マランツ、B&Wのヘッドフォン参入第1弾「P5」発表
-45,000円のモバイル用Hi-Fi。ケーブル交換可能
マランツ コンシューマー マーケティングは17日、Bowers & Wilkins(B&W)のヘッドフォン参入第1弾モデル「P5」を発表した。製品自体は既に量産されているが、パッケージデザインを決めている段階とのことで、発売時期は未定だが、「春以降に発売できる見込み」(マランツ)だという。価格は45,000円。
iPodやiPhone 3GSの操作や通話が可能なケーブルも同梱しており、対応するiPodは第3世代のiPod shuffle、第4、5世代のiPod nano、iPod classic、第2世代のiPod touch、iPhone 3GS。
195gで軽い |
形式としては“耳のせ型”で、耳をハウジングが覆う密閉型とは異なる。しかし、分厚いクッションタイプの形状記憶イヤーパッドが耳の形に合わせて柔軟に形を変え、包み込むため、外部からの音の侵入や、音漏れは密閉型レベルに抑えられている。表面にはニュージーランド産のシープ・スキンを使い、耳への負担を軽減している。
ユニットは40mm径で、マイラー振動板を採用。インピーダンスは26Ω、再生周波数帯域は10Hz~20kHz。推奨アンプ出力は50mW。歪み率は1%。感度は120dB/V。
ハウジングにはブラシ仕上げのアルミニウム・ロゴ・プレートを採用 | フレームはクローム・メッキ仕上げ | ハウジングは平らにできる |
長さ調節をしているところ | イヤーパッドにはニュージーランド産のシープ・スキンを使用 | |
パッドを外したところ | イヤーパッドはマグネットで装着する | パッドの背面 |
【お詫びと訂正/2010年3月23日】
記事初出時、内部のケーブル接続端子をステレオミニと記載しておりましたが、ステレオミニミニ(2.5mm径)の誤りでした。お詫びして訂正させていただきます。
構造的な特徴は、ケーブル交換が容易に行なえる事。前述のイヤーパッドはマグネットでバッフルに取り付けられているため、簡単に取り外せる。ケーブルはOFCの片出しで、左側のパッドを外すと、ケーブルが内部の溝に沿って格納されており、その根元がステレオミニミニのプラグで着脱できるようになっている。
このケーブルを抜き、同梱するマイク内蔵コントローラーを途中に備えたケーブルへ交換すると、iPod/iPhone 3GSの操作が可能。ボリュームコントロールに加え、中央を1度押し込むと再生/停止、iPhone 3GSの場合は通話/終話も可能。2回押し込むと曲送り、3回では曲戻しとなる。標準プラグへの変換アダプタや、ソフトクロス製の巾着袋も同梱する。重量は195g。
パッドを外した、バッフル部分(左)。ケーブルが溝に沿って格納されている | 内部がステレオミニミニ接続になっており、気軽にケーブルを取り外しできる |
■ デザインにもこだわり
デザイン性が高いのも「P5」の特徴だが、これは歴代の800シリーズや、サックスのような形状をした独創的なスピーカー「エンファシス」などをデザインしたモートン・ウォレン氏によるもの。コンセプトは「アビー・ロード・スタジオにあるような、“レトロだけれどクラシックな美しさ”を、現代のモバイルヘッドフォンに取り入れたもの」だという。
デザインだけでなく質感にもこだわっており、ハウジングにはブラシ仕上げのアルミニウム・ロゴ・プレートを配置。フレームはクローム・メッキ仕上げ。また、肌に触れるパッド部分も本革(ニュージーランド産シープ・スキン)を使用。内部を除いて、手に触れる部分にプラスチックのパーツは使われていない。
イヤーパッドは肉厚 | 左右チャンネルの表示部にもデザインへのこだわりが感じられる | iPod/iPhone 3GSを操作できるマイク付コントローラーケーブルも付属する |
■ ファーストインプレッション
会場で短時間ではあるが試聴できたため、ファーストインプレッションをお届けしたい。モバイル用という事で、再生は持参したiPhone 3GSで直接ドライブしている。
装着感はシープ・スキンの柔らかな肌触りを含めて良好。ハウジングは薄いが、パッド部分が非常に分厚いため、耳が柔らかいパッドに埋もれる感覚。側圧はほどよく、メガネをした状態で装着しても痛くはならない。
耳のせ型ではあるが、パッド部の厚みがあるため、音漏れも少ない。普通の音量で音楽を流している場合、電車内であれば隣の席の人にも迷惑はかからないレベルと言えそうだ。また、外の定常的な騒音もかなり遮断してくれるが、発表会場の外を通る車の音などは判断できる。遮音性についてB&Wでは「ユーザーの場所感覚を完全に無くしてしまうことなく、自然で快適なリスニング環境を保ちつつ、外部の多くの音を遮断する」と説明しており、安全性の面からも屋外での使用に適した遮音性にしてある事がわかる。
B&Wのスピーカーには、“ワイドレンジで明瞭な定位”、“付帯音の少ないクリアなサウンド”、“分解能の良い低域”といった印象があるが、「P5」はどちらかと言うと低域寄りのバランス。低音は薄いハウジングからは想像できないほど量感がある。「藤田恵美/camomile Best Audio」から「Best OF My Love」をかけると、アコースティックベースの響きがとても豊かでヘッドフォンのサイズを忘れてしまう。
低音が強いヘッドフォンだと、高域がマスキングされたように伸びないものもあるが、「P5」ではしっかりと中高域も突き抜け、「山下達郎/氷のマニキュア」を再生すると抜けの良さも感じさせる。第1弾モデルではあるが、音作りの上手さは流石という印象だ。
ただ、オープンエアや大型の密閉型と比べると、音場の広さや楽器の分離/定位、頭内定位の強さという面では劣る部分もある。10万円付近や、それを越えるような価格の大型オープン/密閉ヘッドフォンの音を想像すると、若干ジャンルが異なる。個人的には低域の分解能も、もう一声欲しいと感じたが、道路沿いを歩いている時や電車内などでは、こうしたバランス&キャラクターの音作りの方が音楽が楽しく聴けるシーンも多いだろう。
高級かつ小型のポータブルヘッドフォンは種類が少ない事もあり、レトロな格好良さを備えたデザイン性や質感の良さも合わせて、「こういうヘッドフォンも1台欲しい」と思わせる魅力を体験できた。
(2010年 3月 17日)
[AV Watch編集部 山崎健太郎]