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マイクの違いも描き分ける。JVC新ウッドコーンCDコンポの進化を体験

スタジオ内でのデモの様子

 JVCケンウッドは13日、6月中旬から順次発売するJVCブランドのウッドコーンオーディオシステム「EX-HR9」など3機種の試聴会をマスコミ向けに開催した。東京・青山のビクタースタジオにおいて、高音質化技術「K2テクノロジー」やデジタルアンプ「DEUS」を搭載したHRシリーズの特徴を説明。音源の録音時に使われたマイクの差まで描き分けるというウッドコーンスピーカーをアピールした。

 新モデルのラインナップは、「EX-HR9」(6月中旬発売/実売11万円前後)、「EX-HR7」(8月上旬発売/実売10万円前後)、「EX-HR5」(6月中旬発売/実売8万円前後)の3機種。HR9は9cm径のフルレンジ、HR7は11cm径ウーファと2cm径ツイータの2ウェイ、HR5は8.5cm径のフルレンジで、いずれもウッドコーンユニットと無垢材のキャビネットを採用している。

左からHR5、HR7、HR9

 レシーバ部の基本仕様は3モデル共通で、CDプレーヤーとiPhone/iPod対応のUSB端子、AM/FMラジオを搭載。入力は光/同軸デジタルが1系統とアナログ2系統を装備。出力はサブウーファ用とヘッドフォン出力を各1系統装備する。USB部の再生対応フォーマットはMP3/AAC/WMA。

K2でCDをハイレゾのクオリティに

セットステレオの出荷金額とウッドコーンのシェアの推移

 ウッドコーンシリーズは、2003年に発売された第1弾モデル「EX-A1」から10年が経過し、2014年に11年目に突入した。市場全体で見るとセットステレオの出荷金額は減少傾向にあるが、同シリーズはラインナップの増強などにより台数・金額シェアが年々伸長しているという。

 新しいHRシリーズは、2008年~2009年に発売されたCD/DVDコンポ「ARシリーズ」の後継機という位置付け。「CDをハイレゾのようなクオリティで聴く」というコンセプトで開発され、2014年2月発売のDLNAハイレゾ再生対応モデル「EX-N50/N70」で培ったノウハウが投入されている。ハイレゾ音源の直接再生には対応していないが、iriverのAKシリーズのようなハイレゾ対応ポータブルオーディオと光/同軸デジタル接続し、192kHz/24bitまでのハイレゾ音源を再生するといった使い方も提案している。なお、ARシリーズと異なりDVDオーディオには非対応となっている。

HRシリーズの開発コンセプト
AK120を光デジタル接続してハイレゾ音源を再生しているところ

 ハイレゾモデルN50/N70と同様に、S/Nやひずみ率、高域の再生帯域を改善したデジタルアンプ「DEUS」には、フォーマットに応じて自動で係数設定を行なう新「K2テクノロジー」を組み合わせて搭載する。K2により、CDに収録された44.1kHz/16bitの音源を88.2kHz~96kHz/24bitまで拡張/補完し、スタジオマスターの音に近づけているという。音質チューニングには、ビクタースタジオのエンジニアも参加している。

デジタルアンプDEUSの説明
K2テクノロジーの説明
K2によるビットレートや周波数拡張/補完の説明

HR9にはユニット前面に十字形の異方性振動板を搭載

ウッドコーンシリーズ開発者の今村智氏

 各モデルの仕様の説明は、ウッドコーンオーディオの開発者である今村智氏が行なった。スピーカーはハイレゾモデルの仕様を継承しており、HR5はN50と、HR7はN70とほぼ共通の仕様となっている。

 HR9は、9cm径のフルレンジユニットを採用し、前面に十字形の異方性振動板を搭載。今村氏によれば、「HR7では異方性振動板をユニットの背面に搭載するが、本来は前面の方が効果的。しかし、前面に搭載すると十字の形が海外販売する際に問題となるため、国内専用のHR9のみ前面に搭載する」とのこと。マグネットは7.5cm径。磁気回路には歪みを低減するためのアルミショートリングや銅キャップを採用。センターキャップの内部にメイプルの吸音材を装着し、反射音の吸収と上下の音の広がりを実現するという。

 ユニット磁気回路の後部には、メイプル材の八角形ウッドブロックを装着。エンクロージャー内部には竹響板とチェリー材の響棒に加え、メイプル材を細かくカットした木製チップの吸音材を採用している。

HR9のスピーカー部の説明
センターキャンプ内の吸音材や不均一な形状のダンパーなどを備える
HR9はユニットの前面に十字形の異方性振動板を装着
ユニット背面にはメイプル材の吸音材
磁気回路の後部にメイプル材の八角形ウッドブロックを装着

 HR7は、11cm径ウーファと2cm径ツイータの2ウェイ型。ウーファユニットの背面に十字形の異方性振動板を配置。ツイータは、エッジ素材にシルク繊維を使い、ボイスコイルは6N(99.9999%純度)無酸素銅を採用している。エンクロージャ内部には竹響板とチェリー材の響棒を設置する。

 HR5のスピーカーは、8.5cm径のフルレンジユニットと7cm径のマグネットを採用。磁気回路後部にはウッドブロックを装着し、不要振動を吸収。バスレフダクトからの不要な高域成分も制御し、低音を増強しているという。

HR7のスピーカー部の説明
HR7はウーファユニットの裏に十字形の異方性振動板を搭載
HR5のスピーカー部の説明

 レシーバ部は、CDドライブを持たないハイレゾモデルとは異なる振動対策を取っているという。HR7/HR9には、底面に9mm厚MDF材のアークベースを採用。HR9のみ、レシーバの両サイドに木材カバーを備え、真鍮無垢削り出しのインシュレータを採用している。HR5/HR7は、プラスチック樹脂と真鍮を組み合わせたハイブリッドインシュレータを装備する。シャーシの取り付けには、銅メッキネジと真鍮製ワッシャといった異種金属を組み合わせるなど、部品レベルでの振動対策も行なっている。

レシーバ部の説明
各モデルのレシーバ底面
HR7のレシーバ底面

録音スタジオでも使用されるウッドコーンスピーカーの実力

前モデルとの聴き比べデモの様子。中央左がAR7、右がHR9

 試聴デモでは、初めに4種類のマイクを使ったボーカル録音をEX-HR9で再生し、マイクの違いによるニュアンスの差を聴き比べた。使用されたマイクは、ダイナミック型、コンデンサ型、リボン型、チューブ(真空管)型の4種類。スタジオで録音された男性ボーカルのみの音源を再生すると、同じボーカルでも、コンデンサ型はクリアで繊細な印象、リボン型は低音のビブラートが豊かに聴こえるなど、使用するマイクによって印象が違って聴こえる。それぞれのマイクの特徴をしっかり描き分けることで、プロの録音スタジオでも使われるというウッドコーンスピーカーの性能をアピールした。実際に、ビクタースタジオでは、全てのスタジオ・マスタリングルームでウッドコーンスピーカーを使用しているという。

 このほか、HR9やHR7を使用したインストやボーカルなど様々なジャンルのCDの再生デモや、前モデルのARシリーズとの聴き比べなどが行なわれ、HRシリーズの伸びやかな高域と力強い低域、より豊かになった音場空間表現を実感することができた。

(一條徹)