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パイオニア史上初の11ch「LX901」など、AVアンプ上位3機種。PQFAでジッターレス
2016年8月8日 13:00
オンキヨー&パイオニアは、パイオニアブランドのAVアンプ中~上位モデル3機種を9月上旬に発売する。従来の2桁型番から、3桁の型番へと進化。ラインナップと価格は、「SC-LX901」が410,000円、「SC-LX801」が350,000円、「SC-LX701」が233,000円。3桁型番は開発の早い段階で決まったため、11chアンプである最上位モデル「SC-LX901」に“スサノオ(LX90)”のような開発コードネームはついていなかったという。
いずれのモデルも、オブジェクトオーディオのDolby AtmosやDTS:Xに対応。進化点として、イネーブルドスピーカーへの対応を強化。さらにネットワーク再生機能で、DSD 11.2MHzまでのネイティブ再生に対応するほか、ストリーミング再生やファイルオーディオ再生の音をより改善するという独自技術「PQFA」も新たに搭載。さらに、最上位のLX901はパイオニア史上初の11chアンプとなっている。
Direct Energy HD Ampを刷新。初の11chも
3モデルに加え、既発表の「LX501」を含めた4モデルは、全て独自の「Direct Energy HD Amp」を搭載しているが、その仕様を刷新。これまで蓄積したノウハウを用いて、基板のパターニング、レイアウトから徹底的に見直す事で、信号間のクロストークやノイズを根本から抑制しているという。
基板の再設計により、信号経路の最短・最適化も徹底。LX89ではわずかにラインが横にカーブしていた部分も、シンプルストレートになり、「ノイズ対策のレベルを大きく改善し、一層の高音質再生が可能になった」という。
また、最上位のLX901は、LX801/701とサイズの変わらない筐体だが、11chアンプを実現。従来よりも2chアンプを追加するために、基板のサイズやパーツの配置などをミリ単位で調整したという。また、スペースの余裕が無くなる事で発生する音への影響も、これまで蓄積したノウハウでカバー。ローパスフィルタの大型化や、カスタムコンデンサを従来の6個から8個に増やすなど、ハイパワーな駆動力も追求している。
11chアンプであっても、筐体内でパワー部とプリ部を独立させたセパレート構造は踏襲。パワー部全体がシールドされた状態になっている。さらに、デジタル/アナログ回路それぞれに、独立した電源を用意。クリーンな電源供給を行なっている。
11chアンプの搭載により、別途アンプを追加せずに、Dolby AtmosやDTS:Xのトップスピーカーやドルビーイネーブルド・スピーカーを最大で2組ドライブ可能。フロントスピーカーをバイアンプ駆動するなど、様々な組み合わせにも対応する。
上位機種のLX901とLX801は、「Direct Energy HD Amp」の前段階にもこだわりがあり、プリ部から受け取った小信号をPWM変換するオペアンプICと、Direct Energy HD Ampを動作させるゲート駆動ICを、個別に搭載。セパレート構成にする事で、より高品位な専用デバイスを選別できるほか、小信号を扱うオペアンプICと、大電力部であるゲート駆動ICを、空間的に離して設置する事で、信号処理へのお互いの干渉を防いでいる。
いずれのモデルも、DACはESSの「ES9016S」を2基搭載。オーディオ用カスタムコンデンサも随所に配置している。デジタル回路部の信号処理精度を高め、SN比を向上させる「低ESRカスタムコンデンサ」も搭載した。
ルビコンとパイオニアが共同開発した、薄膜高分子積層コンデンサの「PML MUコンデンサ」も採用。抑圧感の無い、透明感と開放感のある音質を実現したという。オペアンプには、JRCと共同開発した「NJM4585」を使っている。
最上位のLX901は、微小信号の高精度処理に貢献する「シールドDC/DCコイル」も搭載。中高域だけでなく、低域のより繊細な表現が可能になったという。
LX901のアナログ電源部には、映像や音声信号に影響を与える漏洩磁束の低減を図る専用チューニングを実施。デジタル、アナログ電源を独立させたアドバンスドインディペンデント・パワーサプライ設計も導入した。
ネットワークオーディオなどを高音質化PQFA
新機能として、PQFA(Precision Quartz for File Audio)を搭載。パイオニアはこれまで、対応するプレーヤーとアンプのHDMI接続において、ジッターレスの高品位な伝送を可能にする「PQLS」を採用してきたが、その考え方をベースに、ネットワークオーディオやファイルオーディオ再生全体を高音質化させるものがPQFAとなる。
ネットワークオーディオでは、前段にネットワークモジュールがあり、そこにEthernetやUSBを経由してデジタルデータが入ってくる。その後、DSP、DACへと信号が流れていくが、その間にジッタが発生する。それに対処するために、DAC向けに高精度なクロックICを導入して制御するといった手法があるが、PQFAは、ネットワークモジュール、DSP、DACの3つ全てを高精度のクロックで制御し、ジッターレス伝送を可能にするもの。
そのため、インターネットラジオも含むストリーミング音源の再生や、USBメモリなどに保存した音楽ファイル再生でも音質を改善できる。制御するクロックも、44.1kHz系統と、48kHz系統で個別に用意している。
ネットワークハイレゾ再生では、新たにDSD 11.2MHzのネイティブ再生をサポート。WAV、FLAC、AIFF、Apple Losslessの192kHz/24bit再生もサポートしている。
2.4GHz/5GHzの無線LAN機能も搭載。AirPlayとBluetooth、Google Castにも対応している。さらに、radiko.jpの受信も可能。tune inの受信も可能になっている。
スマートフォンやタブレットでAVアンプを操作でき、接続されたパイオニア製BDプレーヤーも操作できるコントロールアプリ「iControlAV5」も用意する。
CD音源を最大176.4kHz/32bitのハイレゾ相当にアップスケーリングし、96kHz/24bitのハイレゾ音源も192kHz/32bitにスケールアップする「AUDIO SCALER」も搭載。
HDMIは4K/60p 4:4:4、24bitの伝送や、HDR、色域BT.2020に対応。端子数はいずれのモデルも8入力、2出力で、そのうちHDCP 2.2対応は5入力、2出力となる。4Kのための映像エンジン「Super Resolution」も搭載。独自の画像解析に基づく帯域や輝度に応じたテクスチャー処理や、精密な補正を行なうエッジ処理、フルHDの4Kアップスケーリングなども利用可能。
イネーブルドスピーカーのクオリティを向上
音場補正技術「MCACC Pro」を搭載。定在波補正や残響特性測定による「3次元音場補正」と「デュアルサブウーファーEQ補正」による低域調整により室内環境を精密に調整。さらに、機器内での低音の遅れやソースに由来する低音の遅れを解消する「フェイズコントロール」と「オートフェイズコントロールプラス」、接続された全スピーカーのユニット一つ一つまで位相を揃える「フルバンド・フェイズコントロール」も利用可能。
また、「MCACC Pro」には「FRONT ALIGN」や「9バンドのEQ補正」などの調整機能が搭載されているが、その調整値を最大3パターン保存できる。作品やコンテンツの種類に合わせて切り替えるといった使い方が可能。
オブジェクトオーディオのDolby AtmosとDTS:Xもサポート。「MCACC Pro」による音場再生技術と組み合わせて活用できる。
オブジェクトオーディオの再生には、天井に設置するトップスピーカーが必要だが、それを使わず、天井に音を反射させてトップスピーカーの代わりをするイネーブルドスピーカーも存在する。
新モデルでは、このイネーブルドスピーカー専用の調整機能「ReflexOptimizer」を搭載。指向性の高い、高音などは天井に反射するが、指向性の低い音などはリスナーの耳に直接音として聴こえてしまい、サラウンド感が損なわれたり、位相が狂った状態になってしまう事もある。ReflexOptimizerはこれらを補正する事で、より繋がりの良いサラウンド再生を可能にするという。
なお、この技術はオンキヨーブランドのAVアンプ「TX-RZ810」に「AccuReflex」として導入されているものと基本的には同じ。両ブランドが、同じ技術をベースとしたものをそれぞれの製品に搭載した形となっている。
AIR Studiosでチューニング。リモコンも刷新
上位2モデルのLX901、LX801は、イギリスの名門スタジオ「AIR Studios」と共同でチューニング。実際に現地に赴いた開発担当の平塚友久氏は、「音楽を作り出しているエンジニア達にアンプの音を聴いてもらい、その意見をもとに、その場で調整しています。今回も4日間缶詰になって、調整と試聴を繰り返しました。その結果、AIR Studiosでしっかりと認められた音作りになった」という。
インシュレータにもこだわっており、内部構造の平行面を無くし、空洞共振が原理的に発生しない形状の「定在波制御インシュレータ」を採用。チャンネル間の繋がりがよくなり、俊敏な音へのレスポンスも向上したという。
付属のリモコンも刷新。シンプルなデザインになり、上の方にダイレクトファンクションキーを搭載。使用頻度の高い機能を優先して搭載したという。GUIも刷新。HD画質となり、鮮明で見やすくなった。
最大出力は、LX901が340W×11ch(4Ω)、LX801が340W×9ch(4Ω)、LX701が320W×9ch(4Ω)。HDMI以外の入力端子は、アナログ音声が7系統(Phono MM含む)、光デジタル音声×3、同軸デジタル音声×2、コンポーネント×2、コンポジット×2。出力端子は、コンポーネント×2、ゾーン音声出力×2を用意。全モデル11.2chのプリアウトも備えている。
外形寸法は435×441×185mm(幅×奥行き×高さ)。消費電力と重量は、LX901が340Wで18.2kg、LX801が320Wで18kg、LX701が310Wで15.4kg。
“集大成的なモデル”
平塚氏は、パイオニア初の11chアンプとなるLX901について、「開発前、物理的に2ch増やすためには、そのための面積や体積を空けなければならない。そこでまず、筐体の中に入れずに2chを追加したらどうなるかという音質面への影響を試作機でチェックした」という。
その結果、LX89までで培ってきたノウハウを投入すれば「(11chアンプの)基板にさえすれば、いけそうだという感触が得られた」という。しかし、「実際に製品の筐体に入れようとすると大変でした。筐体のサイズは変わっていないので、基板の幅を大きく増やすことはできず、10mmしか大きくなっていません。ですので各アンプ間を2mmずつくらいつめて、なんとか位置を確保しました。間をつめるとチャンネル間のクロストークなども問題になるので、そうした影響の出ない範囲で少しずつ調整していきました。その際にも、今までの開発で培ってきた“こうすれば、うまくいくだろう”という経験が役に立った」という。
営業本部の八重口能孝氏は音質について、「基板のパターニング、レイアウトのレベルからDirect Energy HD Ampを徹底的に見なおした事が効いている。フロントパネルのデザインなどに大きな変化はありませんが、従来モデルとの音質的なステップアップという面では、今回の新製品はその差が大きなものになっている。ある意味で“集大成的なモデル”になっている」と、完成度の高さに自信を見せた。