クリプトン、USB SP「KS-1HQM」向け高音質USBケーブル
-60cmで5,980円から。PCオーディオ用接点改質剤も
60cmタイプの「UC-KS0.6」 |
クリプトンは、DAC内蔵のUSBアクティブスピーカー「KS-1HQM」用の周辺アクセサリー第1弾として、高音質USBケーブルと、USBなどの端子に塗布する接点改質剤「CI-KS5」を3月4日に発売した。同社直販サイト限定商品となっており、受注は既に開始しているが、発送は3月中旬頃から開始される。
直販価格はUSBケーブルの60cmタイプ「UC-KS0.6」が5,980円、1.2mの「UC-KS1.2」が6,980円、2m「UC-KS2.0」が8,980円。端子は片側がA、反対側がBタイプとなる。接点改質剤「CI-KS5」は2,400円。
また、発売日や価格は未定だが、「KS-1HQM」を持ち運ぶためのキャリングバッグ「CB-KS1」も開発中で、近日発売するという。
■オーディオ用としては低価格なUSBケーブル「UC-KS0.6/1.2/2.0」
アクティブスピーカーの「KS-1HQM」 |
アクティブスピーカーの「KS-1HQM」(49,800円)は、ピュアオーディオ用の高級スピーカーやオーディオ用アクセサリを手掛けるクリプトンが、初のPC用アクティブスピーカーとして'10年6月から販売。レビュー記事でも紹介した通り、高い防振能力を持つオーディオボードや高品質な電源ケーブルで高音質化するなど、低価格なPC用ながら、こだわったスピーカーとなっている。
「UC-KS0.6/1.2/2.0」は、その「KS-1HQM」の音質向上や、5万円以下の比較的低価格なUSB DAC/USBヘッドフォンアンプなどとの組合せを想定したUSBケーブル。オーディオ用を謳うUSBケーブルとしては5,980円~8,980円と、価格を抑えている。
特徴は、ジッタの少ない伝送ができる事。それを示すものとして、USBケーブルが、USB規格を満たしているかを評価する時に実施する、「アイパターン測定」を実施。同社のケーブルはクリアなアイパターンを実現しているという。下図が測定の結果で、信号波形の遷移を幾つもサンプリングし、その波形を重ねあわせて表示したもの。縦軸が電圧マージン、横が時間軸となる。
アイパターン測定の結果。上図はクリプトンのUSBケーブル | 特性の悪いケーブルの測定結果 | 特性の悪いケーブルの結果を拡大したもの。繰り返し信号のズレがジッタ成分となる |
特性の悪いケーブルにランダムノイズを入力すると、USBコネクタやワイヤー構成のインピーダンスのミスマッチなどで反射が起こり、戻ってくる繰り返し信号に“ズレ”が生じ、これがジッタ成分となる。アイパターン測定結果における、信号の線が太くなっている部分がこの現象を示したもので、信号がうねったり、中央に寄っていったり(低い電圧マージン)している。
これらのマイナス要素が大きくなると、アイパターンが太くなっていくため、これを見れば、“正確なデジタル伝送ができるかどうか”を判断でき、“よりクリアな波形になってるか”でケーブルの品質の良さを比べる測定となっている。
1.2mの「UC-KS1.2」 |
「UC-KS0.6/1.2/2.0」では、非誘電体を使ったコネクタ端子や、導線のインピーダンスのばらつきを少なくする事で、アイパターン規格に合致。ジッタ成分を低減すると共に、コネクタや導線のインピーダンス管理により信号の電圧マージンが高く、デジタル信号のうねりを発生させず、ノイズ耐性にも優れているという。
また、USBケーブルの信号線と電源線のシールドを2重にすることで信号線と電源線での漏れノイズの干渉を防ぎ、間にポリプロピレンを介在させることで、信号線の静電容量も少なく電源線の振動も吸収。音質劣化を防ぐという。
断面図 |
■実際に音を聴いてみる
発表会において、「KS-1HQM」をテスト機として使い、他社のオーディオ用USBケーブルと比較試聴をしてみた。ケーブルは1.2mのものを使い、他社ケーブルは同じ長さで約2倍程度の価格で販売されているものだという。
JAZZヴォーカルから、ナンシー・ハロウ(ヴォーカル)&ドン・フリードマン(ピアノ)のアルバム「イン・ザ・ウィー・スモール・アワーズ」から「オン・ザ・サニー・サイド・オブ・ザ・ストリート」(HQM STOREで販売されている24bit/88.2kHzのFLAC)で比較。ケーブルを他社のものから「UC-KS1.2」に切り換えると、音場が横方向、そして奥行き方向にも広くなり、同時に、固さが感じられたヴォーカルとピアノの高域が伸びやかになり、立体的で見通しの良い音場に変化。個々の音のメリハリ、音像の厚みも増し、ストレスが少なく、聴きやすい音に変化する。
ドラムが主張するJAZZを再生すると、低域の分解能が向上し、高域が覆う場面でも低域がそれに隠れず、動きがよくわかる。クラシックでは、ストリングスの高域の質感が繊細でしなやかになる。いずれも好ましい方向への変化と感じられた。
発表会でニアフィールドで試聴した。再生時はノートPCのモニターは倒した状態で聴いている |
組み合わせる「KS-1HQM」は、USBオーディオ機能を持っているが、USB DACの高級モデルで採用が増えているアイソクロナス転送の非同期モード(パケットのデータ数からクロックを作成するのではなく、オーディオ専用クロックを基準としてアシンクロナスモードで動作することで、ジッタを低減する機能)には対応していない。そのため、ジッタを低減する「UC-KS0.6/1.2/2.0」のようなケーブルとの組合せると、より効果が大きいようだ。
オーディオ用USBケーブルには非常に高価なモデルも多いが、比較的低価格である事から、「KS-1HQM」だけでなく、他のUSB DACやUSBヘッドフォンアンプでも気軽に試せるのも利点と言えるだろう。
■接点改質剤「CI-KS5」
「Setten No.1」や「Setten Pro」といった、同社オーディオアクセサリのロングセラーモデルを、PCオーディオユーザー向けに、より手軽に使えるように価格を抑えたモデル。5mlの容量でSetten No.1は4,410円、Setten Proは8,400円という価格で販売されているが、「CI-KS5」は1ml容量にすることで、2,400円に抑えている。同社によれば、この容量でも2,000ポイントの塗布ができるという。
接点改質剤「CI-KS5」 | USB端子やオーディオ機器の端子などに塗るほか、電圧が下がった状態の携帯電話の電池などに塗ると、ディスプレイの輝度が上がるなどの効果があるという |
クラスターダイヤモンドとスクワランオイルにより、導通性が高まるという |
USBなど、機器の端子の表面は一見平滑に見えるが、実際は微細な凸凹があり、接続しても、実際に接して電流が流れる部分が少ない事があるという。そこで、端子に塗ることで、導通性を高めるためのアクセサリ。
主にクラスターダイヤモンドとスクワランオイルで構成されている。クラスターダイヤモンドとは、カーボングラファイトでコーティングした、導通性を持つ直径15nmの黒色ダイヤモンドの粒で、高硬度で耐摩擦性などに優れ、微小サイズのため固体潤滑材の効果も発揮するという。
これがスクワランオイルに大量に入っており、オイル自体は粘度が低く、経時・温度変化による劣化が低く、鉱物油や揮発油のように金属やプラスチックを侵さないという特徴がある。
これを塗ることで、全ての周波数帯域でインピーダンスを低下。接触抵抗値も低下するほか、金属表面の洗浄効果・酸化防止の効果も得られるという。
(2011年 3月 4日)
[AV Watch編集部 山崎健太郎]