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DEGジャパン、BD普及に向けた「拡大会議」を開催

竹中直人がアンバサダーに。アワード受賞ソフト発表

BDの魅力を広めるアンバサダーに就任した、俳優の竹中直人氏

 映像コンテンツメーカーや機器メーカーが加盟するデジタル・エンターテインメント・グループ・ジャパン(DEGジャパン)は15日、Blu-rayソフトの市場動向や、業界の取り組みを説明する「ブルーレイ拡大会議」を開催。BDの魅力を広めるアンバサダーに就任した、俳優の竹中直人氏も参加し、対談を行なった。

 さらに、2012年に発売されたBDソフトの中で、BDの特長を最も活かした作品を表彰する「DEGジャパン・アワード/ブルーレイ大賞」も発表。グランプリは「ヒューゴの不思議な発明 3Dスーパーセット」が獲得した。受賞作の詳細は後述する。

BDの市場構成比で日本が世界一に

DEGジャパンの会長であり、ウォルト・ディズニースタジオ・ジャパン ゼネラルマネージャーの塚越隆行氏

 DEGジャパンの会長であり、ウォルト・ディズニースタジオ・ジャパン ゼネラルマネージャーの塚越隆行氏は、「市場とりまく環境は厳しいが、その中でもBDは前年比17%の伸びを記録している。BDがいかに可能性を秘めた商材なのかという事を、メディアや流通の皆さんと共有し、今後の拡大に向けて、考えていきたい」と開会を宣言した。

 DEGジャパン副会長で、BD部会長も務めるワーナー・ホーム・ビデオ&デジタル・ディストリビューション ジェネラルマネージャーの福田太一氏は、市場分析と今後の取組について説明。

 2012年のBD/DVDセル市場は、映像ソフト市場全体の中で約48%を占めており、残りはレンタルとなる。セルソフト全体の規模は、前年比5.3%マイナスとなる2,174億円だったという。

 しかし、内訳を見ると、DVDは前年比12.9%のマイナスで1,488億円と減少しているが、BDは前年比16.6%のプラスとなる686億円に成長。市場全体における31.6%を占めるまでになったという。さらに、DEGではBD対応ハードウェアの普及率は60%と推測している。

DEGジャパン副会長で、BD部会長も務めるワーナー・ホーム・ビデオ&デジタル・ディストリビューション ジェネラルマネージャーの福田太一氏
セル市場の全体概要
国別のセル市場動向

 この規模は世界各国の市場と比べても大きい。2012年のBD/DVDセル市場の世界一はアメリカで6,888億円だが、BDの構成比は26.7%。日本の規模は2位の2,174億円だが、BDの構成比は31.6%とアメリカを上回り、世界一になったという(昨年はカナダが29.7%で1位)。

 これに加え、日本には世界と比べても圧倒的に大きなレンタル市場も存在。こうした点を踏まえ、福田氏は「日本は、映画の興行的な市場は、米国と比べると5分の1程度のサイズしかない。しかし、パッケージは種類も豊富でボリュームもあり、“パッケージ大国”なのだと感じる」と指摘。

 さらに、各国の市場成長率と、BDの成長率に着目。アメリカは市場全体が前年比-5.4%とマイナスだが、BDは+8.9%の伸び。日本は-5.3%(BDは+16.6%)、イギリスは-11%(BDは+3.8%)、ドイツは-2.5%(BDは+26.6%)などとなっており、いずれも市場全体としてはマイナス成長だが、BD市場の伸び率が高い国では、マイナスが緩やかだと指摘。「BDの競争力が高く、他のパッケージとキッチリ戦えているかどうかがわかる。BDの構成比を上げていくことが、市場の拡大には必要だ」と分析した。

竹島問題などで韓流ドラマは大きく下降

ジャンル別の分析

 2012年のBD/DVD日本市場におけるジャンル別の分析では、33.4%のシェアを占める音楽ビデオが、前年比13.7%と大きく伸長。23.2%のシェアを持つ日本のアニメは同-5.4%と微減した。大きく下降したのは、シェア12.3%の洋画が-19%、シェア5.1%の邦画が-24.6%、韓国テレビドラマは竹島問題の影響もあり、-29.6%と激減している。

 福田氏は、「フランスなど、海外ではハリウッドのコンテンツが8割、ドイツやイギリスでも6割を占めている。しかし、日本はジャンルが豊富で、ハリウッドコンテンツのシェアは17%しかなく、日本のアニメや音楽が強い。これは、日本の文化の強さの現れでもある」と分析。

 ジャンル別の動向としては、「音楽ビデオのBD化に伴う需要増があるので、2013年にも音楽セグメントは成長していくだろう」と分析。さらに、「2012年の洋画・邦画ソフトが弱かったのは、それらの作品が劇場公開された2011年に、震災の影響などもあり、興行的に厳しかったため。昨年は興行が好調で8%のアップ、アニメ映画も強かったため、今年は堅調だと予想している」とのこと。

 さらに、パッケージソフトとデジタル配信を融合させ、付加価値を高めたBDセルソフトの拡大において、スマートフォンやタブレット向けなどに代表されるデジタル配信市場の急伸が追い風になり、2013年の映像ソフト市場全体は「緩やかな成長軌道に乗る」と予測。また、DEGでは昨年のBD拡大会議で「2013年にDVDとBDの逆転」を目標としたが、「音楽ビデオは大きく成長しているが、BD比率は低いため、2013年の逆転はない。しかし、2014年を(DVDとBD逆転の)目標にできると考えている。それには、音楽ビデオのBD移行スピードによるところが大きい」と分析した。

 こうした点を踏まえ、BD市場成長のキードライバーとして、BDの特徴でもある“高画質”を体験してもらうための施策と、ユーザーに向けた継続的なコミュニケーションの実施の2点が大切だと説明。レンタルBDの拡大や、BD+DVDのコンボ商品の啓蒙、3Dソフトのデモ展示、良質なBDを紹介するDEGアワードと店頭を連動させたプロモーションや、メディアを活用したプロモーション、イベントの実施などを、具体的に実施していきたい活動の例として挙げた。

米国ではBDがUltraVioletへの架け橋に

DEGエグゼクティブ ディレクターのエイミー・ジョー・スミス氏

 アメリカのDEGが実施している活動について、来日したDEGエグゼクティブ ディレクターのエイミー・ジョー・スミス氏は、昨今の取り組みの一例として、BDの認知や、新タイトルの情報の伝達などにSNSが活用できないか話し合いを進めている事や、Facebookなどで50作品のBDがもらえたり、BDプレーヤーが当たるなどの大規模なキャンペーンを実施した事。新作映画のBDだけでなく、旧作(カタログライブラリ)のBD化充実が市場の成長には重要である事などを紹介。

 さらに、ひとつのユーザーIDで、様々なデバイスの間でのコンテンツの管理/視聴を可能にするコンテンツ配信基盤「UltraViolet」に、多くのメーカーが参加し、大規模な広告キャンペーンを展開している事も説明。「BDはフィジカル(物理的なパッケージメディア)と、デジタル(デジタル映像のネットワーク配信)の架け橋になるものであり、UltraVioletへの架け橋でもある。米国ではセカンドスクリーンにも注目が集まっている。BDは高画質・高音質に加え、ネットワークとの接続性もあり、DVDとの互換性もある。こうした魅力を周知していく事が重要」と指摘。

 その上で、BDの魅力が伝わらない店頭展示や、デモ用テレビが備わっているのにテレビの電源が入っていないなど、店頭でのアピールが不足している実例も紹介。こうした店舗向けに、BDソフトだけでなく、再生できるハードウェアも1つの棚に並べられる陳列棚を用意するなどの対応策も紹介した。

テレビが備わっているのに電源が入っていないBDソフト棚
ハードとソフトを一度に陳列できる棚を提案
DEGのメディア&コンテント オペレーション チェアマンのラリー・ウィルク氏

 さらに、DEGのメディア&コンテント オペレーション チェアマンのラリー・ウィルク氏が、パッケージングなどに関する工夫を説明。BDのケースを、56gあった従来のものから44gの軽いものに変更し、全てのベンダーやスタジオに採用してもらった事や、3D Blu-rayの作品であっても、2D BDと同じサイズのケースとして、色などの違いで“3D対応ソフトである事”をアピールするよう働きかける事などで、コストを低減。オートメーションも上手く機能するようになったという。

 ほかにも、リージョンコードを無くしたり、3D BDと2D BDをセットにした商品をやめ、3Dソフト1枚で、2D映像も再生できるタイプの商品を増やし、ディスクを削減するといった施策も実施。

 また、BD製作のためのオーサリングにおけるテンプレートの拡充、3Dソフトやセカンドスクリーンでもテンプレートを用意する事などで、ソフトの質やコスト面の効率を改善。発売されるBDソフトの増加が実現できた事や、多くのスタジオが同じデュプリケーター(量産工場)を使っているが、リリース時期の重なりなどで生産能力が足りない事もあるため、カタログ(旧作)ソフトの生産を年初に行ない、各スタジオで日付を調整し、効率化を推進している事なども紹介した。

DEGジャパン副会長で、ソニーのVEプロジェクト室 室長の島津彰氏

 最後に、DEGジャパン副会長で、ソニーのVEプロジェクト室 室長の島津彰氏が登壇。ハード面の動向として、「スマートフォンがフルHDになる時代だが、映画はやはり大画面で観ていただきたいとつくづく思っている。テレビもこれからどんどん進化し、有機ELや4Kも出て来る。撮影するカメラも4Kになっていく。それを家庭に届けるには何がいいのか。BDであれば、解像度はフルHDだが、情報量が多いので4Kテレビで良く再現できる。経済的で合理的なメディアだ」と語り、4K時代になってもBDが大きな役割を担っていくと予想した。

竹中直人氏がBDの魅力を語る

俳優の竹中直人氏

 BDの魅力を一般にアピールするアンバサダーに就任したのは、自宅に100インチのスクリーンを導入し、数千枚のBDを楽しんでいるという俳優の竹中直人氏。竹中氏はゲストとして会議に参加し、AV評論家の麻倉怜士氏と対談を行なった。

 竹中氏はBDの魅力について、「映像が本当に凄いし、音も全然違う。字幕も見やすくて、見る作品全部に驚いています。例えば『アラビアのロレンス』など、50年も前の作品とは思えない、まるで今の映画のように綺麗。“信じられない”ではなく“信じきれない”ほど綺麗。ブレードランナーも、昔はVHSで満足していましたが、LDでより凄く、DVDでもっと綺麗に、BDはもっともっと綺麗。映画の中で、日本語のセリフで小さく“なんじゃこりゃ”って言っている部分があるんですが、その声もBDでは良く聴こえるし、壁にいやらしい言葉が書いてあるのも読めちゃう(笑)。『メリダの恐ろしの森』ではメリダの髪の毛が本当に綺麗。『ヒューゴの不思議な発明』も凄かった」など、印象的な作品を列挙。

 麻倉氏は、この「アラビアのロレンス」について、「100人のスタッフが1年かけた大規模なレストアで、65mmのフィルムから8Kでスキャンし、4Kでレストア。オリジナルネガは30回コピーされて劣化していたが、それが修正された。しかし、情報量が多いので、画面を4分割して手分けして修正が行なわれた」と、具体的な作業を説明。

 その上で、こうしたレストアを経た旧作だけでなく、新作も含め、「BDはハイビジョンだから“絵が最高”というわけではない。こだわりを持って作っている人がいて、そのこだわりや情報量を受け入れるだけのキャパシティがあるのがBD。作る人の能力の高さと、BDのキャパシティ、その掛け算がBDの魅力」と語る。

 さらに麻倉氏は、最近のお気に入りソフトとして、ジーン・ケリーが雨の中でタップダンスを踊るシーンが広く知られている、'52年公開の名作「雨に唄えば」を紹介。製作60周年を記念した、リマスター版BDの北米版には、作品にちなんで傘がついてくるという。「DEGのアワードにも、パッケージ(の特典)に対する、何か懸賞も欲しいですね」と語った。

AV評論家の麻倉怜士氏
「雨に唄えば」の北米版BDに付属する、特典の折りたたみ傘

 はやくBDで観たい作品として、007シリーズの最新作「スカイフォール」を挙げた竹中さんは、シリーズの大ファン。「ダニエル・クレイグがクリーチャーと戦う、(竹中さん想像の)新作の夢を見たくらい」と笑う。

 「小学校の頃、映画館で観たドクター・ノオを、BDで観たんです。ショーン・コネリー(演じるボンド)が殺し屋に襲われるシーンがあるんですが、対決する前に、殺し屋が歩いて来るシーンがワンカットある。ただ、殺し屋はベージュの服を着ているのですが、その外を歩いているシーンでは服が紺色なんです。戻してよく確認したら、そのシーンは殺し屋じゃなくてショーン・コネリーが歩いているんですよ(笑)。外を歩いている映像が無くて、これでいいやと使っちゃったんだと思いますが、そういった点にも気付けるのがBDですね」と、ファンならではの見どころを紹介。

 アンバサダーとしての意気込みとしては、「とにかく“今までは何だったんだ”というくらい素晴らしい映像と音声。愛する映画をBDで観られる楽しさを、もっと多くの人に知ってもらい、手にして欲しい。街を歩いていて『BD持ってないのか? だめだぞそれじゃ!』と声をかけていきたいくらいです」と語り、会場の笑いを誘った。

 自宅に150インチスクリーン+4Kプロジェクタを導入している麻倉氏は、「4K放送も近づいているが、映画こそ4Kで観たい。配信も来ると思いますが、(パッケージとして手元に無いと)つまらないので、BDでも4Kのフォーマットをキチッと作って、4Kソフトを出して欲しいと、4Kユーザーとして思います」と要望を語った。

DEGジャパン・アワード/ブルーレイ大賞

 2012年に発売されたBDの中で、BDの特長を最も活かした作品を表彰するアワードで、今回で5回目となる。合計12部門が用意され、エントリー数は過去最多の77作品。

 グランプリは、「ヒューゴの不思議な発明 3Dスーパーセット」で、この作品はベストBlu-ray 3D賞も受賞。「豪奢で情報量が多く、表現性が深く、多彩な作品。芸術性と高画質性をきわめて高い次元で両立させた。画調的にはまったく新しく、似ている映画が無い。フィルムなのかデジタルなのか一見では判別できない、まさに画質のファンタジー。3Dとしても素晴らしいし、2Dも圧倒的な表現力だ。映画をリスペクトする内容もグランプリにふさわしい」と評価された。

 一般ユーザーからの投票のみで決定するユーザー大賞は、過去最多の投票数4,489人の中、「glee/グリー シーズン3 ブルーレイBOX」が受賞している。

【受賞作の一覧】
グランプリヒューゴの不思議な発明
3Dスーパーセット
ベストBlu-ray 3D賞ヒューゴの不思議な発明
3Dスーパーセット
ベスト高画質賞映画部門(洋画)【初回限定生産】
ダークナイト ライジング
ブルーレイ&DVDセット(3枚組)
映画部門(邦画)わが母の記
TVドラマ部門スパルタカス ブルーレイBOX
企画映像部門Healing Islands OKINAWA4~石垣島~
アニメ部門(洋)メリダとおそろしの森
アニメ部門(邦)コクリコ坂から
ベスト高音質賞音楽部門
(クラシック)
驚異のデュオ
ベルリン・フィルハーモニック・デュオ
音楽部門
(ポップス他)
オペラ座の怪人 25周年記念公演
in ロンドン
映像部門フローズン プラネット
BBCオリジナル完全版
Blu-ray BOX
ベストレストア/
名作リバイバル賞
アラビアのロレンス
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(山崎健太郎)