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デノン、13.2ch拡張可能、Atmos対応で35万円の最上位AVアンプ。旭化成新DAC

 ディーアンドエムホールディングスは、デノンブランドの新フラッグシップAVアンプとして、Dolby Atmosに対応した9.2chモデル「AVR-X7200W」を2015年1月上旬に発売する。価格は35万円。カラーはブラックのみ。

Dolby Atmosに対応した9.2chモデル「AVR-X7200W」

Dolby Atmos対応。柔軟なスピーカーアサインが可能

 定格出力150W×9ch(8Ω)のAVアンプ。「AVR-4520」から2年ぶりのフラッグシップ刷新となる。オブジェクトベースの新サラウンド、Dolby Atmosに対応。単体で5.1.2、5.1.4、7.1.2ch、7.1.4ch、9.1.2chの5パターンのスピーカー配置に対応(7.1.4と9.1.2では外部パワーアンプが必要)する。

「AVR-X7200W」

 様々な環境に柔軟に対応できる事に注力しており、9.2chのアンプだが、11.2chまでのプロセッシングが可能で、プリアウトは13.2ch分装備。外部パワーアンプを併用して、Dolby Atmosの多スピーカーをドライブするほか、サラウンドフォーマットに合わせてスピーカーのアサインを自動的に変更する事も可能。

 例えば、7.1chのシアタールームに、Atmos用のトップスピーカーを天井に4ch設置した環境で、Atmosのソフトを再生する場合、天井の4chスピーカーを鳴らし、天井以外は5chで再生。同じ環境で、ドルビーTrue 7.1chのBDをストレートに再生したい場合は、スピーカーをつなぎ替える事なく、トップスピーカーは鳴らさず、天井以外の7.1chスピーカーを鳴らす事ができる。

「AVR-X7200W」の背面
13.2chプリアウトを装備している
多彩なトップスピーカーアサインが可能

 また、既にフロントハイトスピーカーを設置しているシアタールームで、フロントハイトをAtmosのトップフロントとして使ったり、サラウンドバックスピーカーの設置場所が無くて天井に取り付けているという場合に、それをリヤハイトスピーカーとして転用するとった事も可能。

 HDMIは8入力、3出力を装備。4K/60p/4:4:4 24bit映像のパススルーにも対応。ただし、HDCP 2.2には対応していない。2015年初夏に、基板交換によるHDCP 2.2対応無償アップグレードが予定されている。SD/HD映像を4K(3,840×2,160ドット)にアップスケーリングする機能も備えている。

 デュアルゾーンに対応し、2つのモニター出力を使い、テレビとプロジェクタなど、2つの画面に同じ映像を同時に出力可能。マルチゾーンHDMIもサポートしており、別室のテレビでメインゾーンと同じ、または異なる映像を表示できる。

旭化成の最新DAC搭載。ハイレゾ対応も

DACは専用の独立基板に配置している

 DACは、「本格的なコンポに採用されるのは初めて」という、旭化成の「AK4490」を採用。ハイスペックな32bit DACで、将来的には384kHzのPCMや、DSD 11.2MHzにも対応できるDAC。ただし、AVR-X7200W自体はPCM 192kHz/24bit、DSD 2.8MHzまでの対応となる。内部には多数のバリエーションのデジタルフィルタを備えている。

 DACは専用の独立基板に配置。メイン基板から分離する事で、HDMI/ネットワーク/CPUなどのノイズや、DC-DCコンバータノイズなどからの影響を防いでいる。また、余裕を持った、自由なパターンレイアウトも可能にしている。

 AVR-X7200WはUSBメモリやDLNAネットワーク経由でのハイレゾ音楽ファイルの再生に対応しているが、AIFF/WAV/FLACは192kHz/24bitまで、AppleLosslessは96kHz/24bit、DSDは2.8MHzまでとなる。AAC/MP3/WMAの再生にも対応。FLAC/WAV/DSD/AIFF/AppleLosslessではギャップレス再生もサポートする。

 USB端子は、iPod/iPhoneとのデジタル接続にも対応。iPod/iPhoneの充電もサポートする。

 ネットワーク再生機能は、AirPlay、インターネットラジオの受信もサポート。AVアンプ本体に無線LAN機能も備えており、2本のロッドアンテナを使ったダイバーシティアンテナも装備。

 Bluetooth受信にも対応しており、対応スマートフォンなどと手軽にワイヤレス接続できる。プロファイルはA2DP 1.2、AVRCP 1.4を、コーデックはSBC/AACをサポート。機器は8台まで登録可能。

 iOS/Android向けに、リモコンアプリ「Denon Remote App」を用意。ホーム画面のショートカットキーには、使用頻度の高い入力や機能を最大8個まで登録できる。

AL32 Processingで元のアナログ波形に近づける

 デノン独自の回路技術「D.D.S.C.(Dynamic Discrete Surround Circuit)」において、32bit プロセッシングを行なう最上位バージョンの「D.D.S.C.-HD32」を採用。サラウンド再生に必要な信号処理回路を1つ1つのブロックに独立させ、32bitフローティングポイントDSPなどをを用いてディスクリート化。全チャンネル同一レスポンス、同一クオリティを念頭に構成したという。

 「AL32 Processing Multi Channel」も搭載。様々な信号を32bit精度に拡張、マルチチャンネル音声にも対応しており、デジタル音声を元のアナログ波形に近づけられるとする。

 11.2ch分のデコードや、AL32、音場補正など、重い処理を余裕をもってこなすために、アナログ・デバイセズの32bitフローティングポイントDSP「SHARCプロセッサ」を4基搭載した。

アナログ・デバイセズの32bitフローティングポイントDSP「SHARCプロセッサ」を4基搭載

 「Denon Link HD」にも対応。デノンのBlu-rayプレーヤー「DBT-3313UD」と組み合わせる事で、AVアンプのDACを動作させるマスタークロックをプレーヤーに供給。互いに同一のクロックを共有しながら動作する事で、ジッタの極めて少ない音声伝送を実現。定位がより明確で、クリアで立体的な再生が可能という。専用プレーヤー以外を接続する場合は、「ハイブリッドPLLクロックジッターリデューサー」でジッタを低減。HDMIだけでなく、光、同軸デジタル音声接続、アナログ音声接続でもそれぞれに最適化したジッタ低減が可能という。

AVR-X7200WとDBT-3313UD(右)。この組み合わせでDenon Link HDが利用できる
ジッタを抑えた伝送ができる
Audyssey MultEQ XT32の機能と、他の機能との比較

 付属の測定用マイクで、スピーカーを自動セットアップする「Audyssey MultEQ XT32」を搭載。最大8カ所の測定データを解析することで、2EQ比で512倍のフィルター解像度で部屋の反響音などによる悪影響を除去できる。さらに、「Sub EQ HT」も搭載。2台のサブウーファを接続した際に、個別に測定し、それぞれに最適な音量、距離の補正、イコライジングが行なえる。

 低音の位相補正機能も装備。BDやDVDなどのマルチチャンネルで収録されているコンテンツでは、低音が遅れて収録されている事があり、それを0~16msの範囲で補正できる。補正値は入力ソースごとに記憶可能。

 内部基板はシンメトリーレイアウトを採用。パワーアンプ回路をチャンネル毎に個別に基板を独立させたモノリス・コントラクション構造とすることで、チャンネル間の振動による影響やクロストークを排除、チャンネルセパレーションを高めている。

内部基板はシンメトリーレイアウト

 ハイファイ用アンプの設計思想を踏襲した、特注のパワートランジスタ「DHCT」を採用。放熱性の向上や、急激な温度の上昇を抑え、高温時でも安定した動作ができるという。これにより、ダイナミックレンジの大きな信号も、安定して処理できるという。

 パワーアンプ初段の差動増幅段には、特性のそろった2つのトランジスタを内包。微小信号の表現力を高め、低域の安定感も向上するという。

 電源部には、大型EIコアトランスを採用。パワーアンプや周辺回路への振動の影響を抑えるために、1.6mm厚のベースプレートを介してメインシャーシに固定。ダンパーを追加して共振も抑えている。整流ダイオードには、ショットキーダイオードを並列で使用。電源部のブロックコンデンサには、専用にチューニングされた22,000μFのカスタムコンデンサを2個使っている。

電源部の大型EIコアトランスなど、各部に厳選したパーツを投入している

 パワーアンプ出力段の保護回路も刷新。パワートランジスタの温度変化をリアルタイムにモニターする回路を追加する事で、従来搭載していた電流リミッタ回路を除去。ピーク電流が大幅に強化され、瞬時電流供給能力がアップ。微小信号から大きな信号まで、音色が変わらず、余裕のあるドライブができるという。なお、4Ωのスピーカードライブにも対応する。

AVアンプの紹介を行なう、CSBUデザインセンター デノンサウンドマネージャーの米田晋氏

 ボトムシャーシは、1.2mm厚のメインシャーシに1mmのスチールプレートを追加したものを採用。剛性を高めているほか、新開発の高密度フットも搭載。重量は従来の2倍以上となり、内部に複雑なリブ構造を採用する事で、振動も抑制している。

 HDMI以外の入力端子は、コンポジット×5、コンポーネント×3、アナログ音声×8、7.1ch入力×1、光デジタル×2、同軸デジタル×2。出力端子は、コンポジット×2、コンポーネント×2、13.2chプリアウト×1、ゾーンプリアウト×2、ヘッドフォン出力×1を装備。Ethernet、Denon Link HD、USB、RS-232C、DCトリガー端子なども備えている。

 消費電力は780W。外形寸法は434×427×196mm(幅×奥行き×高さ)。重量は17.8kg。

デノンの試聴室。トップスピーカーを導入し、Atmos対応となった
付属のリモコン

(山崎健太郎)