東芝、アップルから前金でキャッシュフローが大幅改善
- '09年度第1四半期決算発表。テレビ事業の黒字を維持
株式会社東芝は、2009年度第1四半期連結決算を発表した。
売上高は前年比17.2%減の1兆3,397億円、営業損益は前年に比べて147億円悪化し、376億円の赤字。税引前損益は468億円悪化の621億円の赤字、当期純損益は462億円悪化の578億円の赤字となった。
「リーマンショックによる世界同時不況が起こる前の前年同期と比較すると、売上高、営業損益は前年同期比では悪化しているが、営業利益では2008年度第4四半期に比べると、固定費の削減効果などにより、364億円改善している。フリーキャッシュフローでは588億円と黒字を確保。前年同期と比較しても2,657億円増加と、大幅な改善になっている」(東芝・村岡富美雄代表執行役副社長)とした。
第1四半期のキュッシュフローの増加には、米アップルがフラッシュメモリの調達に関して、数年間に渡る長期契約のための前金として支払った5億ドル(日本円では488億円)が含まれている。
営業損益への影響は、テレビやパソコンなどの売価ダウンで2,750億円、為替の影響で220億円、減収などで217億円としたほか、調達CDで1,800億円、固定費削減で870億円、微細化などで370億円の改善を図っているという。
セグメント別では、デジタルプロダクツの売上高は前年比24.5%減の4,926億円、営業利益は68.2%減の46億円。
「デジタルプロダクツは黒字となっているが、パソコン、テレビ、携帯電話などが景気後退の影響で減収。とくに、パソコンは売価ダウン、低価格化、ユーロ安の影響を受けて、前年同期比20%減の1,906億円となった。台数は前年同期よりも伸びているが、欧州での売り上げ減少が響いた。パソコンの営業利益は43億円減の47億円と、減益だが黒字を確保している。携帯電話は赤字だが、計画は上回っている」とした。
テレビ事業に関しては、第1四半期は国内におけるエコポイント制度実施の影響があり、販売台数が増加。黒字を維持しているという。
「薄型テレビは、国内市場全体で販売台数で50%増となっているが、当社は前年同期比2倍の増加となっている。REGZAブランドが浸透し、シェアがあがっている。だが、米国、欧州、中国ではリーマンショック以降の需要低迷により、減収になっている」とした。
電子デバイスは売上高が23.7%減の2,789億円、営業損益は100億円悪化し、442億円の赤字。社会インフラは、売上高が5.0%減の4,644億円、営業利益は52%増の66億円。家庭電器は売上高が20.9%減の1,361億円、営業損益は23億円改善したものの46億円の赤字。その他セグメントでは、売上高が18.1%減の683億円、営業損益は7億円悪化の5億円の赤字となった。
「電子デバイスでは、ディスクリート、システムLSI、メモリのすべてにおいて赤字。また、白物家電は依然として赤字が続いている。とくに、エアコンは、エコポイント制度の効果を帳消しにするような天候不順の影響があり、減収となっている。社会インフラは比較的景気の影響は受けないとはいうものの、火力・水力、産業システム、社会システムが低調で減収となった」とした。
デジタルプロダクツ、電子デバイス、家庭電器は前期比で改善。社会インフラは前年同期比で増益となったが、季節性から前期比では減益になったという。
また、「収益改善に向けた体質改革プログラム」の実施により、固定費削減は、計画以上の達成。対前年同期比で870億円の削減、計画比でも310億円の削減、年間進捗率は29%になっているという。デジタルプロダクツでは、第1四半期だけで210億円の削減効果があったという。年間では、全社規模で対前年比で3,000億円の削減を目指している。
「現時点では、すべてのカンパニーが固定比削減計画を達成している。内部的には、年間で3,300億円の固定費削減を目指している。第2四半期も第1四半期と同額の削減を見込んでおり、年間では最終的に3,300億円を超えることになるだろう」とした。
なお、村岡副社長は、「第1四半期は売上高で1兆4,000億円、営業損失で600億円の赤字を見込んでいた。売り上げは計画に未達とはいえ、営業損失は計画に対しても結果が良く、改善している。だが、今年10月以降の下期の状況が従来以上に読めない。2番底、3番底があるかもしれない」として、2009年度の業績見通しは、5月8日に公表した、売上高で6兆8,000億円、営業利益が1,000億円、税引前利益は0、当期純損失はマイナス100億円の計画は変えない。事業セグメント別の計画にも変更がないという。
(2009年 7月 29日)
[ Reported by 大河原克行 ]