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「BDビデオは'13年にDVDを逆転する」。DEGが拡大宣言

−BD + DVDコンボやレンタル強化など。大林監督も提言


都内で行なわれた「ブルーレイ拡大会議」

 映像コンテンツメーカーや機器メーカーが加盟するデジタル・エンターテインメント・グループ・ジャパン(DEGジャパン)とBlu-ray Disc Association(BDA)は2日、Blu-rayソフトの市場動向や、業界の取り組みを説明する「ブルーレイ拡大会議」を開催した。

 このなかで、2013年にBDソフトの出荷額がDVDを逆転し、2014年にはBDシェア7割を目指すと宣言。この目標を実現するための取り組みなどについて説明した。

 また、ゲストとして登場した映画作家の大林宣彦氏と、評論家の麻倉怜士氏によるトークセッションも行なわれた。クリエイターの視点からBDの役割に期待を寄せる大林監督と、BDならではの映画の楽しみ方を紹介する麻倉氏が“BDと映画”について語った。



■ BDを取り巻く市場環境

DEG会長の塚越隆行氏

 「ブルーレイ拡大会議」は、BDの登場から5年が経過したことを受けて、今後の市場の成長を加速することを目的に開催されたもの。

 DEG会長であり、ウォルト・ディズニースタジオ・ジャパン ゼネラルマネージャーの塚越隆行氏は、「昨今、経済も政治もいい話が無い中、我々の映像産業だけでも、とにかく元気を出してこの状況を打破していきたい」と開会を宣言した。

 BDを取り巻く現状として、ジーエフケー マーケティングサービス ジャパン(GfK)のコンシューマーテクノロジー事業部 コンシューマーテクノロジー事業部 コンシューマーエレクトロニクスビジネスユニット アナリストの山形雄策氏がハード/ソフト売上の推移から説明。


GfKの山形雄策アナリスト

 小売店の販売データ調査を見ると、2011年はエコポイント終了で売上が例年の水準まで落ち着いた一方、サイズ別では32型以上の割合が増え、2010年初で約1/3、直近では4割を占めているという点に着目。「2011年は地上アナログ終了に向けて、19型以下の小型モデルが伸びたが、その後は40型以上が揺り戻しを見せている。BDの高性能を活かせるのは大画面。大型が増えているのはポジティブな動向」との見方を示した。

 また、レコーダ/プレーヤーについてもBDのシェアが拡大し、数量構成比ではレコーダが94%となっている。プレーヤーはまだ約1/4程度だが、前年比150%まで増えており「まだ伸びる余地がある」とした。BDレコーダ/プレーヤーにおける3D対応数量構成比は、レコーダが94%、プレーヤーが14%だという。そのほか、PCにおいても市場全体では横ばいの中、BD対応モデルがプラス50%増で推移していることも紹介した。

 これらの機器にゲーム機などを合わせたBD対応ハードウェア市場は、100万台だった'07年から、'11年には1,250万台まで拡大。累計では3,400万台としている。普及率でみると、日本の家庭が5,000万世帯とした場合、一家に複数の機器があると考えても「30〜40%の一定の普及に至ったのでは」と分析している。

 ソフト市場は、'11年は年間でBDが1,160万枚に達した。パッケージソフト全体の20%となり、構成比は年々拡大している。一方、ジャンル別で見ると、パッケージソフト全体では洋画、音楽、アニメの順で高いにも関わらず、音楽ソフトのBD割合は8%と、他のジャンルに比べて低い。同様に、趣味・教養、邦画、テレビドラマについても、BD割合が低いジャンルとなっており、これらについてはまだ伸びる余地があると見ている。山形氏は「BDのメリットを消費者に訴求することが、発展につながるのでは」とまとめた。

キネマ旬報映画総合研究所の小池正樹氏

 キネマ旬報映画総合研究所 主任研究員の小池正樹氏は、レンタル店の店頭や、インターネットで実施した調査を元に、ユーザーの意識などを説明。このなかで、BDの認知は高まっているものの、BDに消極的なユーザーには「BDで借りられる作品が少ない」、「画質・音質にこだわらない」、「在庫数が少ない」などの意見が多かった。それでも、ライトユーザーに対してもBDの映像を一度見せると「これほどとは思っていなかった」、「BDが観られるならDVDは選ばない」という意見が出たことから、レンタル店の店頭状況を重要なポイントとして挙げた。


BDの購買意向 BDに積極的でない消費者の意見 レンタルBD普及の重要性を指摘


■ 2013年にBD金額シェアはDVD逆転へ

BD部会長の福田太一氏

 DEGのBD部会長を務めるワーナー・ホーム・ビデオ&デジタル・ディストリビューション ジェネラルマネージャーの福田太一氏は、BDビデオソフト拡大のための具体的な取り組みについて説明。

 第1に挙げたのが、「BD+DVDコンボ商品の啓蒙」。家では高画質なBD、車や外出先では手軽なDVDを視聴するというスタイルを提案する目的で、“DVD+ブルーレイ”のロゴも作成した。

 そのほかにも、ソフト店20店舗(2月末時点)で、Blu-ray 3Dソフトのデモ再生を行なったり、映画会社が共同でトレーラーを作成して、ハード売場2,000店以上に配布予定としている。BDレンタルについては、各店舗に対してアンケート調査を行ない、今後、具体的なアクションを企画・実行していくという。

 加盟社個別の取り組みについて、福田氏はワーナーの例を紹介した。同社は、特にBD/DVDコンボ商品に注力。2011年度はBDリリースした劇場公開作23タイトルのうち、BD/DVDコンボは21タイトルだった。2012年度は劇場公開作のBD26タイトルのうち、コンボは23タイトルを予定している。また、3D作品については、'11年度が「ハリー・ポッター」など7タイトル、'12年は「グリーン・ランタン」など5タイトルが決まっている。'12年は、洋画だけでなく、海外テレビドラマも積極的にリリース。さらに、旧作については'11年の40タイトルに対し、'12年は100タイトルまで増やす予定。

コンボ商品のためのマークを作成 店頭で3D作品を訴求 DEGジャパンがBD作品を表彰する「DEGアワード」の「レストア/名作リバイバル賞」作品の上映会を東京・神保町で開催
BD部会副会長の安武美弥氏

 邦画については、BD部会副会長で、東宝 映像本部 映像事業部 映像ソフト事業室 室長の安武美弥氏が説明した。

 東宝では、'11年度にセル商品44タイトル、うち劇場公開作が8タイトルだったのに対し、'12年はセル55タイトル、劇場公開作は17作品まで強化する。レンタルは、'11年が9タイトル(劇場公開作6タイトル)、'12年度は23タイトル(同20タイトル)まで強化するという。

 こうした取り組みの成果が得られれば、BDとDVDの金額シェアが23.1:76.9となっている現状から、2012年には41:59に、そして2013年には58:42へと逆転するとDEGでは予測。2016年には94:6となってBDシフトが完了すると見込んでいる。


東宝のセルBDへの取り組み レンタルBDへの取り組み 邦画各社のBD予定タイトルなど
DEGアワード受賞作品を、ソフト店でアピールするという施策も DEGがBD普及に向けて製作するパンフレット BD部会の勉強会も開催
2013年にBDとDVDのシェアが逆転すると予測 2014年にはBDシェア70%以上を見込む

■ 大林宣彦氏「BDは創造のメディア。カラー/3Dで『七人の侍』撮りたい」

大林宣彦氏(左)と麻倉怜士氏(右)

 AV評論家の麻倉怜士氏と、映画作家の大林宣彦氏によるトークセッションは「DVDは“文明”だが、BDは“文化”である ―BDでこそ味わえる映画の醍醐味―」と題して行なわれた。

 2人はかつてイベントでトークを交わしたことがあり、そこで生まれたのが大林氏の「BDは文化」という言葉。BDは“再現メディア”ではなく、“創造メディア”」と語る。

 大林氏は自らの作品についても「ファンに『作品をDVDで観て、良かった』と感想を言われても、それは本物を観ていないよな……とさびしい思いがあった。BDだと『お前はオリジナルを観たな』という喜びがある。作り手から言うと、BDは大変なクオリティを獲得したが、それを戦略的に、クリエイティブに活かしていない。単なる再現ソフトになっている。単なる“再現メディア”なら、DVDとBDの違いが要求されない作品も多いんですよ」と語る。

 一方、DEGやBDAに対しては「ちょっとクオリティが上がっただけでBDを、ということにはなかなかならない。巨大なスクリーンを対象として作られたものを小さな画面で見るのは、基本的にダメ。だけどオリジナルよりも小さなものがよりクオリティをもって再現されると、オリジナルに近づく。ひょっとするとオリジナルを超える」と述べた。

 麻倉氏は「例えば『アラビアのロレンス』は、リストア版が秋にBDが発売されますが、オリジナルネガから8Kでスキャンして、4Kでリストアしています。それを、DVDのときの2Kマスターと300インチで比較したら、前のマスターはVHSみたいだったんですよね」との体験を加えた。

 過去の名作映画をBD化で改めて見つめ直すことについて、大林氏は自身のエピソードを紹介。大林氏が35年前に撮った「ハウス」という作品に対して、あるクリエイターから『俺の演出でBDを作らせてくれ』という申し出があったという。色調整などがオリジナルの狙いとは違ったものになり、現代の作品としてよみがえった。再現ではなく、表現のクオリティがよくなった」と絶賛。

 黒澤明の「七人の侍」についても「あんな面白い映画を、過去の名作にしておくのはもったいない。しかるべきクリエイターによって、横長の画面になっても、不遜ではない」と語ると、麻倉氏は「CDでいうとマスタリングがそう。芸術性を持ったマスタリングエンジニアが手を加えると、新しい息吹が入る」とした。これに対し大林氏は「それができるのが、Blu-rayの楽しみ。『黒澤明の7人の侍 大林宣彦バージョン』というように、責任をとれる人間がいれば、しかもそれにいいキャストが加われば……ひょっとしたら外国人がいいかもしれない。3D、カラー、大画面で再現してみても」と構想を膨らませた。

 最後に、大林氏は業界に対してリクエスト。「冒険してください。DVDができた時や、ビデオテープの時も、たいへんな冒険だった、Blu-rayができたときは、まだ冒険をしていない。観客が手を出そうとしていないのは、DVDの延長線上でクオリティが良くなったというだけでは、胸が騒がない、血が騒がないから。購買者の血を騒がせるためには『Blu-rayになったからこういうことができるんだ。黒澤明に色がついて、3Dで三船が人を斬ったぞ』なんていえば、大ヒットする映画になるし、Blu-rayが文化としての“事件”を起こす。挑発するようですけど、そういうクリエイティブな発想で、Blu-rayを見つめ直して欲しい」と語った。

単に画質だけでない魅力を語った大林氏。七人の侍の大林宣彦バージョンに前向きで「よろしくお願いします」と笑顔を見せた 麻倉氏は、実際の映像を交えて映画BDの楽しみ方を紹介した 大林氏は、麻倉氏のホームシアターに映画を観に訪れたこともあるという


(2012年 2月 2日)

[ AV Watch編集部 中林暁]