“便利”を追求し、生まれ変わったAQUOSブルーレイ
-シャープに聞く“7倍録画”だけじゃない機能強化
シャープは、27日からBlu-ray Discレコーダ「AQUOSブルーレイ」の新モデルを販売開始した。地上/BS/110度CSデジタルチューナを2基搭載した3機種は、HDD容量の違いで「BD-HDW40」(1TB)、「BD-HDW35」(500GB)、「BD-HDW32」(320GB)を用意。シングルチューナの「BD-HDS32」(320GB)も4月に発売する。
モデル名 | HDD容量 | 特徴 | 発売日 | 店頭予想価格 |
BD-HDW40 | 1TB | デジタル3波チューナ×2 地上アナログチューナ×1 7倍AVC録画 ビデオカメラ取り込み 1080/60p対応 BD-Live対応 IP変換回路 高音質用回路 防振処理 無酸素銅電源コード 金メッキ端子 フォトシステム | 3月27日 | 21万円前後 |
BD-HDW35 | 500GB | デジタル3波チューナ×2 地上アナログチューナ×1 7倍AVC録画 ビデオカメラ取り込み 1080/60p対応 BD-Live対応 IP変換回路 フォトシステム | 16万円前後 | |
BD-HDW32 | 320GB | 13万円前後 | ||
BD-HDS32 | 320GB | デジタル3波チューナ×1 地上アナログチューナ×1 7倍AVC録画 | 4月27日 | 10万円前後 |
AVシステム事業本部 デジタルメディア事業部 第1商品企画部 伊藤主事 |
製品発表時の資料からは、従来シリーズ(BD-HDW30/25/22)と比較し、「AVC形式の7倍録画モードの追加」、「BD-R 6倍速記録」、「AVCHDビデオカメラからの映像取り込み機能(Wチューナモデルのみ)」などの機能強化が行なわれているのもの、それほど目新しさを読み取れない。
しかし、実際に新「AQUOSブルーレイ」を見てみると、デザインが大幅に変更されていることに気付く。フロントベゼル下に金属のアクセントが入ったほか、奥行きも299mmと従来モデルの343mmよりかなり短くなった。
実は内部のプラットフォーム自体も「思いっきり変わっています(第1商品企画部伊藤主事)」とのことで、ユーザーの利便性向上のために様々な仕組みが盛り込まれているのだという。同社AVシステム事業本部 デジタルメディア事業部 第1商品企画部の伊藤公宜主事に、新AQUOSブルーレイの特徴を聞いた。
BD-HDW40 | BD-HDW35 | BD-HDW32 |
BD-HDS32 | BD-Rの6倍速記録に対応 | HDW40のみ専用のインシュレータを装備している |
■ 7倍モードなどの新モデルの特徴
BD-HDW40。前面にUSB端子を装備する |
いずれのモデルも地上/BS/110度CSデジタルチューナと、地上アナログチューナを搭載している。従来モデルと同様に、MPEG-4 AVC/H.264トランスコーダーを内蔵し、デジタル放送をハイビジョン解像度のままAVC録画が可能となっている。
新モデルでは長時間録画モードが強化され、従来は約4.8Mbpsの「5倍モード」が最長だったが、新たに約3.4Mbpsで録画する「7倍モード」を追加。2層のBDメディアに30時間以上の録画ができるようになった。
シャープBDレコーダの特徴ともいえるのが、「エンコーダ」ではなく「トランスコーダ」の採用。エンコーダでは、放送波を完全にデコードした後にエンコードをかけるが、トランスコーダでは、放送データに含まれるMPEG-2の動きベクトルなどの情報を反映しながらAVCへの変換が行なえる。ここにチューニングを加えることで、7倍モードでは、よりビットレートを抑えながらも「従来の5倍モード相当の画質を実現できた」という。
とはいえ、競合メーカーからは、「MPEG-4 AVCでは(放送波の)MPEG-2より様々なパラメータが用意されているので、エンコード方式のほうが画質を追求できる」という意見もある。しかし、伊東氏は、「使われるシーンによって、それぞれに得手不得手があります。トランスコードでは元圧縮時のパラメータを継承することで、“動き”の破綻がより少ないなどの利点があります」とする。
シャープならではの“こだわり”という点では、データ放送も含めて録画するという点も挙げられる。
同社のレコーダのコンセプトは、「デジタル放送のありのままの高画質を、そのまま記録、ありのままの高画質を出力」というもの。「ありのまま」とは、「ハイビジョン映像」、「5.1chサラウンド音声」、「番組連動データ」の3要素だ。
放送のMPEG-2 TS信号をそのまま記録するDRモードだけでなく、AVC録画についても2/3倍モードでは、データ放送もそのまま記録する。ただし、新モデルでは新たにBDへのダビング時にデータ放送部をカットし、画質を保ちながら、より長時間の記録を可能にする機能も搭載した。「詳しいユーザー向け」とのだが、ニーズにあわせて、柔軟に対応できる。
録画リスト | 画質変換ダビングを選択。データ放送の削除が可能となった | ダビング画質選択画面 |
AQUOSブルーレイでBD-REに録画予約 | ディスクをAQUOS DX1に挿入すると、DX1で録画予約を実行できる |
なお、BDレコーダを内蔵した液晶テレビAQUOS DX1シリーズとの連携機能も搭載。AQUOSブルーレイでBD-REディスクに番組の録画予約情報のみを記録させ、そのディスクをDX1シリーズに挿入すると、DX1シリーズで操作しなくても、予約した番組をBD-REに録画できる。
また、新たにハイビジョンビデオカメラからの映像取り込みにも対応。前面のUSB端子に接続したAVCHDビデオカメラから映像を取り込み可能となった。カメラからの映像をサムネイル付きで取り込みできる。
AVCHDカメラを前面のUSB端子に接続 | ビデオカメラからAVCHD動画やJPEG画像の取り込みが行なえる | AVCHDを取り込むと、指定した複数のファイルを1つの番組に統合し、各ファイル間にチャプタが付与される |
また、液晶テレビ「AQUOS」とHDMI接続した際に最適な画質で表示するという「AQUOS純モード」も強化し、画角や再生コンテンツの情報をAQUOSに伝達可能になったという。現在は対応製品が無いが、今後発売されるAQUOSと接続し、BD-ROMをAQUOSブルーレイで再生すると、AQUOS側で最適なアスペクトモードを自動設定する。加えて、オーバースキャン設定を自動でOFFにし、Dot by Dotで表示するという。
BD-HDW40の背面 | BD-HDS32の背面 |
■ 実はマニアックかつ便利に進化。ポータブル機への出力対応も
上記が新AQUOSブルーレイの“売り”と言える機能だ。しかし、プラットフォームを一新したのはこれだけのためではない。以下が新モデルで追加されたその他の機能だ。マニアックと感じる点もあるが、ユーザーの意見や使い勝手を考慮したアップデートという。
- 【録画】
- ダイレクト録画での録画画質HD10~HD01の設定
- 毎週/毎日予約録画での番組開始時刻変更追従
- 番組表での前/次ボタンページ送り/戻し
- 【再生】
- BD-Live対応(HDWシリーズのみ)
- AVCHD記録DVD、JPEG記録DVD-RW/CD-RW/R再生
- ビデオカメラからの取り込み映像の録画リストでの別管理(動画アルバム、グループ設定)10倍速サーチ(従来は30倍が最高)
- 30秒送り/10秒戻しボタンの連続ボタン受付(最大6回の受付可能)
- 音楽CD再生専用画面表示
- 【ダビング】
- BD-R 6倍速対応
- AVCHD記録DVDからHDDへのダビング
- グループ一括選択ダビング
- 【マルチタスク】
- MPEG-4 AVC録画時のHDD同時再生
- 高速ダビング中の2番組録画、再生
- 【その他】
- リモコンボタンの蓄光対応
- HDMI、D映像同時出力
- 本体奥行き299nm
リモコンは再生系ボタンが暗闇でも光る蓄光式となった。また、BD-Live対応など、BDプレーヤー「BD-HP21」開発時のノウハウを盛り込むなど、機能強化を図っている。面白いのは、30秒送り/10秒戻しボタンの連続入力受付。6回までのボタン操作をバッファリングする。たとえば2分スキップしたい場合、従来は30秒スキップが実行されたのを確認しながらボタンを押す必要があった。新モデルでは4回まとめて押せば、2分スキップできる。
リモコン | 再生系機能のボタンが蓄光式となった |
録画機能においても、番組表における前/次ボタンでのページ送り/戻しや、毎週/毎日予約録画での開始時刻変更追従など、ユーザーにとっては痒い所に手が届くアップデートになっている。AVC録画時のHDD同時再生などマルチタスク動作が強化されている点も、ユーザーの使い勝手向上という意味では大きな機能向上といえる。
また、後日のアップデートでポータブル機器への書き出しへの対応も計画している。対応時期は未定だが、USBで接続した携帯電話などのポータブル機器に、AVC録画したデジタル放送番組を書き出し可能とする予定。
今回のAQUOSブルーレイのコンセプトとは、「BD予約によるAQUOS DX1との連携など、“テープの貸し借り”的なことをディスクでやるなど、目に見えるメディアで、誰でも使えるというところをきちんとやろうというのがスタート(伊藤主事)」とのことだが、今後は、アクトビラやDLNAといったホームネットワーク機能の対応も検討していくという。
(2009年 3月 27日)
[AV Watch編集部 臼田勤哉]