吉田伊織のA&V奥の細道

第8回

スイッチングハブは使いこなしの宝庫。AV向けのハブ選びやポートの使い方

今回からは家庭内LANによる音楽配信や動画配信にまつわるお話にしよう。

特に昔気質のオーディオ愛好家ならば、音源としてもっぱら各種の音盤を回し、各機器の組み合わせやケーブル類の選択、さらにはスピーカーの「ミリ単位」の微調整を要する設置法の問題などに汗を流してきたことだろう。

しかし、デジタルネットワーク系のオーディオ再生となると勝手が違うかも。LANとかルーターとか、スイッチングハブとかにまつわる耳慣れない用語や機器に戸惑う向きも多いことと思う。かくいう私も同様ではあった。

まずはオーディオ系について。デジタルファイル化された音声データが地球上を駆け巡るネットワークを通じて自分の家にまで届き、ハイレゾの高音質データまで再生可能になったことは朗報に違いない。その代わり、音楽ディスクの売れ行きは衰退傾向になってきたけれど。

接続や設定については、光回線関係の回線業者、設置業者に頼めば、ONU(光回線端末)からWi-Fiルーターまでは施設してくれるので問題はない。現場でのチェックは手持ちのパソコンにて、LANケーブルを使う有線や無線のWi-Fi接続においてインターネット回線が使えるかどうかで済む話だ。

そこから先、LANのスイッチングハブを用意して音声デコード用機器の近くに設置し、必要な機器を有線LANで接続することになる。音楽配信ならネットワークプレーヤーの単体機、あるいはCDプレーヤー、D/Aコンバーター、AVアンプなどに備わっているネットワークプレーヤーの機能を使って再生することになる。もちろん、ストリーミング再生だけでなく音楽データをメモリーにストレージすることも可能であり、そのためにはPC経由にしたり、ストレージを重視する専用機器を用意すればいい。

スイッチングハブの音質対策

ともあれ、ここで紹介するのは、音楽配信のストリーミング再生をする最小限のシステムの末端近くにおける音質対策となる。

筆者宅でのネットワーク系統図

そもそもルーターから導いたLANケーブルはスイッチングハブなど経由せずとも、ネットワークプレーヤーに接続するだけで、ただちに音楽を再生できるようになっている。ならば、なぜスイッチングハブが必要になるのかというと、ハブを介すると音質がいいからだ。これは筆者が各所で何度も確認していることだし、オーディオファンにも広く普及している対策方法だ。

しかし、音質優先で考えるとむやみに分岐すると複雑なノイズのループを生じるし、そもそもそこに接続される機器はほとんど例外なくスイッチング電源を使用しているだろう。つまり強いノイズの発生装置を多数ぶら下げたところに、AV機器を接続すると、ノイズの影響を受けてしまうわけだ。

映像バッファーの効用

それで理想としては多数のポート(端子)を備えているスイッチングハブを使っていても、余計な機器を接続せず、ルーターとプレーヤー機器のみを接続し、データの流れをシンプルにしたほうが望ましいのである。

こういうことについて自信をもって言えるのは、実機で実験したことがあるからだし、さかのぼればホームシアターにおける映像機器の「セレクター」あたりから続いているお題だ。

というのは、映像セレクターを経由させると、画質音質が改善される、と言い続けてきたのはこの私だからだ。しかし当時はほとんど理解されなかった。ピュアイムズがオーディオの世界を席巻する中で、ただの中継機能とはいえ、映像バッファー(ビデオアンプ)や音声バッファー(音声アンプ)という“余分なもの”を経由させれば、必ず画質、音質の劣化を招く、と固く信じられていたからだ。

しかし、実際は注意深く配線し、電源ラインを整えると、映像セレクターを経由させた方が画質、音質が向上することが確認できたのだ。ノイズのループが遮断されるからだ。信号伝送の途中におけるわずかな劣化よりも、方々を自在に駆け巡るループノイズの方が悪さをするのである。

さらには、なつかしや、MUSE(ミューズ)方式のハイビジョン放送やMUSE LD(レーザーディスク)が登場したころ、より鮮明な映像の変化としてそれを体験できたのだ。

それは、従来映像と同じように通常の映像セレクターにMUSE信号を経由させることで試すことができた次第。これを意外なことという向きもあるだろうけど、MUSEといっても1フレームを4分割してそれが4回で1フレームを完成させるという簡易型の時分割式アナログ情報圧縮だったので可能だったわけだ。

それでも信じないお堅い面々には、手製の汎用ビデオアンプを電池駆動する仕掛けをこさえて先方でデモすると、さすがに納得されたり称賛されたりもした。ただしMUSE方式はあまりに短命であったために、画質音質を改善するビデオバッファーの発想がメーカー製品に反映されることはかなわないまま終わってしまった。

唯一、某メーカーの視聴室にて、2in/1outのゲーム機割り込み用のHDMIセレクターをプロジェクターへの配線の途中に介在させると画質、音質が改善されるということが認められ、常設されることになった。その際、電池電源ではないがノイズ対策した電源を用いたことも好結果につながった次第。

LANポートは低価格でも堅牢なものを選ぶ

というわけで、スイッチングハブの電源は付属のACアダプター、その大部分はスイッチング電源になっているけれど、それにノイズ対策したり、さらには電池電源にしてみると、画質、音質が改善したのだ。

これを基本としつつ、ここでは、スイッチングハブの“ポートの使い方”でどう変化するかを試してみたい。

筆者が現用しているスイッチングハブは高級品ではなく、量販店で<売れてます>とかの惹句付きで吊るし売りされていたものだ。数千円で購入したが、最近検索するとその後継機と思しき製品がさらに低価格で通販されていた。

LANポート(端子)は5口のみ。選択の際重視したのは、まずは金属筐体(鉄)であること。内部に飛び交うノイズを吸い取るのに効果が期待できるし、今後紹介する予定の筆者独自の「床アース」の処理をしやすいからだ。それと外付け電源であり、DC入力端子はUSB系などではなくDC用端子であること。ここでは5Vの汎用端子なので、他のDC電源を使いやすい。

スイッチングハブの背面にはDC5VのDC入力端子がある。これを使って各種電源を試せる。DC5Vの充電池パックを使うと、画質は最高となり、これを基準にして付属のスイッチング電源式ACアダプターのノイズ対策の効果を確認する。ただし音質はクリアーになるもののもうひとつ。左の銅たわしはハブの筐体に接続してノイズを逃がす目的。つまり「床アース」だ。ただしはんだ付けすると改造になってしまうことに留意されたい。ねじ止めを利用するのが無難だ

ポートの使い方

次に、実際にどのポートをどう使うのか、というあまり話題になってこなかった課題に取り組んでみよう。

スイッチングハブにおいて、原理的にはすべてのポート間の信号のやりとりは対等のはずだが、実際にはポートの組み合わせで音質が変わる。ポートの距離は数cmしかなく、内部でスイッチングICも経由するのでどのポートを使っても同じと思われるかもしれないが、実際にポートを変えながら試聴すると違いがある。オーディオ用ハブのメーカーによっては「ポートノイズ」対策を重視すると説明しているところもある。また私見を言えば、回路基板のパターン設計において、信号系が電源系やクリーンアースに近いか、遠いかということでも音質に影響する可能性はあるだろう。もちろん各ポートからの信号パターンが完全に等長、同一条件かどうかという問題も関係するだろう。

ただし、闇雲に音声データの入力や出力の組み合わせを試すのは得策ではない。膨大な組み合わせの中で原則を打ち立ててから手順を経て正解を探る手法が現実的だろう。

そこで筆者の試みでは、隣同士とそうでない場合をいくつか試すと、ポートの1番と2番、3番と4番のように隣同士で接続した方が、間を置いた接続よりも音質上有利だと判明した。

その上でどの組み合わせがいいのかを判断すると、ポート群の両端、つまり5ポートあった場合、“1番と2番”、“4番と5番”を使うのが音質的に良かった。実機では最終的に“4番と5番”で使うことにした次第。

ちなみに、私が複数のスイッチングハブを比較テストする場合は、おそらくどのメーカーも確認するだろう“1番と2番”の接続で統一している。ただし個々の製品が優先順位を指定している場合はそれに従っている。

スイッチングハブの内部。左端が入出力端子側。5個ある横長の黒い部品はICではなく、パルストランスとチョークコイルのモジュール。隣同士で向きを反転させているのは飛びつきノイズ対策だろう

差し替えるだけで簡単に試せるので、既にスイッチングハブを使っている人は、自分で色々な組み合わせを試してみるといい。すくなくとも端子の選択は結構な音質要素だということは間違いない。

なお、ハブから出るLANケーブルが交差する場合の、“交差のさせ方”は、私は<出力が下、入力が上>を鉄則としている。アナログ信号でもそうだ。

右下の灰色の箱がスイッチングハブ。右端のLANケーブルはネットワークプレーヤーへ。その隣の青いLANケーブルはルーターからの接続。これをデータの入力とみなしてLANケーブルの交差では、右端のLANケーブルより上に配線している。残りの3ポートは上の通電していないスイッチングハブに接続してノイズ対策している。受け側は端子を一つずつ空けていることに注目。この方が画質、音質がいい。スイッチングハブの隣の緑に点灯しているのはDC5Vの充電池パック。付属のACアダプターよりクリーンな画質、音質になる。商用電源ライン(AC100V)から隔離されるので大きなノイズのループを削除したことになる。ただし、画質は良好だが、「電池臭い」音という癖もないではない

電源については、基本としてLAN関係の各機器の電源は絶縁トランス経由かリニア電源(アナログ電源)としている。その効用は、写真のように充電池パックのDC5V電源を付属のスイッチング電源の代わりに用いるだけで明らかだ。特に画質には著効がある。音質についても改善効果はあるのだが、少々ドライな音、熟成感が乏しい音になるかもしれない。いわゆる電池臭い音だ。ならば乾電池にすればいいのだが、そこまではしていない。

それと、空いている3つのポートについてだが、これはターミネート(終端)した方がいい。LANポートは終端しなくても問題ないものだが、実際に試してみると効果がある。

といっても高価な音質改善用アクセサリーを何本も用意する必要はない。とりあえずは使っていない、あるいは故障しているスイッチングハブを用意して、短いLANケーブルをそれぞれ接続すれば試せる。その際、ターミネートする側は通電しない。電源OFFのハブをつないでも、当然リンクは確立しないわけだが、効果はある。

また、一端子置きに接続するほうが効果がよろしいようなのでお試しあれ。受ける側にてノイズを消耗させる余裕があった方がいい、ということだろうか?

そして、音声の再生を受け持つネットワークプレーヤーとの接続は、できたらLANケーブルを「半径ずらし」するといい。

パルストランスモジュールの内部結線。TXは送信、RXは受信。ひとつのLANポート、LAN端子にはその一対が2組ある。空ポートのノイズ対策用ターミネーターとして使う場合は通電しないのでこの接続関係だけ拝借する。抵抗を組み合わせる方式よりトランスで受ける方が本式に思える。直流に近いところまで終端できるからだ
3ポートのスイッチャー。ジャンク箱からサルベージしたもの。ADSLがブームになった頃、PCのLANポートを追加するねらいだったろうか、今では購入動機が不明。こういうものでも終端(ターミネート)用に使えるので捨てがたい。通電せずに使う。他にPCMCIAをLAN端子に変換するカードもジャンクから救い出して二度目の奉公をさせることができる
LANケーブルを半径ずらした写真。音楽再生に使うLANケーブルは、10Gbpsの“カテゴリー7”という広帯域の汎用品。ヨドバシで吊るし売りしているものだ。柔軟性があるので半径ずらしをしやすい。高級品の中には相当に硬いものがあってこうした変則巻きをしにくいものがある。LAN接続を使わないときは、先端には古い3ポートのスイッチングハブを装着。ターミネートすることでノイズの侵入内部のパルスの無駄なやりとりを防ぐ意図だ。つまり、接続されていてポートはふさがっているけれど接続機器は休止状態だ、と判断させる

ところが、こうした地道な改善努力をあざ笑うような代物が登場している。スイッチングハブを不要にする強力な光絶縁型中継器のことだ。それについては次回お話しよう。

吉田伊織

小学生(1962年)のころから数年、電気工作に熱中。ラジオの深夜放送を自作のラジオで聞くようになり、大人向けのポップスやラテン、ジャズ、映画音楽などに魅せられる。ジャズやロック、モダンフォークが大変革する前夜であり、後の音楽志向の原点となる。またギターの各ジャンルに興味が移り、クラシックギターは一時教室に通ったことがある。また40歳ころにヴァイオリンも習ったが両者とも短期間で限界を知って縁遠くなる。高卒後各種の就業を経験。産業用変圧器や電動機などの修理業では、高電圧ケーブルの絶縁性維持の仕組みにオーディオ用途との関連を見出す。また映画館やポストプロダクション(録音スタジオ)の映写室勤務を経験。 映画館ではアナログ式のドルビーステレオ用再生装置(パッシブ型サラウンドデコーダー相当)を自作。装置を実際の興行に供して好評を得る。光ファイバーを用いた光学音帯のピックアップとしては世界初であった。 趣味のオーディオについては、ジャズ喫茶通いや自作派名人、WE(ウェスターン・エレクトリック)系の大家との交流などで少しずつ接近。管球式、半導体式アンプのキット品や自作などで部品や実装法による音質の違いを研究し、今日のオーディオ評、ビジュアル評に生かしている。