小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第1238回

Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語

筆者おすすめ、高コスパでロックなイヤフォン・ヘッドフォン3種

ロックなイヤフォン・ヘッドフォンを探す

オーディオ市場においてイヤフォン・ヘッドフォンは非常に好調な分野であり、いまだ様々なトライアルが続けられている市場である。ブランド同士のコラボや技術提携も盛んで、新規参入メーカーながら老舗オーディオメーカーの監修といった製品も登場するなど、業界再編とも言える動きが加速している。

そうした中、低価格帯製品の底上げが進んでおり、1万円以下の製品でもなかなかの音を出してくるものも珍しくなくなってきている。そこで今回は、筆者が愛用しつつもなかなかご紹介する機会がなかった高コスパイヤフォン・ヘッドフォンをご紹介したい。

HAYLOUは今年2月に「S40」をご紹介したところだが、ワイヤレスイヤフォン「Flowbuds N55」は今年3月に海外発表されたモデルだ。「Flowbuds N50」は8月31日に日本でもリリースされている。どちらも1万円以下で入手できる高コスパ製品だ。もう一つは米国KOSSのオンイヤー型ヘッドフォン「KPH40」だ。米国では2021年11月15日から発売になっているが、日本ではほとんど話題にならなかった。今年6月にレトロデザインモデルが米国で発売されたところだが、日本では未発売のため、今回はブラックモデルを入手した。

Flowbudsシリーズは1万円以下でLDAC対応をほこる高コスパモデルだが、今回はKPH40に合わせ、ロックのリスニングという切り口でご紹介したい。

日本で入手難だった「Flowbuds N55」

まずHAYLOUのFlowbuds N55からだ。海外では今年3月5日に発表されているが、日本では6月1日の情報解禁・発売が予定されていたものの、ほとんど話題にならなかったはずだ。それというのも、HAYLOU製品の日本でほぼ唯一の入手先だったAmazonで、プラットフォームポリシーの変更に伴いHAYLOUの営業許可証などの登録情報を再更新するタイミングとちょうど重なったことで、ページはあれど販売されていない状態となっていた。

日本で入手難だった Flowbuds N55

現在もまだ販売は開始されておらず、日本から入手するにはAliExpressからの購入となる。10月12日現在、売りつくしセールとして価格は3,980円に値下げされている。今回はメーカーから直接サンプル機を提供いただいている。

イヤフォンとしては、ステム型のオーソドックスなインイヤータイプだ。カラーはブラックとホワイトの2タイプ。実はイヤフォン本体は、後述するN50と見た目は全く同じである。同じ金型を使って中身だけ別という、姉妹機となっている。

イヤフォンはシンプルなステム型

ドライバは12.4mmのチタンコーティング・ダイナミックドライバで、左右合わせて6マイクによる適応型ANCを搭載している。対応コーデックはLDACとSBCという、極端な組み合わせだ。IPX5の防水性能もある。付属イヤーチップは、S/M/L/XLの4種類。

イヤフォン側バッテリーは60mAhで、ANCオンでの連続再生時間は最大10時間。ケースバッテリーは475mAhで、ANCオンでの総再生時間は最大35時間となっている。

ケースデザインはN55とN50で違いがある。N55は卵型の樹脂製で、上部のみ反射の強いメタリックカラーとなっている。正面のHAYLOUのロゴが大きめにデザインされている。一方N50は、同じ卵型ながら軽量アルミ合金となっており、全体的にマットなガンメタリックになっている。実はフタの形状が違っており、N55が斜めに切り込みがあるのに対し、N50は水平に切り込みがある。

N55(左)とN50のケース
フタの切り方に違いがある

ANCの種類は、5段階のマニュアル設定、自動でキャンセルレベルを調整するアダプティブANC、OFF、外音取り込みの4タイプ。

ANCモードは4タイプ

ステム部の長押しでANCモードを切り替えられるが、アダプティブANCだけは長押しでは切り替えられない。これを選択した場合はモード変更は不要ではあるのだが、間違って長押しして違うモードにしてしまうと、復帰するにはアプリから選択しなければならないので、ちょっと面倒だ。

日本向け主力モデル「Flowbuds N50」

N50の発売は8月末で、今のところHAYLOUのオフィシャルサイトか楽天市場から購入できる。価格は6,480円。AliExpressからも購入できる。カラーはブラック、ブルー、ホワイトの3タイプ。

Flowbuds N50 ブラックモデル

イヤフォン自体のデザインはN55と同じだが、ドライバはチタンコーティングという記載はなく、単に12.4mmダイナミックドライバとなっている。左右合わせて6マイクは同じだが、新たにAI通話ノイズリダクション搭載となっている。これは後で試してみよう。対応コーデックはLDACとSBCという点はN55と同じ、IPX5の防水性能も同じだ。

イヤフォン自体はN55と見た目は同じ

イヤフォン側バッテリーは45mAhとやや少なくなっており、ANCオンでの連続再生時間は最大7.5時間。ケースバッテリーは350mAhで、ANCオンでの総再生時間は最大24時間となっている。ただケースはN55よりも若干スリムになっている。

ANCの種類も同じで、ステム部の長押しでアダプティブANCだけは切り替わらないのも同じだ。

大きな違いはケースの質感とバッテリー容量だが、ドライバが違うので音質も違うはずだ。

しゃっきり感のあるN55、どっしり感のあるN50

では双方を聴き比べてみよう。今回はAmazon Musicで今月からハイレゾ配信が開始されたジョニー・マーの「The Age of Everything」を聴いていく。ジョニー・マーといえば伝説的なバンドThe Smithsのギタリスト・ソングライターとして有名だが、実は結構な量のソロアルバムを出している。再生機はGoogle Pixel 10 Pro XLだ。

N55は低域、高域の抜け感が強いサウンドだ。EQはデフォルトのままでもドンシャリ感を感じさせる派手目な音だが、この辺がチタンコーティングドライバの特性ということだろう。ロックに限らずオールマイティに聴ける音質である。

EQを変えると性格が激変するのがHAYLOUの特徴だが、サウンドマーケットの「低音の強化」を選ぶと音がモコモコになってしまうので、おすすめできない。低音を増強したいなら、「基本音」の「ロックンロール」がいい。こちらは高域を抑え、中音域と低音を前に出すセッティングで、パンチのあるサウンドに生まれ変わる。デフォルトも結構いい音なので、どちらを使うか悩ましいところである。

EQ設定はN55とN50で同じ

一方N50は、高域の抜け感は感じられないが、低音の張り出しが気持ちのいいロックサウンドである。高域が耳に刺さらないので、疲れにくい優しいサウンドとも言える。サウンドマーケットの「低音の強化」を選ぶと、こちらはデフォルトに対してほんの少し低音を足す感じだ。バスドラムのパンチが効いてくるので、よりロックなサウンドとなる。

「基本音」の「ロックンロール」を選ぶと、中低域が張り出すのはN55と同様の傾向だが、高域が引っ込んでしまうので、ややブーミーな感じになる。果てしなく低音が出せるイヤフォンだが、一般的にはデフォルトか、「低音の強化」ぐらいがちょうどいいだろう。

オールマイティに聴くならN55、ロック、テクノ、EDM系の重低音重視派ならN50がお勧めだ。

続いてANCの効き具合をテストしてみた。レベル5のANCとアダプティブANCを比較してみたが、効き具合としては変わらないようだ。N55とN50の効き具合は、N55のほうが低音部のキャンセルに強く、高音域のみ残る感じだ。一方N50は低音域もそれなりに聞こえてくるが、全体的にノイズレベルを落とすといったバランス感である。

ANCの違いをテスト

音声通話品質に関しては、大きな違いが出た。N55の通話ANCはいかにも旧世代で、かなりこもった音がするのに加え、映像との遅延が大きい。一方N50の場合はAIを使ったキャンセリングにより、周囲のアンビエントノイズは完全にカットして、音声品質はほぼ変わらないクオリティとなっている。大きな音が来ると入り込んでしまうが、一般的な生活ノイズであれば十分対応可能だ。

音声通話はN50の圧勝

レトロなルックスに骨太サウンド、KOSS「KPH40」

KOSSと言えば昔から「Porta Pro」一択のようなイメージだが、完全ワイヤレスモデルも投入するなど、昨今のレトロブームに乗って積極的な商品展開が行われている。

今回ご紹介するKPH40は米国では2021年11月15日の発売だが、日本では長らく個人輸入やKOSSのAmazon出品が中心で、正規代理店TEACの取り扱い開始時期は判然としない。筆者は先日京橋で開催された「CREATORS EDGE 2026」というイベントでTEACブースで初めて現物を見た。

「CREATORS EDGE 2026」で出展されたKPH40と KPH40 Retro

オレンジイヤーパッドの「KPH40 Retro」は米国で今年6月1日に発売され、日本のTEAC公式ストアでは10月12日時点で近日発売予定とされている。現時点ではまだ販売されていないため、今回はブラックモデルを購入した。公式ストア価格は7,480円。

ようやく日本でも出回り始めたKOSS「KPH40」

ヘッドフォンとしては非常に軽量で、44gしかない。周波数特性は15Hz~25kHzで、ステレオミニプラグのワイヤードヘッドフォンである。方式としてはオープンエアで、ヘッドバンドはステンレス製。

折り畳みはできないぶん、Porta Proより構造はシンプル
ヘッドバンドはステンレス製

KOSS Utilityというシリーズ製品となっており、ヘッドフォン側のケーブルは胸元のあたりで分かれるようになっている。製品にはそこからステレオミニジャックの延長ケーブルが付属するが、この延長部分の先がUSB-CとかLightningとかのコネクタに付け替えられるという、システム商品になっているようだ。ただし日本のTEACでは、このUtilityケーブルの取り扱いはないそうである。

ケーブルが途中で分離できる

今回は再生機を同じにするため、USB DACとして「Beyeah M1 USB DAC」を使用した。32bit/384kHzの変換ができる小型DACだが、話題になったのは2023年頃なので、すでに終売となっているようだ。

サウンドはKOSSの伝統に従った、低音が強調された骨太のサウンドだ。オープンエアらしい、高音がサラッと通り抜けていく開放感も魅力である。バスドラムのアタックだけでなく、スネアのアタックも強く感じさせる、リニアリティの高いサウンドだ。ただ解像感という点では劣る。サウンド全体を固まりとして聴かせる傾向があるので、モニター的に聴く用途には向かない。

中高域も含めた特性バランスはイヤーパッドで調整してあるようなので、音をいじりたければイヤーパッドを市販のものに付け替えてみるというのも面白そうだ。サイズはPorta Proと同じである。

装着感もソフトで、オンイヤー型特有のイヤーパッドの温かみを感じる。夏場はちょっと厳しいかもしれないが、秋冬の屋外で使うと気持ちよさそうだ。昨今はアナログヘッドフォン端子を装備したミュージックプレーヤーも売れ始めている。またカセットテープも復興しているそうなので、ルックスだけでなくサウンド的にも、そうした機器との相性はいいだろう。

ノイズキャンセリングも何もないし音漏れも盛大にするので、電車の中などで使用する際には周りの人に迷惑にならないよう、配慮してほしい。またレトロかつ軽快なルックスも魅力なので、首からかけておくだけでもカッコいい。

総論

今回ご紹介したイヤフォン・ヘッドフォンは、どれも1万円以下で買えるものばかりだ。しかしそれぞれに音が個性的で、聴き慣れたいつものサウンドとは違う体験が得られるのがポイントである。

N55は音質のバランスが良く、オールマイティに使えるイヤフォンだ。ANCも性能が良く、電車内でのリスニングにも適している。ただEQの効きが極端なので、サウンドはいじりにくいという難点がある。また通話には向かない。

N50は音質が低音寄りで、よりヘヴィな音楽が好みの人に合うだろう。EQの効きは繊細で、大きく変わらないので使いやすい。一方きらびやかな高域が欲しい人には向かない。音声通話には優れているので、通話する可能性がある時間帯専用のイヤフォンにするのもいいだろう。ANCの効きも悪くない。

ただし上記2モデルはLDAC接続で聞かないと、十分な音質が得られない。スマホはLDAC対応Androidか、LDAC出力対応ポータブルアンプと組み合わせることになる。またマルチポイント接続にも対応するが、LDACとは排他仕様になる点に注意していただきたい。

KPH40はオープンエア特有のソフトな使用感が特徴だ。低音重視ではあるが、中高域のバランスも悪くない。昨今はアナログ出力がある機器も減ってきたが、急にそうした機器の音を聞く際には、気軽に使える有線ヘッドフォンが1つはあったほうがいい。ボディも軽量で丈夫なので、ちょっとしたモニター用としてカメラバッグなどに放り込んでおくのもいいだろう。

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「小寺・西田のマンデーランチビュッフェ」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。