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JVCケンウッド、手のひらサイズのハイレゾコンポとウッドコーンスピーカー

 JVCケンウッドは、ケンウッドブランドのコンポ「K series」の新製品として、手のひらサイズの超小型ハイレゾオーディオ「KA-NA7」を11月下旬に発売する。USB DAC、USBメモリ再生、Bluetooth受信、光デジタル入力、スピーカードライブ用アンプ、ヘッドフォンアンプなどを内蔵し、価格はオープンプライス。店頭予想価格は38,000円前後。マッチする小型ハイレゾスピーカーとして「LS-NA7」も同時期に発売、価格はオープンで、店頭予想価格は18,000円前後(ペア)。

ケンウッドブランドの超小型オーディオ「KA-NA7」

 超小型オーディオ「KA-NA7」をベースにしながら、独自の高音質化チューニングを施し、さらに手のひらサイズの「マイクロウッドコーンスピーカー」をセットにしたモデルも、JVCブランドから「EX-NW1」として12月上旬に発売される。価格はオープンで、店頭予想価格は65,000円前後。なお、マイクロウッドコーンスピーカーはハイレゾ非対応。

JVCブランドの「EX-NW1」

小型コンポ「KA-NA7」とブックシェルフスピーカー「LS-NA7」

 小型コンポ「KA-NA7」の特徴は、超小型である事。外形寸法は110×179×50mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は430g。サイズについて、JVCケンウッド・ホームエレクトロニクスの岩崎初彦社長は「(新世代のオーディオとして)CDの呪縛から解き放たれるために、CDの12cmが入らない11cmの横幅を採用した」と説明する。

超小型オーディオ「KA-NA7」
JVCケンウッド・ホームエレクトロニクスの岩崎初彦社長

 機能としては、USB DAC、USBメモリ再生、Bluetooth受信、光デジタル入力、アナログ音声(RCA)入力、スピーカードライブ用のアンプ、ヘッドフォンアンプを搭載。スピーカーやヘッドフォンを接続する事で、省スペースでPCオーディオやスマートフォンと連携した気軽な再生が楽しめる。

 USB DACとしては、PCMは192kHz/24bitまでの再生に対応、WAV/FLAC/MP3/WMAの再生ができる。DSDには非対応。

 Bluetooth受信は、A2DP/AVRCPのプロファイルをサポート。コーデックはSBCに対応する。NFCに対応するほか、SCMS-T方式もサポートする。

「KA-NA7」の背面
入力段からスピーカー出力まで、フルデジタル処理を採用

 入力段からスピーカー出力まで、フルデジタル処理を採用しており、アンプも独自のデジタルアンプを採用。アナログ変換時の音質へのリスクを最小限に抑えているという。さらに、オーディオ用電解コンデンサも採用し、高周波数帯の自然な伸びを実現したという。スピーカー用アンプの出力は10W×2ch(4Ω)

 ヘッドフォンとスピーカーの各出力は独立して処理しており、ヘッドフォンアンプのクオリティにもこだわっている。電源は付属のACアダプタ。リモコンも同梱する。消費電力は15W。

電源は付属のACアダプタ

 マッチするハイレゾ対応小型スピーカーとして発売される「LS-NA7」は、2ウェイ2スピーカーのブックシェルフ。ウーファは80mm径ユニット、ツイータは19mm径のソフトドーム。

小型スピーカー「LS-NA7」
「KA-NA7」と組み合わせたところ

 ウーファの振動板にパルプ100%のコーティング・ピュアパルプ素材を採用。パルプの叩解度を調整し、繊維の長さを緊密にすることで、メリハリのある音楽再生を実現。

 ツイータは40kHzまでの再生に対応。ツイータ内部に吸音材を配置する事で、耳につく反射音を削減。特定のピークを持たないスムーズな高域特性を実現したという。

LS-NA7
LS-NA7の背面

 ネットワーク回路にもこだわり、スピーカーターミナルは金メッキ仕上げ。内部配線には18番線ワイヤを使っている。エンクロージャはダンプドバスレフ型で、キャビネットには、響きを調整するパーチクルボードを採用。MDF補強材を配置し、高強度と響きのバランス整えている。

 インピーダンスは6Ω。再生周波数帯域は60kHz~40kHz。外形寸法は102×158×181mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は1.7kg。

 「LS-NA7」以外にも、発売中のハイレゾスピーカー「LS-K901」もマッチするスピーカーとして挙げられている。

JVCブランドの「EX-NW1」

 小型コンポ部分は「KA-NA7」をベースとしているが、独自のチューニングが施されており、筐体底部や背面にあるネジを、銅メッキネジに変更。異種金属ワッシャと組み合わせた部分もあり、振動対策を施している。さらに、部品レベルでの振動吸収材も採用している。

JVCブランドの「EX-NW1」
JVC「EX-NW1」のメインユニット(左)と、ケンウッドの「KA-NA7」(右)を並べたところ
左が「EX-NW1」、右が「KA-NA7」。EX-NW1は、ネジが銅メッキネジになっている

 付属のマイクロウッドコーンスピーカーは、正面のサイズが名刺とほぼ同じというコンパクトさが特徴。8.5cmや9cm径のフルレンジユニットを搭載したブックシェルフスピーカーでも、日本の住環境では机の上に置くには大きすぎるという状況に対して考え出されたサイズ。外形寸法は76×110×131mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は1本520g。

付属のマイクロウッドコーンスピーカー

 ユニットは3cm径で、外形寸法、重量、手のひらに乗るサイズ。だが、小さいと音質面では音圧が低く、低音の再生帯域が狭く、音像がスピーカー面より後ろに定位するといったデメリットも一般的には存在する。それを打開するため、4cm径のパッシブラジエータを新規開発し、背面に搭載している。ポートで発生する風切音を考慮し、密閉型エンクロージャを採用している。

背面には4cm径のパッシブラジエータを搭載

 フルレンジドライバも新規開発のもので、磁気回路にはネオジウムマグネットを採用。振動板を支えるダンパー部も新規開発で、一般的に使われるコルゲーションダンパーでは小口径ユニットのため十分な振幅が確保できず、f0が上昇してしまう。そこで、蝶ダンパーを採用。振幅のリニアリティを最大限確保するため、形状決定では試作試験を繰り返し実施したという。

新開発のフルレンジドライバ
ユニットの背後にはウッドブロックを配置

 ユニットは小さいと非力であるため、エンクロージャの響きを活用。中に配置する響き棒のサイズや取り付け位置は1mm刻みで検討、素材もスプルース、チェリー、竹を適材箇所に配置している。

 音像を前に出すために、チェリー素材とスプルース素材のハイブリッド型響棒を新たに採用。人工熟成処理を施しており、響きを深めている。ユニットの背面には、不要振動を低減し、重量を付加する事で解像度向上と低重心化を図るウッドブロックを配置。音場や空間表現をより大きくするため、メイプル材のウッドブロックに人工熟成処理も施している。

内部構造

 内部の吸音材には、解像度を向上させるためにメイプルチップを採用。机からの反射音の影響を低減するために、傾斜をもたせたスタンドを装備。スタンドとエンクロージャを固定する3本のネジの中で1本のみ、ステンレスネジを使っている。

 スタンドの底面には、竹響棒を配置。重心の低い低音再生を追求しており、重心バランスを整えるために真鍮の錘も組み込み、金属特有の共振音を低減するためにポロン材ドーナツリングも装備。真鍮錘の固定部には銅ワッシャとステンレスネジを採用。解像度向上させたという。

スタンドの底面
スタンドは角度がつけられている

 メインユニットの外形寸法は110×182×51mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は425g。消費電力は15W。

付属のリモコン

 なお、マイクロウッドコーンスピーカーはハイレゾ再生には対応していないが、ウッドコーンスピーカーを音楽制作の現場で13年に渡って使っているビクタースタジオ長の秋元秀之氏は、「(マイクロウッドコーンスピーカーは)フルレンジの特性上、超高域は再生できず、限界がある。しかし、ハイレゾを聴いてはいけないか? 楽しめないか? というと、そんな事はない。現に、ハイレゾという言葉ができる前から、ハイレゾである音楽制作の現場で音のチェックに活用している」と語り、ウッドコーンスピーカーの再生能力の高さをアピールした。

ビクタースタジオ長の秋元秀之氏

「デスクトップで邪魔にならない」オーディオ

 JVCケンウッド・ホームエレクトロニクスの岩崎初彦社長は、1993年に誕生し、「いい音を手軽に」をコンセプトに展開してきたKシリーズの歴史を紹介。そのコンセプトを継承しながら、音楽配信サービスの利用が一般に広がり、ハイレゾ音楽を楽しむ現代にマッチする製品として超小型コンポを開発。「“デスクトップで使える”だけでなく、“邪魔にならない”もので、良い音が鳴るものはなかなかない。CDの12cmというサイズの呪縛から解き放たれ、PCやヘッドフォン、ワイヤレス、テレビなどと連携して使いやすい製品を目指した」という。

今村智氏

 ウッドコーンオーディオの開発者である音質マイスターの今村智氏は、EX-NW1のマイクロウッドコーンスピーカーについて、「都会の住環境では、スピーカーのまわりに広めの空間が無い」とし、どこでも設置できるコンパクトさを考え、名刺サイズのスピーカーというアイデアにたどり着いたという。

 しかし、「小さければ小さいほどスピーカーとしてはデメリットが多くなる。点音源としては理想的になるが、音圧が低く、大きな音が出ず、低音も出ず、解像感も低下する。音像もスピーカーのラインより後ろに下がってしまう」と説明、それらの問題を解決するため、ダンパーや響棒、ウッドブロックといったパーツを投入。細かな試聴を繰り返し、サイズを越えた再生能力を実現したという。

音を聴いてみる

 説明会において、短時間ではあるが試聴した。ケンウッドの「KA-NA7」は、実際に手にとると驚くほど小さく、軽い。メーカーの人に、思わず「これはモックアップですか?」と聞いてしまったほどだ。

 小型スピーカーのLS-NA7と組み合わせても、システム全体として“非常に小さい”という印象は変わらない。「ちゃんとした音が出るのかな?」と不安になるが、USBメモリに音源を入れて再生すると、その不安はすぐに消える。

 バスレフの効果も手伝い、8cm径ウーファからは意外なほど音圧豊かで、沈み込みが深い低音が再生される。フルデジタルシステムらしい高解像度で色付けの少ない高域とマッチし、全体のバランスが良い。CDからリッピングした楽曲と、ハイレゾファイルを聴き比べても、ハイレゾの音圧の高さや、高域のしなやかさといった違いが、しっかりと描かれている。

 一般的なブックシェルフスピーカーを試聴するような距離で聴いてもバランスの良さがわかるか、デスクトップで聴くような距離まで近づくと、中低域のパワーがよりダイレクトに聴き取れ、“バランスの良い再生音”という印象がより強くなる。PCと接続してゲームをプレイしたり、テレビと光デジタルで接続して映画をパーソナルに鑑賞するといった用途にも使えそうだ。

KA-NA7+LS-NA7のシステム

 JVCブランドのEX-NW1は、さらにスピーカーが小さい。本体だけでなく、スピーカーも手のひらサイズだ。まるでミニチュアのオモチャを目にしているような気分になる。だが、木材をふんだんに使った筐体の質感は高く、手で触れてみると安っぽい印象は無い。

 このサイズなので「さすがに低音は出ないだろう、高域だけが残ったような軽い音かな?」と覚悟したが、音が出ると良い意味で予想を裏切られる。密閉型だが、パッシブラジエータや響きの豊かさで、しっかりと低域の量感が感じられるのだ。

 それゆえ、高域だけが残った「スカスカ」した音ではなく、ヴォーカル楽曲をゆったりと聴く事ができる。さすがにボリュームを上げても「ズシン」、「ズズン」というような腹に響くような低音はでない。しかし、全体のバランスが良好であるため、「何か物足りない」という印象も受けない。

 デスクトップに配置し、椅子を近づけてニアフィールドリスニングをすると、この印象はより強くなる。また、音源が小さく、点音源であるため、ヴォーカルがコンポの中央上空にビシッとシャープに浮かび、背後も含めて音場が広大に広がる、空間描写の見事さにうっとりする。

 大音量を出す事はできないスピーカーだが、そもそもヴォーカルや楽器の音像が後ろに引っ込まないので、それほど大きな音を出さなくても満足感が高い。これも、音作りの上手さを感じさせる部分だ。

EX-NW1