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“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

第308回:AVCHDの第二世代HDDモデル、ソニー「HDR-SR7」
~ 再生機能が強化、いろいろ楽しい新世代普及機 ~



■ HDD記録の新世代機

 コンシューマのビデオカメラがハイビジョン対応になるときに、まあこれまでのDVカメラ並みに小型化されるまで当分かかるだろうと思っていた。ところが実際には2年足らずで、DVカメラ並みの小型化を実現してしまった。今ビデオカメラは、ものすごいイキオイで開発が進行している、もっとも面白い分野である。

 ソニーでは今年2月に、x.v.Color対応のカメラ群として、HDVの「HDR-HC7」、AVCHDでDVD記録の「HDR-UX7/UX5」を発売したわけだが、HDD型だけは出なかった。昨日発表された「HDR-SR7」(以下SR7)は、HDD搭載AVCHDカメラとしては、二世代目となるモデルだ。今年6月の発売で、店頭予想価格は15万円前後となっている。

 世の中ハイビジョンに進むことはもはや間違いないところだが、コーデックはどれがいいのか、メディアはどれがいいのか、といったところはまだ競争のまっただ中にある。様々なニーズが存在する中、長時間記録という点にフォーカスすれば、今のところHDD記録というのが妥当な選択であろう。

 ソニーが考えるイマドキのHDDハイビジョンカメラを、早速試してみよう。


■ 一見するとコンサバ?


従来の円筒形から若干平たくなったボディ

 ではいつものようにデザインから見ていこう。ぱっと見ると樹脂っぽいシルバーメタリックが気になって、コンサバティブな印象を受ける。しかし、じっくり見ると、黒い筐体が銀の鏡筒部をすくい上げるようなカラーリングが面白い。

 また横型ビデオカメラとしては、高さを抑えたせいか、横に平たい印象を受ける。また今回はクレードルが付属するため、底部がかなりの面積が平たいことと、マイク部分のあたりがかなりフラットなので、そういう印象があるのかもしれない。


マニュアルコントローラはダイヤル式。全面下に逆光補正ボタンがある

 レンズ脇には静止画用フラッシュと、反対側にマニュアル用のカメラコントローラがある。鏡筒部下に逆光補正ボタンがあるが、場所を覚えておかないと忘れてしまいそうだ。撮影中に急に使いたくなった時に手探りで押せるよう、もう少しボタンが出っ張っていた方がいい。

 光学部の特性はUX7と同等ということだが、前回UX7をレポートしていなかったので、改めて見ておこう。レンズはF1.8~2.9の光学10倍ズームレンズで、16:9の35mm換算で40~400mm、4:3静止画で37~370mm。フィルタ径は37mmで、HC1、HC7あたりのコンバージョンレンズがそのまま使える。手ぶれ補正は光学式だ。

撮影モードと画角(35mm判換算)
撮影モード ワイド端 テレ端
動画16:9
40mm

400mm
静止画4:3
37mm

370mm

 イメージセンサーはお馴染みクリアビッド配列の1/2.9型CMOSセンサーで、動画撮影時の有効画素数は228万画素。静止画では最高610万画素相当の撮影ができる。最低被写体照度は、1/30秒スローシャッター時で5Lx、通常の1/60秒で11Lxとなっている。

 内蔵HDDは60GBで、画質モードはHDが4段階、SDが3段階。メモリースティックPro Duoスロットも搭載するが、静止画はHDDにも記録できる。動画と同時撮影の静止画は、以前と同じ3枚までにとどまっている。

 液晶モニタは2.7型、320×220ドットのタッチスクリーンで、SR1よりも本体サイズが全体的に小さくなったため、モニタも少し小さくなった。内部のボタンはほぼ従来どおりだが、ワンタッチディスクボタンはクレードルのほうにあるので、本体からは省略されている。

液晶モニタも若干小さくなった メニュー操作がメインなため、ボタン類は少ない ファインダ使用時

 背面はロータリーノック型の電源/モードスイッチとスタートボタン、フラッシュモード切替ボタンがある。端子類はリモート用のLANC端子、電源がある。また側面にはスライドカバーに隠されたコンポーネント、AVの集合端子がある。HDDドライブ部前方にはHDMIとマイク入力、ヘッドホン出力端子がある。

背面はLANC端子と電源端子 コンポーネントとAVアナログ端子は、スライドカバーで隠されている


HDMIはミニ端子を採用

 今回のHDMI端子は、おそらくビデオカメラとしては初となるミニHDMI端子を搭載した。ミニ端子は2006年6月にHDMI1.3で策定されたものだ。

 ただ今回の製品には、ミニ端子のケーブルは付属しない。ソニーからこの新規格のケーブルが発売されるのが、6月21日ということである。しばらくはどこにでも売っているような状況にならないだろうから、地方のユーザーは、困るかもしれない。

 クレードルは、上からカメラをセットするだけのシンプルなもので、ロックレバーのような固定機構はない。手前にはワンタッチディスクボタンがある。背面には電源、アナログAV、コンポーネント出力、USB端子があり、HDMIはない。

クレードルが標準付属する USBはクレードルのみ。HDMI端子はない



■ オートで十分な動画撮影

 では実際に撮影してみよう。光学部がUX7と同じということで、差は記録メディアの違いと、それに伴う最高ビットレートの差(UX7が12Mbps、SR7/8が15Mbps)だけということになる。現在売れ筋のUX7の画質も、絵作りとしては同じということで参考になるだろう。

 動画撮影はHDがAVCHDで、SDがMPEG-2 PSである。SDの画角は16:9と4:3が選べるが、今回は16:9のみ撮影した。HDは長時間録画がウリだが、連続撮影時間は約13時間となっている。またHDとSDはHDD内に混在できるが、再生時はモードを切り替えて再生することになる。


動画サンプル
HD画質モード
モード ビットレート 記録時間 サンプル
XP 15Mbps 約8時間
ezsm01.m2ts (21.3MB)
HQ 9Mbps 約14時間40分
ezsm02.m2ts (16.3MB)
SP 7Mbps 約17時間50分
ezsm03.m2ts (13.1MB)
LP 5Mbps 約22時間50分
ezsm04.m2ts (8.62MB)
SD画質モード
HQ 9Mbps 約14時間40分
ezsm05.mpg (12.1MB)
SP 6Mbps 約21時間50分
ezsm06.mpg (11.5MB)
LP 3Mbps 約41時間50分
ezsm07.mpg (6.00MB)
編集部注:動画サンプルは、撮影時のH.264形式(.m2ts)を未加工のまま、PCに取り込んだファイルです。再生環境はビデオカードや、ドライバ、OS、再生ソフトによって異なるため、掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。


 全体的に撮影レスポンスは軽快で、動画と静止画モードの切り替えも速い。ただ同時撮影で静止画を撮影した時は、撮影終了後に静止画の保存完了までちょっと待たされる点は同じだ。

 本機はマニュアル撮影をサポートしておらず、基本的にはフルオートで撮るカメラである。オートではF4.8前後で頑張る感じだが、ソフトポートレートでは絞り開放でシャッタスピードで露出調整を行なうため、深度表現もできるようになった。背景が抜けている場合は、ソフトポートレートの方がボケ味が綺麗だ。ただシーンモードを使うとホワイトバランスまでオートに戻ってしまうので、他のシーンをホワイトバランス固定で撮っていた場合、色温度が合わなくなることもあるだろう。

オートモードで撮影。背景のボケが少ない ソフトポートレートで撮影。背景がボケて立体感が出る

動画サンプル

ezsm08.m2t (178MB)

ezsm09.m2t (32.4MB)
編集部注:動画サンプルは、Canopus HQ Codecに変換後、EDIUS Pro 3で編集したファイルです。再生環境はビデオカードや、ドライバ、OS、再生ソフトによって異なるため、掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。


本体の静止画撮影機能で撮影

 タッチスクリーン型液晶だが、発色はx.v.Color対応機ということもあって、本体の液晶画面上でもはっきりしている。特にあやめなどの濃い紫も、色がズレないので、撮っていて安心できる。また解像感、というか、モノのディテールの表現は結構高い。いたずらにシャープな感じではなく、輪郭は結構なめらかな印象を受ける。

 静止画の方は若干暖色になる傾向があるようだが、雰囲気のある写真の絵になっている。等倍で見ると暗部に多少のカラーノイズを感じるが、縮小したり印刷する分には、無視できるだろう。

 残念なのは、本体だけで動画から静止画を切り出せないことである。多くのHDカメラはこの機能を実現しているが、SR7ではPC上で付属ソフトウェアを使わないと、静止画が切り出せない。

Picture Motion Browserでは静止画切りだし時に補正が可能 動画から静止画切りだし、補正なし 動画から静止画切りだし、補正機能使用



■ 新しくなった再生機能

 SR7の特徴としては、再生系を充実させたという点が上げられる。ノンリニアメディアでは、撮影したシーンはクリップ単位に分けられている。テープよりは閲覧性はいいが、そのクリップ内にどんな映像が入っているかは、結局そのクリップを早送りしながら見ることになるわけだ。だが今回はこのジレンマを解決する、2つの機能を搭載した。


クリップ内の映像をフィルムロールで確認できる

 フィルムロールは、一つのクリップ内にどのような映像が入っているかをフィルムロール形式で表示する機能で、3秒、6秒、12秒、1分、5分の間隔を選ぶことができる。回しっぱなしでいろんな映像を撮影した場合に、見たいクリップをすぐに探すことが可能。見たい箇所のサムネイルにタッチすると、そこから再生が開始される。ノンリニアメディアならではの再生機能だ。

 もう一つのフェイスインデックスは、撮影したシーンの中から顔が写っているシーンをインデックス化してくれる機能だ。これは後処理で検索するのではなく、撮影時に顔を検知した時点でフラグを埋めているという。

 インデックス画面では、顔がどんなサイズで撮影されていても、顔アップのサムネイルを作ってくれる。そこをタップすれば、すぐにその人が写っているシーンから再生されるというわけだ。

 これは幼稚園などの発表会で沢山の子供が写っていた場合などに、「誰々ちゃんのシーン」といった具合に顔から選ぶことができる。考えようによっては、いろいろ使い出のある機能だ。ただ横顔は検知できないようなので、撮影時は正面から撮るように心がける必要がある。

 また本体の編集機能も若干アップした。前モデルのSR1では、プレイリスト編集時にクリップの並び替えはできたのだが、クリップの分割ができなかった。前モデルでもDVDタイプのUX1では可能だったのだが、HDDタイプのみできなかったのだ。SR7ではクリップの分割ができるようになっている。ようやくDVD機と機能が並んだわけである。

顔が写っている部分にインデックスを付けてくれる「フェイスインデックス」 本体でクリップの分割ができるようになった



■ PC環境も整備

 続いてPCを使った編集やバックアップ環境を見ていこう。AVCHDはご存じのように、PCにとっては再生するだけでも一苦労の高圧縮フォーマットである。これまでカメラ付属のPC用ソフトウェアも、再生・編集パフォーマンスに合わせた動作環境ということで、最低でもPentium 4 2.8GHz以上としてきたわけだが、実は右から左にAVCHDディスクを作るだけならば、大したパフォーマンスは必要ない。

 この点はユーザーからの問い合わせも結構多かったようで、今回からそのあたりの表記が見直されている。ディスク作成やファイルのバックアップなどの動作スペックは、Pentium 3 1GHz以上(Windows2000 SP4、XP SP2、Vista。64bit OSは除く)となった。胸をなで下ろしたユーザーも多いことだろう。

 ワンタッチ ディスクに関しては、SR1の時にテストしたので、今回は省略する。ただダビング速度は、SR1の時に比べて倍に高速化されており、SPモードで60分の映像を約20分でダビングできるようになっている。

 映像管理と動画の簡易編集が可能なPicture Motion Browserだが、今回付属のバージョンでまた機能が向上した。カレンダー表示の際に、各クリップでフィルムロールが使えるようになった。これは本体と同じように特定の秒数で分割表示することも可能だが、全体で5分割、10分割といった分割数を指定することもできる。

 また、クリップ内で盛り上がったところを自動的に解析してサムネイル化してくれる「ハイライト表示」も可能になった。このあたりは、レコーダでも搭載されるようになったアルゴリズムである。取り込み時に映像解析を行なう必要はあるが、映像のブラウザとしては面白い進化だ。一方本体には搭載されているフェイスインデックス機能は、Picture Motion Browserには搭載されていない。

 また編集機能も若干強化された。SR1に付属のバージョンでは、クリップの分割はできたものの、カットの並び替えはできなかった。しかし今回のバージョンでは、AVCHD書き出し時にカットの並び替えができるようになっている。

サムネイル表示以外に、動画はフィルムロール表示も可能 AVCHDの書き出し時に、カットの並び替えができるようになった



■ 総論

 SR7は、ハイビジョンでHDD記録の小型モデルということで、かなり待たれていた製品だろう。光学部が春モデルから据え置きなのは残念だが、その代わり再生機能のほうに力を入れてきた。フェイスインデックスの搭載など、時間をかけただけのことはある出来になっている。

 現時点ではAVCHDの編集は、ハードウェア的な敷居が高いこともあってなかなか実現しなかったが、本体編集や付属ソフトでの編集も、一通りのことはできるようになった。さらにDVDライターの「VRD-MC5」も発売される。AVCHDの発表から約1年が経過しようとしているが、ようやく収録から保存までが回転できるところまで来た感じだ。

 SR7は60GBだが、100GB HDDを搭載した上位モデル、「HDR-SR8」も同時に発表された。こちらは約2万円高となるが、ブラックモデルというだけでプレミアム価格の世の中で、HDD大幅増量というのはちょっとお買い得感を感じる。

 SR7は、ハイアマが使ってうれしいような機能は付いていないが、ハイビジョン時代、そしてノンリニア時代において「普通のカメラ」を実現したモデルだろう。おそらく普及機というのは、こういうものなのだろうなぁと思う。


□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.sony.jp/CorporateCruise/Press/200705/07-0529B/
□関連記事
【5月29日】ソニー、メモリースティック記録のAVCHDビデオカメラ
-1080i方式で世界最小・最軽量。60/100GB HDDモデルも
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070529/sony1.htm
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【1月18日】ソニー、HDカム'07年春モデル。AVCHD 2機種/HDV 1機種
-初の「x.v.Color」対応カム。320万画素CMOS
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070118/sony1.htm

(2007年5月30日)


= 小寺信良 =  テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。

[Reported by 小寺信良]



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