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第271回:DSD対応レコーダやVAIOのDSD互換性を検証
〜 KORG「MR-1」/TASCAM「DV-RA1000HD」/ソニー「VAIO」〜



 先日、1ビットオーディオ(以後DSD)に対応したレコーダとして、コルグ(KORG)の「MR-1」と「MR-1000」を紹介した。まだ極めて珍しいDSDレコーダーだが、これまでもDigital Audio Laboratoryでは、これら以外にも2種類の機器を紹介してきた。

 ひとつはTASCAMの「DV-RA1000」、もうひとつはソニーのSoundReality搭載パソコン「VAIO」だ。いずれも同じDSD対応機器だが、フォーマットなど細かい仕様が異なる。

 そこで今回は、実際にこれら機器間でDSDデータのやりとりができるかなど、互換性について検証を行なった。

KORG MR-1 TASCAM DV-RA1000HD ソニー「VAIO type F TV」



■ DSDレコーダ2種とVAIOで検証。VistaモデルはDSD非対応

 今回の互換性テストに使用した機材は、KORG MR-1、TASCAM「DV-RA1000HD」、ソニー「VAIO type F TV」の3つ。MR-1については先日詳しく紹介しているので詳細は割愛するが、DV-RA1000HDは、以前紹介したDV-RA1000の上位モデルで、HDDを搭載したレコーダだ。

DV-RA1000HDの背面端子類。PC接続用のUSB端子も備える

 基本スペックはDV-RA1000とほぼ同等だが、60GBのHDDを内蔵。さらに、DVD+RWだけでなく、DVD-RWへの直接録音、DVD±Rへのプロジェクトのコピーなど、さまざまなディスクに対応している機材だ。

 またDV-RA1000と同様にUSB端子も備えているので、PCと接続してファイルのやりとりが簡単にできるようになっている。価格は262,500円とMR-1/MR-1000と比較するとかなり高いが、録音/再生ともに、十分プロ用機材としても使える、それだけの価値をもった製品だ。

 一方、VAIOについては注意しなければならないことがある。というのも、当初ソニーからVista搭載モデルをお借りしたのだが、「SonicStage Mastering Studio」を起動しても、DSDモードが出てこなかった。


Vistaモデルに備える「SonicStage Mastering Studio」では、DSDモードが出てこないため、今回はXPモデルを利用した

 実はVistaではまだDSDのサポートができておらず、今後のアップデートで実現することになっている。結局、今回はアップデートが間に合わなかったので、XP搭載の旧モデルを借りなおして検証作業を行なった。

【追記】
 2月27日に、Vista搭載VAIOでDSD/ASIOに対応するアップデータが公開されました。(編集部)

 さて、改めてDSDのファイルフォーマットについて見てみると、現在のところ、「DSDIFF/WSD/DSF」の3種類が存在する。DSDIFFはSuperAudioCDの作成過程で用いるファイルフォーマットで、業務用として広く使われている。WSDもDSDIFFと非常に近いファイルフォーマットだが、こちらは1ビットオーディオコンソーシアムが策定したものだ。

 一方DSFはソニーがVAIO用に作り出したフォーマットで、PCで扱いやすいファイル形式になっている。また、このファイル形式を用いて焼いたDVDをDSDディスクと呼んでおり、「一般ユーザーが作成するSuperAudioCD」とい位置づけたいようだ。

 ここで3機種それぞれのファイルフォーマットの対応を整理してみると下表のようになっている。つまりMR-1だけが3つともサポートしているのに対し、DV-RA1000HDはDSDIFFのみ、VAIOはDSDIFFとDSFの2つとなっている。


【DSDフォーマット対応表】
機器 DSDIFF WSD DSF
MR-1
DV-RA1000HD × ×
VAIO ×

DSDフォーマット3種全てに対応する「AudioGate」があれば、相互利用は容易

 ただし、KORG MR-1付属のアプリケーションである「AudioGate」はこれら3つのファイルフォーマット、さらにはPCMデータの相互ファイル変換をPC上で行なえるので、実際はこれさえあれば互換性の問題は解決する。



■ VAIO上でMR-1/DV-RA1000HDのDSDデータからディスク作成

 では、まずはDV-RA1000HDとVAIOの互換性から見てみよう。VAIOの「SonicStage Mastering Studio」をDSDモードで起動し、ファイルメニューを見ると、そのものずばり「DV-RA1000プロジェクトの取り込み」というものがある。

 あらかじめ、VAIOとDV-RA1000HDをUSBで接続し、DV-RA1000HDをUSBモードにしておくと、VAIOからはDV-RA1000HDがUSBマスストレージのドライブとして見えるため、ドライバも不要ですぐに認識できる。


ファイルメニューの「DV-RA1000プロジェクトの取り込み」を利用する DV-RA1000HDはUSBモードにしてPCと接続。ドライバは不要

 その上でDV-RA1000HDのプロジェクトを読み込む。DV-RA1000HDではプロジェクトごとにフォルダが作成され、その中でファイルが管理されているが、このプロジェクトの読み込みによって一気にプロジェクト内のすべてのDSDファイルが読み込めるようになっており、何の問題もなく読み込むことができた。

 一方、プロジェクトではなくファイルごとに読み込むこともできる。具体的には、ファイルの読み込みを使うのだが、DV-RA1000HDの各プロジェクトフォルダには、DSDIFFファイル(拡張子.DFF)があるので、これを直接読み込めばいい。

 反対に、VAIOのデータはDV-RA1000HDへ転送し、再生することはできるのだろうか? マニュアルによると、単にDSDIFFファイルをフォルダへコピーするだけでは認識されないが、DV-RA1000HDの「EDITメニュー」から「PLAY LIST」を選択し、これを再構築することで、認識できるとなっている。

 このようにして取り込んだデータについては、DV-RA1000HD側で編集することはできないようだが、しっかりと再生することはできた。


ファイルのコピーだけではVAIO上のデータは利用できないが、「EDITメニュー」から「PLAY LIST」を利用することで、DV-RA1000HD上での再生が行なえるようになる

 次にVAIOとMR-1の互換性についてだ。これについても、MR-1からVAIOへのデータ受け渡しは、あっさりと行なえた。SonicStage Mastering Studioには「MR-1の読み込み」といったメニューはないものの、ファイルの読み込みでDSDIFFもDSF(拡張子.DSF)も問題なく読み込み、再生することができる。また単純に再生するだけならば、SonicStage Mastering Studioを用いなくとも、Windows Media Playerで再生が可能だ。

 このようにしてVAIOへ取り込んだMR-1のデータおよびDV-RA1000HDのデータを合わせて、1枚のDSDディスクを作成してみたが、特に何の問題なく作ることができ、VAIOのSonicStage Mastering Studioで再生できた。できれば、これがDV-RA1000HDでも再生できると、かなり幅が広がるのだが、それは残念ながら無理だった。


MR-1で録音したDSDデータは、そのままでも、VAIOのWindows Media Playerで再生できる MR-1/DV-RA1000HDから取り込んだデータを利用して、1枚のDSDディスクを作成。完成したDSDディスクは、SonicStage Mastering Studio上で再生できる



■ VAIOからMR-1へのデータ転送はフォルダに注意

 さて今度は逆にVAIOからMR-1へ転送する場合だが、ここにもちょっとしたポイントがあった。

 MR-1のルートディレクトリには「AUDIO」というフォルダと「MR_PROJ」というフォルダがある。MR-1でレコーディングしたデータはすべてMR_PROJフォルダに格納されるのだが、外部からファイルを転送する場合は、MR_PROJフォルダではなく、AUDIOフォルダへコピーする必要がある。こうすると、MR-1側で「LIBRARY」メニューから「AUDIO」フォルダを見に行くとコピーしたファイルが見つかり、再生することができる。


MR-1のルートディレクトリには「AUDIO」、「MR_PROJ」フォルダの2つがある 外部からのファイル転送では、「AUDIO」フォルダにコピーする必要がある


ファイルコピー後は、MR-1上でも「AUDIO」フォルダを開くことで、コピーしたDSDファイルが再生できる

 そしてもう一つの互換性チェックはMR-1とDV-RA1000HDだが、これについては、お互いDSDIFFファイルを転送すればうまくいく。今回は中継機としてVAIOを用いたが、とくにSonicStage Mastering Studioなどは介在させておらず、単にUSBマスストレージとして認識させて転送するだけなので、どんなPCでもOKだろう。実際に試してみたところ、こちらもあっさり転送して、再生させることができた。

 このように、MR-1、DV-RA1000HD、VAIOの3機種間においては、ファイル形式の制限はあるものの、まったく問題なくファイル転送することができた。今後さらに他メーカーが加わり、DSDディスクをサポートする機材なども出てくれば、さらに普及が進みそうだ。特にPLAYSTATION 3は元々SACDの再生に対応していることもあり、ファームウェアアップデートなどでDSDファイルの再生にも対応すれば、一気に対応機器が増えることになる。

 SACDを含めて、まだ決して広く知られているとはいえないDSDだが、少しずつでもハイエンドオーディオのソリューションとして広がり、かつアイテムが増えていくことを期待したい。


□KORGのホームページ
http://www.korg.co.jp/
□TASCAMのホームページ
http://www.tascam.jp/
□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□製品情報(MR-1)
http://www.korg.co.jp/Product/DRS/MR-1/
□製品情報(DV-RA1000HD)
http://www.tascam.jp/list.php?mode=99&mm=7&c1code=09&c3code=01&scode=09DR10HG01
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(2007年2月26日)


= 藤本健 = リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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