ソニーとベルリン・フィル、4K/DSD活用の協業を説明

「デジタル・コンサートホール」配信は1080i映像に


銀座ソニービルの8階・OPUSで視聴イベントがスタート

 ソニーは既報の通り、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏を4K映像とDSD音声で視聴できる「ベルリン・フィル in 銀座」(入場無料)を11月26日~12月22日に東京・銀座のソニービルにおいて開催する。

 初日の26日、ソニーとベルリン・フィルの協業に関する記者説明会を開催。ソニービル8階のイベントスペースOPUSにおいて、4K/60pの200型映像と、DSDマルチチャンネル音声を上映した。さらに、ベルリン・フィルから、ソロ・チェロ奏者でメディア部門代表のオラフ・マニンガー氏もゲストとして来場。協業の目的や今後の取り組みなどについて説明した。

 また、ソニーの対応テレビやAVアンプなどを使って視聴できる配信サービス「デジタル・コンサートホール」について、現在の720p画質から、1080iへ向上することも発表。現在、ホールに新しい収録機器をインストール中とのことで、12月中に実現する見込み。

 新たな収録機器を使った映像については1080iで配信。既存のアーカイブ映像は720pのままとなる。現在のデジタル・コンサートホール対応機器で引き続き視聴でき、料金も従来から変更しない。


説明会の冒頭に、実際のイベントで上映されるサイモン・ラトル指揮のワーグナー「ワルキューレの騎行」の4K/60p映像とDSDマルチチャンネル音声を200型プロジェクタとスピーカー「SS-AR1」などを使って上映。実際のホールの音の再現を追求したという迫力と繊細さに圧倒された。個々の楽器の質感まで手に取るように感じられる映像も見事


■ 4K体験はすぐそこに

ソニーの加藤滋氏

 記者説明会では、ホームエンタテインメント&サウンド事業本部V&S事業部長の加藤滋氏が「ベルフィン・フィルとの協業により目指す世界」について説明。

 協業した背景について加藤氏は「良い音楽を一人でも多くの人に届けたいという両者の想いが一致した」という点と、「素晴らしい音楽をホールでの演奏に近づけて、多くの人に届けるための技術を一緒に見つけ出す」という2つの目的を挙げた。

 加藤氏はベルリン・フィルの実際のコンサートホールについて「音のダイナミックさにかけて、これに優れるホールは知らない。演奏家の気持ちが音と共に大きくなったり小さくなったり、ささやくようなこの感動を、われわれの機器で再現することにおいて、ベルリン・フィルこそ最高のパートナー。両者で手を取り合って、最高の音作りを再現して行こうと考えている」とした。

 ソニーとベルリン・フィルのつながりは、大賀典雄氏とヘルベルト・フォン・カラヤン氏の出会いから続いており、80年代のCD開発時に1枚の収録時間が74分42秒に決まった際にも、両者の考えを通じて「ベートーベンの第9が入る75分」とした点も知られている。

 2010年5月には、前述した「デジタル・コンサートホール」のソニー製品向けへの配信を開始。そして、2012年8月にドイツで行なわれた「IFA 2012」において、オーディオ製品の高音質化に向けた技術開発などで協業することを発表した。家庭やモバイル機器での音楽体験を改善するための取り組みとして、ハイビジョンや4K映像のレコーディング/エンコーディングや、DSDなどハイレゾ音声などの分野で協調している。

 技術面について加藤氏は、「映像/オーディオは、記録から再生まで全て整って、はじめて最高の画質/音質が体験できるが、今までは分業となっていた。(今回のイベントで上映される)ワーグナー『ワルキューレの騎行』は、ソニーが録画/録音の場面に立ち会っており、そこで観た画と音になるように全システムを調整した。業務用4KカメラやDSD録音装置などを持っているソニーだからこそ、トータルソリューションが提供できる」とした。

 今回のイベントでは、OPUS以外にも4階のシアタールームでプロジェクタの「VPL-VW1000ES」やAVアンプ「TA-DA5800ES」などの4K機器を使っていることから、「みなさんの家庭にも4Kを実現できる。4K/60pはまだ配信できないが、将来、ネット回線がもっと太くなれば、4Kディスプレイを持っている人にとって4K体験がすぐそこにある状況」とした。

写真右がベルリン・フィルのコンサートホールソニーとベルリン・フィルのこれまでのつながりソニーの4K/DSD機器
ベルリン・フィルのオラフ・マニンガー氏

 ベルリン・フィルのオラフ・マニンガー氏は、ソニーとの関係について「30年近く続いており、親しい友人への長年の友情のようなもの」と表現。インターネットにより音楽の配給方法に大きな変化が訪れたことを説明し、「アーティスト、レーベル、技術プロバイダは、新たな配給の方法を開く必要がある。ハードウェア、ソフトウェア、コンテンツは、ユーザーにとってより簡単に、多彩な内容を届けられるようになるべき」と主張した。ベルリン・フィルは'08年に演奏会のネット配信をスタート。現在400曲以上のオーケストラ曲と20本のドキュメンタリーを配信中。毎シーズン、40回のライブ演奏会の中継も行なっている。


ベルリン・フィルの音楽配給に対する考え音楽配信への取り組みソニーとの協業内容
ソニービル8階OPUSのホワイエに、協業の内容やデジタル・コンサートホールの説明などをパネルで展示4階に展示されている4Kテレビ「KD-84X9000」でも4K映像を上映している。また、隣のシアタールームで4Kプロジェクタの映像も観られる46型テレビ「KDL-46HX850」などを使って、現在のデジタル・コンサートホールで配信されている720pコンテンツのデモも
1977年のPCMプロセッサ「PCM-1」など、CD誕生/普及にまつわる貴重な機器が1階に展示されている1982年のCD第1号機「CDP-101」1984年の世界初ポータブルCDプレーヤー「D-50」
カラヤン氏がベルリン・フィルに宛てた手紙もソニーとベルリン・フィルの、より良い音への挑戦に関する説明会場の銀座ソニービル


(2012年 11月 26日)

[AV Watch編集部 中林暁]