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第278回:PLAYSTATION 3のDSDディスク再生を試す
〜 自作DSDディスクを簡単に再生 〜



PLAYSTATION 3

 ファームウェアのアップデートを積み重ね、着実に進化してきているPLAYSTATION 3(PS3)だが、既報の通り「システムソフトウェア バージョン 1.60」によってDSD(Direct Stream Digital)ディスクに対応した。

 これまでVAIOでしか再生できなかったDSDディスクがコンシューマ機器で利用できるようになったのはDSDの世界において大きな一歩といえる。そこで今回は、KORGの「MR-1」で録音した音をPS3で本当に再生できるのかなどについて検証した。



■ ようやく登場したVAIO以外のDSDプレーヤー

 今回のメインテーマであるDSDディスクだが、まだ非常に認知度が低いので先に簡単に説明しておこう。

 DSDディスクとは、PCMに比較して、非常に高音質といわれるDSDで録音したデータをそのままの形でDVDメディアに焼いた音楽ディスクのこと。一般に市販されているDSD収録のディスクとしては、スーパーオーディオCD(SACD)があるが、これは特殊なメディア、特殊な物理フォーマットで、強力なプロテクトが施されているため、一般ユーザーが作成することはできない。それに対し、DSDディスクは一般ユーザーが作成可能な高音質フォーマットなのだ。

 もちろん、DSDディスクを作成するためには、DSDで録音した素材が必要となるわけだが、先日も取り上げたとおり、VAIOの「SonicStage Mastering Studio」(SSMS)やKORGの「MR-1」および「MR-1000」、またTASCAMの「DV-RA1000」などで録音が可能となっている。

 これらのデータをVAIOにバンドルされるアプリケーション、「SonicStage MasteringStudio」のVer2.1以上、もしくは「DSD Direct」のVer2.0以上を用いてDVDメディアに書き込むことで、DSDディスクを作成できる。

DSDディスク作成に対応する「SonicStage MasteringStudio」 DSD Direct

 ソニーとしては、このDSDディスクをVAIOに閉じた狭い世界のものにするのではなく、他社にも働きかけて広く普及させたいと言っていたが、これまでDSDディスクが再生できるのはVAIOのみという状況だった。せっかくDSDのメディアが誰でも焼けるようになったのだから、DSDファンとしては、より多くのプレーヤーで手軽に再生させたいところ。その要望に応える第一弾として、PS3が対応したことになる。

 PS3はもともとSACDプレーヤー機能を備えていたという面でも、今回のDSDディスク対応の意味は大きい。CDの世界では市販されている音楽CDも、手元のPCで焼いたものも、基本的に同じフォーマットだから、同じプレーヤーで同じように再生できた。

 それに対してSACDとDSDディスクは同じDSDで録音されたデータが入ってはいるものの、互換性のない別のメディアであったため、SACDプレーヤーでDSDディスクを再生することはできなかった。やはりSACDとDSDディスクを同じプレーヤーで同じように再生できると、わかりやすい。それをPS3が実現してくれたというわけだ。ちなみにVAIOはDSDディスクの再生はできるが、SACDの再生はできない。



■ 再生は簡単。PCMに変換して出力

 さっそく本当にPS3でDSDディスクの再生ができるのか試してみた。ここではKORGのMR-1を使って2.8224MHzのサンプリングレートで録音したデータを、VAIOのSSMSでDSDディスクに焼いて、ファームウェアをアップデートしたPS3で再生させた。

 実際試してみるとあっけないほど簡単に再生できた。手順は以下の通りだ。

 まず、できあがったDSDディスクをPS3に挿入すると、ミュージックメニューに「DSDディスク」という表記が現れる。そこからフォルダを選択すると、書き込んだ曲の一覧が表示されるので、目的の曲を選べば再生される。ただ、情報を表示させてみたが、とくにこれといった内容はなかった。

PS3のミュージックメニューにDSDディスクが出現 DSDディスクを選択すると、さらにフォルダが表示される さらにフォルダを選択。楽曲一覧が表示される

楽曲再生中の画面 楽曲情報には、ファイルサイズや再生時間などの情報しか表示されない

 最初は付属のケーブルを利用し、アナログ経由で音を出していたが、PS3のHDMIの出力では、PCMに変換して出力されるため、HDMI経由に切り替えてもテレビのスピーカーから聴くこともできた。

付属のアナログケーブル利用時は問題なく再生できた

HDMIに変更しても再生できたが、設定を見ると、PCM出力しか選択できない状態になっている

 PS3でSACDを再生する際、HDMI経由での出力は非常に評判がいいが、DSDのままで出せるわけではなく、そこはDSDディスクでも同様だ。また、従来PCMも88.2kHzのサンプリングレートでの出力までしか対応していなかったのが、ファームウェアのアップデートにより現在192kHzまで対応している。

 残念ながら手元にHDMIのハイサンプリングレート対応のオーディオアンプがなかったので、実際に最高でどのサンプリングレートで再生できたのかは確認できなかったが、176.4kHzや192kHzといったサンプリングレートで出力されるものと思われる。

 なお、SACD再生時には、著作権保護のため光デジタルからは出力されないのだが、DSDディスクについては、光デジタルでも、リニアPCMの44.1kHzから48kHzでのサンプリングレートでDSDディスクの再生ができる。ここでも一旦DSDがPCMへ強制的に変換されてしまうが、かなりいい音で再生することができた。

光デジタル音声出力を利用した場合、リニアPCMのサンプリングレート44.1kHz〜48kHzで出力される



■ WMAファイルにも対応。メモリカード上のDSDファイルは再生不可

 ところで、今回のファームウェアアップデートでは、DSDディスクへの対応のほか、WMAの再生にも対応している。SDやメモリスティック、コンパクトフラッシュ、USBメモリに入っているWMAのファイルがMP3やAAC、ATRAC3などと同様に再生できるようになった。

 「MUSIC」という名前のフォルダを作り、その中にMP3やAAC、ATRAC3などと同様に入れておけば認識され、再生できる。オプションボタンを押してサブメニューを見ると、HDDへのコピーも可能となっている。

WMAファイルは、「MUSIC」フォルダを作成し、そこにファイルを入れれば再生可能となる SDメモリーカードなどからHDDへのファイルコピーも可能

 ここで、DSDのファイルをSDカードなどから再生できないかを試してみた。

 先ほどのDSDディスクに収録されているのはソニーオリジナルのデータ形式である「DSFファイル」。一方、SACD作成用などとして以前から使われている拡張子DFFの、「DSDIFFファイル」でもDSDディスクの作成ができるので、それぞれをSDカードのMUSICフォルダに入れてPS3で認識させてみたが、結果は残念ながら反応なし。やはり仕様として書かれていないことはできないようだった。

 以上が今回PS3で行なったテストだ。実験結果としては予想通りではあったが、やはりDSDディスクがPS3で再生可能になった意義は大きい。

 これをきっかけに、オーディオ機器のほうも対応するようになると、DSDの世界が面白くなってきそうだ。できれば、今後のPS3ファームウェアアップデートによって、HDMIのDSD出力にも対応してくれるとさらに嬉しいのだが、ファームウェアのアップデートで可能なのだろうか……。

 また、現在VAIOでのみ書き込みができるDSDディスクだが、これについても今後VAIO以外でも作成可能なオープンな規格になってくれることを期待したいところだ。


□SCEのホームページ
http://www.scei.co.jp/
□PLAYSTATION 3のホームページ
http://www.jp.playstation.com/ps3/
□関連記事
【3月22日】PS3がAVCHDファイルやDSDディスクの再生に対応
−バックグラウンドダウンロードも可能に
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070322/sce.htm
【2月26日】【DAL】DSD対応レコーダやVAIOのDSD互換性を検証
〜 KORG「MR-1」/TASCAM「DV-RA1000HD」/ソニー「VAIO」〜
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070226/dal271.htm
【PLAYSTATION 3 リンク集】
http://av.watch.impress.co.jp/docs/link/ps3.htm

(2007年4月16日)


= 藤本健 = リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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