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Xbox Oneレビュー。TV中心のエンタメガジェットの実力は?

「多機能」、「ながら」に価値を持つ新世代ゲーム機

 欧米から10カ月遅れ、ライバルPlayStation 4の日本発売から6カ月遅れて、マイクロソフトの「Xbox One」がようやく日本のユーザーの手に届く時期がやってきた。日本発売に際しての同社の戦略については別途インタビューを掲載しているが、ここでは、日本版Xbox Oneのレビューをお届けする。

Xbox One

 読者の皆さんもご存じの通り、現在の据え置き型ゲーム機は、ゲームを快適に楽しめる存在であることに加え、「テレビを軸にしたエンターテインメント端末」であることが重要になっている。そこにどれだけ重きを置くかどうかは、メーカーによって戦略が異なる点であり、特にマイクロソフトは、Xbox Oneでそうした部分を強く打ち出している。

 では、その機能はどのようなものになっているのだろうか? 実際にチェックしてみると、ライバルであるPS4やWii U、そしてスマートフォンなどとの違いから、マイクロソフトのリビング戦略が見えてくる。

ライバルより巨大なハードウエア、だが動作音はきわめて静か

 今回試用したのは、パッケージも含め日本で発売される「日本版」のXbox Oneだ。システムソフトウエアとしては、記事執筆段階で最新のものをつかっており、Xbox Oneを9月4日の発売時に入手した人が使うものと同じである。Xbox Oneには、本体だけのバージョン(39,980円)と、本体にKinectを同梱したバージョン(49,980円)の2種類がある。発売に合わせ、どちらにも「タイタンフォール」のダウンロードコードが添付されており、Xbox One+Kinectには「Kinect スポーツ ライバルズ」「DANCE CENTRAL SPOTLIGHT」のダウンロードコードが付属する。

 今回はテストの関係から、パッケージ版のゲームを入手できなかった上に、国内ではまだ主要ゲームのダウンロード販売が始まっていないため、入手可能なゲームと体験版でテストしていることをご了承いただきたい。

 箱を見て感じるのは、大きさよりも「重さ」だ。パッケージで6.8kgあり、ゲーム機でここまで重いパッケージは見たことがない。初代PS3のパッケージを持った時にも「重い!」と思ったが、その時よりさらに重い。ちなみに、PS4のパッケージ重量は4kg程度と言われており、その差はかなりのものだ。

Xbox One+Kinectのパッケージ。サイズも重量もゲーム機離れしているので、持ち運びにはご注意を

 それも当然である。内容物が非常に多く、どれも大きいからだ。

 Xbox OneはACアダプタを使う構造になっている上に、それが非常に大きい。本体も同様に大柄だ。ゲーム機というより「横置きのデスクトップPC」という趣だ。

 今回テストしているのはKinect同梱版なので、本体に加えKinectが入っている。KinectもXbox 360版に加え大柄になっている。これだけのものが入っていれば、重くて大きいのも当然だ。

本体内容物。本体(右)の他、ACアダプタ(左上)・Kinect(左中央)・電源ケーブル・HDMIケーブル・ヘッドセット・コントローラーが付属する
Xbox One本体。ゲーム機としてはかなり大柄で、むしろPCに近い
本体正面。Blu-rayドライブは左側にある。右端のXboxロゴはタッチセンサー式の電源を兼ねる
Xbox One本体。ゲーム機としてはかなり大柄で、むしろPCに近い
コネクター部接写。左より、ACアダプタ、HDMI出力、光デジタル音声出力、HDMI入力、USB×2、Kinect専用コネクタ、IRブラスター、Ethernet
本体左側面には、USBコネクタが一つある。コントローラーをつないだり、USBメモリーをつないだりする際に利用する
本体上面。右側のスリット部はデザイン上のアクセントであると同時にエアフロー用でもある
底面のラベルに“HELLO FROM SEATLE”
Xbox One専用のKinect。機能もアップしているが、サイズもアップしている印象だ
KinectとXbox Oneは専用コネクターで接続する

 しかも、冷却の関係からは、Xbox Oneは縦置きができない。ゲーム機はテレビの横に縦置きにしてスペースを節約するものが多くなっているが、Xbox Oneではそれができない。それなりの設置面積が必要になることは覚悟しておこう。このあたりは、正直ライバルのPS4の圧勝だ。本体サイズのコンパクトさは比較にならず、しかも、ACアダプタがないからだ。

本体に接続するACアダプタ。現在家電機器で使われているものとしては最大級のものだ。本体との接続には専用のコネクタを、アダプタとの接続には3ピン式の電源ケーブルを採用している
Kinect背面。コネクタ横に空冷ファンが入っている

 また、Kinectを使う場合、テレビの前には1.4mの空きスペースも必要になる。ここも、日本の家庭事情的には厳しい。Kinectにも空冷ファンが内蔵されているなど、発熱対策が施されている。

本体・Kinect・コントローラーをセットで。かなりの設置面積が必要だ。また、Kinectを使う場合、テレビの前には一人プレイ時1.4mの空間が必要になる
PS4とサイズを比較。同世代でパフォーマンスが近いゲーム機で、ここまでサイズ差があるのは珍しい
PS4とサイズを比較

 サイズが大きいことはXbox Oneのウィークポイントである。他方、プラスに働いている点もある。動作音が非常に静かなのだ。

 Xbox Oneは、エアフロー面で余裕のある構造にすることで、ファンを高速に回すことはないよう配慮しているようだ。ゲームをしている時でも、映像やネットを見ている時でも、ファンの音を気にすることはほとんどない。都内のマンションの一室(昼間、バックグラウンドノイズの計測値が36~38dB)で計測した結果では、最大でも44dBを越えることはなかった。この点は、PS4に比べ大きな差がある。

 PS4も「爆音」とまでは言わないものの、負荷の大きなゲームが動き始めると「ああ、負荷が上がったな」と思わせる程度にはファンの動作音を意識できる。だがXbox Oneはそれがない。ごく静かな環境の中で、Xbox Oneを目の前で動かしている場合、ファンよりもハードディスクのアクセス音の方が気になったくらいだ。こちらはPS4より大きめで目立つ印象を受ける。後ほど詳しく述べるが、Xbox Oneは音楽CDやMP3の再生にも対応しているし、Blu-rayも再生できる。ネット動画配信にも積極的だ。そういったものの活用には静かであることが望ましく、そういう意味でもXbox Oneは「これまでのXboxよりもリビング・AV志向」である、といえる。

 なお、コントローラーもXbox One専用に変更されているが、サイズなどのフィーリングはマイナーチェンジに近い印象を受ける。元々ゲーマーからの評判が良かったからだろう。最大の特徴は、トリガーボタンに振動を伝える機能が内蔵されたことで、この辺はゲームの迫力を増すにはプラスだ。電源は単三電池2本。充電アダプタも用意されるが、発売が延期となっており、発売日は後日アナウンスされる予定だ。

Xbox One専用コントローラー。サイズ・操作感ともに、Xbox 360用コントローラーをブラッシュアップした印象。トリガーボタンには振動機能が内蔵された。また、本体との接続はmicroUSBケーブルに変更されている

 microUSBケーブルで本体と接続する場合、コントローラ内のバッテリーは消費しない。技術的な点であり、利用時には意識することはないが、新コントローラでは本体との接続がBluetoothベースからWi-Fiをカスタマイズした方式になり、ボイスチャットの帯域が以前の倍になり、音質が向上したという。

コントローラーと接続して使う専用ヘッドセット。コネクター含めコントローラーに特化した設計で、ケーブルはからみにくい「きしめん」状のものになっている
PS4用コントローラ(左)とXbox One専用コントローラの比較

ダッシュボードに「アプリ」を追加、実用的なIEを搭載

 では、Xbox Oneのシステム面を見ていこう。画面は、Xbox Oneの操作画面である「ダッシュボード」だ。マイクロソフトはWindows 8以降、こうした「タイル」式のホーム画面で統一する傾向にあり、Xbox 360についても、2011年以降タイル式のダッシュボードになっている。

 Xbox Oneでは、いまメインに使っているゲームやアプリケーションが中央の大きな部分に、最近使った4つまでのアプリケーションが並ぶ。Xbox Oneの場合、ゲームは同時に1本、さらに1本同時に「その他のアプリ」(Blu-rayプレーヤーも含む)が同時動作して瞬時に切り換えられるのだが、それに加え、最近使った4本のアプリは、内蔵の「アプリ切り換え用フラッシュメモリー」領域を使い、ロード時間をより短縮した形でアプリ切り換えができる、ということだ。ただしゲームの場合には、仮に「最近使った4本」に入っていても、切り換える際には最初からロードすることになるので、それなりの時間がかかる。

 どんな動作をしている時でも、コントローラーの「Xboxガイドボタン(Xと書かれた大きなボタン)」を押すか、Kinectの音声認識機能を使って「Xbox、ホームに戻る」と言えば、かならずホーム画面に戻る。この時には、ゲームなどは基本的には「一時停止」となる。

Xbox Oneの「ダッシュボード」。いわゆるホーム画面であり、アプリの切り換えなどで多用する

 Xbox Oneには、ゲーム以外にも非常に多くの機能が用意されている。そして、そのほとんどは「OSに内蔵」しているのでなく、アプリになっていて、Xbox Oneにひとつひとつ組み込んでいくようなイメージになっている。初期状態では、ウェブブラウザーである「インターネットエクスプローラー(IE)」からBlu-rayプレーヤー、動画配信やSkypeに至るまで、すべてダウンロード追加になっている。PS4も「アプリ追加で拡張」する考え方の強いプラットフォームだが、Xbox Oneはさらに徹底している。最初は面倒だが、要はスマートフォンやタブレット、PCに近い思想と考えればいい。アプリはサイズが小さいため、完全にダウンロードが終わり、インストールが終わった段階で利用可能になるが、ゲームの場合には、全体のうち必要な部分のダウンロードが終わった段階でプレイ可能になる。この辺はPS4とも共通している。ダウンロードは「1つのキューずつ」行なわれるため、ゲームのダウンロードとインストールが継続している間は、その後ダウンロード指定を行なったゲームやアプリは「待ち」リストに入る。

多彩な機能は「アプリ」で実現されており、それぞれはダウンロードすることで利用可能になる

 ダッシュボードも、右側はネット上にある「ゲーム・映像音楽・アプリへとアクセスするための窓口」になっていて、「ネット上のリソースを存分に使って楽しんでもらう」ことを志向した構成だ。今時のゲーム機はネットにつながないと能力・魅力の多くが活かせないが、Xbox Oneは特にその傾向が強い。ゲームについては、プレイ動画配信サービスTwitch(先日Amazonが買収したことでも話題になった)と連携し、ストア内にプレイ動画を配置し、「そのタイトルがどんな魅力を持っているか」をより直接的にアピールするものになっている。PS4が古典的なストア構造を使いつつ、「プレイ動画からウェブ上のストアに誘導する」形態を採っていることと比較すると、ちょっと面白い。

 なお、9月4日の時点では、動画配信の「Xbox Video」はサービスを開始しているが、音楽配信の「Xbox Music」は、Windows上からは利用できるものの、Xbox Oneには対応していない。現時点では、サービス開始の時期は公表されていない

 ダウンロードしたアプリ・ゲームのうちよく使うものは、ダッシュボードの左側にある領域に「ピンどめ」しておけるようになっていて、素早く呼び出せる。

ゲームのストア画面。新着・お勧めなどから気になるタイトルを選んでダウンロード購入するという、すでにおなじみの形だ
個々のタイトルの販売画面の中には、Twitchで配信されているプレイ動画が埋め込まれていたり、アップロードされているゲームのプレイ動画を見れたりするものも
動画配信サービス「Xbox Video」。洋画を中心としたラインナップだが、品揃えは十分。もちろん、ゲーム機と親和性の高いアニメもあるが、SCEほど「アニメ推し」でない印象だ
ダッシュボードの左側には、よく使うアプリを「ピンどめ」しておける。この辺はWindows 8/8.1のModern UIに近い
インストールされているアプリとゲームは「マイコレクション」にまとめられるので、ピンどめするほど使用頻度が高くないものは、ここから呼び出すこともできる

 アプリには、IEやBlu-rayプレーヤーの他、マイクロソフトのフォトストレージである「OneDrive」との連携アプリ、Skypeなどがある。

 IEはPC上のIE、特にWindows 8以降のModern UI向けIEにかなり近く、表現力・再現性も申し分ない。どこかオマケ的なイメージのある「ゲーム機のブラウザ」の印象を覆すに十分だ。Xbox用のネットワークサービス、Xbox LiveではMicrosoftアカウントを共有するのが前提になっているため、OneDriveやSkypeとの連携も容易だ。また、Xbox One内ではアカウント単位で使い分けができるようになっており、各種連携もそれに倣うだけでなく、ブラウザーのキャッシュや開いたタブ、お気に入りなどもアカウント単位で管理される。

Xbox One用のブラウザーはIE。タッチ操作ではないが、PCのModern UI上で使うのに近い感覚だ
OneDriveとの連携アプリ。OneDrive内に保存した写真やオフィス文書などの閲覧ができる

 光学ドライブはBlu-ray・DVDビデオ・音楽CDに対応しており、それぞれのソフトを再生できる。Blu-rayの画質については、短時間チェックした範囲では良好なもの。チャプター送りのたびにオンスクリーン・ディスプレイが表示されるのはちょっと気になるが、動作も速く、使い勝手も良好だ。

 なお、現在のシステムソフトウエアでは、USBメモリーに蓄積した各種メディアファイルを再生する「メディアプレイヤー」というアプリも用意されている。現状ではテスト版的な位置付けだが、数カ月以内にDLNA再生に対応する時には、「Xbox 360より多くのファイル形式をサポートする」としている。

ゲーム/システム両面の「サスペンド」を積極活用

 さてゲームの動作はどうだろう? ゲームの品質については、本記事では言及しない。記事冒頭で述べたように、プレイできたゲームが限られていること、PS4と同じゲームで比較するのが無理だったことなどが理由だ。11月の発売以降、「PS4とのマルチタイトルでは、解像度やフレームレートなどが劣る」との指摘もあり、マイクロソフト側もそれを一部認めている。他方で「今後出てくるものについては、同じクオリティで出てくると思いうし、Xbox Oneで十分皆さんにご満足いただけるクオリティでゲームを作ることは十分に可能」(マイクロソフト・泉水氏)とのコメントもあり、改善の方向にあるのだろう。それ以上の情報がない以上、その是非を云々することはしない。

 一方、画質以外の面については、PS4とXbox Oneのプレイ環境はかなり異なる。

 例えば速度。Xbox Oneは、ハードの起動がPS4より早い。出荷時状態の場合、コントローラーのXboxガイドボタンを長押しし、本体が起動してプレイ可能になるまでの時間が実測で約17秒。PS4のサスペンド状態からの起動が30秒弱なので、半分程度の時間で済むことになる。

 この辺には少々事情がある。PS4のサスペンドはコールドブートと起動時間がほとんど変わらない。ゲームやシステムソフトウエアのダウンロードといった「ネットワーク系機能を一部可能にした待ち受け状態」というのが正しい。

 他方でXbox Oneは、起動方法に「省電力」と「クイック起動」があり、前出の17秒はクイック起動の場合だ。「省電力」はいわゆるコールドブートに近いものらしく、起動時間は約1分と長いものになる。さらに、アップデートやコンテンツの自動ダウンロード、Kinectからの音声入力による起動などもできなくなる。サスペンド状態とはいうが、Kinectやネットワークを「待ち受けている」状態に近く、起動が速いのも当然である。

 もう一つ大きいのは、ゲームの「サスペンド」も可能、という点だ。携帯ゲーム機をのぞき、いままでのゲーム機は「電源を切る」=ゲームの終了であり、再度電源を入れた時には、ゲームを最初からロードし直す必要があった。だがXbox Oneではゲームのサスペンドに対応しており、再度電源を入れた時にも、Xboxガイドボタンから中断・電源を切る直前の状態から再開できる。ただしこの「ゲームのサスペンド」機能も、起動方式を「省電力」でなく「クイック起動」にした時のみ有効になる。

 このあたりから、Xbox Oneの設計思想が明確に見えてくる。Xbox OneはかなりOS層が厚く、その分多彩なことが可能だ。その中には「テレビ」機能もある。できるだけ早く使えるようにするために、電源を完全には切らずに「眠る」ような形で動く「クイック起動」モードを設ける一方、消費電力を気にする人には、これまでのゲーム機のように「毎回起動する」モードも用意する……という形を採っているわけだ。その恩恵は確かに大きく、かなり動作は快適だ。今回、テスト期間が限られていたこともあり、消費電力の測定までに至っていないが、サスペンド中でもそれなりに電力を消費しているのであろう。

 それに対しPS4は、元々は「第二のプロセッサ」を上手く活用することで、Xbox Oneにおける「クイック起動」モードに近いことを実現しようとしていた。だが、ネットワーク関連の待ち受けはできているものの、ゲームのサスペンドなどにはまだ対応できておらず、即応性の実現、という意味では足踏みした状態だ。

HDMI入力でテレビ連携、日本ではまだ「模索中」

 さて、Xbox Oneが高速起動にこだわった理由の一つである「テレビ」機能はどうなっているのだろうか?

 Xbox Oneはテレビチューナーを内蔵しているわけではない。「HDMI入力」を備えていて、そこにつながった機器の映像を「テレビアプリという枠の中に表示する」ことでテレビ機能を実現している。接続された機器は、KinectもしくはIRブラスターから出力される赤外線リモコンの信号を使って制御され、チャンネル変更・音量変更などが行なわれる。要は、Xbox One自身が巨大な「テレビのコントロールボックス」になることで操作を行なうわけだ。元々はCATVや衛星放送のチューナーを接続することを想定しているが、ブルーレイレコーダーや他のSTB(例えばApple TVや、他のゲーム機)などでもいい。

Xbox Oneのテレビアプリでは、HDMI入力からのテレビ信号を表示する。
Xbox Oneでのテレビ番組表示画面。もちろん最大化すれば全画面になる

 単に表示するだけなら、別にXbox Oneを介する旨味は少ない。実際、現状の日本の状態では、さほど便利とは感じない。「OneGuide」と呼ばれるEPGの対応は後日となっているし、アメリカでは一部の番組で用意されている「テレビと連動したネットワークコンテンツ」もない。

 だが、他にない価値といえるのは「テレビとゲームの同時表示」だ。Xbox Oneには、ゲームと各種アプリケーションを同時に表示して使う「スナップ」という機能がある。スナップを使うと、IEでネットの情報を見ながらゲームをしたり、Skypeでビデオチャットをしながらゲームをしたりできるわけだが、それと同じように「テレビを見ながらゲームをする」ことができる。音声はもちろん、ゲームとテレビのものがミックスされて出力されるので、まさに「ながら」プレイだ。テレビを見る、と言う意味ではPS4も「torne」が登場したことでより本格的なものを実現しているが、PS4はあくまで「1画面1要素」であり、「ながら」はできない。この点はXbox Oneならではの要素、といえる。

「スナップ」機能をつかい、IEでネットの情報を見ながらゲームをプレイ。画面のゲームは、Microsoft Studioの「Crimson Dragon」
スナップ機能を使うと、ゲームをしながらテレビを見ることも可能。これを1つのテレビの中でできるのは確かに便利だ

「スナップ」での同時動作で「ながら」の価値を

 スナップ機能は、ホーム画面に一端戻り、そこから「スナップ」を呼び出すことで使える。それぞれの操作を切り換える場合も、ホーム画面の中でメインの部分にあたるところが、主たるアプリと「スナップ」するアプリに分かれるので、そこで選択し直すことで、それぞれに操作を移してから行なえる。

ホーム画面中央に注目。「スナップ」した場合には、ここがメインとスナップを切り換えつつ操作する

 だが、こうした操作はあまりに煩雑だ。そこで出てくるのがKinectである。Kinectは画像センサーによるジェスチャー操作としての側面が注目されるが、こと、Xbox Oneの基本操作に関していうならば、ジェスチャー操作よりも「音声操作」の方が軸になっている。Kinectに内蔵されたアレイマイクを使って話者位置を特定した上で、精度の高い音声認識を目指す。

 例えばテレビをスナップする場合には「Xbox、テレビをスナップ」と言えばいいし、メインとスナップの操作切り換えを行なう場合には「Xbox、切り換え」と言えばいい。Skypeの着信を受けたり、ネットから情報を探したい場合にも、音声で操作ができる。

「Xbox」というコマンドワードを話し、少し経つとこのような「音声入力モード」になる。右上に緑色のサークルが表示されているのが、音声入力モードの印だ
現状での音声入力コマンド一覧。シンプルだが必要なコマンドがおおむね用意されている

 Xbox Oneは音声入力を一つのウリにしているが、どうも「音声でアプリを起動する」というイメージが強いようだ。音声で起動する機能はPS4も持っていて、あまり変わりがないように思える。だが実際には、狙っているところは違う。Xbox Oneの音声入力は、「パッドで手がふさがっている」「タッチパネルがない」前提で「複雑なスナップなどの操作を行なう」ためのもの、という意味合いが強い。

 では、どのくらいの認識率なのか? 9月4日現在では、日本語音声入力は「ベータ版」という扱いであり、完全な状態ではないようだ。実際、認識率は100%には遠く、イライラすることもある。スナップのような複雑な操作を音声でカバー、という発想は、ユニークで理に適うものだが、それは認識精度が高く、操作の確実性が高い場合にこそ有用なもの、ということも事実である。「ベータ版」でなくなった時、どこまで精度が上がるかが気になる。

 なお、Xbox Oneの音声入力は「ネイティブスピーカー度」がちょっと高いようだ。筆者の英語の発音はたしかに胸を張れるほど良くはないのだが、英語設定では認識率が恐ろしく低かった。これが日本語設定になると一気に「時々失敗する」程度までは改善するのだから、かなり「その言語での流暢な発音」に依存する認識エンジンになっているのだろう。日本語で使う限り問題はないが、あえて英語モードで使う場合には、それなりの覚悟が必要だ。

「複雑な操作」を「いかにシンプルかつ多機能」にするか

 Xbox Oneは、予想通り、OS構造が非常にモダンで高度なプラットフォームだった。テレビにつなぐデジタルガジェットとして、これほど色々なことが出来る機器は、他にないし、面白い。その点は、ライバルであるPS4よりはっきり上だと感じる。

 他方、色々なことができるという性質ゆえに、操作はかなり煩雑だ。元々のコンセプトとしてKinectをセットにしていたのも、その複雑さをカバーし、できるだけシンプルにしよう……というアプローチだったのだろう。だが、それでもまだ「きちんと構造を理解しないと使いづらい」部分が多く、ゲーム機の操作としては複雑だ。例えば、ゲームの映像を「録画」し「シェア」することは、PS4・Xbox One共通の要素だ。だが、PS4は「SHAREボタンを押すだけ」というシンプルさでありながら、Xbox Oneは録画アプリに声や操作で命令を与えた上で「UPLOAD STUDIO」というアプリからアップ操作を行なう。操作導線が長く、シンプルさに欠ける。音声コマンドを使えればパッド操作よりは多少シンプルになるが、それでも「ボタン1押し」には敵わない。PS4は機能を絞ってストレートにしているため、Xbox Oneよりずっとわかりやすい機械になっている。

 また、「ながら」であれば、マルチウィンドウであるPCの方がシンプルだと感じる。「テレビでゲームに没入しながらも色々なことができる」魅力をうまく伝え、こうした機能をいかにシンプルに使えるように導くかが、Xbox Oneの最大の課題だ。スマートフォン・タブレット・PC用のアプリを使って連携する「SmartGlass」を使うと、操作の煩雑さをかなりカバーできるのだが、そうなると、さらに「操作に必要な機器が増える」ことにもなる。こちらには「ゲームを面白くする要素」をさらに加え、操作性向上+面白さ、という側面でXbox Oneを支援する存在になることを期待したい。

スマートフォン用のサポートアプリ「SmartGlass」。XBox Oneと連携し、操作を補佐したり、各種メッセージングサービスの確認などが行なえる。PS4における「PlayStation App」に近いが、操作感はこちらの方がこなれている印象だ。

 Xbox Oneは、積極的なシステムソフトウエアのアップデートを公言している。実際数カ月以内には、DLNAのサポートを含む大規模なアップデートが予定されている。その過程では「よりユーザーの意見をフィードバックする」方針でもある。PS3・Xbox 360世代以降、ゲーム機はシステムソフトウエアの改善によって「機能と使い勝手を進化させていく」存在になった。Xbox OneとPS4でも、その競争は加速する様相を見せている。

 非常にリッチなOS基盤を生かし、どこまで進化できるのか。そしてその過程で、いかに「多機能さとシンプルな操作を併存させるか」が、ゲームソフトの質・良とともに、Xbox Oneを成功させる上で重要な要素になるだろう。

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西田 宗千佳