富士フイルム、3D/720p動画撮影に対応したデジカメ「W3」

-3Dテレビ/パソコンへのHDMI出力も。実売48,000円


新製品のW3を持つ、CMキャラクターの佐々木希さん

9月4日発売

標準価格:オープンプライス


 富士フイルムは、3D動画/静止画撮影対応デジタルカメラの新モデルとして、720pのハイビジョン3D動画撮影にも対応した「FinePix REAL 3D W3」を9月4日に発売する。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は48,000円前後。

 左右に2つのレンズを備え、視差を利用した3D動画/静止画が撮影可能なデジタルカメラ。本体背面の液晶で裸眼立体視が可能なほか、HDMI接続した3D対応テレビ、3D対応パソコン/プロジェクタで、専用メガネを使った立体視が可能。また、専用の3Dプリントサービスを利用すれば、3D静止画の紙焼き写真も作成できる。既発売の3D対応デジタルフォトフレーム「FinePix REAL 3D V1」でも裸眼立体視が可能だが、後述する720pの3D動画は再生できない。

FinePix REAL 3D W3

 '09年8月に発売した3D対応の第1弾モデル「FinePix REAL 3D W1」は、3D/2D動画記録が最大640×480ドットだったが、W3では新たに1,280×720ドット/24p(撮影モード:HD)まで対応。「VGA」(640×480ドット/30fps)や「QVGA」(320×240ドット/30fps)の撮影モードも用意する。音声はステレオ記録。なお、撮影中のズームはできない。

 静止画記録は3D/2Dともに最大3,648×2,736ドット。ファイル形式は、3D動画が独自の3D-AVI(AVIで左右2つの動画を同時記録)、2D動画がAVI(Motion JPEG)、3D静止画がMulti-Picture Format(拡張子は.MPO)、2D静止画がJPEG。MPO + JPEGの同時撮影も可能。

 動画処理能力を従来比2.4倍まで高めたという新開発の「リアルフォトエンジン3D HD」を搭載したことで、3Dのハイビジョン動画記録を実現。また、3D映像の解析能力を高めたことで、「オート視差調整」機能の範囲が従来の60㎝~∞から、38㎝~∞に拡大している。

動画の撮影モード。新たに720pに対応した

 記録メディアはSD/SDHCカードまたは約34MBの内蔵メモリ。SDXCカードには対応しない。なお、「HD」での動画撮影時は4GB(約10分)で撮影が自動停止し、続けて別ファイルで4GBまで撮影できる。「VGA」では約2GBで撮影が自動停止する。

 撮像素子は1/2.3型、有効1,000万画素のCCDを2基搭載。レンズは光学3倍ズームのフジノンレンズ2基で、F値は3.7~4.2、35㎜換算の焦点距離は約35~105㎜。左右のレンズ間の距離は75㎜(W1は77㎜)。視差の調整は天面のレバーで行なえる。レンズユニットをマウントするフレームにはステンレスを採用。高剛性アルミ外装とステンレスフレームのモノコック構造により、左右レンズの光軸を高精度に保持したほか、小型化/軽量化にも寄与したという。

 3D静止画撮影では、「アドバンスド3Dモード」も搭載。このモードでは、異なる角度から2D静止画を2回撮影し、合成することで1つの3D静止画にする「3D2回撮り」が可能。花や小物など小さな被写体は、オートに比べ自然な立体感で、遠くの山やビルなどの大きな被写体では、立体感をより強調できるという。もう一つの「3D時間差撮り」では、電車や飛行機など撮影者が移動しながら撮影する場合に、視点の異なる2枚を連写することで、超遠景を立体的に写し出せるとしている。

操作ボタン/ダイヤル部。右下の3Dボタンで2D/3Dが切り替えられる天面。左にあるレバーで視差を調整できるiPhone 3GSとサイズ比較

 2つのレンズ/CCDを利用した2D静止画の2枚同時撮影機能「ツインカメラモード」も追加。このモードにより、ワイド端と任意のズーム倍率で2枚同時撮影できる「テレ/ワイド同時撮り」と、カラー/モノクロの「2カラー同時撮り」、感度を変える「高/低感度同時撮り」が行なえる。そのほかの新機能としては、撮影時にレンズに指がかかっているとモニタ上で警告する機能も用意している。2D静止画では顔検出機能や赤目補正などが利用可能。赤外線でデジタルフォトフレームのV1や対応テレビに静止画ファイルを送信することもできる。

 液晶モニタは3.5型ワイド/115万画素。従来のW1(2.8型/23万画素)に比べ大型化された。また、W1は立体視のためにバックライトの光る向きを高速で左右に切り替える「ライトディレクションコントロール」技術を採用していたが、W3では微細な凸レンズを表面に並べたシートを介することで両眼視差を生じさせるレンチキュラー方式を採用。細かいピッチのレンチキュラーシートの開発などにより、3D映像のボケの原因となるクロストークを従来比1/10まで抑えたほか、色再現性は従来比1.8倍に向上。レンチキュラー方式への変更により、コスト削減も実現している。ピーク輝度も1.5倍までアップしている。そのほか、静止画再生時に100枚(10×10)を一覧できる「マイクロサムネイル」表示にも対応した。

W3の液晶モニタ部W1(左)と液晶のサイズ比較W1からの液晶モニタの進化ポイント
内部構造メイン基盤部レンズユニット

 HDMIミニ端子を搭載し、テレビに接続して静止画/動画を表示可能。HDMIはバージョン1.4に準拠し、3Dテレビとの接続により立体視も行なえる。カメラからはフレームシーケンシャル方式でファイルを出力し、対応テレビと3Dメガネで立体視が可能。設定メニューでサイドバイサイドでの出力にも切り替えられる。

 パソコンとはUSB 2.0端子で接続してデータを転送可能。3D対応パソコンのNEC「VALUESTER N」やASUS「G51Jx 3D」では、3D動画/静止画再生が可能。富士通の「FH550/3AM」では3D静止画のみ対応する。3D非対応パソコンで3D動画はAVIとして認識され、左目用の映像のみが再生できる。

 PCでの静止画/動画管理ソフト「MyFinePix Studio」が同梱。新たに3D動画のカット編集や結合に対応したほか、YouTube 3Dへアップロードできるファイル形式への変換も可能。

HDMIミニ端子を側面に備える各社の3Dテレビと接続して3Dデモが行なわれたHDMI接続時は、フレームシーケンシャルのほか、サイドバイサイドでの出力も選択可能
W3の動画を立体視可能な3Dパソコンも展示された付属PCソフトは3D映像のカット編集に対応した

 


3Dプリントシステム。プリンタのDPR-1(写真中央)とパソコンを使用する
 付属バッテリ「NP-50」での連続撮影時間は動画が約45分、静止画が約150枚。外形寸法は124×27.8×65.9mm(幅×奥行き×高さ)で、W1の123.6×25.6×68mm(同)に比べ小型化している。バッテリ/SDカードを含めた重量は250g。(W1は約300g)。

 

 撮影した3D静止画を、レンチキュラー方式の専用シートに3D静止画としてプリントできる有料サービス「FUJIFILM 3Dプリント」(クリアタイプ)も受け付ける。同社は2月に3Dプリントシステムの開発を発表しているが、それよりもさらに高精細な3D静止画がプリントできるようになったという。プリントサイズは2L/KG判で、注文は専用サイトのFujifilm mallまたは写真店で受け付ける。料金は2L/KGサイズともに420円。



■ 3Dビジネスを事業の柱に。CMキャラクターは佐々木希さん

古森重隆社長兼CEO

 古森重隆社長兼CEOは、これまでのデジタルカメラ事業において「高画素化/高感度化や、顔認識などで市場をリードし、エポックメーキングな製品を発売してきた。近年はコスト競争力、やSCM(Supply Chain Management)の改善などで事業基盤を強化した」と述べた。

 デジカメ全体ではワールドワイドで1,200万台、世界シェア10%を今年度の目標に掲げており、前年度は920万台だったため、計画はかなりの伸び率となるが、達成できる見込み」と自信を見せた。

 3Dのトレンドについては「映画やテレビなど、世界的に3Dを楽しむ環境が整いつつある一方、コンテンツが不足している。このカメラを使って撮影した身近な映像は十分コンテンツになり得る。今後も特徴のある製品を提供するとともに、コストダウンも進め、ハイエンドからコストパフォーマンスの高いモデルまで幅広いラインナップをそろえ、新興国を含め世界各地で販売を伸ばし続けたい」とした。

 3D事業への取り組みについては、取締役常務執行役員 電子映像事業部長の樋口武氏が説明。同社の予測ではテレビなどの3D製品の販売台数は2010年に400万台となり、以降も倍増することで2013年には6,000万台以上になると見込んでいる。その中でデジカメが占める割合は10%とみている。今回のW3は9月初旬の世界同時発売を予定しており、デジカメとともに、ワールドワイドでのプリントサービスの拠点も拡大。3Dを電子映像事業部の柱の一つに成長させるという。同社ではW3の売上げは年間40万台、プリントを含め100億円のビジネス規模になると見込んでいる。なお、従来モデルW1の売上台数については「目標は10万台だったが、それよりはショートした」(同社)という。

樋口武氏3D市場の成長見込み(同社予測)3D事業を電子映像事業部の柱の一つに位置付ける

 

佐々木希さん。CMと同じ黒革の衣装で登場

 W3のCMキャラクターは、新たに佐々木希さんが務めることも発表。テレビCMのほか、3D映画の劇場用CMなどでも展開する。発表会場では佐々木さんのトークセッションも行なわれ、実際に佐々木さんが3D撮影や映像を体験した。

 W3について「初めて触ったとき、飛び出て見れて驚いて、はしゃいじゃいました」という佐々木さん。会場では佐々木さんの姿をW3で撮影し、3Dテレビで鑑賞するというデモが行なわれた。3Dで撮影したいものについては「地元の秋田の大曲である花火大会」とのこと。その後、サプライズとして古森社長から佐々木さんにW3がプレゼントされると「3Dカメラマンとして、いろんな人や物、ペットを撮りたい」と笑顔で話した。


古森社長から佐々木さんにW3が贈られたW3で佐々木さんを撮影し、3Dテレビで鑑賞。HDMI接続で簡単に観られることにも驚いていた3D映像の立体感に、思わず手を伸ばしてしまうという場面も


(2010年 8月 17日)

[AV Watch編集部 中林暁]