パイオニア、9ch同時ハイパワー出力のAVアンプ上位機

-新Class Dアンプ「SC-LX85/LX75」。AirPlay/Neo:X


SC-LX85

 パイオニアは、AVアンプの上位モデルとして「SC-LX85」と「SC-LX75」を10月中旬に発売する。価格はLX85が33万円。LX75が245,000円。

 どちらも9.1chのAVアンプで、新「ダイレクト エナジー HDアンプ」を搭載する。パイオニアはクラスDの手法を導入した「ダイレクト エナジーHDアンプ」を採用したSC-LX90を2007年に発売しているが、LX85/75では、素子を従来のICE Powerから新しいDirect Power FETに変更している。

 さらに、このDirect Power FETを基板のPCBに直結配置しているのも特徴。従来のように、PCBに端子を介して浮かせて設置する場合に比べ、部材の削減が可能になったほか、素子の上にヒートシンクが取り付けられるようになり、前面と裏面の両方から放熱が可能になった。回路のシンプル化にも貢献したという。

 こうした改良により、ノイズを低減でき、クラスDアンプのスイッチング特性も向上。立ち上がりの良いハイスピードな音を実現し、音質を改善したという。また、ヒートシンクの小型化や、部品点数の削減により共鳴する部品の体積が小さくなり、音のバラつきも減少。さらに、基板を往復する形になっていた配線構造を、シンプルにしたことで、従来の75%の配線距離で信号伝達を可能にし、音質改善を図っている。

SC-LX75従来モデル「LX83」のMOSFET。端子を介して、浮き上がった状態で取り付けられている新モデル「LX85」の内部基板
銀色の四角いパーツが新しいDirect Power FET。PCBに直結配置されている事がわかる通常のMOSFETとの比較。上がリンギング、下がスイッチング特性を示したもの
従来モデル「LX83」は基板の裏側にヒートシンクを配置する、基板経由での放熱構造となっていた新モデル「LX85」のヒートシンク。素子側に配置するようになっている

 こうした改良により、ハイパワー多チャンネル同時出力を実現。LX85では9ch同時出力 810W、LX75では720Wを実現している。

 さらに、新素子はICE Powerと比べ、消費電力も25%程度低減。アイドリング電力も約26%低減している。

ICE PowerとDirect Power FETの性能比較(2ch駆動時)ICE PowerとDirect Power FETの消費電力比較クラスABとクラスDアンプの消費電力比較

 音質の変化を楽しむ機能として、AVアンプとしては世界初という可変式のデジタルフィルタも搭載。DACのフィルタ設定を変更する事で、3種類の音の変化を楽しむ事ができる。種類は「SHARP」(カチッとした骨格感が出る)、「SLOW」(昔パイオニアでレガートリンクと言われていたタイプで応答性に優れ、弦楽器などが柔らかく表現できる)、「SHORT」(音の立ち上がりが強調され、前に出てくるように感じられる)。

 DACは32bit/192kHzまで対応。マルチチャンネルでも32bit/192kHzに対応できるのが特徴。bit拡張処理機能「Hi-bit32 Audio Processing」も備えており、入力された24bitなどの信号を、32bitに拡張してから32bit DACで処理することで、元のアナログ信号に近い音が出力できるとする。

LX83とLX85の回路比較。出力素子の改善により、シンプルな回路構成になっている32bit DACだけでは効果が少なく、24bitなどの信号を、32bitに拡張してから32bit DACで処理することで、滑らかな波形が得られるというデジタルフィルタで音の違いが楽しめる

 LX85では、電源トランスを専用にチューン。磁界(ノイズ)の影響を少なくした電源トランス部の開発を行ない、筐体内で映像・音声信号に悪影響を及ぼす磁束ノイズを大幅に低減。さらに、独自のアドバンスド インディペンデント パワーサプライとの相乗効果により、さらにクリアな信号伝達を実現したという。

 スピーカーの接続パターンは、前モデルの5パターンから、LX85では10パターン、LX75では7パターンに増加している。

 自動音場補正機能は、付属のマイクを使って計測する「Advanced MCACC」を採用。アンプから再生された音声を、スピーカーで帯域分割する際に発生する時間的なズレ(群遅延)や、チャンネル間で異なる位相特性を、AV アンプ側で測定・補正し、正確なマルチチャンネル再生を行なう「フェイズバンドコントロール」も強化。同機能とEQ補正フロントアラインを組み合わた「フルバンド・フェイズコントロール フロントアライン」により、全てのスピーカーのF特と位相をフロントスピーカーの特性に合わせ、繋がりの良いサラウンド音場が得られるという。

 低域効果音(LFE)のズレをAVアンプ側で補正する「フェイズコントロールプラス」も搭載。また、LX85は、スピーカーを設置する際に、ミリ単位で設置位置を調整できる「プレシジョンディスタンス」にも対応する。

 音の補正だけでなく、計測した視聴距離をもとに、画質の色調やコントラスト、ディテール感などを、接続するディスプレイの特性に合わせて自動的に調整する「アドバンスドビデオアジャスト」も利用可能。1080/24p出力を行なう「P.C.24p (Precise Conversion for 24p)」機能や、アナログのSD映像など、様々な入力を最高1080pまでアップスケーリング、およびIP変換し、HDMI出力する機能も備えている。

 対応するBDプレーヤーなどと接続した場合に使用できる、ジッタ低減技術PQLSにも対応。音楽CD、DVD/BDのマルチチャンネル音声をビットストリーム出力した場合のジッタも低減する「PQLS ビットストリーム」機能となっている。

 3Dコンテンツの奥行き感を再現するという、独自の新音場機能「バーチャルデプス」を搭載。これに、仮想ハイトスピーカーを生み出し、縦方向の立体感を実現するという「バーチャルハイト」機能、仮想サラウンドバックスピーカーにより前後の移動感や奥行き感を向上する「バーチャルサラウンドバック」機能を組合せ、最大11.2chの仮想音場が実現できるという。

 また、コンテンツの音声をリアルタイムに解析し、シアターの3大要素である「ダイアログ(台詞・ボーカル)・重低音・サラウンド感」のバランスを、どのような音量でも自動調整するという「オプティマム サラウンド」モードも用意。映画館での大音量再生を前提としたバランスのコンテンツを、ホームシアターで理想的なバランスで再生できるとしている。

 SC-LX85はTHX Ultra2 Plusに、SC-LX75はTHX Select2 Plusに準拠。また、録音スタジオ「Air Studios」による音質チューニングを実施し、同スタジオの認証を取得している。ドルビーTrueHDやDTS-HD MasterAudioに対応したデコーダを搭載するほか、DTS Neo:Xにも対応。全チャンネルに24bit/192kHz対応DACを搭載。HDMI接続を含むすべての入力信号に対し、ジッター特性や位相ノイズを抑える「ジッターリダクションプラス回路」も備えている。

 また、インターネットラジオなど、128kbps以下の低いレートの圧縮音声を高音質化する「オートサウンドレトリバー」や、Bluetoothでワイヤレス伝送された音声を補正し、ノイズ除去を行なう「S.R AIR(サウンドレトリバーエアー)」も搭載。

 さらに、これらの機能を最適に適用するために、9月下旬に発売する同社BDプレーヤー「BDP-140」とHDMI接続し、連携する事で、再生する音のビットレートなどに合わせて、AVアンプが音質補完処理を最適化する機能を搭載。さらに、楽曲ファイルの情報もHDMI経由で伝送し、AVアンプ側で表示する事もできる。BDプレーヤーで再生・表示するネット上の動画ファイルを高画質化する「ストリームスムーサーリンク」も備えている。

 ネットワークオーディオ機能としては、DLNA 1.5に対応し、NASやPCに保存した楽曲を再生可能。FLACの24bit/192kHz、WAVの24bit/192kHzなどの再生にも対応。インターネットラジオのvTunerに対応する。オプションで無線LANも追加可能。

 AirPlayにも対応。iPhoneなどから楽曲を再生できる。iPod/iPhone/iPadとのUSBを使ったデジタル接続にも対応。iPhone内の楽曲をAVアンプのDACやアンプを使い、高音質に再生できる。

 iOS端末からAVアンプを操作できる「iControlAV2」アプリも無償提供。ソース選択やボリューム調整だけでなく、ネットワークオーディオの選択、ネットラジオの選局などの細かい操作にも対応できる。また、Android端末向けアプリも提供している。

 Bluetooth用には「Air Jam」という独自アプリを用意。オプションのBluetoothアダプタ「AS-BT200」(オープン/実売9,800円前後)を使い、Bluetooth経由での楽曲再生にも対応する。さらに、iPod touch/iPhone/iPad用に、音楽コミュニケーションを実現するというアプリ「Air Jam」も無償で提供する。

 友達が集まった時やパーティーなどでの利用を想定したもので、Bluetoothで楽曲を転送・再生するアプリ。同じアプリを起動した端末が、AVアンプに同時接続できるのが特徴で、各端末のユーザーが、端末に保存している好きな曲を選択し、ひとつのプレイリストを作成。それをAVアンプで連続再生できる。登録した楽曲情報は履歴として残るため、気に入ったものがあれば、その履歴からiTunes Storeにアクセスして購入したり、YouTubeで関連動画を検索する事も可能。新しい音楽と出会う事ができるアプリとなっている。

9chでのスピーカーシステム構成例LX85の背面LX75の背面

 

モデル名SC-LX85SC-LX75
定格出力合計810W(8Ω)合計720W(8Ω)
最大出力220W/ch
ライン入力S/N比103dB
HDMI出力×2、入力×7
音声入力アナログステレオ(RCA)×4
アナログ7.1ch(RCA)×1
Phono(MM)×1
同軸デジタル×2
光デジタル×3
アナログステレオ(RCA)×4
Phono(MM)×1
同軸デジタル×2
光デジタル×3
映像入力コンポーネント×3、コンポジット×4
音声出力アナログステレオ(RCA)×1、
アナログ9.2chプリアウト(RCA)×1、
光デジタル×1、
マルチゾーン(コンポジット:Zone2、Zone3)
*LX85のZone2はコンポーネントも
映像出力コンポーネント×1
コンポジット×1
その他の端子USB×2、Ethernet、12Vトリガー、
RS232C、IR入力×2、IR出力×1
Hi-Bit 32
フルバンド・
フェイズコントロール
プラス
プレシジョンディスタンス-
RFリモコン-
消費電力370W
(待機時消費電力0.1W)
外形寸法
(幅×奥行き×高さ)
435×441×185mm
重量17.8kg17.5kg

 


(2011年 9月 14日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]