小寺・西田の「金曜ランチビュッフェ」

本稿はメールマガジン「小寺・西田の『金曜ランチビュッフェ』」からの転載です。金曜ランチビュッフェの購読はこちら(協力:夜間飛行)

新MacBook Proをもうちょい使い込んでみた

今週のElectric Zooma!では、新しいMacBook ProとリニューアルされたFinal Cut Pro Xの組み合わせをご紹介した。

新MacBook ProとFinal Cut Pro X

多くの方の注目は、Final Cut Pro Xではなく、Touch Bar付きのMacBook Proどうなの? という部分ではなかっただろうか。実はマシンが届いたのが日曜日で、月曜火曜と検証に当てたのだが、それ以降外に持ち出して取材で使ってみたり、今回のメルマガ用に動画編集してみたりした。そこであの記事では書ききれなかった部分が出てきたので、ここでもうちょっと補足してみたい。別にこれ西田さんへのあてつけじゃないから! ホントだから!

Fキーどうすんの問題

Touch Barの搭載に不満を抱いている人の多くは、プログラマーだったりライターだったりするのだろう。僕はプログラミング環境のことはわからないが、文章を書く場合において、日本語の入力中に、一部だけ英語を入れたい場合、どのように変換するか。

入力前に英語入力モードに切り替えてから改めて英語を入力する人もいるだろう。一方で日本語入力モードのままで入力だけしてしまって、F10キーで英文字に変換する人もいるわけだ。

この件は以前西田さんもメルマガで分析していて、思いのほかFキーで変換している人が多いことがわかった。それを知ってから、筆者もFキーを使って変換するようになった。確かにこの方法も、アリなんである。

MacのTouch Barなしモデルでは、Fnキーを押した時にFキーになるか、それとも画明るさやボリューム調整ができる「コントロールストリップ」になるかを選択することができる。この設定で常時Fキーとして機能するように設定できたのだ。

Touch Barなしモデルのキーボード設定

だがTouch Bar搭載モデルでは、Fnキーを押してTouch BarにFキーを表示させることができるものの、Fキーの表示を標準に設定することができない。

Touch Bar搭載モデルの設定には、Fnキーのアクションを逆にする設定がない

システム環境設定の「キーボード」の中に、「ファンクションキー」という項目がある。ここに、Touch Barに常時Fキーを表示させたいアプリを登録する。すると、そのアプリの使用中は、Touch Barには常にFキーが表示される。テキスト入力に使うエディタやワープロアプリ、プログラミング用ツールなどをここに登録しておけば、これまで通りFキーによる変換や独自機能が使えるようになる。

「ファンクションキー」設定で常時Fキーを表示させるアプリを登録できる

また他のアプリで表示される「コントロールストリップ」も、自分流にカスタマイズできる。Macの画面上に表示されているボタンを、Touch Barにドラッグ&ドロップすれば、ボタンの入れ替えができるのだ。

例えばSiriはMacでは使わないし、誤動作は避けたいという場合には、Siriへのショートカットを外すことができる。その代わり自分が頻繁に使う機能をアサインすればいいわけだ。

Touch Barの表示はある程度カスタマイズ可能

この時Touch Bar上のアイコンは、iOSでアプリアイコンの場所を変更するときのように、左右にゆらゆらと揺れているのがかわいい。

描画は速いが…

MacBook Proのハードウェア的な特徴の一つは、高速なグラフィックスエンジンだろう。高解像度のディスプレイが駆動できるだけでなく、動画再生でもパフォーマンスは高い。

4Kカメラで撮影した映像をFinal Cut Pro Xで編集する場合、映像の取り込み時にデータの最適化をするか、プロキシファイルを作るかを選択できる。データの最適化というのは、MP4やXAVC-Sのような高圧縮データを、再生レスポンスを上げるためにProRes422に展開する作業である。

これまで4Kの編集は、Mac mini(2014)で行なっていたが、このデータ最適化によって問題なく編集できていた。ただしこの機能を使うためには、Final Cut Pro Xに素材を読み込ませておいて、1時間ぐらい放置しておく必要がある。その間他の作業をしたり、食事したりして時間を潰すわけである。

うまいこと時間をやりくりすれば、非力なマシンでも4K編集ができたのだが、今回の新MacBook Proでは最適化せずとも、撮影フォーマットのままで編集レスポンスは落ちない。素材を取り込んですぐに作業できるというのは、撮影現場で編集してすぐアップするような場合には有効だろう。

一方で、編集した結果は最終的には1つのファイルにレンダリングしなければならないわけだが、そのレンダリングはそれほど早くなかった。今回のメルマガ用に、720pで音声トラック2つのプロジェクトをYouTube用にレンダリングしたのだが、13分程度のコンテンツのレンダリングに、17分ほどかかっている。リアルタイムよりもちょっと遅いというのは、映像表示の爆速さからすれば、拍子抜けするほど遅い。

レンダリングにはAppleのCompressorを使用したのだが、もう少しGPUをうまく使ってパフォーマンスが上げられないものだろうか。まだ新モデルが出て間もないタイミングなので、これからパフォーマンスが上がるのかもしれないが、今後のブラッシュアップに超期待したいところだ。

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「金曜ランチビュッフェ」(http://yakan-hiko.com/kodera.html)も好評配信中。