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三洋電機、最後の「社史」を発行。62年の歴史を3部構成
創業製品の自転車用発電ランプなど34製品を紹介
(2014/4/1 08:51)
三洋電機が、2014年3月31日に、同社最後となる「社史」を発行した。
1950年の創業から2012年4月にパナソニックへ事業統合するまでの62年間を、社史本編となる「経営史-1950-2011-」、数々の商品の歴史に焦点を当てた「商品史-挑戦の軌跡-」、経営史や商品史のほか、歴史的な資料をDVDにまとめた「アーカイブス-1950-2011-」の3部で構成。三洋電機の歴史を余すことなく伝える歴史的価値を持った重要な資料だといえる。編集および製作は出版文化社が担当した。
社史プロジェクトのリーダーを務めた三洋電機の松下通也氏は、「2001年2月に50年史を発行しているが、それ以降の約10年間に、どのように会社が変わっていったのかをまとめておく必要があると考えた。史実を風化させないように、三洋電機の歴史をしっかりとまとめておくことを目的に、社史を編纂した。ステークホルダーに満足してもらえるものができたと自負している」とする。
パナソニックは、2018年に創業100周年を迎えるが、同社100年史のなかに三洋電機の歴史を融合させるという点でも今回の社史は意味を持ちそうだ。
100部を書籍の形でまとめ、歴史的な資料として保管。一部は図書館などに寄贈する。また、DVD版となる「アーカイブス-1950-2011-」は1万3,000枚を用意。DVD版は、希望する社員への無料配布のほか、OBで構成される洋友会を通じて、同社OBに対して無償で配布する。一般には頒布する予定はない。
なお、大阪府立中之島図書館、国立国会図書館、神奈川県立川崎図書館のほか、大阪企業家ミュージアムなどでの閲覧が可能になる予定だ。
経営と商品の歴史を残す。サンヨーにちなみ34商品ピックアップ
「三洋電機 経営史-1950-2011-」は、これまでに同社が刊行した30年史や50年史を再編集した第1部「1947年~1986年」、第2部「1986年~2000年」に加え、新たに第3部「2000年~2005年」、第4部「2005~2007年」、第5部「2007年~2011年」をまとめた。
2000年に社長に就任した桑野幸徳氏による新体制以降の歴史を網羅。野中ともよ会長、井植敏雅社長、佐野精一郎社長の歴代経営体制の取り組みに触れ、第3の創業を掲げた「Think GAIAビジョン」、環境技術を核として事業成長を図る「環境・エナジー先進メーカー」といった同社の経営方針の変遷のほか、新潟中越地震による半導体事業への打撃、パナソニックの子会社化への道のりなどをまとめている。
「経営史では、客観的な視点に立つことを重視した。社員はもちろん、第三者でもわかりやすく、公正かつ客観的な社史が出来上がった」(経営史の編集を担当した出版文化社ヘリテージサービス事業部の松浦大家氏)という。
経営史は、並製A5判モノクロ、1,064ページの構成。約750点の写真を使用している。
一方、「三洋電機 商品史-挑戦の軌跡-」は、創業商品である自転車用発電ランプをはじめ、同社の代表的な商品を、「サンヨー」にちなんで34商品をピックアップし、その開発秘話や社会的貢献などについて触れている。
「メーカーである限り、経営の歴史をつづるだけでなく、商品の歴史を残しておくことは必要。商品史では、当時の写真を集めることに大変苦労した。当初の予定よりも写真の比重が高まったが、この商品は知っている、この商品は懐かしいと思っていただくだけでなく、商品に関わるこだわりなどを感じてもらいたい」と松下氏は語る。
「人と・地球が大好きです」、「プラスαの精神」、「エキサイティングカンパニー」、「菊づくり経営」、「Think GAIA」といった三洋電機のモノづくりを象徴する8つのキーワードをもとに、34商品を分類。約650点に渡る写真を使用し、ビジュアル面からも楽しむことができる構成としているのが特徴だ。
「企画段階では、商品史がどんな形になるのかまったく見当がつかなかった。思い入れのある商品ばかりであり、34商品の選定についても議論に議論を重ねた。だが、多くのOBや現役社員からも資料を提供していただき、いまできることはすべて盛り込んだ商品史ができたと考えている」と、商品史を担当したパナソニック社史室の川原陽子氏は振り返る。
また、商品史の編集を担当した出版文化社ヘリテージサービス事業部の溜谷はるか氏は、「商品史は、三洋電機のDNAを感じとってもらえるように、文章や写真の見せ方に工夫をした」という。
創業商品の発電ランプは、松下電器(現パナソニック)から譲り受けたものであり、当初はナショナルブランドで販売していたこと、HIT太陽電池やデジタルムービーカメラの「Xacti」、ライスブレッドクッカーの「GOPAN」、充電式ニッケル水素電池「eneloop」、洗濯機「AQUA」など、現在も発売される商品のほか、ラジカセとして一世を風靡した「おしゃれなテレコ U4」、ハイビジョンテレビ「帝王」、電話機「テ・ブ・ラ・コードるす」といった商品に加え、ビデオレコーダーで初めて三洋電機が採用したミッドマウント方式や、他社に先行した発売した「AXパソコン」、シリーズ商品の「ROBOシリーズ」や「it’sシリーズ」などを掲載している。そして、あまり触れられることがなかった同社の自動販売機事業、コールドチェーン機器、バイオメディカ、光ピックアップ、半導体事業などのBtoB事業も網羅した。
さらに、同社が大阪府守口市にオープンしていた歴史館である「SANYO MUSEUM」や、岐阜県の「ソーラーアーク」、兵庫県の「加西グリーンエナジーパーク」の紹介、1970年に開催した大阪万博のサンヨー館で展示した「人間洗濯機」などにも触れている。
「商品史-挑戦の軌跡-は、並製A5判、フルカラーで、392ページの構成となっている。
「三洋電機 アーカイブス-1950-2011-」は、DVD版で提供する資料集となっており、経営史や商品史のほか、ヒストリームービー、スポーツ史、e-SANYO NUSEUM、資料室で構成。ヒストリームービーでは、約33分間に渡る映像で、三洋電機の歴史やトピックスとなる製品を振り返ることができる。経営に関する資料や、商品写真やカタログ、広報資料、営業・マーケティング関連資料などを活用しているのが特徴だ。
この作業においては、今回の社史の編集を担当した出版文化社に、日本では数少ないアーキビストが在籍。同社の提案により、「アーカイブ」という観点から、歴史的資料の体系的保存などについての手法を導入。日本の電機大手で、こうした手法を採用したのは初めてともいえる。
出版文化社 ヘリテージサービス事業部の吉國弘行氏は、「三洋電機らしさを伝えるため、写真、映像、カタログやポスターなどの膨大な資料を、時間の許す限りあたることを心掛けた。残っている貴重な映像や写真などの資料を最大限生かし、三洋電機のDNAを伝えた」と述べている。
DVDには、1万3,170件の資料が収録されているという。
また、「社史のなかでは、三洋電機のスポーツへの取り組みもまとめている。ラグビーやバトミントンは、構造改革に取り組んだ2001年からの10年間においても、三洋電機の社員やステークホルダーを励ましてきた。三洋電機にとっては不可欠なものである」(三洋電機の松下氏)というように、三洋電機ならではのこだわりもみせている。
今回、編集を担当した出版文化社では、「三洋電機という大きな会社の最後の社史。編集作業を通じて、社史本来の意義を強く感じた」(プロジェクト統括リーダーを務めた出版文化社ヘリテージサービス事業部企画営業・木戸清隆プロデューサー)としている。