ソニー、'11年度業績を純損失5,200億に下方修正
-米国などで追加の税金費用約3,000億円を計上
ソニーは10日、2月2日に発表した2011年度の連結業績見通しを修正。2月時点の見通しである当期純損失2,200億円から、5,200億円の損失へ、下方修正した。第4四半期に米国などにおける繰延税金資産に対し、評価性引当金を計上することなどで、追加の税金費用約3,000億円を計上するため。
なお、追加の税金費用の計上は、現金支出をともなわず、連結営業損益やキャッシュ・フローに影響は及ぼさないという。なお、2月時点の見通しである連結売上高6兆4,000億円、営業損益マイナス950億円に変更は無い。
2012年度の見通しに関しては、通期為替レートが1米ドル80円前後、1ユーロ105円前後を前提とし、「現時点においては約1,800億円の黒字転換を見込んでいる」(ソニー)という。また、2011年度の連結業績の実績と、2012年度の連結業績見通しの詳細については、5月10日の2011年度決算発表で発表する予定。
ソニーの連結決算が準拠する米国会計原則では、繰延税金資産の回収可能性を評価するにあたり、数年間にわたる累積損失は重要なマイナス要因と見なされる。米国の統括持株会社は、その子会社とともに米国連邦税について連結納税申告が行なわれているが、米国の連結納税グループは2011年度を含む直近数年間で累積損失となる見込みで、このマイナス要因と、客観的に検証可能なプラス要因を比較した結果、同グループの繰延税金資産に対し、評価性引当金を計上する見込みになったという。この計上は、今回の追加の税金費用の約8割を占めている。
さらにソニーでは、一部の関係会社間取引において、移転価格に関する二国間事前確認制度の政府間交渉の直近の状況にもとづき、税金費用の見積りも見直し。日本と一部の海外子会社間の損益を再配分することになる可能性が高く、追加の税金費用を計上する見込みだという。
■ テレビの赤字は一番の課題
加藤優CFO |
今回の下方修正については、執行役EVP CFOの加藤優氏が会見。繰延税金資産に対する評価制引当金の考え方などを説明した。なお、今後の事業展開については、12日の経営方針説明会で発表する予定。
3回目の下方修正となり、「経営責任をどう考えているか? 」との問については、「震災や為替、洪水、市況などたくさんの悪化要因があった。この先の収益回復に向け、マネジメント変更もあった。明後日(12日)には新経営陣がどう対応するか説明するが、会社としては重大に受け止めている」と言及。
今後のテレビ事業については、「テレビの赤字は経営の一番大きな課題。'13年度の黒字に向けて取り組みを進めている。'11年度はS-LCDの合弁解消など液晶パネルの調達改善を行なうなど収益改善を進めており、'11年度第4四半期からは効果は現れている。いいスタートが切れている」とした。
また、9日に1万人規模の人員削減について報道されたことについて、「今日の話から外れるが、会社としての発表ではないと申し上げる。具体的なコメントは控えさせてほしい」としながらも、「内容に関して言えば、収益改善に向けていろいろ手を打つ。切りだす事業などいろいろ検討、実行している。要は聖域なき改革を断行している。人数については控えるが、明後日は触れることもあるだろう。ひとこと申し添えると、報道にあった中小型液晶については、同事業とケミカルは、ジョイントベンチャーとしてソニーから切り出すことで契約交渉がまとまっている。切り出すことで、将来の成長を歩んでいただく。構造改革的な意味での人員削減でない」と言及した。
(2012年 4月 10日)
[AV Watch編集部 山崎健太郎]