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'25年夏、Jホラーが謎に激アツ……!「事故物件ゾク」も「呪怨4K Vシネ版」も注目作を見逃すな

「事故物件ゾク 恐い間取り」2025年7月25日(金)全国公開
配給:松竹
(C)2025「事故物件ゾク 恐い間取り」製作委員会

今夏の邦画界は、“恐怖映画の当たり年”と言える盛り上がりをみせている。まず6月中に「見える子ちゃん」「きさらぎ駅 Re:」「ドールハウス」と注目作の公開が相次ぎ、「まさかの3作品とも面白い!」とネットを中心に大評判だ。

そして7月以降〜お盆までの期間も、「事故物件ゾク 怖い間取り」「近畿地方のある場所について」「呪怨〈4K:Vシネマ版〉」といった話題作の公開が控えていて、ホラーファンはにわかに忙しい。せっかくなのでこの熱をお裾分けすべく、各作品を紹介しよう。もちろんネタバレは無いのでご安心を。

お互いを引き立て合うJホラーたち

Jホラーといえば、1990年代後半〜2000年代初頭に「リング」「呪怨」が牽引した邦画の一大カテゴリー。往年の「日本の怪談」とは一線を画す恐怖表現は、数多のフォロワーを生んで成長した。

特に近年は単に恐怖心を煽るだけでなく、ホラー的切り口の多様性も広がっていて、視聴後にストーリーを考察する“余白”を残す作品も多い。

この余白のおかげで、怖いのが苦手な人でも取っかかりやすくなるのは、ヒットのひとつの要因だろう。その余白や考察ポイントをどこに持ってくるかが、作品ごとの個性にもなっている。

6月の「見える子ちゃん」「きさらぎ駅 Re:」「ドールハウス」も同時期に公開されたことで、3作それぞれの個性がお互いを引き立てあい、視聴者に「全部面白い」と思わせる相乗効果を生んでいた。

「見える子ちゃん」
(C)2025『見える子ちゃん』製作委員会

「見える子ちゃん」(監督:中村義洋)は、もともとWeb発の同名人気コミックが原作。主人公の女子高生が、ある日突然、霊の見える体質になってしまう話なのだが、そこで“見えてしまうつらさ”や“知らないふりをするしんどさ”をリアルに描くのが面白い。

「まあ、霊が見えたら普通そうなるよな」と、ホラーが苦手な人でも感情移入しやすい土台があり、原作のコメディ要素を継承したカジュアル感も見やすさに繋がっている。そして実写ならではの恐怖表現と学園モノの爽やかさを両立し、ラストにはミステリー映画としてのどんでん返しも用意されている……とエンタメ性抜群だ。

「きさらぎ駅 Re:」
(C)2025「きさらぎ駅 Re:」製作委員会

「きさらぎ駅 Re:」(監督:永江二朗)は、現実には存在しない「きさらぎ駅」という異界の駅に迷い込んだ人々を描く映画。2000年代序盤にネット匿名掲示板で話題になった未解決の都市伝説を題材にしており、2022年公開でヒットした一作目「きさらぎ駅」の続きを映す正当な続編だ。

特に今回は、YouTubeやSNS全盛の令和の感覚で、2000年代前半の都市伝説の残り香が描かれるのが面白い。また、筆者のような2ちゃん全盛世代は、「もしやこの映画の内容は、20年越しにオカルト板に付いた誰かからの書き込みなのでは……?」と思って観ると、より深みが増す。

未解決だった都市伝説の“続き”が投稿されたような感覚が体験できる一作だ。なお、本シリーズの内容は以下記事で詳しく語られているので、ぜひ参照されたい。

「ドールハウス」全国公開中
配給:東宝
(C)2025 TOHO CO.,LTD.

「ドールハウス」(監督:矢口史靖)は、亡き娘にそっくりな日本人形に翻弄される家族の、恐怖の日々を描く映画。パッと見は「リング×チャイルド・プレイ」って感じだが、正確に言うと本作はホラーではなく、“ドールミステリー”という新ジャンルを銘打った作品。中核には、人形が背負わされた運命の物語がある。

……と言いつつ、怖いのが苦手な人は注意した方が良いかもしれない。というのも、作中のいわゆる“ホラー的表現”は、あくまでも“ドールミステリー”を構成する手法として使われている感じだが、その絶妙な立ち位置ゆえ、3作品の中で最もストレートな恐怖表現が多いという逆転現象が起きている。結果、逆説的に今どきのJホラーの現在地がわかるのも面白い。

お盆まで注目作の公開が続く

そして今後も、お盆に向けて見逃せないタイトルの公開が続く。直近では、7月25日(金)公開の「事故物件ゾク 怖い間取り」(監督:中田秀夫)。

「事故物件ゾク 恐い間取り」2025年7月25日(金)全国公開
配給:松竹/
(C)2025「事故物件ゾク 恐い間取り」製作委員会

日本全国の事故物件に住み続ける芸人・松原タニシの実体験を綴った原作エッセイを、あの「リング」の巨匠・中田秀夫が実写化した新作だ。2020年公開の第一作「事故物件 恐い間取り」に続く、新たな恐怖が描かれる。

主人公がさまざまな事故物件を渡り歩き、コミカルさもありつつ怪異に迫っていくフォーマットは前作を継承。今作もそこにちょっとした現実感が混じるから、単なる恐怖で終わらない。実話がベースなのはもちろん、事故物件にまつわる“いわく”が完全には解決しきらず話が進んでいくのが、絶妙にリアルで良い。

「近畿地方のある場所について」2025年8月8日(金)公開
配給:ワーナー・ブラザース映画
(C)2025「近畿地方のある場所について」製作委員会

また、8月8日(金)公開の「近畿地方のある場所について」(監督:白石晃士)も話題作のひとつ。原作は、インターネット小説投稿サイト「カクヨム」で公開されていたモキュメンタリー(=フェイクドキュメンタリー)小説だ。

読んだら最後、未知の土地にまつわる抗えない“ナニカ”に読者も巻き込まれてしまう構成が、SNSで話題を読んで累計2,200万PVを超える大ヒット。単行本の発行部数は70万部を突破している。

映画では、そんな原作の持ち味だった匿名性や文章の記録性をどう映像化するかが注目点だったが、まさに実写ならではの演出に再構成されていて見応え抜群。ネット小説〜書籍〜映画とメディアを変えて、近畿地方のある場所にまつわる“ナニカ”が拡散されていく様を目撃してほしい。何はともあれ、映画化してくれて、ありがとうございます。

まあそんなわけで、近年はホラー映画を見終わった後に“怖かったシーン”を振り返るだけでなく、ストーリー全体や各シーンの考察がSNSで拡散される時代。“語りがい”のある作品がどんどん増えているわけだが、そんな令和の考察ブームの今、まさかの復活を遂げるのが平成の大作「呪怨」(監督:清水崇)である。

「呪怨〈4K:Vシネマ版〉」
(C)東映ビデオ

実は「呪怨」というホラーは、Vシネマからスタートしている。元祖となるVHS版の「呪怨」「呪怨2」が制作されたのは、2000年のこと。当時、レンタルビデオ店の棚にひっそりと置かれたそれの評判が口コミで広がり、2003年に劇場映画化されることになるのだ。

「呪怨」VHS版 ※販売はすでに終了
「呪怨2」VHS版 ※販売はすでに終了

このVシネマ版、ファンの間では“シリーズ中、最も怖い呪怨”として語り継がれてきたもの。そんな、いわば「呪怨」の原点にあたるVシネマ版2作が、なんと4K化&5.1chサラウンド化されて、今夏のJホラーブームを締めくくるように8月8日(金)から劇場上映される。題して、「呪怨〈4K:Vシネマ版〉」「呪怨2〈4K:Vシネマ版〉」。

「呪怨2〈4K:Vシネマ版〉」
(C)東映ビデオ

Jホラーの始祖的作品を、現代の高画質&高音質技術で再体験できる贅沢な企画であるが、同時に、平成の恐怖の形が令和の世にどんなハレーションを起こすのか興味深い。

奇しくも、「近畿地方のある場所について」「呪怨〈4K:Vシネマ版〉」「呪怨2〈4K:Vシネマ版〉」は同日公開。8月8日と末広がりで縁起の良い数字の日が、良い具合に禍々しくなる。お盆にご先祖さまを迎える前段として、ちょっとしたゾクゾク体験をぜひ映画館で。

杉浦みな子

オーディオビジュアルや家電にまつわる情報サイトの編集・記者・ライター職を経て、現在はフリーランスで活動中。音楽&映画鑑賞と読書が好きで、自称:事件ルポ評論家、日課は麻雀……と、なかなか趣味が定まらないオタク系ミーハーです。