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13.1ch対応の高音質オーディオコーデック「Auro-3D」

−劣化を抑えて多チャンネル化。オノセイゲン氏も評価


Auro TechnologiesのWilfried Van Baelen CEO

 ベルギーのオーディオ技術開発会社であるAuro Technologiesは11日、13.1chにも対応するオーディオコーデック技術「Auro-3D」を発表した。

 都内で行なわれた発表会には同社CEOのWilfried Van Baelen(ウィルフリード・ヴァン・バーレン)氏が来日。マスタリングエンジニア、レコーディングエンジニア、音楽プロデューサーとしても知られるオノセイゲン氏がコーディネートする形で行なわれ、ホテルの一室でサラウンドのデモやAuro-3Dによるエンコードとデコードのデモが披露された。


オノセイゲン氏 デモが行なわれた会場

 Auro-3Dのコンセプトは、5.1chや7.1chが収録の限界となっているDVDやBlu-ray Discに、9.1chさらには13.1chといったより多チャンネルの音を高音質で入れようというもの。このAuro-3Dは、ジョージ・ルーカスの新作映画「RED TAILS」でも使用しているとのことで、発表会場でこの作品の一部が上映された。ここで使われたのは9.1chのサラウンドスピーカー。Genelecの小さなスピーカーが5.1chで設置されるとともに、部屋の天井の隅に4つのスピーカーがセッティングされていた。

 「特に何のチューニングもしていないホテルの一室に、単純に小さなスピーカーを置いただけですが、これで9.1chの素晴らしさが十分に実感できるはずです」とオノ氏。この映画のほかにも、オーケストラをレコーディングしたもの、街の雑踏、森の中での音、また空軍の飛行機の発着を録音したものなど、さまざまなシチュエーションのサラウンドの音が再生された。この際、下の5.1chだけで鳴らした場合と、上の4chを加えた場合を切り替えながらのデモも行なわれたが、確かに音のリアルさは明らかに変わる。たとえば、森の中で自然の音を捉えつつ、遠くから教会の鐘が鳴る音が聴こえてくるといったシチュエーションで、9.1chで再生されると、どの方向から鳴っているのかがハッキリと認識できた。

Genelec製のスピーカー 天井の隅に4つのスピーカーを配置 映画や音楽、自然音など様々なサラウンド音声をデモした

 実際の映画館では、13.1chが使われているため、よりリアリティが出せるとのことだが、問題はこれをどうやってパッケージに収めるかという点。そこでBaelen氏が行なったのがProTools9を使ってのデモだった。

 まず、まったく関係のない2つの曲をそれぞれモノラルトラックで用意。これをAuro-3Dのエンコーダーを用いて1トラックのステレオへとミックスする。このエンコーダーにはミキサー機能も装備されているため、ProToolsのミキサーではなく、Auro-3Dのミキサーを用いてミックスする形となる。その結果のモノラルトラックを再生させると、フェーダーの動きを含め、ミックスされていることが確認できる。また、ここで聴いている限り音質的にはとくに変化は感じられない。

 次にデコーダを通して再生させると、完全に元の2つの曲に分離される。「MP3やAAC、ドルビーデジタルなどの圧縮とはまったく違うエンコードを行なっているため、ほぼ完全な形で再現させることができます」とBaelen氏。にわかには信じられないのだが、ここで面白い実験が行なわれた。それは元の音とモノラルファイルからデコードした音を位相反転させた上でミックスさせるとどうなるか、というものだった。

 エンコード・デコードを行なった結果、ProTools上では2サンプルの遅れが出ていたため、それを補正してからミックスすると、完全に音が消えて音量を上げてもまったく聴こえないのだ。試しにMP3で同じ実験を行なったところ、ハッキリとノイズが聴こえている。

 Baelen氏は「これは数学的な計算に基づいたエンコードを行なっており、普通使っていない下位ビットを有効利用しているため、音質劣化がない」と説明した。

2つのモノラルトラックを用意 デコーダを通して再生させると、完全に元の2つの曲に分離された

 この技術を利用することで、9.1chを5.1chに変換したり、5.1chをステレオ2chに変換することが可能。その結果の音は何のデコードもしなければ、普通にミックスした音として聴こえる一方、デコードをすると元にチャンネル数に戻すことができるのだ。極端な例をいえば、9.1chを5.1chを経由してステレオ2chにまで落とし、それを元に戻すことも可能となっている。さすがに、ここまでやると音質的な劣化はあるようだが、使い勝手は非常によさそうだ。

 「サラウンドでレコーディングしたものを、普通はミックスしてチャンネル数を減らして使いますが、ここにはどの音を残すべきかなど苦労や葛藤があります。でも録ったチャンネル数のまま収録でき、再生できるのであれば、作業はずっと楽になるし、何よりも音の再現性が高くなります。Auro-3Dを使えば、そうしたことが実現できるわけです」とオノ氏は話す。

 今後はハードウェアへデコーダーを組み込むといったビジネス展開も行なっていくようだが、応用方法はかなり広そうなので、圧縮オーディオの世界にも影響を与えるかもしれない。

9.1chを5.1chに変換することなども可能だという 今回行なわれたデモもこのようなサラウンド用のマイクを使って収録している オーディオインターフェイスにはREMのFireface UFXが使われていた


(2012年 4月 12日)

[Reported by 藤本健]