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ソニーCSL、スマートフォン用「萌家電」アプリを秋公開

−TVなどを擬人化/ゲーム風に操作。大和ハウスと協力


“萌家電大使”に任命された声優・水瀬いのりさんが発表会に登場

 ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)と大和ハウス工業は、スマートフォンのアプリを介して家庭内の機器を連携/制御する「スマートハウス」事業で協力する。

 ソニーCSLは、スマートフォンアプリを使って、ゲーム感覚でAV機器やエアコンなどを制御するシステムを開発し、BRAVIAやBDレコーダを操作可能なリモコンアプリ「萌家電」を2011年秋に公開予定。同時期に、キャラクターゲーム制作の機能を持った開発言語の「Kedecot」(カデコット)も公開する。

 「萌家電」には、家電を“擬人化”した複数のアニメキャラクターが登場し、テレビやレコーダ、エアコンなどの操作をはじめ、上手な使い方をアドバイスされたり、機器のアップデートを促すといった操作がゲーム感覚で行なえるという。対応スマートフォンは、Android端末を想定。iPhone向けに提供する予定は現時点では無いという。

 大和ハウスは、「エコーネット」など国内の標準規格をベースに、簡単な命令で家電・設備機器を制御する「住宅API」(機器制御開発ツール)を開発。メーカーや機器の違いを意識することなく、様々な企業/ユーザーがサービス開発を行なえる共通ソフトとして提供し、例えば照明を制御するiPhoneリモコンや、玄関先のデジタルフォトフレームからの施錠/消灯といった機能を想定。同社の「省エネルギー住宅」への搭載を目指し、研究開発を行なうとしている。

「萌家電」アプリを秋に公開 擬人化されたキャラクターが登場 ソニーCSLと大和ハウスの開発プラットフォーム


発表会の進行役を務めた高校一年生の新人声優・水瀬いのりさんは“ブルーレイ”役として登場。「これは私のサイズで特注で作っていただいた衣装。普段はこういった服を着る機会はないので、うれしい反面、緊張しています」と笑顔で語った

 システムの実用化に先立ち、上記の技術を体験できる公開実験を、7月8日〜9日の2日間、東京・水道橋の大和ハウス東京ビル併設「D-TEC PLAZA(ディーテック・プラザ)」 で開催。参加には予約が必要でサイト内で予約を受け付けている。

 7日に行なわれた記者発表会では、萌家電で“ブルーレイ”役として登場し、「萌家電大使」にも任命された声優・水瀬いのりさん(ソニーミュージックアーチスツ所属)が“ブルーレイ”の衣装で登場した。



■ 家電の擬人化キャラで、ストーリーを楽しみながら操作

家に帰ると、様々なキャラ(機器)が出迎え、最新の情報を教えてくれる

 「Kedecot」のプラットフォームにより、スマートフォンでストーリーゲームをしているような感覚で家電をコントロールすることが可能。

 テレビやBDレコーダ、扇風機、エアコンといった機器をそれぞれ擬人化し、ストーリーを楽しみながら操作できるほか、賢い使い方などが学べるという。アニメキャラクターの声は、前述の水瀬いのりさんのほか、ぷろだくしょんバオバブ所属の声優が参加しているという。

 例えば、今回行なわれたデモの一つ「扇風機ギャルゲーリモコン」では、扇風機のキャラクターと一緒に遊園地をデートをしているというシチュエーションで、どのアトラクションに乗るかによって風量が変わる。今回は分かりやすく「ジェットコースター」なら[強]、「メリーゴーランド」なら[弱]という設定となっていた。なお、音声などを伴わないシンプルなリモコン画面も用意する。


デモでは、テレビや扇風機など、擬人化された様々な家電がアニメーションに合わせて動作した
スマートフォンの画面例。ゲームのように、扇風機の動作を選ぶ 選んだ操作によって、様々なリアクションが
シンプルなリモコンとしても利用できる 最初はいがみ合っていた扇風機とエアコンが結婚 新しい連動操作機能が加わった

 「ブルーレイとウォークマンドック」のデモは、BDレコーダなどで再生したコンテンツと、関連したコンテンツをレコメンドするもの。BDのアニメキャラクターが再生した映画に対し、音楽プレーヤーのキャラがサウンドトラックを勧める。これを購入すると、登場キャラの2人が同じコスチュームアイテムを手に入れるといった特典が提供される。

【動画】ブルーレイとテレビのやり取り
 「ブルーレイ」と「テレビ」の連携は、動作のリクエストを「言葉を使って頼む」形で表現。2人は“腐れ縁”という設定になっているなど、機器の連携が人間関係になぞらえて表現されており、機器同士の複雑な動作なども、擬人化によりわかりやすく説明できるという。

 「空調機たちの夏」では、扇風機とエアコンの2つをうまく組み合わせて、両方の電気代の合計が設定値よりも小さくなったらゲームクリアとし、キャラの2人が結婚。すると、リモコンに協調操作の機能が加わり、両方の機器が同時に動作するようになる。


【動画】ウェブカメラが病気。病院へ行く(アップデートする)と元気になる
 「病気になる家電」のデモでは、家電にアップデートの情報が提供されると、キャラが“病気”状態になり、病院に行くことを許可するとアップデートされて帰ってくる。家電を擬人化することで、ソフトウェアアップデートという操作をあまりやりたくないという人に対しても、キャラを介してその心理的負担を下げることができるという狙いがある。

 なお、今回用意されたデモ以外にも、お風呂のお湯を節約するとバスタブと給湯器のラブシーンが見られる「禁断の関係」や、フォトフレームがかけているメガネをはずすと、いきなり家の照明が落ちる「眼鏡は顔の一部」、ウォークマン用ドックが鼻歌に夢中になりすぎて、しばらくリモコンが効かなくなる「歌うウォークマンドック」といった、遊び心のあるストーリーも用意されている。



■ 「家電は機能性のあるゲーム機」。“いじれる化”が武器に

ソニーCSLの大和田茂氏

 今回のプロジェクトは、大和ハウス工業におけるスマートハウス(住宅API)の研究と、ソニーCSL が取り組む「生活空間エンターテインメント」の研究成果が、経済産業省クールジャパン室の仲介で一つになったもの。コンテンツ開発のプラットフォーム技術については、今後、様々な企業やユーザーが利用できるよう公開していく予定となっている。

 ソニーCSLのアソシエイトリサーチャー 大和田茂氏は、Kadecotシステムについて「擬人化を通じて、人と家電、人と住環境の新しい関係を模索する場。ゲームを通じて遊びながら、いろいろなサービスを実現するもの。擬人化自体は、いろんなシステムが提案されてきたが、昨今の技術、特にスマートフォンの進化によりこれまでとは違った見せ方、違った可能性が見え、利便性が上がってきた」と説明。

 世界的に技術レベルが上がって、様々な国でハイクオリティな家電が作られるようになった現在、差異化を図るには「感情に訴える部分を突き詰めていくことが大事。“家電は機能性のあるゲーム機”」との考えを示した。

 一方、これまでは、インフラ整備の問題などで、ネット家電の利便性を体感することが難しかったが、「スマートフォンが普及し、さらにスマートフォン上のリモコンで様々なことができるようになったことから、一つのスマートフォンに複数の家電をコントロールできるソフトを一つ書けば、複数の家電が協調する家電が簡単にできるようになった。これは大きなブレイクスルー。その中で一番大事なものは家電ネットワークの“いじれる化”。システムを公開することで、一般ユーザーが楽しみながら家電ネットワークをいじれるようにすることが、このプロジェクトの最大の特徴」とした。

 「萌家電」のアプリは、当初は一つ一つの機器を操作できるリモコンとして提供。最終的にはネットワーク化して、1つで複数の機器に対応できるようにネットワーク化するという。大和田氏は、今回の萌家電のほかに、登場キャラクターが全てブタという「ブタ家電」の構想もあることも明かした。

「家電は機能性のあるゲーム機」とした 「いじれる化」が最大の特徴だという 用意された家電キャラたちのストーリーの例
大和ハウスの吉田博之氏

 これまで15年以上「スマートハウス」に取り組んだという大和ハウスとしては、なかなかそのコンセプトが定着しなかったことに課題を感じていたという。

 同社の技術本部総合技術研究所ICT研究グループ主任研究員の吉田博之氏は、「これまでは、ハードウェアの開発優先で取り組まれていたが、ユーザーベネフィットとしては、“外出先からエアコンを切る”など内容が似たり寄ったりだった。今回はそれを逆転して、ユーザーが欲しい機能を実現するために、今ある国内外の標準規格を採用し、サービス内容で競争したい。そのために、各企業が使える共通のソフトを作った」とした。

 今回のシステムでは、エアコンや扇風機など、現在の市販製品ではそのままネット接続できない機器も含まれているが、製品に直接ネット機能を載せるということだけでなく、赤外線を使った操作や、ACタップを介した電源連動など現在の技術を活用する形で実現に取り組むという。

 ソニーCSLとの協力について吉田氏は「これまで、ネットワーク接続できる家電・設備が少なかったのは、各社が“お客様に魅力的なサービスを思いつかなかった”から。欲しいと思ってもらえるサービス像として『エンタテインメントの切り口』を付加する。それは大和ハウスだけでは実現できなかった。ソニーCSLの技術を融合して、新しい提案ができるのでは」と述べた。



(2011年 7月 7日)

[ AV Watch編集部 中林暁]