「VECLOS(ヴェクロス)」は、世界初の高真空断熱ステンレス製魔法びんを商品化したサーモスのオーディオブランドだ。サーモスの魔法びんの肝となる真空断熱技術を、より心地よく音楽を聴くために応用した「真空エンクロージャー」への挑戦が始まったのは、2015年に発売されたVECLOS初のオーディオ製品となるBluetooth対応のワイヤレスポータブルスピーカー「SSA-40」からだった。

SSA-40の繊細で滑らかな中高域の再現力は、まさしく真空エンクロージャーだからこそ味わえる「おいしい音」だった。こうしてコンシューマ向けの製品だったスピーカーは瞬く間に評判を呼び、音楽制作の現場で可搬性にも優れるモニタリングツールとしてプロのエンジニアにも使われるようになった。

そして彼らの声を受け、より中低域のサウンドに厚みを持たせた本格派のニアフィールドモニタリング用スピーカーとして、プロフェッショナル向けアクティブニアフィールドモニター「MSA-380S」が2017年末に誕生した。

するとプロが認めたVECLOSの本格派サウンドを、わが家のリスニングルームでも聴いてみたいというオーディオマニアからの期待が熱を帯び、翌18年春にはデスクトップでのニアフィールドリスニングに最適なデジタルオーディオシステム「SSB-380S」が発売された。ハイスペックなUSB-DAC機能を内蔵し、またハイレゾ相当のワイヤレス再生を実現するコーデック「LDAC」にも対応。有線・無線の両方で最高クラスのサウンドが楽しめるデスクトップオーディオだ。

SSA-40S

MSA-380S

SSB-380S

さらに、VECLOS独自の真空エンクロージャーの進化は続いていく。

池田裕昭氏

サーモスでVECLOSを担当している池田裕昭氏は、ヘッドホン・イヤホンへの進出を決めた足取りを次のように振り返る。

展示会などでSSA-40の真空エンクロージャーのカットサンプルを手にとっていただくと、皆さん一様に軽量・コンパクトでありながら非常に剛性が高いことに驚かれます。そして、これをヘッドホン・イヤホンに応用してみてはというご意見を多数いただいておりましたので、私たちの真空技術によるオーディオの向かうべき方向が自然と見えてきました。

こうして18年の夏にVECLOSから初めてのヘッドホン・イヤホンが誕生した。ラインナップはヘッドホン2機種と、イヤホン4機種となる。詳細はこちらの記事を参照していただくとして、ここでは各製品の特長を知るうえで大事な真空エンクロージャーに関連する要点を抑えておきたい。

チタン製エンクロージャーインナーイヤーヘッドホン「EPT-700」(左)/「EPT-500」(右)

ステンレス製エンクロージャーインナーイヤーヘッドホン「EPS-700」(左)/「EPS-500」(右)

チタン製エンクロージャーオーバーイヤーヘッドホン「HPT-700」

ステンレス製エンクロージャーオーバーイヤーヘッドホン「HPS-500」

極薄・極小の真空エンクロージャー完成までの足跡
~燕三条の金属加工技術が実現した薄さ0.4mmの真空二重構造~

ヘッドホン・イヤホンに採用されている真空エンクロージャーは、内筒・外筒の二重構造となっていてその間の空間を真空状態にしている。

おいしさを保つ魔法びんの技術「真空二重構造」。それをヘッドホンやイヤホンに応用し、生み出された技術が「真空エンクロージャ」だ

池田氏は「従来の金属製のエンクロージャーは、無垢の金属で剛性を高めていますが重くなります。一方、真空状態は大気より圧力が低いため、大気との圧力差により内筒と外筒の表面に張力が発生します。これにより、エンクロージャーの剛性を高めることができます。

また、真空エンクロージャの内部は真空状態ですので物質がほとんどなく、剛性を高めながら軽量化することができます。軽量化はそのままヘッドホン・イヤホンの装着感の向上に繋がります。

さらに優れたダンピング特性も発揮しますので、音楽再生時に不要な振動を減衰させる効果が得られます。これらにより、ドライバーの駆動効率が上がるため、立体的な音場、正確な定位の再現が可能になります」と、真空技術の効果を説いている。

左が真空状態、右が非真空状態。エンクロージャーの内筒に一定の荷重をかけた場合の変化量。青いほど剛性が高いことを示す

VECLOSのヘッドホンとイヤホンには、それぞれエンクロージャーの素材にチタンとステンレスを使った2種類のバリエーションがある。イヤホンについてはさらに、搭載するBAドライバーの数が違う2つのモデルに分岐する。

2Wayワイドレンジ・BAドライバー(上)を搭載する「EPT-700/EPS-700」と、フルレンジ・BAドライバー(下)を搭載する「EPT-500/EPS-500」の2モデルが用意されている

ステンレスは、サーモスの魔法びんにも多用されている金属だ。軽量で剛性の高いチタンもまた、プレミアムクラスのオーディオ製品によく使われている、内部損失に優れる金属である。

それぞれに共通するのは、わずか0.4mmの厚みに成型し、さらに真空層まで設けたヘッドホン・イヤホンのエンクロージャーに加工するため、高度な技術を要するということだ。

池田氏は「サーモスが研究開発拠点を構える新潟・燕三条で、金属加工に携わるエキスパートに力を貸していただけたことで、サーモスが初めて挑戦した極薄・極小の真空エンクロージャーが完成しました」と経緯を振り返る。

燕三条の金属加工職人の技術が生み出した、極薄・極小の真空エンクロージャー

当初、チタンを上位モデルに位置付ける考えだった。しかし、開発が進みステンレスならではの良さも見えてきたことで池田氏は「チタンとステンレス、それぞれの響きを好みに合わせて選んでほしい」という思いに変わる。

VECLOSは、冷たいものは冷たく、温かいものは温かく。魔法びんで使われているサーモスの真空技術を「いい音」で楽しむことに使えないだろうかという考えから、スピーカー、ヘッドホン、イヤホンのすべての製品に真空技術が応用されている。ダイナミックに変化する音の表情や奏者の息づかい、音楽の鳴る空間そのものを描き出すこと、その優れた定位と音場感により目の前で演奏されているかのような圧倒的なリアリティを生み出すという、音づくりのフィロソフィーを力強く掲げる期待の国産ブランドなのである。

さてここからは、日本を代表するヘッドホン・イヤホンの販売店を代表して今回の企画に参加いただいた、フジヤエービックの根本圭氏、e☆イヤホンの松原了氏の両名にVECLOSの新製品の魅力を存分に語っていただくことにしよう。

フジヤエービックの根本氏(右)、e☆イヤホンの松原氏(左)

フジヤエービック / eイヤホンにて期間限定キャンペーンを開催

■ フジヤエービック

東京/中野にあるヘッドフォンマニアであれば必ず一度は行ったことがあると言っても過言ではない、国内有数のオーディオ専門店。知識豊富なスタッフが多く、それを頼りに来店するマニアも多い。イヤフォン/ヘッドフォンブームの火付け役となった「ヘッドフォン祭」を2006年から開催。

【購入者全員】VECLOSプレゼントキャンペーン(2019年1月31日まで)

・VECLOSオーバーイヤーヘッドホンをご購入の方

「e-onkyo1曲無料ダウンロードクーポン x 3枚」「純正イヤーパッド」をプレゼント

・VECLOSインナーイヤーヘッドホンをご購入の方

「e-onkyo1曲無料ダウンロードクーポン x 3枚」「根本氏オススメfinal イヤホン用イヤピース(Eタイプ各サイズ2個入り)」をプレゼント

■ eイヤホン秋葉原店

全国7店で展開している国内最大級のイヤフォン&ヘッドフォン専門店の秋葉原店。店内取扱アイテム約2万4千点以上、新品販売はもとより、修理やチューンナップ、中古買取 / 中古販売、オリジナル商品の企画 / 販売まで手掛けており、ビギナーからハイエンドユーザーまで客層は幅広い。カスタムIEM専門の店舗えをオープンさせたり、大規模ポータブルオーディオイベント「ポタフェス」も主催するなど、オリジナリティ溢れる独自の取り組みも多い。「ポタフェス」東京開催は5万人を動員するなど、国内最大級のオーディオイベントに成長させている。

サーモス × e☆イヤホン オリジナルタンブラープレゼントキャンペーン開催中(無くなり次第終了)

サーモスのオーディオ分野参入
~サーモスのオーディオブランド「VECLOS」の現在地~

― サーモスがオーディオの分野に参入したと聞いて、最初はどのように思われましたか

根本氏:あの魔法びんのサーモスがオーディオを始めたと聞いて意表を突かれました。Bluetoothスピーカーの「SSA-40」が発売された当時、新しいヘッドホン・イヤホンのブランドが次々に起ち上がりましたが、どちらかと言えば家電系のブランドが多く、まったくの異業種であるサーモスの参入は、私たちスタッフにとっても驚くべき出来事でした。

松原氏:実を言うと私は「SSA-40」のユーザーなんです。アウトドアで腰を落ち着けて音楽を聴く時にもスピーカーを好んで使うほうなので、本機の聴き疲れしないサウンドと高いポータビリティが気に入って購入しました。ヘッドホン、イヤホンの登場はずっと待ちわびていたので大歓迎です。

根本氏

松原氏

― 新しく発売されたヘッドホンとイヤホンを初めて聴いた時の印象を教えてください

松原氏:最初にチタンのイヤホン「EPT-700」を聴いて、レスポンスの正確な中高域と充実した低域にとても満足しました。どんな音楽にも合わせやすいオールラウンダーですが、イヤホンは金属の種類やドライバーの数が異なるバリエーションが4機種も揃っているので、必ず好みのサウンドが見つかると思います。装着感が心地よく、遮音性が高いところにも惹かれました。

根本氏:異業種による新興ブランドのヘッドホン・イヤホンといえば、製品の設計・開発の大部分を外部のパートナーに委託する形で作られているものも多くありますが、VECLOSの製品は試作機の段階でとても完成度が高く、本気度がまったく違いました。

異なる金属を使った真空エンクロージャーの技術も他に類を見ない独創性にあふれていました。ドライバーからケーブルまで行き届いた高音質へのこだわりは、オーディオ初参入のブランドとは思えないレベルに達していたことを、今でもはっきりと覚えています。

― ショップに訪れるお客様からの、VECLOSのヘッドホン・イヤホンに対する反響はいかがですか

根本氏:「魔法びんのサーモスがつくったオーディオ」といううたい文句はとてもキャッチーですね。サーモスのブランド認知が高いので、多くのお客様に関心を持っていただけます。

当店に足を運ばれるお客様はポータブルオーディオのことをご存知な方も多いので、どちらかと言えば質実剛健で機能美を追求した製品が好まれます。VECLOS製品のミニマルなデザインに惹かれて、音質や装着感を試したいと声をかけて下さるお客様もいらっしゃいます。

真空エンクロージャーやチタンとステンレスの金属による音の違いなど、VECLOSならではの仕掛けも当店のお客様にはしっかりと響いているようです。

松原氏:当店では今、VELCOSの製品を人気モデルのコーナーに置いてプッシュしているので、自然と手に取って試聴されるお客様が大勢いらっしゃいます。女性のお客様は、サーモスのブランド認知が高くイメージも良いので、VECLOSがあのサーモスのオーディオブランドであることを知ると、大半の方が関心を持って試聴して下さいます。プレミアム価格帯で、これほど女性のお客様に注目されるヘッドホン・イヤホンは珍しいですね。

ご購入いただくお客様は30~40代の方が多いです。選んだ決め手を尋ねると、シンプルなデザインなのに必要な機能が一通り揃っている使いやすさを理由に挙げる声が返ってきます。

― VECLOSの新製品の中で、お二人が個人的に注目しているモデルがあれば教えてください

松原氏:私は、どちらかと言えば家にこもってずっと音楽を聴きながら一人で過ごしたいので(笑)、一押しはヘッドホンです。チタン製エンクロージャーの「HPT-700」は高音の再生が得意なイメージで、鋭いレスポンスがロック系の楽曲にマッチすると思います。

ステンレスの「HPS-500」は中低域が伸びやかで、ボーカルリスニングとの相性がとても良かったです。チタンとステンレスで明快な音の違いがありますが、どちらも底力のあるヘッドホンなので優劣で評価するべきではないと思います。じっくりと聴いて、好みのサウンドを選んでほしいですね。

根本氏:ヘッドホンでは、チタンの「HPT-700」は豊かな余韻が楽しめるので、ホール収録や女性ボーカルもののコンテンツによく合うと思います。ステンレスの「HPS-500」はスパッと歯切れの良いサウンドなので、私の好きなEDMやカッティングを強めに弾くアグレッシブなアコースティックギターの楽曲が気持ちよく聴けました。

イヤホンは、エンクロージャーの素材の違いだけでなく、内蔵するドライバーの数でも音に差が出ます。ドライバーを2基搭載するチタン製エンクロージャーの「EPT-700」は分解能がとても高く、余韻の豊かさが際立っています。ステンレス製エンクロージャーでシングルドライバーという仕様の「EPS-500」は、力強いアタック感を特長としています。ヘッドホンと同様、好みに合うサウンドを選べる楽しさがあります。

ヘッドホンとイヤホンはどの機種もリケーブルに対応しています。特にヘッドホンは汎用性の高い3.5mmプラグによる左右両出し機構なので、ケーブル自作派のお客様にものすごく好評です。一見シンプルなように見えて、マニアックな視点から丁寧に作り込まれているところもVECLOS製品の魅力と言えそうです。

― 今後のVECLOSに期待することをお聞かせください

根本氏:真空加工の技術はVECLOSにしかない強みなので、ぜひこれを多彩な製品群に広げてもらいたいと思います。ヘッドホン、イヤホンについてはビギナー層にも手に取りやすい価格帯のものがでてくると嬉しいですね。今回発売されたモデルはミニマルなデザインが魅力のひとつですが、これから様々なデザイン展開があってもいいかもしれません。

松原氏:真空技術はハイレベルなものですが、それでもサーモスのオーディオブランドであるVECLOSのオリジナリティを、より多くの方々が手軽に楽しめるラインナップ展開に期待しています。サーモスの魔法びんは「アウトドア」のイメージが強いので、例えばヘッドホンは、今のトレンドであるコンパクトなオンイヤースタイルのポータブル機が追加されたら、ラインナップに厚みが出ると思います。

今後もVECLOSらしい独創的なオーディオを形に
~ユーザー目線のラインナップ展開~

根本氏、松原氏からの率直なコメントを受けて、サーモスの池田氏は「VECLOSが描いているブランドイメージを製品に落とし込んだ音とデザイン、技術的な特長がお二人に伝わっていることがとても嬉しいです」と、会心の笑みを浮かべていた。これからのVECLOSの商品展開についても様々なアイデアが膨らんできたようだ。

これまでのVECLOSは、「音質」の良さを前面に打ち出したプレミアム戦略のもと、ブランドイメージの確立を最優先のミッションとして掲げてきた。その甲斐もあって、すでに耳の肥えたポータブルオーディオファンから厚い信頼を獲得しつつあるようだ。

ヘッドホン・イヤホンについても、今回の第1弾モデルの成功によって足場が固まれば、さらに広範なラインナップ展開や、マニアをうならせるVECLOSならではの独創的な製品の誕生が期待できるかもしれない。

池田氏は最後に「これからもショップの皆様と連携してお客様の声に耳を傾けながら、VECLOSにしか作れないオーディオを形にしていきたい」と強い意気込みを語った。