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iFi、通常のアンプで静電型ヘッドフォンをドライブできるようにする「Pro iESL」

 トップウイングサイバーサウンドグループは、iFi Audioの新製品として、通常のアンプでエレクトロスタティック(静電型)のヘッドフォンをドライブできるようにするトランス結合エネザイジャー「Pro iESL」を6月頃に発売する。価格は未定。4月29日(土)と30日(日)の2日間、東京・中野の中野サンプラザで開催される「春のヘッドフォン祭 2017」で量産型デモ機を展示する。

トランス結合エネザイジャー「Pro iESL」

 静電型のヘッドフォンのドライブには専用のアンプが必要だが、「Pro iESL」は通常のヘッドフォンアンプや、スピーカードライブ用のプリメインアンプで、静電型ヘッドフォンをドライブできるようにする製品。入力端子として、XLRのバランス入力×1、スピーカーケーブル接続用のターミナルも入力と、スルー出力を各1系統搭載。さらに、iFi Audioのヘッドフォンアンプ「Pro iCAN」と接続する場合には、HDMIケーブルを使う独自規格ESL-Link接続が可能。

前面の出力端子部

 プリメインアンプのスピーカー端子と、スピーカーケーブルで接続可能。スルーアウト出力も備えているため、ヘッドフォンとスピーカーを切り替える際に、接続を変える必要はない。「最も好ましい」という接続は、4ピンのXLR接続だという

背面の入力端子部。入出力各1系統のスピーカーターミナルも備えている

 ドライブできるヘッドフォンは、静電型だけでなく、ダイナミック型、プラナー型にも対応。キャパシティブ・バッテリを搭載しており、「あらゆるACノイズやスイッチング・ノイズを除去する」という。

 ヘッドフォン出力としては、Normal、Dynamic、Custom/Proという3系統のXLR出力端子を装備する。

 静電型のヘッドフォンを動作させるには、非常に高い電圧が必要。例えばSTAXの場合、一般的に低能率とされるヘッドフォンが105dB/1Vなのに対して、101dB/100Vが必要。さらにSTAX製品では「バイアス電圧」(現代製品では通常580V)も必要とする。

 6ピンのNormal端子に接続したヘッドフォンには、通常の230Vのバイアス電圧を、5ピンのCustom/Pro端子に接続したヘッドフォンには500V~600V(調整可能)のバイアス電圧を、STAX Proには専用の580Vのバイアス電圧を供給できる。

 他の様々な静電型ヘッドフォンには、STAXの5ピン・プロ端子用のアダプタを使って対応可能。バイアス電圧値は、Normal端子6ピンは230V。Custam/Pro端子5ピンは、ゼンハイザーの「Orpheus HE-90」向けの500V(Custom)、ゼンハイザーの「HE-60」やKingSoundの「KS-H2/3/4」向けの540V(Custom)、STAXのPro Bias向け580V(Pro)、KOSSのESP/950、Jade向け600V(Custom)を選択可能。将来用の予備値として620V(Custom)、640V(Custom)も用意する。負荷インピーダンスも16Ω~96Ωまで調整可能。

 なお、Pro iESLとPro iCANを独自規格で接続した際は、最適化されており、インピーダンス・コントロールの設定によって、320V RMS(910V PP)から640V RMS(1820V PP)までの電圧を引き出すことができる。

 ただし、非常に高い電圧なので、静電型ヘッドフォンの定格電圧の限界を超える可能性があり、「ユーザー自身で静電型ヘッドフォンの許容電圧を確認する必要がある」という。また、「(不安な場合は)インピーダンスを高めに設定して使用すれば安全ではある。Pro iESLのインピーダンスが64Ω~96Ωに設定されていさえすれば、保護回路が働くこともなく、どのような静電型ヘッドフォンも損傷することはないはず」としている。

 内部は、高い信号電圧を生み出す一組のトランスと、バイアス供給装置で構成。シンプルだが、「例えば20Vのオーディオ信号を、歪率の低い、フラットな周波数特性を持った、不快な共鳴のない640Vの信号に変換できるトランスを作るというのは、大変なチャレンジ」だったという。

 また、高電圧を制御できなくなる事態を避けるため、電圧の伝送経路とピンの間に余裕のあるスペースをとっている。カスタムメイドの高品質のトランスも採用。超薄のGOSS(方向性電磁鋼板)とピンストライプ(細かい縦縞)のパーマロイ・ラミネーションを組み合わせたハイブリッド仕様。「過度な共鳴や帯域制限なしに高いステップアップ率と素性の良さを組み合わせるために、垂直及び水平方向に複雑なマルチセクションの巻き方を採用した」という。