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ビクタースタジオ、キングレコードら参加のハイレゾ配信「VICTOR STUDIO HD-Music.」6日開始

5日にビクタースタジオで発表会が開催された

 ビクターエンタテインメントは、キングレコードなど合計4社が参加するハイレゾ音楽配信サイト「VICTOR STUDIO HD-Music.」を設立、6日12時から配信サービスを開始する。価格は単曲400円、アルバム2,800円。運営主体はビクタースタジオ。サービス開始時点で2,000曲、170アルバムを用意する。決済方法はクレジットカードのみ。

 ビクタースタジオだけでなく、キングレコード、日本コロムビア、テイチクエンタテインメントが参加。今後も各メーカーに積極的に参加を呼びかけていくという。

 既報の通り、ビクターエンタテインメントが運営するビクタースタジオは、2012年夏にハイレゾ音源のレーベル「VICTOR STUDIO HD-Sound.」を立ち上げ、オンキヨーエンタテインメントテクノロジーの配信サービス「e-onkyo music」を通じて配信を実施しているが、新たにビクタースタジオ自身が配信サービスを開始する。

「VICTOR STUDIO HD-Sound.」の歩み

 ビクタースタジオからは、これまでの「VICTOR STUDIO HD-Sound.」の作品である72タイトルに加え、2月6日から新たに追加される第6弾10タイトルの、合計82タイトル808曲を用意。前述の通り、他社の楽曲も含めて2,000曲、170アルバムでスタートする。

 「VICTOR STUDIO HD-Sound.」の作品は、24bit/96kHz、24bit/192kHzのWAVやFLAC、もしくは1bit/2.8MHzのDSDで配信される。

カジュアルなユーザーにもハイレゾを

ビクタースタジオ長の秋元秀之氏

 ビクタースタジオのハイレゾ音源は既にe-onkyo musicで配信されており、VICTOR STUDIO HD-Music.のスタート後も、e-onkyo musicでの配信は継続。2つの配信サービスで、ラインナップなどの差別化などは今のところ考えていないという。

 ビクタースタジオが自身で配信サービスを行なう理由として、ビクタースタジオ長の秋元秀之氏は、「(e-onkyo musicで)配信を開始したが、ハイレゾの世界がちょっと狭いな、思ったより広がっていないなと感じていた。まず、“ハイレゾの普及”が必要だと痛感した」という。

カジュアルがキーワード

 そのため、「VICTOR STUDIO HD-Music.」では、従来のオーディオファンだけでなく、カジュアルなユーザーをメインターゲットとした配信サイトの構成で、イベントとの連動も実施。配信楽曲のラインナップも、従来のハイレゾ配信で主流になっていたジャズやクラシックだけでなく、ポップス系の充実を図る。アニメ関係の充実も検討されている。

 サイトの構成は、楽曲の検索や購入・ダウンロードにおいて、手軽さを重要視。階層を深くしないなど、構造を複雑にせず、最小のクリックで購入できるよう設計したという。また、ユーザーのニーズに沿ったタイトルを充実させるため、各レーベルが取り扱っていながら、まだハイレゾ配信されていない楽曲に対して、ハイレゾ配信の「購入希望」ボタンを用意。そこで集まったユーザーの声を、各レーベルに届け、今後のラインナップへ活かしていくという。

 なお、ハイレゾ配信希望の対象楽曲は膨大な数になるが、レーベル側がある程度絞り込んだものをサイト上に表示。その楽曲に対して、「(ハイレゾ)購入希望」ボタンを押すカタチとなる。配信サービスの会員になると、ボタンを押す事ができるが、非会員でも“購入希望が多いタイトル”のランキングなどを閲覧する事は可能。また、レーベル側が用意するリストに無い楽曲のハイレゾ配信希望は、メールで受け付ける。

「VICTOR STUDIO HD-Music.」
右側の空欄に、ハイレゾ配信希望の一覧が表示されるという
購入画面
ハイレゾの再生に必要なものなど、ハイレゾについて学べるサイトにもなっている

 ハイレゾ配信と連動したイベントは、ビクタースタジオ内のレコーディングスタジオに、一般のハイレゾサウンド未経験者を招待。スタジオの大型スピーカーを用いて、音質が体験できる「ハイレゾ体験イベント」を定期的に実施。3月8日土曜日の11時~12時に、第1回を開催予定で、詳細はVICTOR STUDIO HD-Music.内で案内するという。

 さらに、2月上旬から発売されるJVCケンウッド、ビクターブランドのウッドコーンコンポ「EX-N70」、「EX-N50」がハイレゾに対応している事も活用。気軽にハイレゾが楽しめる機器として、連携した啓蒙も実施。大手電気量販店オーディオ売り場で、ウッドコーンコンポを用いてハイレゾのプレゼンを行なったり、ウッドコーンコンポ購入者に対して、VICTOR STUDIO HD-Music.の楽曲をプレゼントするといったアイデアも検討されている。

K2HDプロセッシングを用いて、配信ラインナップもカジュアルに

 配信ラインナップをカジュアルにするために、ポップス系楽曲の拡充を図る。しかし、旧譜などはCD用マスターのみという楽曲も多い。

 そこで、ビクタースタジオの高音質化技術である「K2HDプロセッシング」を活用。1970年代後半から2000年にかけての豊富なポップス系カタログのCDマスター音源から、ハイレゾ化を可能にするという。

 「K2HDプロセッシング」は、CDのフォーマットではカットされる20kHz以上の高域情報を、最大100kHzまで復元できるというもの。ビット拡張も行ない、16bit/44.1kHzから24bit/192kHzなどへアップコンバートができる。アルゴリズムの開発にあたっては、24bit/96kHzなどのマスター音源を一度16bit/44.1kHzのCDスペックにダウンコンバートし、20kHz以上の高域もカット。そのデータから、元のハイレゾに復元するというプロセスを重ね、アルゴリズムの完成度を上げている。

K2HDプロセッシングの概要
K2HDプロセッシング開発の流れ。一番上が24bit/96kHzの音源、真ん中がそれを16bit/44.1kHzにしたもの。一番下が、その16bit/44.1kHzをK2HDプロセッシングでハイレゾに復元したもの

 また、単純に波形を元に復元する事だけを追求せず、耳でも判断。「まったく同じような波形に復元するアルゴリズムに追い込んでも、耳では同じように聴こえない事がある。データだけでなく、耳でも同じように聴こえるかも重視している。高域情報を復元するというと、“無かった音を追加している”ように思われるかもしれないが、そうではなく、“もともとあったものを復元する”というアプローチがK2HDプロセッシングの特徴。CD用マスターしか現存しない楽曲に活用する事で、CDマスターより前の段階の音を復元したい」(秋元氏)という。

2月6日に追加される10タイトル

 サービス開始時の2月6日には、ビクタースタジオの楽曲として、ELPの「エマーソン・レイク&パーマ」(DVDオーディオ音源)や、MALTAの「マンハッタン・イン・ブルー」、夏川 りみ「南風」など10タイトルが新たに追加。この中で、5タイトルがK2HDプロセッシングでハイレゾ化されたものとなる。ELPの音源は「ハイレゾ・ミックス・マスター」により、DVDオーディオに収録していた24bit/48kHzのPCM音源をそのまま使用。配信としては世界初音源となる。

 また、ビクタースタジオが既に提供しているハイレゾ72タイトルの内、25タイトルがK2HDプロセッシングを使ったものとなる。

 現在のところハイレゾ化にK2HDプロセッシングを使っているのはビクタースタジオの楽曲のみだが、要望があれば他社もK2HDプロセッシングを使えるようにしていきたいという。

(山崎健太郎)