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JVC、“マスター音質”再現のハイレゾ/ネットワーク対応ウッドコーンコンポ「EX-N70」

左がEX-N50、右がEX-N70

 JVCケンウッドは、ビクターブランドのウッドコーンオーディオシステム2モデル「EX-N70」と「EX-N50」を、2月上旬に発売する。価格はオープンプライスで、店頭予想価格はN70が12万6,000円前後、N50が10万5,000円前後。

 同社のウッドコーンスピーカーやデジタルアンプ「DEUS」、高音質化技術「K2テクノロジー」を搭載し、新たにDSDやFLAC/WAVなどのハイレゾ音源の再生に最適化したという点。従来モデルも24bit/192kHzなどのDVDオーディオ再生に対応しているが、新製品の開発に際し、K2テクノロジーやDEUSを見直し、スピーカーのユニット/筐体構造などにも改良を行なった。また、ビクタースタジオのエンジニアとの試聴を重ね、音楽制作の意見を採り入れたという。

 Ethernetを備え、新たにDLNAのネットワーク再生機能を搭載。USB端子も備え、iPhone/iPodとのデジタル接続や、マスストレージ対応のUSBメモリなどに収めたファイルの再生が可能。Androidスマートフォン/タブレット端末でも、ストレージとして認識することで内部のファイルを再生できる。なお、パソコンと接続してUSB DAC機能としての利用はできない。

 従来モデルのEX-A200などのようなCD/DVDプレーヤーは用意せず、アンプ搭載のメインユニットとスピーカーのみの構成とした点も特徴。両機種の大きな違いはスピーカーで、「EX-N70」には2ウェイ、「EX-N50」にはフルレンジのステレオスピーカーを採用。さらに、EX-N70にはメインユニットの底面を補強するMDF材のアークベースを備え、振動の抑制を徹底している。

デジタルアンプやK2が進化。DLNAでDSD再生、スマホ操作

EX-N70のメインユニット

 メインユニットの基本仕様は、前述した底面のアークベース以外はほぼ共通。デジタルアンプの「DEUS」は、ハイレゾ対応に合わせて、従来とはメーカーの異なる新ICを採用、SNや歪み率などを改善した。また、従来モデルと同様にアナログ/デジタル個別でフィードバックを行なうが、N50/70では新たに外付けの回路を付けることで帰還量を増大。より高域まで再生することが可能になったという。このほかにも、ダンピングファクタの改善や、ループゲインの拡張による広帯域でのスピーカー制動力の向上なども行なっている。アンプの最大出力は両モデルとも50W×2ch。

 音声信号のデジタル変換や圧縮などで失われる部分を再生成することで原音に忠実な再生を図る「K2テクノロジー」も進化。従来は、用意された複数のモードから選択して適用する形だったが、音楽のフォーマットに応じて係数を自動で設定する方式に変更。ハイレゾコンテンツに対してもK2処理を行なうようにした。K2機能のON/OFFは本体ボタンなどで切り替え可能。K2のパラメータ自体は従来のものを継承しているという。

NASにあるDSD音源を、タブレットからの操作でネットワーク再生しているところ

 DLNA 1.5に対応し、ネットワーク再生の再生対応ファイルは、DSD、FLAC、WAV、Apple Lossless、MP3、WMA、AAC。WAVやFLACの24bit/192kHz音源も再生できる。DSDは2.8MHzのみ対応する。iOS/Android端末用の新アプリ「JVC Audio Control WR2」と連携でき、LAN内にあるDLNAサーバーの再生/選曲操作や、スマホ端末内の楽曲の再生などが行なえる。「K2テクノロジー」のON/OFFや、音質調整なども可能。サーバーは、DLNAのほか、Windows Media Player 12/11もサポートする。

 ラジオのIPサイマル配信サービスradiko.jpの聴取も行なえる。USB部も上記ファイルを再生可能で、iPhone/iPodとのデジタル接続も可能。対応機種はiPhone 3G/3GS/4/4S/5/5c/5sと、第2~7世代iPod nano、第1~5世代iPod touch、iPod classic。

EX-N50のメインユニット
デジタルアンプDEUSの改善点
K2テクノロジーも進化

 振動対策も徹底。底面のフットは3点支持とし、インシュレータはプラスチックと真鍮を組み合わせたハイブリッド仕様とした。ネジやワッシャには異種金属を組み合わせ、銅メッキネジと真鍮ニッケルワッシャ、銅メッキネジと銅ワッシャといった組み合わせを採用。共振によって振動のキャンセルを図っている。N70には、ボトムシャーシ部に厚さ9mmのMDF材を使ったアークベースを採用。シャーシの剛性を高めるほか、振動を吸収する。ベースの固定には銅メッキネジを使用している。このほかにもN50/70には高音質コンデンサの使用や、部品レベルでの指導対策の徹底などで高音質化を追求している。

 入出力端子も共通。光/同軸デジタル入力×各1と、USB×2(前面/背面。背面は192kHz非対応)、アナログ音声×2、サブウーファ出力×1、ステレオミニのヘッドフォン出力×1を備える。外形寸法は255×289×115mm(幅×奥行き×高さ)、重量はN50が2.9kg、N70が3.1kg。リモコンが付属する。

3点支持のフットやハイブリッド素材のインシュレータを使用
異種金属の組み合わせなどで振動対策を徹底
EX-N70の底面にはアークベースを追加
EX-N70のメインユニット背面
EX-N50のメインユニット背面

スピーカーも細部まで素材と構造を見直し

EX-N70のスピーカー

 独自のウッドコーンユニットを備えたスピーカーで、EX-N70のスピーカーは11cm径ウーファと2cm径ツイータ各1基、EX-N50は8.5cm径フルレンジ1基を搭載。

 N70のウーファはチェリー材。ユニットの背面に十字の形で異方性振動板を配し、音場空間の拡大や伝播速度の向上を図っている。磁気回路には、アルミショートリングや銅キャップなどの採用で歪みを低減。メイプル材のポールピースにより音の濁りを防ぐという。エッジのブチルゴムは、素材の配合比率を変更し、音場空間が拡大したという。

 ツイータはドーム型で、エッジ素材にシルクを使用。ボイスコイルは6N(99.9999%)のOFC線を使用する。振動板内側の吸音材は、反射音による濁りを防ぐため、従来のグラスウールやフェルトといった吸音材に代わり、スプルース材の木片をポールピースの上部に配置。高域表現や伸びを犠牲にせずに吸音を可能にしたとしている。

 ウーファとツイータの背面には8角形のチェリー材ウッドブロックを配置。取り付け位置を1mm単位で調整し、ダクトからの不要高域成分の制御を行なっている。エンクロージャ内部には、楽器などに使われる響棒(チェリー材)や竹製の響板を備え、響きや音場の制御を行なっている。ターミナルはダブルナットで固定することにより接触抵抗を抑え、エネルギッシュな音を実現するとしている。内部の吸音材には、メイプルチップを使用している。

N70のスピーカーユニットの特徴
背面に八角形のチェリー材ウッドブロックを配置

 N50は、小型フルレンジユニットの背面に70mm径の大型マグネットを採用。磁気回路後部にウッドブロックを配し、不要振動の吸収と、低重心な再生を可能とした。また、バスレフダクトからの不要な高域成分の制御にも効果があるという。

 キャビネットは無垢の木材を使用し、天面/底面/前面バッフルにチェリー、両側面にはアルダーを使用している。内部にはチェリー材の響棒を備える。ターミナルはダブルナットで固定することにより接触抵抗を抑え、エネルギッシュな音を実現するとしている。

 インピーダンスはいずれも4Ω。外形寸法と重量は、N70のスピーカーが149×249×262mm(幅×奥行き×高さ)、4.2kg。N50のスピーカーが120×246×161mm(同)、1.8kg。

EX-N50のスピーカー
スピーカーユニットの比較。左上がN70のウーファ、左下がN70のツイータ、右がN50のフルレンジ
スピーカーユニットを横から見たところ
N70のスピーカー背面
N50のスピーカー背面
エンクロージャの内部。左がN50、右がN70のスピーカー

「ハイレゾ」ロゴ採用。スタジオエンジニアが知る「原音」でアーティストの想いを表現

28日に発表された新製品。ゴールドとブルーの「Hi-Resolution Audio」ロゴがパッケージなどに付く

 JVCケンウッドは28日、上記のEX-N70/N50や、ウッドドーム搭載イヤフォンの新モデル「HA-FX850」、「HA-FX750」、「HA-FX650」3モデルの新製品発表会を開催した。なお、イヤフォンの詳細については別記事で掲載している。

 今回の新製品は、いずれも“ハイレゾ対応”と位置付けており、同社は「ハイレゾ音源の持つクオリティを再現する製品」に対し、専用の「Hi-Resolution Audio」ロゴを付与することも明らかにした。同社はハイレゾの定義を「~kHzまで音が出る」といったスペックで決めているのではなく、「ミュージシャンや、音楽制作のエンジニアによる音を十分に堪能できる商品にだけ付ける」という。今回のウッドコーンオーディオ/イヤフォンだけでなく、'13年10月に発表したケンウッドブランドのミニコンポ「Kseries」新モデルにも付与する予定。

 さらに、同社初となるハイレゾ対応ポータブルアンプも発売する予定で、このモデルにもハイレゾのロゴが付く。このポータブルアンプは、以前からイベントなどで展示されていたもので、発売時期を5月上旬とすることを明らかにした。型番や価格などは未定で、現在開発が進められている。

 詳しい仕様も発表されていないが、DACを搭載しており、iPhone/iPodなどとのデジタル接続が可能。PCとUSB接続し、USB DACとしても動作。24bit/192kHzまでのPCMデータに対応するという。ウォークマンF880/ZX1とのデジタル接続には非対応。DSDに対応しているかどうかは明らかにしていない。高音質化技術のK2テクノロジーも搭載し、背面にK2のON/OFFやゲイン切り替えなどのスイッチを備える。入力はUSBと光デジタル、アナログ(ステレオミニ)を装備。ヘッドフォン出力はステレオミニ。

5月上旬に発売されるハイレゾポータブルアンプ(プロトタイプ)
アンプ内部の回路
高付加価値のイヤフォンやハイレゾポータブルアンプを製品化する背景
1万円を超える高付加価値の密閉型イヤフォン市場(JVCケンウッドの推計)

 ハイレゾ対応のイヤフォンとして製品化した背景については、1万円を超える高付加価値の密閉型イヤフォンの市場が拡大し、「アウトドアでも高音質」のニーズが高まっているという。同社推計によれば、1万円超のイヤフォン市場は'13年度に前年度比で115%まで伸長したという。

 また、ヘッドフォンアンプを製品化する意図については、スマートフォンやオーディオプレーヤーなどプレーヤーの多様化、音源のハイレゾ対応などが進む中で、ハイレゾではない楽曲を高音質化するK2テクノロジーや、音響メーカーとしてこだわった設計などで「インドア/アウトドア、ハイレゾ/非ハイレゾ音源を問わず“ハイレゾサウンド”を楽しめる」という点をアピールしている。

 イヤフォン/コンポに共通するテーマは「原音探求」。イヤフォンは、空間表現力の強化や高分解能などで「原音をより生々しく再現する」(オーディオ事業部 技術統括部 アコースティック技術部 宮澤貴之氏)と説明している。

新ウッドシリーズイヤフォンの「原音探求」
同社高音質ヘッドフォンが目指すもの
JVCケンウッドの宮澤貴之氏

 ウッドコーンオーディオ製品の開発者として知られる同社の今村智氏は、EX-N70/N50について「今までもDVDオーディオで24bit/192kHzなどを扱っていたので、ノウハウが全くゼロではなかったが、ハイレゾ再生にあたり、ビクタースタジオのエンジニアとの試聴と音の目標を確認した」と説明。ハイレゾというと、人間の可聴帯域を超えた高域について評価されることが多いが、今村氏は「空間が広くなる、高域感が出るといった高音質化は、やはり可聴帯域の情報量の差が起因しているのでは」とし、可聴帯域の高解像度化や、空間表現の向上、低重心な再生などを目指して開発したという。

 今村氏は、「“原音”とは、マスターテープのイメージととらえている。機器開発者は(レコーディングスタジオで制作した)“元の音”を知らない。マスターの音を最も良く知っているのはスタジオエンジニア」とし、新モデルをビクタースタジオに持ち込んで、共同でチューニングを重ねてきたことを説明。「“アーティストの想い”を表現できるレベルまで完成度が向上した」と自信を見せた。

今村智氏
ウッドコーンオーディオ新モデルにおける「原音探求」
ビクタースタジオのエンジニアと共同で試聴/開発を行なった

(中林暁)