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第273回:AVCHDもう一発! HDDモデル「HDR-SR1」
〜 HDD記録で映像管理はどう変わる? 〜



■ HDDが本命?

 「AVCHD」は、H.264でエンコードしたハイビジョン映像を記録する、新しいビデオカメラ規格である。先にDVDメディアへの記録方式として発表されたが、その後HDDやメモリーカードなどへの記録が追加された。

 9月10日発売の新フォーマットAVCHD採用DVDカメラ「HDR-UX1」は、大きな衝撃を持って市場に受け止められた。だがそのあとにHDDモデルが控えているということもあって、多くの人は本命をHDDモデルだと捉えているようだ。

 そのHDDモデル、「HDR-SR1」がいよいよ発売される。30GBのHDDを搭載し、店頭予想価格は18万円前後。広報発表では10月10日発売となっているが、これでは今年の運動会には間に合わない。ソニーとしてはその日をデッドラインと設定しているようで、それよりも早く出荷できるよう努力しているという。上手く行けば予定より1週間早めか、もっと上手く行けば今月末には買えるかもしれない。

 ソニーがこれだけ早い製品展開が可能だったのは、光学部はすでに発売済みのHDR-HC3のユニットをそのまま流用できたこと、記録系はDVDもHDDもすでに製品化の実績があることなど、H.264エンコーダ以外は、既存技術の組み合わせで製品構成が可能であったところが大きい。

 ノンリニアメディアで録画するメリットはすでに多くのユーザーが理解しつつある今、次のステップとしてDVDなのかHDDなのかの答え探しが難しいところだろう。では早速AVCHDのHDDモデル、HDR-SR1(以下SR1)を試してみよう。



■ 予想外に大柄なボディ

 まずボディだが、HDD搭載という割にサイズ的な印象は、DVDモデルの「HDR-UX1」とほとんど変わらない。実際には高さが5mm低くなっているのだが、筐体構造としてはほとんど同じだ。設計を極力共通化することで、開発コストと開発期間の縮小を狙ったのかもしれない。


イメージ的にはDVDモデルとあまり変わらないボディ

 ボディーカラーは、UX1がシルバーを基調としていたのに対し、SR1は光沢感のあるブラックとなっている。この表面もよく見ると、細かい緑やマゼンタの粒子が塗装されており、独特のパール感を醸し出している。

 塗装の質感はドライブ部が一番広くてよくわかるのだが、手に持ってしまうと隠れてしまうのが残念ではある。だがグリップ部にお金をかけないデザインが横行する中、全体の質感の向上はよくがんばっている。


光沢感のあるブラック仕上げ パール感のある塗装は上手い

 HC3のユニットにしては太い鏡筒部のデザインだが、設計責任者の方にお話を伺ったところ、やはり初号機としてはコントロールリングにこだわりたかったということで、HC1似のイメージになったということである。確かに動きをフォローしながらの撮影では、ダイヤル式よりもリング式のほうがメリットがある。

 光学系の性能はHC3およびUX1と同じで、レンズは光学10倍ズーム、 画角は16:9動画時で41.3〜485mm、4:3静止画時は37〜370mm。動画時に倍率が10倍以上あるのは、手ブレ補正領域がテレ端とワイド端で変わるからである。


手動での追従には欠かせない大型コントロールリングを採用 光学部の性能はHC3譲り

 イメージセンサーは1/3型クリアビッドCMOSで、総画素数210万画素。動画撮影中に高解像度の静止画が3枚だけ撮れる機能や、なめらかスロー録画も同じだ。3枚までの同時撮影静止画は、HC3が出たときは画期的だったが、キヤノンがHC10で無制限撮影をやってのけてしまったので、若干もの足りない感じがしてしまう。

 タッチスクリーン式メニューを採用しているため、表面や液晶内部にはボタン類が少ない。UX1との違いは、液晶モニタの下部にある「ワンタッチディスク」ボタンである。これはSDフォーマットのHDDモデル「DCR-SR100」にも搭載されていた機能で、PCに接続してワンタッチでDVDを作るという機能だ。これはあとで試してみよう。

 デザイン的に多少違うのは、電源及びモード切り替えのダイヤルが、かなりボディにえぐり込んだ形で付けられていること。何の都合でこうなったのかは知る由もないが、凹み部分に名版が印刷されている点は、デザイン的に新しい試みだ。


本体の端子カバーはスライド式 HDDモデル独自の「ワンタッチディスク」ボタンを装備 モードダイヤルは若干ボディにめり込んだ形



■ 緑は深い発色。風景ならXPモード

 では実際に撮影してみよう。関東地方は最近台風の影響もあるのか、天候不順が続いている。今回もあまり光量のある絵が撮れなかったが、逆にHC3、UX1、SR1共通の、暗い場合のサンプルとしては有用かもしれない。


動画からの静止画切り出しサンプル
(プログラムAEはソフトポートレート)
シャッター
スピード
絞り ゲイン サンプル
1/180 F1.8 0dB
1/60 3dB
6dB
9dB
12dB

 色の傾向としては、HC3と同じ暖色系であることは変わらない。ただ独特のクリアビッド配列は緑の画素数が多いこともあって、画素補間技術を使っている割には解像感は高く、また緑の深い階調表現には特筆すべき点がある。


色は暖色系だが、緑の発色が深い

 カメラとしての機能的な違いは、UX1のHQ+モードよりもう一段階上の、XPモードがある点だ。DVDビデオ規格では、最高転送レートは10.08Mbps、マージンまで含めると11.08Mbpsと規定されているが、AVCHD規格のUX1では、DVDビデオ時代のマージンを若干超えた12Mbpsが最高モード「HQ+」となっていた。

 HDD採用のSR1では、さらに15MbpsのXPモードを搭載し、ここまでのビットレートであればHDVフォーマットとほぼ遜色ない画質が得られるとしている。なおこれに伴って、SR1ではHQ+モードは省かれている。

モード ビットレート 動画記録時間 サンプル
XP 15Mbps 約4時間
ezxp.mpg (15.1MB)

ezxp.mt2s (22.5MB)
HQ 9Mbps 約7時間
ezhq.mpg (16.4MB)

ezhq.mt2s (16.6MB)
SP 7Mbps 約8時間30分
ezsp.mpg (15.6MB)

ezsp.mt2s (11.7MB)
LP 5Mbps 約11時間
ezlp.mpg (16.4MB)

ezlp.mt2s (10.2MB)
編集部注:動画サンプルは、撮影時のH.264(.m2ts)と、それをMPEG-2(720×480ドット)にエンコードしたファイル。再生環境はビデオカードや、ドライバ、OS、再生ソフトによって異なるため、掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。

 確かにXPモードでは、ディテール感もHC3と遜色なく、高い解像感が楽しめる。今回は曇天のために増感しているシーンも多いが、増感によるノイズまできっちり再現できているあたりは、さすがに絵柄としては良かったり悪かったりだが、エンコーダの質という意味では十分評価できる。


動画サンプル

ezsm.mpg
(36.2MB)


ezsm.mt2s
(101MB)
撮影時のH.264(.m2ts)と、それをMPEG-2(720×480ドット)にエンコードしたファイル

 一方HQ以下のモードでは、深いボケの部分に階調がみられ、スリガラス越しに見たような独特の質感になる。また前回はLPモードでGOP単位の画質のジャンプが見られる点を指摘したが、深いボケではSPモードでも同様の傾向が見られる。

 今やハイビジョン放送よりも、パーソナルコンテンツのほうが画質がいい時代である。子供の尻を追いかけてガチャガチャした絵を撮るならばモードの差はあまり感じないが、ちゃんと三脚を立てて花鳥風月を撮るような場合は、XPモードが基準と考えておくべきだろう。

 一方静止画撮影では、録画メディアにメモリースティックかHDDが選択できる。AVCHD規格では、DVDメディアへの静止画保存はサポートしていないが、HDDは行けるようだ。


静止画は動画とは別の色作りをしている 細かいディテールも問題ない スミアレスはCMOSの強み

 動画と静止画のモード切り替えはかなり高速だが、動画撮影と当時に静止画も撮影した場合、録画停止後に静止画記録処理が入る。その場合はすぐに静止画モードには切り替えできない点が、若干ストレスを感じる部分だ。



■ DVDへのバックアップは楽ちん

 HDD記録のビデオカメラでは、映像は必ずなんらかの外部メディアへ吐き出さなければならない。それが面倒という人はDVD記録方式を選択することになるわけである。HDD記録型のビデオカメラは、VictorのEverioのようにDVDドライブ直結というソリューションでもない限り、必ずPCが必要になるところがネックであった。

 だがソニーが「DCR-SR100」で見せた解答は、付属ソフトさえ入れておけば、カメラを繋いでボタン一発でDVDバックアップする、という手法であった。SR1にもその機能が継承されており、同じくボタン1発でカメラ内の映像を、PCのDVDメディアへAVCHDフォーマットでバックアップする。

 実際の操作も、USBでPCに接続して「ワンタッチディスク」ボタンを押すだけである。デコードして再生・編集するわけではなく、単にカメラからデータをPCに吸い上げでディスクイメージを作り、それをDVDメディアに書き込むだけである。再エンコードなどの処理がないため、PCのパフォーマンスも大して必要ない。


再生画面は解像度、メディア別にタブで分けられる 本体のボタンを押せば自動的にバックアップ開始

 ただし時間はそれなりにかかる。XPモードを中心に撮影した20分弱の映像を、Pentium 4 2.8GHzのマシンでメディア書き込みまで終了するのに、1時間強かかった。動画と静止画がHDD内に混在する場合は、動画用AVCHDディスクと静止画用ディスクが別々に作成される。一度作成した動画や静止画は、次回のバックアップではちゃんとスキップされる。

 現実問題として、自動認識してバックアップするにしても、すでにいろいろ使っているPCでは、デジカメからの画像吸い出しなどの常駐ソフトなどが入っているケースも多いだろう。またDVDライティングソフトもあるだろうし、iTunesのように起動中はドライブの監視を行なうアプリケーションもある。

 そうなるとカメラを繋いだり空のDVDメディアを入れただけで、「静止画捕ったどー!」とか「DVD捕ったどー!」とかいろんなソフトがいろんなことを言ってくるので、想像を絶するニギヤカさである。5年前と違ってユーザーのPCリテラシーも飛躍的に上がっている現在、付属ソフト入れてくださいねー、では済まない現状が迫ってきているのを感じる。



■ 本体編集は今ひとつ

 もう一つの管理方法は、PC上のHDDに吸い出すという方法である。これにはU1にも付属していた「Picture Motion Browser」を使用する。UX1ではDVDメディアからの取り込みを行なったが、SR1ではUSB経由の取り込みとなる。転送速度は最高で10倍速。


動画も静止画も同じカレンダー上で管理できる

 Picture Motion Browserでは、動画も静止画も撮影日時順にカレンダー上で管理できるため、写真と動画がバラバラにならないというメリットがある。またこれを使って簡易編集をして、AVCHD形式のDVDなり、ダウンコンバートしてDVDビデオにすることもできる。Picture Motion Browserを使った編集に関しては、以前UX1のときに行なっているので、そちらを参考にして欲しい。

 SR1で問題となるのは、いつまでもPCのHDDをマスターにしておくわけにも行かないという点だ。いくらH.264が圧縮効率がいいと言っても、2年も3年もそのまま貯めておくわけには行かないのである。このとき、DVDにバックアップした映像とPC内にある映像の整合性をどうするのか、そこでカレンダー表示はどこまで意義があるのかという問題は、現時点では先送りになっている感がある。

 Picture Motion Browserの編集では、不要部分の削除程度なら可能だが、カットの並び替えができないため、作品として何かを作るには不向きだ。各カットのプロパティで時間をいじってやることで並び順を変えるという荒技があるが、あまり実用的ではない。

 DVDモデルのUX1では、本体のプレイリスト編集機能を使って、部分削除のほか、カットの並び替えまで可能だった。ところがSR1の本体編集機能は、プレイリスト内でカットの並び替えはできるものの、カット分割の機能がない。カットまるごとプレイリストに入れるか、削除するかの機能しかないのだ。


本体ではプレイリストへクリップ追加はできるが… 移動ができるのみで分割機能がない

 な ん だ そ れ。最初はファームウェアの都合で実装されていないだけかと思ったが、マニュアルにも書いていないところを見ると、本気でカット分割の機能は実装していないようだ。DVD-RWにできて、HDDにできない理由、あるいはできなくていい理由がさっぱりわからない。

 むしろ、長時間撮っておいて、その中の必要なところだけ残してあとは消去、という使い方が本体でできないのは、長時間記録可能なHDD記録の魅力をスポイルしているのではないか。



■ 総論

 ハイビジョン録画の新フォーマット、しかもHDD記録モデルとして、HDR-SR1は鳴り物入りでデビューという感がある。DVDモデル以上の高画質モードを備えた点も、注目度が高い。

 画質としてはHC3と同等で、それを上回るものではないが、新しいGUIで機能が綺麗にまとまっているので、撮影時の使い勝手は向上している。再生操作も、大量の映像を日付別にグループ化して見せるなど、ランダムアクセスメディアならではの操作性を実現した。

 映像のバックアップでは、付属ソフトによる一括バックアップは便利ではあるが、映像の整理という意味では問題を先送りしているだけのような気もする。一方Picture Motion Browserを使った管理は、カレンダーで整理というこれまたランダムアクセス重視の設計で面白いが、現時点ではカットの並び替えができないために、一つのコンテンツを作るまでには至らない。

 開発期間の問題もあるのかもしれないが、本体にカット分割の機能がないという点は残念だ。まだPC上のAVCHD編集環境が十分ではない現在だからこそ、せめて本体では一通りの編集機能は実装して欲しかった。せっかく長尺が回せるカメラなのに、本体と付属ソフトの編集機能が双方とも「帯に短し……」では、使い出が大幅ダウンだ。

 むしろ本体に分割機能があり、メディアもそのままアーカイブできるということで、逆にUX1が人気が出るということも考えられる。まさかSR1がUX1の噛ませ犬的な存在というわけではないだろうが、HDDモデルは次世代に大きな宿題を残したように思われる。


□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.sony.jp/CorporateCruise/Press/200607/06-0719B/
□製品情報
http://www.sony.jp/products/Consumer/handycam/PRODUCTS/HDR-SR1/
□関連記事
【8月9日】【EZ】ええ! もう出ちゃうの? AVCHD対応HDハンディカム
〜 9月発売のDVD型、ソニー「HDR-UX1」を試す 〜
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(2006年9月20日)


= 小寺信良 =  テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。

[Reported by 小寺信良]



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