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デジタルワイヤレスヘッドフォンの完成型?
自動電源ON/OFFが魅力のフラッグシップモデル
東北パイオニア「SE-DIR2000C」

発売日:7月下旬発売
標準価格:オープンプライス
実売価格:46,800円前後


■ 東北パイオニアのフラッグシップモデルが一新

 深夜のDVD視聴など、大音量が出せない環境で重宝するのがヘッドフォン。特にDVDのマルチチャンネル音声を気軽かつ満足に楽しむためには、デジタル音声入力やドルビーデジタル/DTSデコーダを搭載したワイヤレスヘッドフォンは非常に魅力的な製品だ。

 高いクオリティでの視聴を考えると、アナログ赤外線伝送ではなく、デジタル伝送のヘッドフォンが求められる。以前から、東北パイオニアやソニーが製品を発表していたが、昨年はオーディオテクニカのハイエンドモデル「ATH-DCL3000」が発売されたほか、ソニーの「MDR-DS4000」、ビクター「HP-W1000」、パナソニック「RP-WH5000」など各社が新製品を発表するなど盛り上がりを見せた。

 しかし、昨年のA&Vフェスタで試聴して以来、最も期待していたビクター「HP-W1000」は、あえなく発売中止となってしまった……。そんな中、この市場では老舗ともいえる東北パイオニアがフラッグシップモデルを一新。「SE-DIR2000C」として7月下旬より発売開始する。

 「SE-DIR2000C」は従来モデルのSE-DIR1000Cのユニットの基本設計などを踏襲しながらも、AACに対応。また、リモコンの付属や、スタンド充電機能などで使い勝手を向上させたモデルだ。

 AAC対応は、デジタル放送が本格普及に向かっている2005年の日本市場ではマストな機能。さらに、使い勝手の向上も図っているとのことで、価格は約46,800円前後とやや高めだが、この市場では老舗ともいえる同社のフラッグシップモデルだけに期待がかかる。



■ 本体充電機能搭載。リモコンも付属

同梱品

 伝送方式は、非圧縮デジタル赤外線伝送。本体はトランスミッタ部とヘッドフォン部より構成され、単3ニッケル水素充電池×2やACアダプタ、光デジタルケーブルなどが同梱される。

 ヘッドフォン部はオープンエアーダイナミック型で、「SE-DIR1000C」を踏襲した50mm径のユニットを搭載。電池格納部などの重心を低く配置することで、従来モデルより装着時の安定性を高めている。

 電池ボックスは左ハウジング上部に配しており、LEDランプも装備。右ハウジング上のユニットにボリュームコントローラを備えている。また、新たにハウジングの傾きを感知して、自動的に電源ON/OFFを行なう機構を採用し、ヘッドフォンを頭にかけると電源ON、はずすと電源OFFとなり、電源の切り忘れを防いでいる。

 他社製のワイヤレスヘッドフォンでは、ヘッドバンドがスイッチを兼ねているものもあるが、このハウジング連動電源を試したところ、ほぼ間違いなく装着、脱着に連動して電源ON/OFFが実現できている。なお、ヘッドフォン単体の「SE-DHP2000」の別売も行なわれる。価格は26,250円。


ヘッドフォン部 左側面に電源用のLEDを装備 【動画】ハウジングの動きに連動してON/OFFを切り替える
右ハウジング上に電池ユニットを装備。ボリュームボタンも備えている

トランスミッタ部上部のスタンドで充電が可能

 再生周波数帯域は10Hz~24kHz。重量は約350g(本体のみ)。電源は単3ニッケル水素充電池×2で、付属のニッケル水素充電池で約20時間、単3アルカリ電池で約29時間、単3マンガン電池で約11時間の連続駆動が可能となっている。

 トランスミッタ部は、縦置きタイプで横置きは不可能。最大の特徴は充電器スタンド機能も備えていることで、ヘッドフォン上部の充電端子をトランスミッタの上部のヘッドフォンスタンド部に接合することで、充電が可能となる。SE-DIR1000Cでは、トランスミッタからケーブルでつないで充電していたことを考えると、嬉しい改善点だ。

 最初はついついヘッドバンド部をスタンドに載せてしまうこともあったが、スタンドにヘッドフォンを載せると、カチッと音がしてLEDが点灯するので、充電をミスることは無いだろう。とにかく使いやすい充電スタンドの採用は嬉しいところだ。

 前面にはドルビーデジタルやDTS、AACなどの入力信号を識別するインジケータと、出力チャンネルインジケータ、ドルビーヘッドフォンのモードインジケータ、ドルビープロロジック IIのモードインジケータ、BASS ASSISTインジケータ、入力インジケータ、電源ボタン、ボリュームボタン、ヘッドフォン出力を装備する。

 背面は光デジタル入力×2、同軸デジタル×1、アナログ×1を装備。アナログ入力用のアッテネータスイッチも備えており、アナログ入力の感度を切り替えられる(0dB/-8dB)。光デジタルスルー出力も備えている。ACアダプタはやや大きめだ。

トランスミッタ部前面 側面
背面は光デジタル入力×2、同軸デジタル×1、アナログ×1を装備。光デジタルスルー出力や、アナログ入力用のアッテネータスイッチも備えている ヘッドフォンとトランスミッタ部上部の充電端子をあわせて充電

リモコン

 リモコンは、電源ボタンやLEDの照度を調節するDIMMERスイッチ、ボリュームボタン、MUTEなどのほか、入力切り替えや、ドルビーヘッドフォンのモード切替、BASS ASSIST、ドルビープロロジックIIを装備。

 モノラルの音声チャンネルを2つもつデジタル信号の切り替えが可能なBILINGALボタンも装備し、2カ国語放送などをDVDレコーダのデュアルモノラルモードで録画したVR形式のDVDディスクで音声の切り替えが行なえる。



■ 装着感は良好。自動電源ON/OFF機能が嬉しい

 接続は簡単で、トランスミッタをDVD/CDプレーヤーなどの出力機器とつなぐだけ。特に難しい点は無い。

 ヘッドフォンの装着感は非常によい。5万円クラスのヘッドフォンのような重量感や素材の質感はないが、イヤーパッドの質感も耳馴染みがよく、50mm径の大型ユニットの採用と相まってゆとりある装着感が味わえる。側圧も強くなく、重量バランスも良好だ。

装着例

 ヘッドフォンを装着すると、ハウジングの動作を検知してヘッドフォンの電源が自動的にONになる。これは左ハウジングに傾きを感知するセンサーが入っているためで、使用後にはハウジングが後ろに戻るため自動的に電源OFFとなる。これなら電源の切り忘れはまず無いし、電源のON/OFFすら意識する必要がない。使い勝手は大幅に向上しているといえる。ただし、机の上など、スタンド以外の場所に何気なく置いておくと、置き方によっては電源が入ってしまうことがあった。

 まずは、全てのサラウンド機能をOFFにして音楽を聞くと、デジタル伝送なので、ボリュームを最大にしても伝送ノイズは全くない。非常に快適なワイヤレス環境が簡単に実現できている。

 伝送距離はトランスミッタの上下左右 各30度、最長10mまでカバー。見通しが良ければカタログ値より若干遠くまで伝送できる。ただし、先週テストした「NHJ VHD-5500」のBluetooth伝送と比較すると、指向性がかなり強く、またトランスミッタとヘッドフォンの間の遮蔽物の影響を強く受ける。例えば、ヘッドフォンとトランスミッタの間に人が通り過ぎると、ブチブチと一瞬音がとぎれる。どのデジタル赤外線伝送ヘッドフォンでも同じなのだが、ノイズが耳に痛いのは、同方式の弱点といえるかもしれない。

 ヘッドフォン部の音質はニュートラルで、大型ユニットのオープンエアー型ということもあり、広い音場表現が最大の魅力といえる。高域までしっかり伸び、スケールの大きな音場を描くのでクラシックソースなどに最適。低域も量的には十分だが、ソースを問わず、あっさりとバランスよく再生するので、パンチの効いた低域を求める向きにはやや物足りないかもしれない。

 前面のヘッドフォン出力にソニーのモニター系ヘッドフォン「MDR-CD900ST」を接続してみたところ、音場の広さやゆとりはSE-DIR2000Cが上だが、低域のスピードやアタックの強さは、MDR-CD900STがきっちりと再現する。

 とにかくシアター用途を意識して、広いサウンドステージで勝負するヘッドフォンなので、モニター系のMDR-CD900STとはまったく違う傾向だが、こうした異なるタイプのヘッドフォンを接続して、テストできるものSE-DIR2000Cの魅力だ。


■ 効果の大きいドルビーヘッドフォン

本体前面にインジケータを装備。リモコンのDIMMERスイッチにより照度の切り替えやLEDのOFFも可能

 それでは本題ともいえるシアター用途で利用してみよう。といっても、基本的にはドルビーヘッドフォン搭載のワイヤレスヘッドフォンなので、廉価モデルの「SE-DIR800C」と機能的には共通だ。

 ドルビーヘッドフォンは、ステレオヘッドフォンでマルチチャンネルソースを再生できる立体音響技術で、ヘッドフォンでDVDやデジタル放送の5.1chマルチチャンネル音声を再現する技術。ドルビーデジタル音声だけでなく、DTSやAACでもドルビーヘッドフォンを適用可能で、残響を抑えた「DH1」、適度な残響のある「DH2」、小規模な映画館を模した「DH3」の3モードが用意されている。

 主にDTSデモディスク9を中心に試聴すると、ステレオ再生の時に比べて前方に音場が広がり、センターに割り当てられているセリフなどが、前面から聞こえるようになる。

 ドルビーヘッドフォン適用後にすぐに効果が確認できるが、5分間程聞き続けていると、より音場を広く感じるようになるようで、最初はさほどサラウンド感がないかな? と思っていたソースでも再度同シーンを聞き返すと迫力が増しているということがある。

 音質的にはやはり、残響を押さえたDH1がソースに最も忠実で、最初は一番高音質と感じるのだが、数分間聞き慣れていくうちに、同じソースで試聴しても広がり感やかなり違ってくる。

 DH3を利用すれば、音場の広さを表現するようなソースだと、移動感だけでなく、包囲感も大幅に向上。特に垂直方向の音場の広さには大きな違いがあるので、ソースにあわせて好みのモードを選択するといいだろう。忠実な音再現を求めるのであればDH1だが、DH3では派手なアクションの移動感だけでなく、包囲感を優先したいDVDでもかなりの効化を発揮する。

 音楽系のソースでも、ドルビープロロジック IIデコーダにより、ステレオソースを5.1ch化し、その後段でドルビーヘッドフォンをかけることも可能だ。聞き慣れたCDだと、音質変化を感じてしまうが、ステレオ収録の音楽DVDなどで適用するとなかなか面白い。

 バッテリ駆動時間は、付属の単3ニッケル水素充電池2本で、約20時間。1週間ほど試用してみたが、基本的に使い終わった後にはスタンドに戻して充電を行なうので、バッテリ面で不安を感じることは無かった。


■ “ワイヤレスであること”を意識させない使用感が魅力

 デジタル方式のノイズレスな伝送というメリットを生かしつつ、音質的に下位モデルの「SE-DIR800C」から1ランク上の印象。しかし、上位モデルとしての魅力を感じるのはむしろ使い勝手の面だ。

 一番嬉しいのは、ヘッドフォン装着と電源の連動機能。使用前後に電源のON/OFFを全く意識することなく利用できるというのは、ワイヤヘッドフォンとしては非常に重要なポイントだ。さらに、本体充電機能を備えたことで、充電も意識することがほとんどない。普通のワイヤードヘッドフォンと同様に「装着するだけ」で、ワイヤレスヘッドフォンの利便性を享受できる。

 さらにリモコンにより、モード切替も出来るなど、機能としてはワイヤレスヘッドフォンとしてはほぼ全て揃っている。音質的なアドバンテージはもとより、機能を最優先に考えれば、SE-DIR2000Cが最高のワイヤレスヘッドフォンとなるだろう。

 音質を追求したワイヤレスヘッドフォンとしては、オーディオテクニカの「ATH-DCL3000」もあるが、こちらは実売8万円弱とさらに高額。リモコンは装備しているものの、電源連動機能やスタンド充電などは備えていないので、使い勝手の面ではSE-DIR2000Cに軍配が上がる。ワイヤレスの魅力を最大限に生かせるヘッドフォンとして、気軽な使用感と、高音質を高いバランスで実現した製品だ。


□東北パイオニアのホームページ
http://www.pioneer.co.jp/topec/
□ニュースリリース(PDF)
http://www.pioneer.co.jp/topec/pdf/2005_prs/050620se_dir2000c.pdf
□関連記事
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【2003年11月14日】【デバ】深夜のDVD視聴に最適? ドルビーヘッドフォン搭載
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【2004年3月5日】【デバ】最高級ワイヤレスヘッドフォン登場
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オーディオテクニカ 「ATH-DCL3000」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040305/dev059.htm
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(2005年6月24日)

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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