにより順送り方式を採用。切り換え所要時間は約1秒となかなか高速。用意されているアスペクトモードはかなり多く、以下の8種類がある。

フルパネル解像度一杯に拡大して表示
フルスルー縦解像度をオリジナルに維持したまま横解像度を拡大して16:9に合わせるモード。投射映像は小さくなるがスケーリング回路の影響を最低限にできる。DVDビデオなどの視聴に最適
ズーム4:3映像にレターボックス記録された16:9映像をパネル解像度にフル拡大して表示する
字幕イン4:3映像にレターボックス記録された2.35:1(シネスコ)映像を字幕表示エリアを確保しつつパネル解像度一杯に拡大する
ノーマル4:3映像をアスペクト比を維持したまま拡大表示する。左右に未表示領域が残る
ノーマルスルー入力映像をスケーリング処理せずにそのままの解像度で表示する
ピッタリワイド14:3映像を、その外周部分を伸張して疑似ワイド化しフル表示する
ピッタリワイド216:9映像の中に記録された4:3映像を、その外周部分を伸張して疑似ワイド化しフル表示する

 スルーモードやレターボックス向けのアスペクトモードが充実しているのがユニークだ。ゲームユーザーや、コアなDVDビデオファンにはピンポイントな訴求となるかもしれない。

 プリセット画調モードの切り換えは[PRESET]ボタンで順送り式に行なう方式。切り換え所要時間はほぼゼロ秒で、押した瞬間に切り替わるので非常に高速だ。

 画質調整マニアにとって嬉しいのは、「ブライトネス」、「コントラスト」、「色の濃さ」、「画質(シャープネス)」、「色温度」の調整に飛べるショートカットボタンが用意されているところ。それぞれ[BRIGH]、[CONT.]、[COLOR]、[SHARP]、[C.TEMP]ボタンの5つのキーを備え、押した瞬間に、画面上部に映像をじゃましない程度の小さなスライダーUIが出現し、左右キー操作で映像を見ながら調整ができる。面白いのは上下キーを押すと、メニュー構成上の近隣の画質パラメータの調整スライダーに切り換えられるという点。たとえば[COLOR]ボタンを押すと「色の濃さ」の調整スライダーが出るが、ここから下キーを押すと「色合い」の調整スライダーに切り換えられる。

 調整した画調モードはユーザーメモリに保存が可能。ユーザーメモリは1~7の7つあり、全入力系統で共有される管理方式。ちなみにユーザーメモリ数の7個は、入力系統数(端子系統数)と同じ数なので、それぞれの入力系統に1個はユーザーメモリが使える計算になる。


「画質モード」メニュー 「画質調整」メニュー(1/2) 「画質調整」メニュー(2/2) 「アドバンスドメニュー」 「画面調整」メニュー

「表示モード」メニュー 「入力」メニュー 「設定」メニュー(1/3) 「設定」メニュー(2/3) 「設定」メニュー(3/3)

「インフォーメーション」メニュー。[i]ボタンを押すとこの画面が直接表示できる

 使っていて便利だと思ったのは[i]ボタン。これを押すことで、現在、どのような信号がどう認識されているのか、現在、どういう表示モードで表示されているのかのステータスを表示してくれる。メニュー操作により確認できる機種はこれまでもあったが、リモコンによる一発操作で呼び出せるのは珍しい。かなりマニアックな機能だといえる。

 [LAMP]ボタンを押すことで、ランプ駆動モードを高輝度な「ブライト」モード、表示映像に応じて輝度を調整する「リアクトイメージ」モード、低輝度な「シアターブラック」モードへと順次切り換えできるのは便利なのだが、アイリス(絞り)の調整ボタンがないのが少々不満。LP-Z5ではアイリス調整用の[IRIS]ボタンがあったのだが、LP-Z2000ではこれが省略されてしまった。[LAMP]ボタンの上に、LP-Z2000ロゴを表示させる[LOGO]ボタンがあるが、これは使用頻度は低いはずなので、次期モデルではここに[IRIS]ボタンが欲しい。

 なお、裏技だがシャープネス調整の[SHARP]ボタンを押してから下方向キーを3回押すと「アイリス動作」の調整スライダーを呼び出せる(アドバンスドメニュー有効設定時)。メニューを開いてアドバンスドメニューの階層に入るよりも少ないキーストロークでたどり着けるので覚えておくといいかもしれない。

 LP-Z4から搭載されている、投射映像の任意の箇所から色をピックアップして、その色を希望の発色に調整できる「カラーマネージメント」機能も、LP-Z2000で継承。仕様的には全くLP-Z4のものと同一であるため、詳細は「LP-Z4編」を参照していただきたい。


■画質チェック
 ~ここまで来た透過型液晶の黒表現とコントラスト

 LP-Z2000の液晶パネルは、D7世代プロセスのフルHD解像度の無機配向膜パネル「C2FINE」パネルを採用。D7世代パネルを採用したモデルとしてはパネルメーカーでもあるエプソン「EMP-TW2000」、パナソニック「TH-AE2000」がある。三菱「LVP-HC6000」は、今年登場したモデルだがパネルの量産性やコスト的な兼ね合いからD6世代パネルを採用している。

D7世代プロセスのC2FINEパネル

 D7世代プロセスのC2FINEは、8月に発表されたエプソン製パネルではあるが、本連載でD7世代パネル採用製品を取り扱うのは初めてになるので、このあたりの基本情報も今回は触れておくことにしよう。なお、C2FINEパネルの基本事項、無機配向膜と有機配向膜の違いについては本連載52回で解説している。

 パネルサイズは0.74型、解像度は1,920×1,080ドットで、昨年のフルHDプロジェクタ「EMP-TW1000」、「TH-AE1000」、「LVP-HC5000」などで採用されているD6世代パネルと同じだ。開口率は、D6/フルHD無機配向膜パネルの43%(D6/有機配向膜パネルは55%)に対して、今回のD7/フルHD無機配向膜パネルは52%に向上している。

 駆動回路がパネルのインターフェイース用ハーネス上に一体成形されたハイブリッド駆動技術が適用されたことや、画素データの伝送方式がminiLVDSになったことなどの改良が進んだこともトピックだが、画質的には駆動階調がD6世代の10bit(1,024段階)から、12bit(4,096段階)へと階調性能が4倍向上したことが注目点となる。

150インチ(16:9)程度に拡大して画面左下付近で撮影。画素を近くで見てみると、やはり透過型液晶なので格子線はLCOSやDLP(DMD)と比較すると太め。色収差やフォーカス斑は許容範囲といったところか

 画素を近くで見てみると、はやり透過型液晶なので格子線はLCOSやDLP(DMD)と比較すると太め。筆者の両目裸眼1.0程度の視力では100インチ(16:9)投影で視聴距離を1メートルでは画素の粒状感を感じてしまうが、2メートルも離れれば気にならない。

 投射レンズのフォーカス力は良好だ。今回の視聴評価はレンズシフト左右±0、下方向に半画面分くらいシフトしたオンシェルフ設置環境で行なったが、画面中央と外周とのフォーカス差は最低限で、フォーカス斑も許容範囲だ。色収差による色ずれはそれなりにあるが半画素以内の最低限に収まっており、解像度劣化には至っておらず優秀。LP-Zシリーズのレンズ性能はLP-Z4以来がんばっていると思う。

 最大輝度は1,200ルーメン(ランプ駆動モード=「ブライト」モード)。実はD7世代パネル採用機の中では公称スペック上は最も暗いのだが(EMP-TW2000は1,600ルーメン、TH-AE2000は1,500ルーメン)、実際に投射映像を見ている限りは十分明るく、蛍光灯照明下でも映像の概要は普通に見られる。

 コントラストは15,000:1となっているが、これは動的ランプ駆動と動的アイリス制御を組み合わせたときの値。ランプ駆動をブライトモード固定、動的アイリス制御なしとしたネイティブコントラストではもちろんそんなにはないはずだが、それでも、体感コントラストは結構高い。これは透過型液晶方式ならではの最大輝度の明るさの方に視覚が引っ張られるので、相対的に高いコントラスト感が感じられるためなのが第一の理由。しかし、実際、透過型液晶とは思えない黒が出ていることも一役買っていると思われる。迷光の低減化技術が進んでいるせいか、意外にも黒がかなり黒いのだ。前回のLCOSプロジェクタ「VPL-VW60」ほどではないにせよ、「黒が明部に対して相対的に黒い」のではなく、「黒が絶対的に"暗い"」のだ。

 今回の評価では、主にBDビデオの「スパイダーマン・トリロジーボックス」をPS3/HDMI接続にて視聴したが、階調表現はバランスよくまとめられている。明部のダイナミックレンジが高いのは輝度性能が高いので当たり前だが、暗部階調の分解能の高さに驚かされる。これは少なからずD7世代パネルの12bit階調駆動の効果によるものだろう。たとえば日陰の木の幹の皮の微細な凹凸が微妙な茶色の描き分けがなされていることでとても立体的に見えるのだ。

 発色は三洋特有の派手目な傾向がなくなり、ナチュラル指向のチューニングで、言ってみれば玄人好みな色味になっている。ランプ技術の向上があったためか、水銀系とは思えない鋭い赤が出ている。緑や青も力強く、空や水辺、植物もリアルだ。

 色深度も非常に深い。12bit階調駆動の恩恵だろうか、とにかくグラデーションが美しい。単色の階調表示はもちろん、二色混合のグラデーションも非常になめらかだ。暗部階調のかなり暗い部分もちゃんと色味がうっすらと残ってくれる。これは実写映像で見ると暗部の色ディテールの描き出し精度の高さとして目に見えてくる。映像の暗部に存在するものの形やテクスチャディテールがよく見えるのには正直感動した。

 人肌も自然だ。階調力と色ダイナミックレンジが高いので、人肌のハイライト部分にもリアルな透明感を伴ったディテールが感じられるし、人肌の暗いところもただの茶色に落ち込まずにディテールがうっすらと描き出されている。総じていえば、人肌に情報量の多さを感じられる。

 動的ランプ制御と動的アイリス制御のインプレッションも触れておこう。動的ランプ制御にはリアクトイメージモードというテクノロジー名がつけられており、モードとしては1と2の二つが用意されている。モード1は最大輝度をブライトモード付近に設定したやや明るめな調光を行ない、モード2ではピーク輝度を抑えた暗めな調光を行なう。マニュアルではモード2では排気ファンが静穏モードとなると記載されていたが、実際に確認したところでは排気音に大きな違いは感じられなかった。

 映像を見たところでは、ランプモードをリアクトイメージモード1→2→最低輝度のシアターブラックモードとしていくにつれて色ダイナミックレンジが狭まるので動的ランプ制御はキャンセルしたブライトモードの方がよいと感じる。


動的ランプ制御(画質モードは「ブリリアントシネマ」)
アイリス ランプ高 ランプ低
0(開放)
63(絞りきり)

 動的アイリス制御は、その制御速度を「標準」、「高速」が選べる。また、「固定」設定とすることで動的ランプ制御をキャンセルすることもできる。比較的明暗の移り変わりの激しいシーンを視聴してみたが、アイリス制御速度は「高速」「標準」どちらでも大きな違和感は感じられず。好みに合わせてモードを選択するといいだろう。

 もう一つ、透過型液晶パネルの問題点として指摘されてきた縦縞ノイズについてだが、最大要因となっていた、液晶分子を馴らし付けるために配向膜を傷つけるラビング工程が、無機配向膜を採用したC2FINEパネルでは不要となった。このためにこの問題からはほとんど解放されていると言っていい。実際、縦縞ノイズが一番見えやすい単色のやや暗めの単色映像を映してみたがほとんど分からないレベルとなっていた。

 プリセット画調モードはLP-Z5のものをほぼそのまま継承しているようだ。各画調モードの活用方針とインプレッションは下記のとおりだ。

【プリセットの画調モード】
 1,920×1,080ドットのJPEG画像をPLAYSTATION 3からHDMI出力して表示した。撮影にはデジタルカメラ「D100」を使用。レンズはSIGMA 18-200mm F3.5-6.3 DC。撮影後、表示画像の部分を800×450ドットにリサイズした。
 
●プリリアントシネマ

 色温度は初期設定、ランプは「リアクトイメージモード1」、アイリス動作は「高速」、アイリス量は「0」、黒伸張は「低」、コントラスト強調は「切」、輪郭補正は「中」となる設定。

 明部の描き出し方が美しいし、色ダイナミックレンジも広い。コントラスト感のある画調で輝度重視の画調だが、階調バランスは理性的なチューニングで作為的なブーストは行なわれていない。

 モード名の割には実用性は高い。

 
●クリエイティブシネマ

 色温度は初期設定、ランプは「リアクトイメージモード1」、アイリス動作は「高速」、アイリス量は「-50」、黒伸張は「低」、コントラスト強調「低」、輪郭補正は「低」となる設定。

 アイリスがかなり絞られるのでピーク輝度がだいぶ抑えられたモード。明部にはパワーがないがその分、暗部の分解能があがる。発色の傾向は技巧的なところはなく人肌も自然志向。

 
●ピュアシネマ

 色温度は「初期設定」、ランプは「ブライトモード」、アイリス動作は「固定」、アイリス量は「-60」、黒伸張は「切」、コントラスト強調は「切」、輪郭補正は「切」となる設定。

 ランプはブライトモードだが絞りはほぼ最大に絞られるので暗さはクリエティブシネマよりもさらに増してコントラスト感は抑えられてしまう。ただし、暗部の階調描写力はクリエティブシネマよりもさらにあがる。色温度は“中”設定に相当する「初期設定」だが、若干、ホワイトバランスは赤みを帯びる。

 
●ナチュラル

 色温度は「初期設定」、ランプは「ブライトモード」、アイリス動作は「固定」、アイリス量は「-30」、黒伸張は「切」、コントラスト強調は「切」、輪郭補正は「切」となる設定。

 階調の傾向はブリリアントシネマとよく似ている。ホワイトバランスは、白が純白と見えるような青過ぎも赤過ぎもしない自然な印象。ランプはブライトモードだが、アイリスは半分絞りの固定なので過度に明るすぎず、LP-Z2000で得られるコントラスト感と暗部階調表現能力のバランスよいところを引き出すための画調。

 汎用性は高い。

 
●リビング

 色温度は「初期設定」、ランプは「ブライトモード」、アイリス動作は「固定」、アイリス量は「0」、黒伸張は「中」、コントラスト強調は「中」、輪郭補正は「中」となる設定。

 輝度が明るく、彩度も強くなり、記憶色再現指向に振られた画調。色味のバランスはそれほどおかしくはない。暗部階調はやや持ち上げ気味、明部階調は最大輝度までを活用する。光源ランプのダイナミックレンジを最大利用しつつも、暗部から明部を通してのリニアリティは維持される。薄明るい部屋で、なるべく情報量を多く見ようとするには向いている。やや古めのアナログビデオソースを見るのにも活用できそうだ。

 
●ダイナミック

 色温度は「初期設定」、ランプは「ブライトモード」、アイリス動作は「固定」、アイリス量は「0」、黒伸張は「切」、コントラスト強調は「切」、輪郭補正は「高」となる設定。

 輝度最大優先モードで水銀系ランプの光特性がむき出しになる。人肌は黄色に振られ、暗部は持ち上がり、階調の分解能は中明部以上に割り当てられる。

 明るい部屋での視聴向き。

 
●ビビッド

 色温度は「初期設定」、ランプは「リアクトイメージモード1」、アイリス動作は「高速」、アイリス量は「0」、黒伸張は「高」、コントラスト強調は「切」、輪郭補正は「高」となる設定。

 輝度最大優先のもう一つのバリエーション。「ダイナミック」よりもさらに彩度を強くしており、緑は黄色に振られ、人肌はいっそう黄色くなる。階調は暗部を沈み込ませ、最明部付近は飛ばし気味となる。むしろ「ダイナミック」よりも大胆な画調で、明るい部屋でとにかく映像の概要を見たいという用途向き。

 

 実用性が高いのは「ブリリアントシネマ」と「ナチュラル」の二つ。輝度と暗部情報量を重視するならば「ブリリアントシネマ」だが、ハイライト部分が飛び気味に見えるので、万能性をとるならば「ナチュラル」だろうか。



■ まとめ
 ~透過型液晶プロジェクタの完成度の高さに驚き

 LP-Zシリーズの良いところを受け継いでおり、三洋のフルHD機としては初号機ではあるが、その完成度は高い。さすが、透過型液晶プロジェクタの実力者といったところか。

 設置面では歴代LP-Zシリーズの金具がそのまま流用できるところに魅力があると思う。既に歴代LP-Zシリーズの設置環境があるならば、付け替えるだけでLP-Z2000に置き換えられるのは、面倒なはずのホームシアターのアップグレードパスとして強い訴求になる。

 接続性も、コンポーネントビデオ系の入力を2系統設けているあたり、三洋らしい気遣いが感じられて好印象だ。新リモコンも、[IRIS]操作ができなくなった以外は、「プロジェクタを分かっている」という感じの、完成度の高さが伝わってくるので、大きな不満はない。

 画質面については、透過型液晶プロジェクタの大きな技術革新が感じられ、目から鱗が落ちた。「動的絞りがないと黒浮きが気になる」…… という根本的な画質傾向は変わらないのだが、それでもネイティブコントラストは格段に上がっている。映像視聴に没入していると、「黒浮きがどうこう」という意識はもうほとんどない。発色や階調のチューニングも各段に洗練されてきており、LP-Z2000は、2007年のフルHD透過型液晶プロジェクタのベンチマーク的存在に仕上がっていると思う。

□三洋電機のホームページ
http://www.sanyo.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.sanyo.co.jp/koho/hypertext4/0708news-j/0824-1.html
□関連記事
【8月24日】三洋、D7/C2Fineパネル搭載フルHD液晶プロジェクタ
-378,000円の「LP-Z2000」。コントラスト15,000:1
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070824/sanyo.htm

(2007年11月1日)

[Reported by トライゼット西川善司]


西川善司  大画面映像機器評論家兼テクニカルライター。大画面マニアで映画マニア。本誌ではInternational CES他をレポート。僚誌「GAME Watch」でもPCゲーム、3Dグラフィックス、海外イベントを中心にレポートしている。渡米のたびに米国盤DVDを大量に買い込むことが習慣化しており、映画DVDのタイトル所持数は1,000を超える。

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