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パナソニック、'16年第2四半期は為替影響で減益。プレミアム戦略でテレビは黒字確保

 パナソニックは、2016年度上期(2016年4月~9月)の連結業績を発表した。売上高は前年同期比7.0%減の3兆4,955億円、営業利益は27.8%減の1,446億円、税引前利益は6.7%減の1,532億円、当期純利益は7.7%増の1,199億円となった。

パナソニック 代表取締役社長の津賀一宏氏

 パナソニックの河井英明代表取締役専務は、「売上高は、為替影響を除く実質ベースでは前年並み。地震の影響やソーラーなどの市況悪化による減販があったものの、ハスマンの連結子会社化や、電池などの車載事業が伸長して前年並となった。営業利益は、為替影響に加えて、先行投資などによる固定費の増加、ソリューション事業における前年度特需の反動などにより減益となった」と総括した。

2016年度第2四半期連結業績

 なお、当期純利益では、パナソニックプラズマディスプレイの清算を決議したことで、繰延税金資産として182億円を計上したことなどが影響しているという。

アプライアンスは増益。テレビは黒字確保

 セグメント別では、アプライアンスの売上高が前年同期比1%減の1兆1,851億円、セグメント利益は67%増の715億円となった。売上高は、為替を除く実質ベースでは、前年同期比6%増だという。

アプライアンスの業績

 なお、テレビ事業の第2四半期売上高は、前年同期比162億円減の710億円となったものの、営業利益は10億円増の17億円で、黒字を維持している。「テレビの欧州市場での苦戦が減収に響いているが、4Kテレビなどの高付加価値商品シフトにより収益性が改善している。日本ではリオオリンピック4K需要を取り込んだ」(パナソニックの河井代表取締役専務)という。

テレビ事業は黒字確保

 また、「アプライアンス全体では、第2四半期は、国内の天候不順などにより、業界の総需要は前年同期比97%であったが、パナソニックは4%増と業界以上の実需を刈り取ることができ、上期累計ではシェアを約1ポイント上げることができた。海外では、中国は厳しい状況が続いているが、アジアでは好調。事業別では、エアコンが日本、アジア、欧州での拡販に加え、中国市場の販売改善により増収。プレミアム商品が貢献した。またメジャー事業は、国内およびアジアで、洗濯機、冷蔵庫を中心に堅調に推移して増収になった」(パナソニックの河井代表取締役専務)という。

パナソニック 代表取締役専務(経理・財務担当)の河井英明氏

 パナソニックの津賀一宏社長は、「パナソニックが家電市場において、業界全体の上回る実績となったのは、マーケティング施策を丁寧にやってきた成果である。若者向け、30代のファミリー向け、高齢者向けといった形で訴求している。またプレミアム化も進んでいる。これは高く売りたいというのではなく、求められるものをプレミアムとして要望に応える形で提供している点が異なる。そこに価値がある。一方で、アジアやインドは2桁成長を遂げているが、欧州では苦戦している。ここは、もともとAVやデジカメの構成比が高い市場であることが要因。中国においてもプレミアム家電を増やしている」などと語った。

AVCは熊本地震が影響。自動車関連は好調

 AVCネットワークスの売上高は、前年同期比15%減の4,924億円、営業利益は24%減の257億円。エコソリューションズは、売上高が5%減の7,259億円、営業利益が37%減の209億円。オートモーティブ&インダストリアルシステムズは、売上高が10%減の1兆2,504億円、営業利益は9%減の651億円となった。

エコソリューションズの業績
AVCネットワークスの業績

 「AVCネットワークスでは、映像・イメージング事業において高付加価値商品の販売が堅調だったが、部品調達において、熊本地震の影響が生じて減収。また、モビリティは、前年度に国内決済端末などの大型案件の反動もあって減収となった。コミュニケーションは、固定電話などの市場縮小の影響を受けて、米国やアジアで減収となった。アビオニクス事業も前年度特需の反動によって減収になった」という。また、「エコソリューションズは、国内住宅市場縮小に伴うソーラーの販売減が影響。オートモーティブ&インダストリアルシステムズは、オートモーティブは、ディスプレイオーディオ、車載カメラ、スイッチなどが好調に推移して増収。エナジーは、リチウムイオン電池がICT向けに縮小したものの、車載向けが伸長した」という。

オートモーティブ&インダストリアルシステムズ
事業別売上高増減

 2016年度上期の地域別売上高は、円ベース換算では、国内が前年同期比2%減の1兆6,799億円。海外は、前年同期比11%減の1兆8,156億円。そのうち米州が2%減の6,102億円、欧州が15%減の2,966億円、中国が22%減の4,183億円、アジアが10%減の4,905億円となった。

為替影響で下方修正。二次電池に期待

 また、同社では、2016年度の業績見通しを下方修正した。

 売上高は期初公表値に比べて、4,000億円減の7兆2,000億円、調整後営業利益は650億円減の3,200億円、営業利益は650億円減の2,450億円、税引前利益は600億円減の2,400億円、当期純利益は250億円減の1,200億円とした。

2016年度年間業績見通しの修正

 「売上高に対する為替の影響額は3,600億円となり、修正額のほとんどが為替によるもの。さらに、ソーラーやICT向けデバイスの苦戦などを織り込んだ。また、期初公表値と比べると、高成長事業は二次電池の投資前倒しなどの影響で下方修正。安定成長事業については、エアコンなどが改善しているものの、ソーラーの減販影響により全体としては下振れした。収益改善事業については、ICT向け事業で苦戦しているデバイスソリューションや、想定以上のスピードで市場が縮小しているオフィスプロダクツなどの厳しい事業環境を織り込んだ」(パナソニックの河井代表取締役専務)という。

 セグメント別の修正後見通しは、アプライアンスの売上高が900億円減の2兆2,800億円、調整後営業利益は36億円増の1,100億円。また、AVCネットワークスの売上高は1,300億円減の1兆450億円、調整後営業利益は145億円減の600億円。エコソリューションズは、売上高が700億円減の1兆5,700億円、調整後営業利益が118億円減の840億円。オートモーティブ&インダストリアルシステムズは、売上高が1,700億円減の2兆4,700億円、調整後営業利益は410億円減の760億円とした。

セグメント別の修正

 「アプライアンスは、海外で生産して、日本で販売する持ち帰り商品の為替影響などのほか、白物家電のプレミアム商品の貢献により、調整後営業利益を上方修正した」という。また、「エコソリューションズは、ソーラー事業の厳しい状況を踏まえて下方修正。AVCネットワークスは、為替影響や熊本地震の影響を反映。オートモーティブ&インダストリアルシステムズは、 為替影響に加えて、ICT向けデバイスの苦戦や、ギガファクトリー立ち上げ費用などを織り込んだ」(パナソニックの河井代表取締役専務)としている。

 だが、「経営体質改善は着実に進捗しており、来年度以降の成長に向けた1兆円の戦略投資は、手を緩めずに着実に実行していく。現時点では、約7割が、投資済みあるいは方向づけが完了している」と述べた。

1兆円戦略投資の進捗

 また、津賀社長は、「10兆円の売上げ目標を取り下げ、利益成長へと舵を切るとしたものの、今回は利益面での下方修正となった。だが、体質はかなり強化されているのは事実。社会が大きく変化するなかで、新しい領域に向けた積極的なシフトが必要だが、そのためには先行投資が必要であり、やればやるほど短期的な利益は痛む。また、為替についても短期的に利益を痛める原因になっている。とくに、オートモーティブ&インダストリアルシステムズは、日本のモノづくり、技術に対する要請が高く、この強みを守りながら、為替の変化に対応していく必要がある。そのためには成長しながら体質を変えていかなくてはならない。進んでいる道は間違っていない」などとした。

 なお、規模が大きいものの、営業利益率が5%に満たない「大規模6事業部」として位置づけていたエアコン、ライティング、ハウジングシステム、インフォテイメントシステム、二次電池、パナホームについては、「エアコン、ライティングについては、すでに営業利益率5%以上を達成しており、成長を牽引している。インフォテインメントシステムは、5%以上の利益となっているが、このなかにはIFRSによって先行投資分の扱いが代わっていることによるもの。ハウジングシステム、パナホームももう少しで5%にまで手が届くところにきている。二次電池は通期見通しでは赤字だが、最大の高成長領域と位置づけており、戦略投資に力を入れている。安定的に5%の利益率でいくことは考えていない。短期的な利益確保という点では見ていない。赤字でもがんばる覚悟がある」(津賀社長)とした。

 二次電池では、テスラモータースのギガファクトリーや中国・大連の工場の早期稼働が見込まれており、EVの旺盛な需要も期待されている。

 一方、ソーラーについてもテスラとの連携が今後期待されており、「ペナンの生産拠点だけでなく、今後、国内の生産拠点を有効に活用していくこと可能性がある。二色の浜のソーラーの生産拠点は、10月には稼働させたいと思っていたが、来年に稼働はずれ込んでいる。だが、テスラとの協業がうまくいけば弾みがつく。国内生産拠点も早期に稼働を再開させたい」などと述べた。