「NeoPDP/LCD、ネット/リンク機能で新TVスタイルを」

-パナソニックAVC・今井副社長が語るTV戦略


パナソニック AVCネットワークス社の今井副社長

4月15日開催


 4月15日から、東京・有明の東京ビッグサイトで開催されている第19回ファインテック・ジャパンの基調講演において、パナソニック AVCネットワークス社の今井淨副社長兼CTOが、「デジタル放送を支えるパナソニックのテレビ技術と戦略」と題した講演を行なった。

 「デジタルテレビを支える技術」、「デジタルテレビの進化」、「デジタルテレビがもたらす新たなライフスタイル」の3点から、薄型ディスプレイとデジタル放送の相乗効果で、世界のテレビ市場の変革が加速する一方、モバイル向けのサービスやインターネットTVなど新たな動きも始まるなかで、パナソニックが描く展望と技術の取り組みについて紹介した。


■ デジタルテレビを支える技術

 冒頭、今井副社長はテレビの歴史と進化に触れ、1964年の東京オリンピックにあわせて発売された同社のモノクロテレビ「嵯峨」が、大卒初任給が2万1,200円の時代に、7万3,800円であり、現在の価値に換算すると70万円であることなどを説明。「それでも嵯峨は5年間で130万台を販売したヒット商品となった。パナソニックは、長年に渡りテレビの進化を遂げ、昨年10月には累計3億台の出荷を達成した」などとした。

 また1995年に比べて、現在テレビ市場は2倍規模に成長していることに触れ、「ブラウン管時代は、1億台の規模で推移していたが、それが薄型化とデジタル化によって、テレビ市場が拡大し、年間2億台規模、金額では10兆円の市場規模に達している。2011年にはテレビ全体の70%が薄型テレビになり、さらに薄型テレビの70%にデジタルチューナが内蔵される。これが2015年以降には薄型テレビがほぼ100%ととなり、同じく100%にデジタルチューナが搭載されることになる」とした。

パナソニックのテレビの歴史

拡大するテレビ市場

 「デジタルテレビを支える技術」としては、プラズマテレビのVIERAに搭載しているNeoPDPについて紹介。駆動、パネル、プロセスの改良によって発光効率を2倍に高めることに成功。薄さ1インチ以下の薄型化、2007年のパネルに比べて消費電力を2分の1とした省エネ化、動画解像度で1,080本を実現する高画質の強みを訴えた。

 今井副社長は、NeoPDPはさらに進化を遂げるとし、新材料、新セル構造、新省電力駆動によって、発光効率を2007年度比3倍にまで高め、「新技術により、プラズマの省電力を年々進化させることができる」と胸を張った。

プラズマテレビに採用する「NeoPDP」について説明新技術により、プラズマの省電力を年々進化させていると説明

 一方、液晶テレビのVIERAに搭載しているNeoLCDeco技術についても説明。高透過率IPSαパネルの採用、バックライト局所制御技術、高速駆動技術によって、省エネ化、高画質化を実現していることを示した。

 高画質技術の観点では、パナソニックのハリウッド研究所における高画質技術に向けた研究成果を、統合プラットフォームであるUniPhier(ユニフィエ)を活用したシステムLSIに搭載。これをVIERAやDIGAといった同社のAV製品に採用することで、他社との差異化を図っているという。

 「VIERAやDIGAに搭載したMPEG-4 AVC技術は、ハイビジョンコンテンツを劣化させることなく再現できる。ハリウッドのカラリストが満足する高画質を実現している」とした。

液晶技術「NeoLCDeco」についても説明高画質技術を採用し、他社との差異化を図っているという統合プラットフォームであるUniPhier(ユニフィエ)

■ デジタルテレビの進化について

パナソニックのテレビづくりの基本姿勢

 パナソニックは、テレビづくりの基本的姿勢として、省エネと環境負荷物質ゼロ化による「環境にやさしい」、高画質で動画に強い「人にやさしい」、簡単・つながるによる「人に使いやすい」の3点をあげている。今井氏は「デジタル化や薄型化の進展が、まだこれからという地域は世界には多い。そうした市場に向けても、同様の観点から商品を提供していく」などと語った。

 「デジタルテレビの進化」としては、ブロードバンドにより、HDビデオのIP伝送が可能になったことを示しながら、「それぞれの国ごとに、ブロードバンドの普及状況には差がある。各国のインフラの状況にあわせた機能を提供することが大切だ」と語り、ブロードバンド環境の普及が世界的にも先行している日本市場においては、アクトビラによって、いつでも見たいときにビデオをレンタルできること、見逃した番組もあとで見られるといったサービスを日本で実現していることを示した。また、米国でも、VIERA CASTによって、インターネット動画や、いつでも見たいときに映画が楽しめるといった利用提案を開始していることを示した。

 さらに、モバイル環境でのテレビ視聴にも言及。日本におけるワンセグ端末による広がりに加えて、世界各地でモバイル放送の流れがあることを示し、「デジタルテレビでIPTVへ対応するといった動きだけでなく、モバイルにおいてもIPTVへの対応を図っていく必要がある」とした。

各国のブロードバンド環境

モバイル端末向けのサービスの拡大


CES2009の3Dシアター展示について

 一方、米国における3Dへの関心が高まっていることを紹介。「米国では3D上映が可能なスクリーンが2,000以上に達し、集客で2倍、料金で1.5倍、劇場収入が3倍になっている。今年1月にラスベガスで開催されたCES2009のパナソニックブースでは、3Dシアターを展示したところ、約8,000人の来場者があり、常に列が途切れないという状態だった。

 日本にいるとあまりその潮流を感じることはないが、北米では3Dに対する関心が急速に高まっている。今後、デジタル技術の進化によって、コンシューマ分野にももっと広がっていくことになるだろう」と予測した。



■ 新たなリンク提案

 「デジタルテレビがもたらす新たなライフスタイル」としては、2009年の商品に搭載した新たなリンク提案として、ミリ波による伝送で、モニターへのケーブル配線を不要にする「ワイヤレスビエラリンク」、リビングにあるDIGAに蓄積されたコンテンツを、DLNAで結んで寝室や書斎のパーソナルテレビで楽しむ「マルチルーム視聴」、見たいコンテンツをSDカードを使ってお風呂のビエラ・ワンセグなどで視聴する「ワンセグ持ち出し」、デジカメやハイビジョンムービーで撮影した映像をSDカードでVIERAに移動させて楽しむ「デジカメ&ムービー動画再生」の4点をあげた。

 さらに、未来に向けた構想として、白物家電を含めた「くらしまるごと 拡がるリンク」と、モバイル端末やカーナビとの連動を行なう「家から外まで どこでもビエラ」の実現を紹介。安心・安全の観点にもリンクが広がっていくことを示した。

2009年の新たなリンク提案

未来に拡がる“ビエラにリンク”

 最後に今井副社長は、「デジタル化と、テレビの大画面・薄型化という2つの革新が同時に訪れたことは大変なエポックメイキングである。また、デジタルテレビの生み出す価値として、家族がコミュニケーションを図れるきっかけづくりができるようになる。そして、多種多様な新たな機器同士とつながり、新たな利用環境を提案していくことができる。これらの観点から、いまの不況を打開していけたらと考えている」と締めくくった。


(2009年 4月 15日)

[Reported by 大河原克行 ]