DLNA対応STBなどが「ケーブルテレビショー」に出展

-Wikipediaのデータ活用案も。「地デジ大使」来場


会期:6月18日~19日

会場:東京ビッグサイト


 国内ケーブルテレビ業界で最大規模の展示会「ケーブルテレビショー 2009」が、東京ビッグサイトで開幕した。期間は6月18日から19日まで。主催は日本CATV技術協会と日本ケーブルテレビ連盟。

 今年のテーマは「ケーブルデジタル 夢・見・来(ゆめ・み・らい)」。出展者は、ハードウエアゾーンが93グループ/102社、サプライヤーゾーンが41グループ/66社。ハードウェア展示の中心となるSTBでは、パナソニックなどがDLNA対応モデルをデモ。また、ケーブルテレビ局向けのサービスとして、IP経由のVODや、データ放送に関する新たな取り組みと提案も行なわれていた。

 そのほか、地上デジタル放送とケーブルテレビ業界の団結を宣言するというステージイベントを19日に開催。「地デジ大使」を務める女子アナウンサーも来場し、トークショーなどを行なった。



■ パイオニア、パナソニックがDLNA対応STB

家庭内ネットワークでの録画番組の共有などを提案

 パイオニアは、開発中のSTBを使ってホームネットワークを構築するというデモを中心に展示。「NEW300シリーズ」と名づけられていた展示製品は、提供中の「BD-V371L」をベースとし、ファームアップデートでDLNAに対応できるというモデル。LAN接続した外付けHDDやレコーダに録画が可能で、録画した番組を他の部屋の同STBや、DLNA対応プレーヤーで再生できる。

 また、パソコンや外付けHDDに保存した音楽ファイルを、同社のDLNA対応メディアプレーヤー「PDX-Z10」で高音質再生するという提案も行なわれていた。ソフトは年内の開発を目指し、運用開始についてはケーブルテレビ局と検討する。


ハードは「BD-V371L」ネットワーク再生時のメニューPDX-Z10と、ピュアモルトスピーカーで再生

 さらに、新たな取り組みとして、家庭内に録り貯めた番組を車でストリーミング視聴するデモも用意。家庭内のコンテンツを、STBからストリーミング配信し、高速無線通信のWiMAXを経由してカーナビのディスプレイで再生。STB側で映像を変換し、高速移動中で帯域が変動しても画質を落とすことで途切れずに再生できることを特徴としている。デモではQVGAのMPEG-4 AVC/H.264で、通信速度が500kbps~1.5Mbpsで変化する中でも映像が途切れないことをアピールしていた。

車での視聴デモタッチパネルディスプレイで、家庭内のコンテンツを選んで再生そのほか、STBの簡単モデル「BD-V171」は、アップデートでEPGに対応。また、参考出展として、トランスモジュレーション専用モデルも展示していた

 

パナソニックのSTBを使ったネットワーク再生デモ

 パナソニックのブースでは、既に提供を開始している製品として、500GB HDD/DVDドライブ内蔵で、AVCRECやアクトビラ ビデオ・フルに対応する高機能STB「TZ-DCH9810」を中心に展示。DLNAに対応し、内蔵HDDに録画した番組を他の部屋のDLNA対応テレビなどで視聴するというデモを行なっていた。

 なお、録画機能などは同等で、DLNA非対応(Ethernet非搭載)の製品として「TZ-DCH9800」や、「TZ-DCH9000」(トランスモジュレーション専用)も用意している。

 そのほか、ケーブルテレビ局独自のGUIメニューに対する提案として、IPの双方向通信を活用した「CATVユニバーサルポータル」も紹介。STBのトップ画面をカスタマイズでき、家族内でも各個人で異なるメニューが表示できるようになるという。

寝室のテレビで、居間のSTBにあるコンテンツを再生CATVユニバーサルポータルのGUI例。左下にある人のアイコンを選ぶと、その人に合ったメニューが表示される
伊藤忠ケーブルシステムのブースでは、韓国HUMAX製のSTB「JC-3100」(8月提供開始)などを展示同ブースではパススルー対応の「JC-3100」(写真左/年末提供予定)も参考展示。また、国内での提供は未定だが、IP経由のVODに対応し、YouTubeブラウザなども搭載したモデル(右)もブロードネットマックスのブースでは、小型ながらHDMIも備え、パススルー/トラモジ両対応のSTB「BSX101」(10月提供開始)
マスプロは、縦/横置き両対応で、HDMIやD4端子を備えた高機能モデル「DST62H」シリーズ(左)や、小型の簡易モデル「DST200」(右)を展示同じくマスプロブースに展示されていた、CATVパススルー対応の外付け小型地デジチューナ「DT620」。SD表示のみの簡易モデル
ソニーブースには、山梨県の「笛吹きらめきテレビ」の協力のもと、「川中島の戦い」をイメージしたステージを用意。XDCAM HDカムコーダや液晶モニターなどが展示されていた日本アンテナには、6月に発売された小型の簡易地デジチューナ「GDT30」や、室内アンテナなどが展示されていた


■ Yahoo!やWikipediaを活用したデータ放送の提案も

 KDDIのブースでは、ケーブルテレビ向けのVODサービスとして、8月より新たにNHKオンデマンドのコンテンツを取扱開始することを紹介。

 KDDIの配信設備を活用してケーブルテレビ局が既存のSTB向けにVODを行なえるというもので、サービス内でNHKオンデマンドのコンテンツを配信可能。コンテンツの数や料金などは現行サービスに準じており、決済はケーブルテレビのサービスでまとめて行なえるという。NHKオンデマンド以外に、局ごとの自主制作コンテンツや、KDDIの「MOVIE SPLASH VOD」コンテンツも配信できる。

KDDIが提案するケーブルテレビ向けVODサービス。NHKオンデマンドもメニュー内にNHKのブースでも、NHKオンデマンドの豊富なコンテンツが紹介されていた
データ放送内でWikipediaのデータを表示するデモ。データ放送では1画面に表示する量に制限があるが、例えば「東京国際展示場」の説明は9ページにも渡る

 データ放送コンテンツの制作などを手掛けるメディアキャストは、新たな試みとして、データ放送の画面内で、インターネットのフリー百科事典であるWikipediaで気になる単語を調べられるという連動サービスを提案。

 最近話題のキーワードや、EPGなど番組情報に含まれる言葉をデータ放送画面で調べられるというもので、キーワードの手動入力や一覧表示などで、Wikipediaの説明をテレビに表示できる。実際に運用する場合は所定の手続きが必要で、今回はヒアリングを含めた提案のみとなっている。

 同様にYahoo! JAPANのニュースや「知恵袋」などのコンテンツをデータ放送で表示するといったこともデモされており、PC以外でもインターネットコンテンツを簡単に利用でき、放送サービスの可能性を広げるものとしてアピールしていた。

デモ用メニュー中央にある「お楽しみコーナー 通信連携コンテンツ」でWikipediaの情報へキーワードの一覧EPGとの連動など、様々な活用が考えられるという。実現には課題も多いと思われるが、データ放送の活用としては興味深いサービスだと感じた
日本ケーブルテレビジョンのブースでは、米Mogmoの映像配信/放送向け技術を紹介。携帯電話などで撮影した低解像度の映像をソフトウェアでアップコンバートし、ノイズ除去も行なう高画質化技術(写真左/中央)や、視聴者の好みに合わせてマルチ画面表示するレコメンデーションシステム(右)などのデモを行なっていた


■ 地デジ大使もケーブルテレビに期待

地デジ大使としても活動している、NHKの島津有理子アナウンサー(左)と、テレビ朝日の上宮菜々子アナウンサー(右)

 19日に行なわれたステージイベント「ケーブルと地デジ 共に歩む」は、地デジ完全移行を約2年後に控え、地上波放送/家電業界とケーブルテレビ業界の団結を宣言するというもの。日本ケーブルテレビ連盟の唐津俊二郎理事長と、日本CATV技術協会の安藤彰理事長、デジタル放送推進協会(Dpa)の高嶋光雪専務理事が来場。それぞれ、地デジ普及に向けて協力することをアピールした。

 また、「地デジ大使」のNHKの島津有理子アナウンサーと、テレビ朝日の上宮菜々子アナウンサーも交えたトークショーも行なった。唐津氏は、地デジを視聴している約3,000万世帯のうち、約55%がケーブルテレビで視聴しているということを地デジ大使の2人に説明。また、安藤氏は、山間部や、都市部の電波障害などで約7万の(アナログ放送)共同受信施設に何らかの改修が必要という現状に対し、ケーブルテレビに加入することも解決策の1つとして紹介した。

 Dpaの高嶋氏は、アナログ放送が終了するちょうど2年前となる今年の7月24日には、例年通りイベントを開催することを予告。また、「政府の補正予算で集合住宅向けの改修で重い負担が必要な場合、助成金が出るということなどもPRし、対応が進むようにがんばっていきたい」と話した。

左から、日本CATV技術協会の安藤彰理事長、日本ケーブルテレビ連盟の唐津俊二郎理事長、デジタル放送推進協会の高嶋光雪専務理事、島津アナウンサー、上宮アナウンサー視聴者から受ける地デジへの質問で多いのは、島津アナウンサーは「どうやって見るの? 」、上宮アナウンサーは「何が良くなるの? 」だというDpaの高嶋氏がケーブルテレビ業界の2人と固い握手

(2009年 6月 19日)

[AV Watch編集部 中林暁]