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ソニー、'12年度第3四半期は営業利益464億円。Vitaは大幅下方修正
TV/エレキ収益改善も主要製品の販売目標は下方修正
(2013/2/7 17:31)
ソニーは1日、2012年度第3四半期決算を発表した。売上高は、前年同期比6.9%増の1兆9,480億円。営業利益は464億円、税引前利益は294億円。純利益はマイナス108億円の赤字だが、前年同期のマイナス1,590億円から大幅に縮小している。12月までの通期では、売上高は前年比3.6%増の5兆678億円、営業利益は830億円(前年は659億円の赤字)、純利益はマイナス509億円。
ソニーモバイルの完全子会社や円安要因で売上高は増加したが、エレクトロニクス主要製品の販売状況は、「景気減速や競争激化の影響で厳しいものとなった」(加藤優 執行役EVP CFO)とする。営業利益はテレビ事業の損益改善などで、大幅に改善。しかし、11月予想に対しては、映画や音楽、金融分野は好調だったものの、エレクトロニクスの販売状況は想定を下回る状況となっている。
2012年度の通期連結業績予測は、11月の予測から変わらず、売上高は6兆6,000億円、営業利益1,300億円、税引前利益1,500億円、純利益200億円。エレクトロニクス5分野の通期見通しは、全分野で売上高と営業損益が'12年11月時点の想定を下回る。スマートフォンとPS3は年間販売台数見通しを据置きとしたものの、それ以外の主要製品、ビデオカメラ、コンパクトデジタルカメラ、PC、液晶テレビ、携帯型ゲームハードウェア(PSP/PS Vita)が、全て下方修正となったため。構造改革の成果は出ている一方で、主要事業が伸び悩むという状況だ。
テレビは大幅な損益改善
ホームエンタテインメント&サウンド(HE&S)は、売上高が前年同期比17.9%減少し、3,238億円、営業利益は前年の898億円の赤字から810億円改善し、マイナス80億円。液晶テレビの販売減により減収。営業利益については、昨年度のS-LCD持分の減損634億円が無くなったことや、収益改善プランが想定より好調に推移していることから、損益が改善した。
テレビについては、売上高が前年同期比23.3%減の1,827億円、営業損失は同866億円縮小し、147億円となった。販売台数は前年同期比180万台減の420万台。「安定的な事業構造に移行し、'13年度黒字化に向けて収益改善に取り組む」としている。なお、2012年度の液晶テレビ通期売上台数見通しは100万台下方修正し、1,350万台とした。
また、ブルーレイディスクプレーヤー/レコーダについても年間販売台数見通しを下方修正。11月見通しから20万台減の660万台となる見込み。
PSP/PS Vitaは年間300万台の下方修正
ゲームは、売上高が15.1%減の2,685億円、営業利益は86.4%減の46億円。PlayStation 3やPSPのハードウェア/ソフトウェア減収により、売上は大幅に減少。営業利益もハードウェア減収が響き大幅減となった。PS3、PS Vitaは11月に想定していた台数に届かず、「PS Vitaは、我々から見ても思うほどの成績を上げていない」と言及した。
PSP/PS Vitaの第3四半期販売台数は270万台。通期の販売見込みは当初の1,000万台から300万台下方修正の700万台。
コンパクトデジカメやVAIOを下方修正。イメージセンサー好調
イメージング・プロダクツ&ソリューション(IP&S)は、売上高が前年比4.7%減の1,805億円、営業利益はマイナス29億円。コンパクトデジタルカメラの大幅減や、放送業務機器の大幅減収が響いたが、レンズ交換式一眼カメラは大幅増となった。放送業務機器は中国などで不調。
コンパクトデジタルカメラの第3四半期売上台数は430万台で、前年同期の610万台から大幅減となっている。スマートフォンの普及などで低価格帯の市場が大幅に縮小しているためで、イメージセンサーや画像処理エンジン、レンズなどの独自技術を活かせる高付加価値商品に注力する方針。年間販売台数見通しも100万台下方修正し、1,500万台とした。
スマートフォンやPCを含むモバイル・プロダクツ&コミュニケーション(MP&C)は、94.4%増の3,188億円、営業利益はマイナス213億円。増収はソニーモバイルの100%子会社化によるもので、仮に前年同期も100%連結とすると10%の増収となる。ソニーモバイルについては、Xperia Zに搭載した積層型イメージセンサーなど独自技術で商品力を強化。来年度はソニーモバイル単体での黒字化を見込む。
VAIOについては、シェアを維持しているもののWindows 8の導入が想定を下回っていることなどから、通期販売予測を下方修正。90万台減の760万台を見込む。
デバイスは、売上高が前年比6.8%減の2,173億円、営業利益は97億円で、前年のマイナス156億円から黒字転換。売上高が減少しているが、これは中小型ディスプレイ事業とケミカルプロダクツ事業を売却したためで、それらの影響を除くと分野全体では大幅増収となる。特にモバイル機器向けのイメージセンサーの増収が収益貢献した。
007スカイフォールやアメイジング・スパイダーマンが収益貢献
映画分野は、売上高が前年比30.1%増の2,089億円、営業利益は253億円と大幅増。劇場興行収入と映像ソフト収入の増加によるもの。劇場興行は、「007スカイフォール」と「モンスター・ホテル」、映像ソフトは「アメイジング・スパイダーマン」、「メン・イン・ブラック 3」が大きく貢献した。
音楽分野は、売上高が前年比2.4%の1,264億円、営業利益が7.4%増の164億円。金融分野は売上高が前年同期比21%増の2,664億円、営業利益が5.1%増の342億円。
構造改革に成果もエレクトロニクスに課題
加藤CFOは、「第3四半期の実績だけ見ると、前年同期比で増収増益でかなりの改善効果があった。昨年は震災、タイ洪水、円高などもあったが、色々な施策を打ちながら改善に向かっている。ただし、足元のエレクトロニクスの事業環境は楽観視できない。今回も販売台数の下方修正を行なっており、金融とエンタテインメントが好調な一方、エレクトロニクスについてはまだ課題を残している。当年度の年間見込みは売上、利益ともに、それぞれ据置いているが、為替が円安に振れていること、好調な金融への期待、資産売却などによるもの」と説明。
'13年度については「これらの課題を色々な施策により収益に結びつける。'12年度中に成長のための投資と、ポートフォリオの改革などをやってきて成果は出ている。平井(CEO)の体制になり10カ月。ソニーでこれだけ沢山のことをやってきたことはなかったのではないか。懸案のテレビ事業の収益改善も、昨年度の1,600億円のマイナスから、半分の800億円までは圧縮できる。来年のブレイクイーブンに向け、商品力を強化し、色域を広げた新しい製品(TRILUMINOS Display)や4Kテレビのラインナップ強化などに取り組む。最近の円安は我々にとっては追い風。今期はそれほど大きな影響ではないが、来年度も今と同じレートが続くと仮定するとかなりの収益押し上げ効果になる。また、今期は資産売却を多数行なっているが、利益を出すためのアセット売却という側面も確かにある。それとともに事業ポートフォリオの組み換えの実行であり、財務を維持、改善をしながら、成長資金を得ようという側面もある。これらの組み合わせや一連の施策で成長戦略を実施して、バランスシートを手当。来年以降の飛躍の準備を整えた。危機感を持ち続けて、来年度へ向かう」と語った。