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Xbox OneはTVも取り込み家庭内エンタメの中心へ

日本発売に言及。STBとHDMI接続。3つのOSが連動

「Xbox One」。左にあるのがKinect

 米Microsoftは22日、同社のゲーム機ブランドXboxの最新モデル「Xbox One」を、ワシントン州レドモンド市にある本社特設会場で発表した。

(現地レポート:本田雅一)

3つのOSが連動

 ゲーム機としての同製品は、8コアのマイクロプロセッサ、8GBメモリ、500GB HDD、Blu-rayドライブ、IEEE 802.11n対応無線LAN、HDMI入出力、USB 3.0といった機能やインターフェイスを搭載。60%広角になったレンズを搭載し、6人までを同時認識できる1080pキャプチャ対応のKinectカメラを標準装備する。

 ゲーム機としてのXbox Oneに関しては、価格も含めてまだ発表されていない点も多く、先日発表されたPlayStation 4(PS4)との性能比較などはできないが、発表の中ではAV機能が大きくフィーチャーされた。ゲームだけでなくテレビやメディア配信サービスへの対応に力が注がれており、同様の機能を搭載すると思われるPS4がAV機能のデモや本体デザインの発表を見送り、ゲームプラットフォームとしての発表に注力したのとは逆のアプローチとなっている。

Xbox Oneを紹介するXbox担当の上席副社長ドン・マトリック氏。マトリック氏が小柄なため大きく見えるが、実際にはさほど大きくない。一方、Kinectカメラはやや大きめだ
マーク・ウィッテン氏がハードウェア構成やアーキテクチャについて披露。とはいえ、詳細はE3に温存しようとしている模様
Xbox Oneのコントローラー

 Xbox Oneはゲーム機能を司るXbox OSに加え、ジェネラルコンピューティングのためのWindowsカーネルも同時に動作。この2つのOSの橋渡しを行なうOSレイヤーを含め、3つの基本ソフトが連動する基本構造を採用しているという。ゲーム用OSとそれ以外の処理を分離し、常駐サービスへのリクエスト処理なども兼任する仲介OSが、2つのOSの画面出力を制御する。

 例えばゲームをしている際にSkypeコールがかかってきて、応答して会話をする場合、ゲーム画面を縮小表示しSkypeの画面をWindows 8のスナップ画面のように表示する。画面の大きさはスムースに変換する。

 これはXbox OSとWindowsカーネルが出力するグラフィックスを、仲介OSが受け取って表示合成を行なう構造になっているからだそうだ。両OSに割り当てるハードウェアリソース(プロセッサコアやメモリなど)も、仲介OSが間に介在して管理するようだが、さほど細かなところまでは掘り下げていない。プロセッサのクロック周波数やアーキテクチャ(一部ではPS4と同じAMDのJaguarと言われている)、GPUの性能なども公式な情報は出されていない。

Xbox Oneのホーム画面。テレビの映像もここに表示できる

 新しいKinectによるユーザーインターフェイスも仲介OS側にあり、ゲームをしている途中でホーム画面を呼び出したり、動画表示との間を手振り身振り、あるいは音声認識で操作できる。Kinectの仕組みは従来とは異なるもので、従来よりも高い精度でモーションのキャプチャを行なえる。カメラの数は1個で、従来のステレオカメラからの検出ではなく、特定波長の光を照射。その反射光の遅れを計測することで距離を計測できるとのこと。手を握ったり開いたりといった細かなジェスチャーにも正確に反応する。

 Microsoftは今回、あまり細かなアーキテクチャまでは公開しなかったが、コアゲームとは別のドメインで、カジュアルなゲームを常駐するWindowsカーネル側で動かしたり、機能強化を図るXbox Liveの機能を常駐させるなどの改良を加える。ゲームのリプレイ動画の記録・編集、それにXbox Liveへのアップロードなども可能だ。このあたりはPS4とよく似た面だが、どこまで似ていて、どこが違うかなどの細かな点は、現時点では確認できていない。

Xbox Liveの位置付けが変化

 またいくつかのファーストパーティゲームもお披露目された。エレクトロニック・アーツのEA Sportsシリーズについて、1年以内のリリースと新エンジンへの移植、アクティビジョンのCall of Duty最新作のリリースなどが発表された。イベントに参加したサードパーティ数は少ないが、それに関しては別途、E3で明らかにするとしている。

Forza Motorsport 5

 少々驚いたのは、マイクロソフトが抱えるファーストパーティのスタジオは、Xbox One発売後の1年で15タイトルものXbox One専用ゲームを発売するという点だ。このうち8タイトルはまったくの新規タイトル。残り7タイトルは従来からあるゲームのXbox One版リメイクとなる。会場ではHaloとForza Motorsport 5が披露されたばかりだが、Xboxのファーストパーティとなれば数も限られるため、どんなものがリリースされるかは容易に想像できるだろう。

EA SportsがXbox One発売後1年で主要タイトルをすべて移植と発表
Haloシリーズのビジネス・ゼネラルマネージャを務めるボニー・ロス氏。ピーター・ジャクソン監督で映画撮影の噂があったHaloの映像化だが、スティーブン・スピルバーグ氏のプロデュースでテレビドラマ化されると発表
アクティビジョンはCall of Duty Ghostを発表。Xbox One向けにエクスクルーシブコンテンツを投入する

 また、上記の説明にも顕れているが、Xbox Liveの位置付けが変化する。これまでのXbox Liveはゲームあるいは関連コンテンツの配信が主で、そこにチャットなどを含むマッチングサーバの機能を加えた構成になっていた。しかし、今回はクラウド側にコンピューティングパワーを依存する機能を設計し、ゲーム内に組み込むことができるそうだ。

 Microsoftはこのために1万5,000サーバで構成されているXbox Liveを、Xbox One世代で30万サーバに拡大。このクラウドパワーをユーザーが活用する仕組みを提供する。こちらも詳細はE3になるとのこと。

AV機器としてのXbox One

 発表会の後にアフターフォローで取材を入れると、多くの部分が「E3で詳しく……」と言われる。特に今回はAV機能の統合を中心にした紹介になっていたため、ゲーム機としてのXbox Oneの姿がよく見えないという印象だ。

 しかし、言い換えればAV機器としてのXbox Oneは、なかなか興味深い紹介のされかたをしていた。Xbox Oneは、テレビを中心にしたエンターテイメントシステムの中核として、様々な娯楽を1つにまとめる商品、という位置づけである。

 なるほど「Xbox One」という名称はゲームを含むテレビ中心としたホームエンターテインメントの中心という意味が込められているのかと納得した。従来的なテレビではなく、インターネットを絡めた新しい時代のインタラクティブテレビを、このXbox Oneで発明したいというメッセージが伝わってくる。

 このように書くと、ゲームが本格的に遊べるApple TVのようなものか? と想像するかもしれない。確かにApple TV的な機能“も”搭載しているが、むしろ力点を入れていたのはチューナユニットとの連動である。

 Xbox OneにはHDMI入力が備わっているが、ここにはCATVのセットトップボックスを接続。Xbox One側からセットトップボックスをコントロールする。Xbox Oneがテレビをエンハンスすると言っているのは、このCATVチューナボックスとの連動のことだ。

 この連動はとても良くできており、動作の様子を見ているだけならば、Xbox OneにCATVチューナが内蔵しているのではないかと勘違いする人も出てくるだろう。Kinectのボディアクションや音声による操作に対応し、Xbox Oneが内蔵する機能の一部のようにホーム画面の操作に統合されている。

Xbox OneのEPG画面
テレビと動画サービスを利用するための画面

 もちろん、映像配信への対応も充実しているのだが、映像配信、ゲームに加え、とかくオールドスタイルとして仲間はずれにされてきた”テレビ”とネット系メディアを融合し、一体感のあるユーザーインターフェイスを提供している。

 定評のある音楽機能や、ネットの情報、動画配信サイト、テレビ番組をマッシュアップし、放送を見ながらインタラクティブ機能を組み合わせている部分は、かなり良く出来ているという印象だ。もちろん、テレビ操作でもKinectはフルに活用できる。

 若年層がテレビやパソコンの画面から離れ、宿題が終わったあと余暇の時間を過ごす際にスマートフォンやタブレットを使う時間が長くなっているのは世界的な傾向だ。北米も例外ではなく、Xbox Oneが訴求した“テレビのエンターテインメントを最大限に高める”方向の商品コンセプトには、やや疑問が残ると言わざるを得ない。

 しかし、一方でテレビの前に人を引き寄せる吸引力は、テレビ自身をより愉しいものにすることで復活させられるという考えもあるだろう。Xbox Oneはこちらの考えを採用し、ネットコンテンツのリッチ化、クラウドコンピューティングの進化などのトレンドをテレビ番組やゲームと融合する方向で、製品の骨格を練り上げた。

日本での発売は?

 さて、テレビの新たな進化を見せると意気込んだXbox Oneは、映像エンターテインメント端末として興味深いものだったが、一方でやや気になる点もあった。それはXbox Oneの映像エンターテインメント機能が、あまりにも米国市場の特性を意識したものになっていることである。

本体の背面。HDMI入力を備えている

 たとえばインタラクティブなテレビ機能は、前述したようにHDMIにSTBを接続することで実現している。Microsoftは「各国のテレビ放送事情に合わせてカスタマイズを行なう」と話しているが、日本では有料多チャンネルシステムは主流ではなく、数局の地上波テレビが放送メディアの主流として存在感を示している。外部接続ではなく、テレビ内蔵のチューナを使うことがほとんどだ。

 NFLと提携し、テレビ放送と連動。ファンタジースポーツのステータスや、際どいシーンのリプレイビデオなどのコンテンツをマッシュアップし、テレビ番組とネットコンテンツを一体化する機能も発表されていたが、これらも元となるネットコンテンツが必要であり、日本の事情に合わせた時にどんなことができるか、何が魅力的なコンテンツとなりうるかは慎重な検討が必要になる。この他、機能が大幅に強化される見込みというXbox Musicなどの音楽機能も、まだ日本ではサービスインしていない。

 世界的なヒット製品となり、欧米ではライバルのPlayStation 3を超える出荷を達成したXbox 360だったが、日本ではほとんど売れていない。主要市場でXbox 360が壊滅的に売れていないのは日本だけだ。自社製Windows 8端末であるSurfaceのリリースも日本への展開が遅かったことは記憶に新しい。Xbox Oneは日本でも展開するのか? という疑問を持っている読者もいることだろう。

Microsoftのファーストパーティを束ねるフィル・スペンサー氏。FORTZAレーシングなど15タイトルをXbox One向けに開発中

 Microsoftのコーポレイトバイスプレジデントで、Xboxのファーストパーティ部門Microsoft Studioを束ねるフィル・スペンサー氏に、Xbox Oneの日本での発売の可能性を問うてみたところ、「Xboxの発売は年内を予定しており、立ち上げ時期はワールドワイド一斉となる。日本はワールドワイドの中に含まれるかって? もちろん、含まれると理解している。確かにXboxは日本では売れていないが、だからといって日本市場の重要性はいまもって高い。優秀なクリエイターが多数存在しているからだ」と話した。

 にわかには信じがたい部分もあったため、日本も年内なのか? と再確認したが、スペンサー氏は「そうだよ」と明快に応対してくれたことをお伝えしておきたい。スペンサー氏へのインタビュー記事は、追って掲載する予定だ。

 なお、日本市場への投入に関して、本社広報に再確認したところ、公式なコメントとしては「今年の年末に世界中でXbox Oneを立ち上げる計画だが、細かな立ち上げ計画の詳細については、まだお話しすることは出来ない」と話しており、具体的なタイミングは確定していない可能性がある。

(本田 雅一)