YouTube、著作権違反対策と収益化への取り組みを説明

-「コンテンツID」の進化や今後の課題など


YouTubeの徳生裕人シニアプロダクトマネージャー

2月23日開催


 グーグル株式会社(Google)は、23日に行なった定例記者説明会において、YouTube動画の著作権保護と収益化に対する取り組みを紹介。米国で開始された新サービスなどについてシニアプロダクトマネージャーの徳生裕人氏が説明した。

 1分間に約15時間分のアップロードが行なわれているというYouTubeにおいて、著作権に違反する投稿を検出するための方策としては、書面での依頼無しに削除できるツール「コンテンツ検証プログラム」を提供しているほか、あらかじめコンテンツホルダから提供されたサンプルを元に、特徴をまとめた「IDファイル」と照合する動画を検出する「コンテンツID」などの方策が採られている。

 「コンテンツID」は、動画のコントラストなどの要素を抜き出し、時間が進むにつれてどう変化するかに着目。相対的な変化をとらえることで、ファイルが同じものであるかどうかを判断する。精度について徳生氏は「基本的に間違うことはほぼないというレベル」としている。IDファイルの生成は15分以内で可能で、公式アップロード前に投稿されたファイルについても検出可能。さらに、「モバイルのみ不可」といったオプションを付けることもできる。

コンテンツIDシステムの概要

左が公式、右が違法投稿の動画。(手持ちカメラによる)ブレや、輝度などの違いがあるが、検出が可能となっている権利者が選べる3つのオプション

 そのほかの方法としては、一度削除されたファイルを判別するためにMD5ハッシュを生成しておくことで、別のアカウントからでも同じファイルと判断されたものはすぐに削除する方法も導入されている。違法投稿を繰り返すユーザーについては、3回以上は悪意があると判断し、アカウントごと削除するいった対策が実施されている。

 2008年11月の発表会で説明された通り、「コンテンツID」で照合されたファイルに対しては、パートナーとなっている権利者の判断によっては削除以外の対策も可能。権利者は、IDが照合された動画を公開前に視聴できなくする「ブロック」、ブロックせずにトラフィック情報などをGoogleから取得する「トラック」、広告などを付けて収益を受け取る「マネタイズ」というオプションから選択できる。なお、広告収益については、同社の「Adsense」と同様に、半分以上がパートナーに還元され、残りをGoogleが得るという。

「トラック」で権利者に提供されるレポートの例

角川の“公認MAD”動画も紹介した

コンテンツIDのこれまでの進化

■ 米国ではAmazon/iTunesとの連携も

 広告の種類については、動画の右側にバナーで表示される方法のほか、米国では新しい取り組みとして、音楽ファイルからAmazonやiTunesなど販売サイトへのリンクを設け、その楽曲の配信ページに移動できるという方法も採用されている。徳生氏は、日本でも同じ方法を採用するか、日本向けにしたシステムを導入することの必要性を指摘した。

 ワールドワイドでは300以上のパートナーが「コンテンツID」を採用。IDがマッチングした動画に対しては、90%以上について「マネタイズ」が選択されているという。この背景には、人気のある動画に対してパートナーの公式アップロードよりも、該当ユーザーの再生回数の方が多かったことなどもあり、一部のパートナーについては、マネタイズにより従来の50倍の再生回数と収益を実現したという。

Amazonの購入ページへリンクされている動画の例動画から、Amazon/iTunesに移動、スムーズに購入へとつながるUniversal Musicが公認したことを示すアイコンが表示
「コンテンツID」採用パートナーの現状

 ただし、実際に「コンテンツID」の専用ツールで積極的に活用しているパートナーは(前出の300パートナーのうち)1割ほどの大手のみとのことで、カバー率という意味ではツールの利用率拡大といったことも課題として挙げている。具体的には、システムの性能や、使い勝手向上、収益モデルの強化などを進め、「全パートナーに使ってもらうことが現実的なゴールで、まだまだ足りない。全部の動画に広告が付くことが理想形」と徳生氏は述べた。また、今後のパートナー拡大については、「2008年10月のJASRACとの契約により進みやすくなった。日本は(米国などに比べ)遅れながらも追いかけている状態」との認識を示した。

 企業に限らず、個人でもパートナーとなることは可能。著作権を所有し、他ユーザーによる支持を得ているなど一定の条件を満たすことで、広告による収益化といったパートナーの資格が得られるという。

 そのほか、著作権に関する取り組みとしては、ユーザーが撮影した動画に対し、BGMとして付加できる「AudioSwap」が用意され、使用が認められた楽曲を一覧で探せる機能も提供されている。ただし、現時点では国内の楽曲は無い。また、一度許諾された楽曲についても権利者の判断で後から使用不可とされた楽曲については、動画はそのままだが音声が削除される。この場合、ユーザーは別の楽曲を選択するなどの手続きが必要となる。

AudioSwap機能

楽曲が利用停止になった場合のユーザーへの通知YouTubeが今後の課題ととらえるポイント

(2009年 2月 23日)

[AV Watch編集部 中林暁]