■ やっぱり最後はヘッドフォン CES2007も、本日11日(現地時間)が最終日である。ただいま午前10時半、サウスホール2階のプレスルームでこの原稿を書いているわけだが、連日のように場所取りと、LANケーブルの争奪戦が繰り広げられてきたのが嘘のように落ち着いた雰囲気となっている。さて今回は、会場で見かけたオーディオ関連製品を中心にお送りする。CES会場でもヘッドフォンはもう有象無象いろんなものが存在するわけだが、いちいち取り上げていてもしょうがない。ここでは話題性の高いもの、面白そうなものだけをピックアップして紹介する。
■ Shureのハイエンドモデルは…… 現在のハイエンドイヤフォンブームの立役者的存在となったShure。今年も規模の大きなブースを出展し、多くの来場者でにぎわっている。すでに新ラインナップは西田宗千佳氏のレポートが上がっているので詳細は割愛するが、やはり注目はハイエンドの「SE530」だろう。
基本的には「E500」と同じものだが、今回新たに開発された新イヤーチップで装着が大幅に楽になった。これまでは一端フォームラバーを指で潰してから耳に入れるといった手間が必要だったが、新イヤーチップは特にそのような必要がなく装着できる。ソニーのシリコン製イヤーチップと同じような感じだ。
昨年のCESで試聴した「E500」はプロトタイプであったため、詳細な音質評価は避けたが、今回は新イヤーチップでほぼ製品版という「SE530」として視聴してみた。装着感は確かに優れているが、特徴的な音の張りがあまり感じられず、これまでのハイエンドモデルの傾向とは若干違う印象だ。
2003年に「E5c」を初めて聴いて、そのクリアさと力強さに衝撃を受けたものだが、残念ながらあの当時のアーティスト用ステージモニタを目指した音作りからは、次第に離れつつあるのかもしれない。
■ SENNHEISERの逆襲
ノイズキャンセリングと音質を両立させたPXCシリーズで人気のSENNHEISER。これまでのモデルは、小型ハウジングを採用したいわゆる「オンイヤー」タイプだったが、今年は密閉型の大型ノイズキャンセリングヘッドフォンを2モデルリリースする。
「PXC 450」は、NoiseGard 2.0テクノロジーを採用したノイズキャンセリングヘッドフォンの最高峰モデル。再生周波数特性は8Hz~28kHz。密閉型のため、そのままでも32dB以上の遮音性があるが、NoiseGard 2.0テクノロジーと併用することで23dB以上の減衰、外部ノイズの90%遮断するとしている。
キャンセリング用のマイクがハウジング内部にあるのは、従来シリーズの設計と同様。ただ、かなり余裕のある深さなので、装着しても耳の負担は少ない。右側には電源のON/OFFボタンと、ボリュームのアップダウンボタンがある。センターのボタンは、ノイズキャンセリング効果を維持したまま音楽をミュートする「Talk Through」という機能のスイッチ。
NoiseGard 2.0のバイパスは、左側のスイッチで行なう。ただヘッドフォンを装着すると切り替えスイッチがアーム部で隠れてしまうので、装着した状態でNoiseGard 2.0のON/OFFは難しい作りになっている。もちろんこのサイズなので、以前のモデルで不評だった大きな電池ボックスはなく、ヘッドフォン内に格納する単4電池1本で駆動できるのはありがたい。連続で25時間動作が可能だという。
ノイズキャンセリング特有のホワイトノイズは多少感じるが、音楽が出ていればわからなくなる。フィット感も自然で、BOSEのQuietComfort 2をゆったりさせたような感じだ。PXCの従来モデルよりも、長時間の使用にも耐えるだろう。
ブースでは飛行機のシートを模した椅子の近くでジェット音を流して、ノイズキャンセルの効果が確認できるようになっていた。ただこのブース周辺はオーディオ系のデモが多く、そんなことしなくても他のブースの音がシャレにならないぐらいうるさいので、あまり正確な音質評価はできなかった。 おおざっぱな印象としては、若干堅めの音だが、バランスとしてはナチュラル。BOSEのようなイメージで聴くと、低音が不足するような感じを受けるかもしれない。4月発売で、価格は499ドル。 また、同じ密閉型の廉価モデル「PXC 350」もカタログでは発表されたが、実機は展示していなかった。こちらも4月発売で、価格は399ドル。リリースによれば、PXC450に比べてノイズの減衰率は85%となっているほか、ボリュームや「Talk Through」などの機能はないようだ。
そのほかのラインナップとしては、スポーツ用イヤフォンを大幅に拡充した。インナーイヤーをベースに、耳かけ型、ネックバンド型など、いくつかのバリエーションがある。全体的に印象的な緑をアクセントカラーに採用し、カラーリングの面でも異彩を放っている。米国、および日本でも出荷が開始されている。米国での価格は47ドル~79ドル。
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■ ノイズキャンセリング初参戦のオーディオテクニカ オーディオアクセサリ専門メーカーとして、ヘッドフォンやイヤフォンの評価が高いオーディオテクニカ。だがCESの出展は意外に小規模で、ベンチャーが集中するSANDS Expoに小さなブースを構えていた。「ATH-ANC7 QuietPoint」は、同社としては初のアクティブ型ノイズキャンセリングヘッドフォン。40mmのネオジウムマグネットドライバを採用した密閉型で、周波数特性は10Hz~25kHzとなっている。外側にはマイクと電源スイッチがある程度というシンプルな構成で、キャンセル率は85%としている。バッテリは単4電池1本で、エンクロージャ内に格納するタイプ。約38時間使用可能としている。
試聴したところ、ノイズキャンセリング機能もなかなか高く、音質は低域と高域を強めた元気のいい音が印象的だ。またケーブルが根元から外せるため、音楽を聴かず単にノイズキャンセルのためだけに使うことも出来る。電源OFFでも密閉型ヘッドフォンとして鳴らせるが、電源ONとOFF時の音量差が大きいため、単純にキャンセリング効果を比較するのはちょっと難しい。 ハウジングはそれほど大きくないが、深さがあるため耳への負担は少ない。サイズ感といいキャリングケース付属といい、また音の傾向などからしても、BOSEのQuietComfort 2をかなり良く研究して作られたモデルだろう。米国ではこの春発売予定で、価格は220ドル。日本では1月末の発売を予定している。
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■ ワイヤレスでノイズキャンセリングのソニー 先日密閉型のアウトドアヘッドフォンとしては最高級モデル「MDR-D777SL」をリリースしたばかりのソニーだが、今回はこれをベースにしたBluetooth採用ワイヤレスヘッドフォン「DR-BT50」を発表した。以前からBluetooth採用のヘッドフォンは存在したが、どちらかと言えば電話用ヘッドセットからマイク取りました的な製品が多く、音楽鑑賞用としてはなかなか評価できるものがなかった。
ソニーは以前からBluetoothには積極的な姿勢を示していたが、今回はアウトドア用最高峰のD777SLをベースにすることで、音質的にも満足できる製品が期待できそうだ。1回の充電で17時間連続再生、200時間スタンバイ可能。またBluetoothの特性を生かして、ヘッドフォン側からプレーヤーのフォルダ移動や曲のスキップ、再生、停止といったコントロールも可能なようだ。米国では4月発売で、価格は230ドル。 今年は有象無象のノイズキャンセリングヘッドフォンがリリースされる中、ある意味元祖とも言うべきソニーも新モデルを発表した。「MDR-NC60」は、ネオジウムマグネット採用40mmドライバを内蔵する、オーバーイヤー型ノイズキャンセリングヘッドフォン。
現在の最上位モデル「MDR-NC50」が出たのが2004年12月なので、久しぶりの高級モデルということになる。DR-BT50のようにD777SLがベースとは記載されていないが、サイズ的にはほぼ同サイズで、設計上で影響はかなり受けていると思われる。 ノイズ低減率は85%で、従来モデルより5%性能が向上している。エンクロージャ下部にはモニタースイッチがあり、必要に応じてノイズキャンセリングOFFで音楽をミュート、外部音を聞くことができるようになっている。こちらの電源は充電式ではなく、単4電池を使用する。 米国では3月発売で、価格は200ドル。また2月からsonystyle.comで予約受付が開始される。
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■ 期待できるワイヤレス技術「Kleer Audio LP」 Bluetoothを利用したワイヤレスヘッドフォンもソニーの参戦により、ようやくオーディオ用ラインナップが整いつつある。だがそれも問題がないわけではない。オーディオストリームを流す際のBluetoothの弱点は、ビットレートが限られるため、非圧縮でオーディオ伝送できないということと、意外に電力を食うというところだ。2002年に設立されたベンチャー企業のKleerでは、この問題を解決した「Kleer Audio LP」というワイヤレス伝送ユニットを発表した。これはBluetoothと同じように電波を使う伝送技術だが、Bluetoothがオーディオデータ転送レートとして350kbps程度しか持たないのに対し、Kleer Audio LPは1.4Mbpsの伝送が可能。すなわち音楽CDが持つ16bit/44.1kHz, 2chのデータストリームを、非圧縮で送ることができる。 また消費電力では、現在多くのBluetoothヘッドフォンが150mW程度の電力が必要なのに対し、Kleer Audio LPでは30~40mWで済むという。仮にBluetoothで非圧縮オーディオを伝送すると300~400mW程度の電力が必要になるため、音質に対する電力消費量はBluetoothに比べて1/10で済むとしている。 この技術を初めて搭載するのが、RCAブランドでThomsonからリリースされるMP3プレーヤー「RCA Jet Stream」だ。防滴加工が施されたスポーツモデルタイプの音楽プレーヤーで、Kleer Audio LPユニットを組み込んだワイヤレスイヤフォンが付属する。対応フォーマットはMP3とWMA。WM DRMにも対応している。
1.5インチのディスプレイを備え、FMラジオ、ストップウォッチ、体脂肪計といった機能も搭載する。肝心のバッテリは、1回の充電で12時間の再生が可能だという。1GBモデルにしては149ドルとちょっと高いが、非圧縮伝送の長時間ワイヤレスイヤフォンというのはなかなか魅力的だが、RCAのプレーヤーは、日本では発売されないのは残念だ。ただKleer自体は日本にも販路があるということなので、この技術を搭載した別メーカーのワイヤレスイヤフォンは発売されるかもしれない。
ワイヤレスでスポーツタイプということでは、RCAと同じくThomson傘下のJensenから「JPM-3005」というモデルが発売される。ネックバンド型イヤフォンにMP3プレーヤーを内蔵したというもので、コンセプト的にはそれほど目新しいものではないが、展示ではかなり無理なセチュエーションを演出していた。512MBメモリを内蔵し、今月発売開始。キャリングポーチも付属し、予価70ドル。
□2007 International CESのホームページ(英文)
(2007年1月12日)
[Reported by 小寺信良]
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